私がある場所

「タモのアイランドタイプの食器棚のオーダー」

横須賀 T様

design:Tさん
planning:daisuke imai
producer:yasukazu kanai
painting:yasukazu kanai

タモのキッチンアイランドカウンター

どっしりした印象になりました。今回はタモ材を使ってオイル塗装で仕上げています。


タモのキッチンアイランドカウンター

キッチン側は、家電収納やお料理に使うものがしまわれています。

ご年配の女性からお電話を頂きました。
ちょっと声に年季が入っている感じがしたのでそう思ってしまったのですが、実際にお会いしてみるとそんなことはなくて、そう思わせたちょっとハスキーな感じの声の私よりも少し年上の女性でした。
お話を聞いているとむしろ私よりも若々しいくらいの快活な方で、ご両親が無くなって譲り受けた家を建て替えて、こじんまりした平屋を建てるのだというお話をしてくれたのです。
「あたしが一人で住む家ですので、小さな家なんです。2階があっても階段の上り下りがだんだん大変になってくるし、それほど物を持って暮らすわけでもないので、平屋にしてコンパクトに暮らしたいと思っているんです。」
いいなあ、平屋は憧れます。

タモのキッチンアイランドカウンター

一人分の機能がコンパクトにまとめられている様子は見ていて気持ち良いです。


タモのキッチンアイランドカウンター

ここは炊飯器を収納する部分。スライドテーブルにしています。床にあらかじめコンセントケーブルを出しておいてもらっているので、この奥にコンセントがつけられるようにしています。


タモのキッチンアイランドカウンター

引き出しにはハンドルをつけないで、手掛けにしています。


タモのキッチンアイランドカウンター

レンジを置くスペースもスライドテーブルにして引き出せるようにしています。


タモのキッチンアイランドカウンター

そのスライドテーブルの下は少し空間を設けておいて、オーブン用の天板が置けるようにしています。


タモのキッチンアイランドカウンター

ここだけ長いハンドルをつけて布巾かけにしています。布巾が木部になるべくこすらないように出っ張りが大きめのハンドルにしています。

父方の祖母の家も平屋でしたね。2階もあるにはあったのですが、下宿として学生さんに貸していて、何度か急な階段を上っていったことがありましたが、4畳半の小さな部屋がいくつか並んでいて、空いている部屋に入ると子供の時分にどこか怖かったことを思い出します。
怖いというと、アキコに言うと、「またその話ね。」と笑われるのですが。
カップのこわい顔
個々にも書いてあるのですが、祖母の家に遊びに行くのは緑だらけの庭で焼き芋をしたり、特製ハンバーグを作ってくれたりと楽しみだらけだったのですが、ひとつだけ怖いことがあったのです。
家に上がって手を洗ってまずは先に死んだ祖父にお線香をあげるのですが、その部屋にあるコップがね、怖いんです。
白いマグカップの1/3くらいにまつ毛の長い大きなキラキラした目(少女漫画の主人公ような目でしたね)に少し大きな唇(笑っていたかなあ)それだけが描かれたマグカップ。
その顔が目に入ると、それだけでオイオイメソメソと泣いておりました。
だって怖かったのです、その大きな目がとても。それを見て父や母がコップをクルっと後ろ向きにしてくれるのですが、いたずらでまた前に戻しちゃったりして、そうするとまた怖くて涙が出てくるのでした。
弟は全くそんなことなくて(なんで兄ちゃん泣いてんの。)って感じでしたが。

タモのキッチンアイランドカウンター

側面にもコンセントを設けました。

話がそれてしまいましたが、平屋は憧れます。
我が家も建てられる土地が広ければ、サザエさんのうちのように長い縁側がある家にしたかったなあ。
Tさんの新居は「敷地にポツンと建てる」っておっしゃっていたから、庭が気持ち良いのだろうなあ、なんて一人思い描いたりしておりました。
その新居に食器棚になるカウンターがほしい、というのがTさんのご要望です。
キッチンは壁に向かって据え付けられるという間取りになるそうで、そうなると、お料理する作業台がほしくて、さらには「あたしはもう一人だから、チャチャッとご飯を食べたいの。」とおっしゃっていたように、簡易的なテーブルがほしいと言うことでした。
そこで、いろいろとお話をさせて頂いて、ひとつの形が決まりました。

いつもでしたら、このあとに現地にお伺いして、きちんと納まるかどうかなど確認させて頂くのですが、今回は平屋でしたので搬入も特に問題がなく、設置場所も壁が関わる部分ではないので事前に採寸が必要、ということもなかったので、Tさんと工務店さんでご判断頂いて、事前にお伺いすることなく製作に取り掛かったのでした。
こうして、写真で見るとかなりの大きさなのですが、実際には運びやすいようにいくつかのキャビネットに分かれて製作していますので、普通に玄関から運び入れることができまして、この場所でひとつに組み合わせていくことで、大きな地震でも動かないようなどっしりとしたアイランドタイプの食器棚にすることができたのでした。

タモのキッチンアイランドカウンター

こちら側は食器棚として使っています。


タモのキッチンアイランドカウンター

引き出しの様子。


タモのキッチンアイランドカウンター

引き出しの様子。


タモのキッチンアイランドカウンター

引き出しの様子。

後日、使いっている様子を拝見させて頂くためにご新居にお邪魔させて頂きました。
「こんばんは。」
Tさんのお仕事の時間に合わせて、お忙しいかもしれないのに夜にお邪魔させて頂いたのでした。

スゥっと玄関の引き戸が開くと清々しい針葉樹の香りが風に運ばれてきます。枠に床に柱にといろいろな木が使われていて、真壁の作りですので、さらに木々の表情が豊かに目に入ってきます。
「気持ちの良い場所にしたかったの。どうぞお入りください。」
と、ご案内いただくと、玄関から一直線にキッチンがあって、カウンターがどんと置かれている間取りです。
玄関からは空間を隔てる建具もないし、何もない。
大きな一つの空間です。
だから向かいのリビングからの風が玄関を開けた時にふわっと漂ってきたのですね。
「そうなの、この空間はとても心地よいけれど、何だか丸見えなようで、だからこのアイランドカウンターがあると落ち着くのね。」
「すっかり心地よく使っているのよ。」
と言って、使い勝手をいろいろとお話してくださいました。
家具の使い心地と一緒に、生成りのレースカーテンの様子や置き畳の使い方や、ちょっと特徴のあるクローゼットの様子などもお話してくださって、とても心地よく暮らしている様子を教えてくださいました。
うれしいです、こうして楽しそうにお話してくださる様子を見ていると。

タモのキッチンアイランドカウンター

跳ね上げ式のテーブルです。


タモのキッチンアイランドカウンター

テーブルを出した時の様子。アイランドカウンターとワークトップは高さ850ミリで、テーブルは700ミリの高さになるようにしています。


タモのキッチンアイランドカウンター

跳ね上げ天板用の金物。最近はとても使いやすいものができていて、女性でも上げ下げしやすく、さらにはソフトダウンするので、手を挟むことがないような作りになっています。

「わたしはね、ずっとここに居られるの。ご飯を作ったり、ご飯を食べたりする以外にも、この天板がとても広いからいろいろな仕事をしやすいのよ。うれしいわ。」
ありがとうございます、Tさん。

タモのアイランドタイプの食器棚

価格:690,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は25,000円から、取付施工費は30,000円から)

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