ぬくぬく

「アクセントカラーのある本棚のオーダー」

鎌倉 K様

design:Kさん/ヤマトヒロミ設計室/daisuke imai
planning:ヤマトヒロミ設計室/daisuke imai
producer:kenta watanabe
painting:kenta watanabe

和室を改装してご主人の書斎にするというお話を頂いたのです。
設計は、前回同じく鎌倉でキッチン周りの改装の際にお世話になったヤマトヒロミさん。
書斎にする中で本棚を印象深いものにしたいということで、私たちにご相談をくださったのでした。
キッチンの制作がメインになってきている工房では本棚の制作は久しぶりですね。
ただ、本棚というと形がシンプルですから表現できることも限られます。
オーダーで作ることで何が実現できるだろう。

チェリー材とアクセントクロスを使った本棚

メインの本棚の様子。今回はこの壁面いっぱいの本棚と対面に腰高の本棚の2台を作らせて頂きました。こちらの背面は黒に近くて麻のようなゴワッとした質感のクロス。とても印象が良いのです。

お客様であるKさんはヤマトさんの事務所にもお伺いしてヤマトさんの寝室とリビングを隔てるためのラワンでできたシンプルな形の飾り棚兼テレビボードの形をたいへん気に入っていて、「あのような形がここに在ってもステキよね。」と奥様がおっしゃっていたのですが、もう少し温かみのある印象を、とヤマトさんは考えていらっしゃって。

チェリー材とアクセントクロスを使った本棚

背面のクロスに合わせてエアコンの色も同じ色調にしています。なるほど、そういう選択肢もあるのですね。

今回この空間を考えるにあたって、最も多く中身の濃い意見を交わしたのはKさんのお嬢様とだったのだそうです。ご主人と奥様の考えはシンプルな形でも良いかなというイメージだったのだそうですが、海外生活の経験もあったお嬢さんはその暮らしの印象がとても心地よかったものですので、全体的に温かみがあって素材の感じがよく分かるようなその時の印象を現れるような形にまとめたいと思っていて、それをヤマトさんと頭を突き合わせて悩んでいたのだそうです。

チェリー材とアクセントクロスを使った本棚

本棚のひとマスが正方形に近い印象になるように割り付けたヤマトさんのデザイン。小さな本が多い時は、このように上下を等分できる位置に可動棚を入れて、収納量を増やして、不要な時は棚板を外して飾り棚として正方形の印象が良く見えるように考えています。

その中で出た意見として、本棚の背面だけを素材を変えてしまうというお話がありました。
うん、それはすてきです。
私たちのところでも何度かそのような形で作らせて頂いたことがありましたが、どの本棚もとても素敵な印象になりましたので。
背板だけを単色の色を取り入れてみたり、気に入ったリネンを張りこんでみたり。
本棚って正面から見るとシンプルな形ならフレームは細くなることが多いので、代わりに背面の印象がそれなりに強く出ます。
本がぎっしり入ってもコントラストの強い色を背面に持ってくると全体的に引き締まって見えますし。
ということで、背面にはチェリーの印象よりも少し際立って見える色を2台の本棚それぞれに取り入れることにしたのです。

チェリー材とアクセントクロスを使った本棚

ちょっと悩んだのがこのエアコンの下のふたマス分続いている長めの固定棚。細かい納まりなのですが、デザイン的にこのお本棚は縦の板よりも横の板を少し引っ込めている形で統一しているのです。ですが、この長めの横の板は縦の板と途中でつながるので、ほかの横の板と同じく引っ込めてしまうと、縦の板の上端が上からのぞくとちょっと出っ張って見えちゃう。ということで、この長めの固定棚だけは縦の板と同じ出にしているのです。分かりづらいですね。

あとは、本棚のひとつずつのスペースの印象をどうするか。
しまう本に合わせて、棚の高さををりつけてゆけば、機能的にもしっかりと大量の本をしまうことができます。
たあ、しまえる量は増えても、本がそこにぎっしり入っている様子や本自体の背表紙の彩りが、全体を見渡した時の印象としてかえってにぎやかに見えてしまうことが多かったりします。
ある程度背面がきちんと見える余白を残しながらしまえる形が良いと思い、ヤマトさんとそのバランスを考えます。

チェリー材とアクセントクロスを使った本棚

このような感じで、横の板が縦の板よりも10ミリ引っ込んでいます。また、写真だと分かりづらいのですが、横の板だけを印象が和ら無くなるように小口部分を45度に面取りしています。縦の板はカチッとした印象、横の板は装飾のある優しい印象、というのがヤマトさんのイメージ。

ご主人としては収納量が大事ですが、それだけを優先するのなら市販の本棚でも対応できるかもしれません。
オーダーで作るのなら、その空間にこの本棚がある意味やここにしまわれる本が居心地よく見えるように工夫したい、そうヤマトさんと話しておりました。
そこである程度規則正しい四角いスペースを連続させて、部分的に可動棚を使ってさらに細かくしまえる(文庫本など)工夫をしておけば、使いやすさと美しさが両立できるだろうということで、そのイメージを大切に割り付けを考えていきました。

チェリー材とアクセントクロスを使った本棚

こちらは腰高の本棚。一番上の天板だけが両横の壁から飛び出るようなデザインになっています。背面はこちらは明るめのグレーで引っ込んだ壁にチェリーのフレームだけがそっと出てきているような印象です。

また、搬入のことを考えると、どうしても箱状に組み立てて運び込むことができず、ある程度ばらした状態で持ってくることになります。
そうなるとここで組み立てるので組み立てやすいように板が二重に見えるように作りたいと思うのですが、ヤマトさんとしてはそのような形にしてしまうとお嬢さんと二人で考えてきたイメージが薄らいでしまうので、なるべく板は重ねたくないのでした。
なるほど・・。それから、現場で組みやすいような構造を考えないと。こうして悩みどころが増えていくのです。シンプルにしようとすればするほど難しくなるのでした。
ちなみに重ねるように作った形だと、「gridding」のHさんの本棚はシンプルに板を重ねる形で作っています。
こちらの形ももちろんきれいですが、細いフレームのみが連続しているように見せたい、ということで今回は重ねない作りで。

チェリー材とアクセントクロスを使った本棚

ちょうどデスクに座った時に天板の上が良く見えるようなデザイン。また、天板、縦の板、横の板と徐々に引っ込んでいくリズミカルなデザイン。

どうなるかというと、縦の板は床から天井まで1枚になっているのですが、横の板は端から端までの長い板ではなくて、側板と側板の間に入る棚板だけのような形になります。こうすると、二重にしないでも現地で組み立てやすくできるのですが、その組み立てるまでが作りがシンプルすぎるのでかえって大変。
なにしろ箱のように見せないで、側板と棚板が連続しているだけのように見せる本棚で、背板もないのでグラグラなのです。さらには背板が無いから背面の壁には固定ができないのでどうやってガッチリ固定するか・・。
このあたりは制作を担当したワタナベ君と頭を悩ませながら考えていきました。
現場との段取りもたいへんです。背面壁の仕上げは濃い色のクロスにしたので、この部分だけ先にクロス屋さんに入ってもらって、あとは本棚を入れてからまわりのクロスを仕上げてもらう。リフォームだから新築のようにあらかじめ決めておいた寸法通りに運ばないこともあったりするので、(解体してから分かる部分もあるので。)解体後に現場を確認して寸法を調整してから仕上げの組み立てを行なったりしながらどうにかスケジュールに間に合うように作ることができました。

制作が終わったら今度は取付工事です。
やはり築年数が経つお宅なので壁がそれなりに曲がっておりまして、その壁をフラットに修正するところまで行なっていると大工さんの手間が大変、ということで、一度現れた壁をそのままきれいにボードを張った形で仕上げたのです。ボードは壁なりに歪みを拾って張られるわけですから、壁の歪みで家具が背面にピタッとつかないわけです。
それで、一度組んで壁に押し当てては、こっちの当たる部分を削って、あらためて押し当てては今度あっちのあたる部分を削って、とその調整するだけで大変なのでした。
大きさもあるし、組んだ状態だとグラつくので、一人で動かすことができないため、3人でよいしょと持ち上げては当てて、下ろして削って、また持ち上げる作業を繰り返して、どうにか精度良く据え付けることができたのです。
こうして納まってみると、シンプルで難しくなさそうに見える形なのですが、完成までにこれほどの苦労があったのでした。

チェリー材とアクセントクロスを使った本棚

実はこの棚板も固定棚ではなく可動棚。可動棚と言っても高さが変えられるわけではなくて、取り外せるだけの棚ですが。なぜそうするかというと固定棚よりも可動棚のほうが作りやすい(=コストを抑えられる)からなのです。固定棚のほうが簡単に作れるというふうに思われることが多いのですが、固定するほうが木ダボやビスケットジョイントの位置を決めて加工して、接着している間は圧締して、と作業量が多いのです。それよりは同じ型板を使って、可動棚のダボ穴を開けて、その載る棚のダボの位置をしゃくって、という作業のほうが単一作業でできるので加工の手間を抑えられるのです。

ともあれ、工事は無事きれいに完了して無事ご主人の書斎として使って頂ける状態になりました。
たしかヤマトさんとの打ち合わせの中で出たイメージがフィンユール邸の本棚でした。
この部屋に入った時の印象は、そのイメージが垣間見えるような形になっていてとてもうれしかったのです。
部屋の中央にはhalutaさんのところで購入したというデンマークから届いたチークのデスク。
この書斎からバルコニー沿いにぐるりと部屋を周るとラウンジのような空間につながるのですが、その途中にあるミニキッチン(残念ながらコストが厳しくて私たちのキッチンではなく、チェリーの棚板だけを作らせて頂いたのです)がありまして、そこのステンレスとチェリーとからし色のタイルをアルテックのシエナ柄に配した様子がとても美しく温かいのでした。

少し前に「ヒュッゲ(Hygge)」という言葉がよく聞かれましたね。
書斎からキッチンを通り過ぎてラウンジへ向かうひとつながりのこの場所は、まさしくそれでした。

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