ねらい通りに光があふれる

「ブラックウォールナットのリビングカップボード」

茅ヶ崎 S様

design:Sさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:kenta watanabe
painting:kenta watanabe

ブラックウォールナットのリビングボードのスケッチ
打ち合わせにいらしてくださった時のスケッチとメモ。

HANA Shonanさんというフリーペーパーがあります。
今から10年以上前でしょうかね。
「こんにちは。」と突然事務所にスーツを着た女性(Mさん)が訪ねてきてくれたことがありました。
普段なら訪問販売のような場合は詳しく話を聞くことなく、「すみません、忙しいもので。」と断ってしまうのですが、たしか、ちょうどその時に仕事がひと段落していた時間帯だったからか、お話を聞くことになったのでした。

ブラックウォールナットのリビングボード
全体の様子。ブラックウォールナットのカップボードのほかにタモで神棚も作らせて頂きました。
ブラックウォールナットのリビングボード
この家具が置かれるまでは長年使っていた色が濃くて背の高いカップボードが置かれていたのですが、高さを抑えて、光がきちんと入ってくることでかなり明るいリビングになりました。

聞くと、神奈川県のいろいろな企業さんを紹介するポータルサイトを作っているということで、今までにも同じようなお話をしに来てくれた方々はいらっしゃったのですが、どれも効果が得られなかったので、今回も同じような感じなのかな、お断りしようかな、と思っていたのですが、「まず2か月間だけでも試してみませんか。その間は費用は頂きませんので。」とMさん。
「利用している間は、どのくらいの人たちがアクセスしてくれたかも見ることができますので。」といろいろとメリットを説明してくれるMさん。
その話を聞く10分ほどの間に、要らないかなーという気持ちが、まずは2ヶ月試してみようかなとなって、それがMさんと話しているうちに、2ヶ月じゃ効果は分からないよね、1年間試してみようかな、という気持ちになっていったのは、Mさんの人柄だったのでしょうか。
Mさんとのお話はまたどこかでさせて頂きますね。

ブラックウォールナットのリビングボード
天板はブラックウォールナットの板目無垢材で制作しています。それに合わせて、引き出しの前板と框扉も無垢材で制作しています。ブラックウォールナットは紫外線を受けるとだんだんと本来の明るい色に焼けていくので、その時がまた楽しみですね。

そうして始まったMさんとのお付き合いですが、その後Mさんは独立されて、デザインのお仕事をしていく中で、湘南のフリーペーパーを作られているというダブズマーケットの石川さんという方をご紹介して頂けることになりました。
それが今から10年くらい前のことでしょうか。
あれから、いろいろな形で掲載させてもらいました。
その石川さんは、もともと建築会社で営業をされていた方でしたので建築のことは詳しくて、さらに今は海のそばでセレクトショップを営んでいらっしゃる方で、お忙しいはずなのにフットワークが軽くて、お会いするたびにいつもためになるお話を聞かせてもらえる魅力的な人なのです。

引き出しの様子
引き出しの様子。こちらの一番右の引き出しは手前の窓台に当たってしまうため、奥行きの浅い引き出しにしています。オーダーだからできる細かい納まりなのです。

そして、いよいよSさん。
Sさんが私たちを知ってくださったきっかけはこのフリーペーパーの「HANA Shonan」でした。湘南地域では様々な場所に置かれているそうなので、その中で見つけてくださったのだそうです。
HANAさんを読んでいると、自分の世代よりも若い皆さんが多いのかなって思っていたので、私の書く記事はどちらかというと地味なことが多かったりするから、文字ばかり多くて華やかさがないかなあなんて思っていたのですが、Sさんいわく、「この様子が良いのですよ。とてもセンスの良い丁寧なお仕事を拝見させて頂いておりました」と。
うれしい出会いでしたね。
そして、紙面を通して思いが伝わったのですと言ってくださって、メールでのお問い合わせではなく、最初からご依頼くださる強いを持って訪ねてくださったのでした。
うれしいことです。

ガラスを入れた框扉の様子
框扉の様子。今回はツマミなどはつけないで、手をかけて開けるデザインに揃えています。框の幅はスライド蝶番がつけられる最小寸法で幅50ミリで作っています。
食器戸棚の様子
框扉の中の様子。ガラス越しに中が見える場合は内部も突板で作りまして、同じくオイルを塗って仕上げるのですが、暑い季節になるとちょっとオイルの匂いが残ってしまうことがあるので、なるべく扉を開けて通気して頂くようにしてお使いいただいております。

Sさんのリビングには、今まで少しずつ集め使い続けてきた美しく慣れ親しんだ器が多くありまして、それを2台のカップボードに納めていたのでしたが、それをリビングから見た時にまとまった印象になるような飾り棚にしたいというご相談だったのです。
「ただ、作りたい場所には縦長の細長い窓があるのです。」
「それをただ塞ぐのではなくて、うまく見せられるようにしたいのです。」
と言って、ご自宅の写真を見せてくださいました。
なるほど・・、開けるためではなく採光のための細長いFIX窓が天井付近から床までのリビングのちょうど真ん中あたりに2枚あったのでした。
この窓はどのような意図があってここにつけられたのかしら。
採光という目的はかなえられているのかもしれませんが、どちらかというと不便に感じる窓になってしまっているように思えます。
窓の位置も左右対称ではないですし、たしかにここに窓があると、家具を置いても少しまとまりがなく見えてしまうかもしれない。
うまく見せられるようにですね・・、考えてみますね。

引き出しの様子
一番下の引き出し。

窓がある場所に作る家具ということで、過去に食器吊戸棚でそのような形を実現した所沢のFさんのお話をさせて頂きました。
かぜがふわりと」の所沢のFさんです。
あの時は、窓を塞いでしまうと何かあった時に窓のメンテナンスができないのはよくないということがきっかけで、あの明るい素敵な形が実現したのでした。
「なるほど、こういう形もあるのですね。」と興味を持ってくださったFさん。
それなら、メインのガラスの器たちがここに置かれるようにして、光がうまく伝わるような形にしていきたい、というお話になりまして、背面から光が入るだけではなく、もちろん正面もガラスを組み込んだ扉にして、さらには天板もガラスを落とし込むことにしたのでした。
素敵な形になりそうです。
それとともに、天板とFIX窓の間に隙間が開くとおさまりが良くないので、それもサッシの形状に合わせて天板を差し込む形にしましょう、と形はどんどん複雑になっていくのでした。

ブラックウォールナットのリビングボード
うまく光が入り込んでいます。

それでも、Sさん、穏やかに「御社にお願いできて、良い家具を作っていただける予感がしております。楽しみにしています。」とおっしゃってくださっているのですから、ぜひともきれいな形を実現させないといけません。

そうして現地確認に伺わせて頂きました。
このFIX窓は北側に位置するのでしたが、それなりに日差しは入ってきます。
そうなる時になるのが窓から家具まで少し空間があるのにそれを家具で覆ってしまうことによる熱の影響です。
特に天板は無垢で作りますので、サッシ部分に差し込むように見せて作る部分は温度や湿度の影響を大きく受けそうですので、うまく納まるのかどうか。そのあたりを確認させて頂き、いよいよ制作開始です。

ガラス天板部分の様子
中央部分の天板の様子。天板からの光が入るようにということで、ここもガラス。割れてしまうと怖いので、強化ガラスにしています。また、その奥のサッシの凸凹に合わせて加工をして天板を差し込んでいる様子もお判りいただけますでしょうか。

今回の制作は、ワタナベ君。実は、ワタナベ君はSさんのお住まいからほど近い場所で暮らしていることが分かり、これなら何かあってもすぐに駆け付けられますね。(笑)
今回の難しい部分として、サッシに合わせて凸凹とカットする天板のほかに窓を塞ぐ形になる背板のガラス取り付け部分の作り込みがありました。
熱の影響を受けてガラスに何かがあった時に簡単に交換できるような工夫をしつつも家具としてしっかりした強度を保てるな形にしないといけません。
悩みながらもきれいに形がまとまりました。

ガラスの飾り棚の様子
框扉と内部のガラス棚の様子。

そして、いよいよ納品。
ちょうど秋の台風などが行きかう時期で、当日も本州を台風が通り抜けると思われる微妙なお天気。本体部分は3分割しているので、雨降りな日でも問題なく運べそうなのですが、天板だけは長さ2600ミリ近くの1枚で作っていることと、サッシ部分に合わせた切削作業が雨だとなかなかやりづらいこともあって、当日の朝まで様子を見させてもらって、どうにか行けそうという判断で、予定通りに作業を始めさせていただきました。
そうして、無事に取付が完了して物静かな表情のリビングができあがったのでした。
ありがとうございました。

ガラスの飾り棚の様子
一番光をきれいに拡散してくれるガラスの器やグラスがきれいに入ります。

「素晴らしい家具を作っていただき、心から感謝しております。色合いも気品があって最高です。
また、設置作業にあたった三人の皆様も長時間にわたり真剣に作業していただき、厚く御礼を申し上げます。
今日は一日かけて、食器を入れておりました。真ん中のガラス張りの棚は、狙い通り光に溢れていて、ガラスの食器が綺麗に見えて、とても満足しています。
ちょっと欲張りに並べすぎているので、少し並べる食器を間引きしなきゃいけませんね。
これはおいおい楽しみながら整理していきます。
今回は本当にありがとうございました。」

ガラスを多用した飾り棚
一番左も右と同じような構成で作っています。

ブラックウォールナットのリビングカップボード

価格:970,000円(制作費・塗装費)

 

*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は15,000円から、取付施工費は60,000円から)

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