Scandinavian

「ブナ材を使った食器棚と本棚と一体になったテレビボードのオーダー」

生田 T様

design:Tさん
planning:daisuke imai
producer:tsuyoshi kawaguchi
painting:tsuyoshi kawaguchi/haraki tosou

ブナの家電収納と食器収納

食器棚の全体の印象。今回この食器棚とシステムテムキッチンとの距離は1メートルくらいはあるのでゆったりとしています。が、Tさんにあとで聞いたのですが、やはり調理と言うのは、動く距離が短いほど作業がしやすく、シンクで作業をしていて、振り返ると食器棚の天板があるくらい天板が近いと便利だなあと思ったそうです。ただ、実際にその距離にすると、キッチンと食器棚が近すぎて、普段使いにくくなっちゃう。だから、天板のすぐ下に作業台となるスライドテーブルがあると良いかな、イマイさん、今後の参考にしてね、と。なるほど勉強になりました。

ブナを白く塗装したテレビボードと本棚

テレビボードと本棚の印象。食器棚とは表情が変わって、明るく白いリビング。同じブナ材でも塗装の表現でこれだけ見え方が変わります。

「はじめまして。現在間取りをほぼFIXしたTと申します。
御社のHPを拝見して一目ぼれしました。ステキです。
お値段の幅がどの程度かまったくわからないので質問させてください。
I型キッチンの後ろにおくキッチンカウンター(もしくはキッチンカウンターと上棚)を作成いただいた場合、大体の見積はおいくらぐらいになりますでしょうか?
1)無垢の素材 もしくは、2)無垢の木のような風合いの板の両方お願いします。
また、納期もおしえてください。
カウンター:幅1800mmx高さ850mmx450mm
上棚:幅1800mmx高さ500-700mmx450mm
3月末に物件完成予定です。
以上、よろしくお願いいたします。」
2009年の11月にこのようなメールを頂きました。「ステキです。」と言うのはストレートで良いね、なんて思いながら、まずはプランについてどうしようかと思案しました。私のほうで基準となる形を考えた方が良いか、それとももっと具体的なご希望をお聞きしようか・・・。そのことをメールで伝えました。
「フリーハンドイマイ イマイダイスケ様
早速の返信ありがとうございます。まだまだ明確なイメージや仕様がないのですが、御社サイトの以下の上棚と窓のイメージが好きです。(葉山のY様
このような風合いや色が理想ですが、実は私たちの家は建築条件付で決められた設備が入るため、キッチンはI型のINAXのOVAかイストがはいるため、それと合う背面のカウンターということで、その辺のバランスがうまくまとまるのかどうか不安な気持ちもあります。
それで現在、発注の関係からINAXのキッチンカウンターを勧められて、早急に工務店より急かされているのです。手前ごとですみません。
なので、本当にザックリで良いので、例えば上棚とカウンター(全て引き出し)ではおいくらぐらいとか教えて頂けないでしょうか?
比較して検討したいので。
もちろん手作りの家具とメーカーのカウンターでは価値は全く違うでしょうから比べるのは失礼かと思うのですが、私共で手が届く範囲なのかどうか・・ということで教えてください。
ちなみに現在検討中のキッチン設備は以下です。色は下の神奈川県川崎市中原区K様邸のようなダークブラウンにしようかと思っていたのですが、イマイさんのサイト(上記)のような背面カウンタと上棚のような色にしてキッチン設備(INAX)の背面(リビング側)を白にするとか、キッチン設備自体を白にするかも検討しはじめました。トップはステンレスです。ちなみに床は床暖房対応の床ムク材を希望しており、工務店が扱えるものがどれになるかサンプル取り寄せ中でまだ決定していません。
いずれも色の薄い木の色となると思います。
分かり難い説明で長々とすみません。よろしくお願いします。。」
そのようなお返事を頂いたので、まずはもっともシンプルな引き出しだけのバックカウンターと吊戸棚を提案させて頂き、それと合わせてキッチンのカラーセレクトの考え方やリビングの他の家具との関係について少しばかりアドバイスさせて頂きました。
そのアドバイスをとても良く受け止めてくださったTさんは、家具を見てみたいということで、急きょショールームまで来て下さったのです。
と、いらっしゃってくださったのですが、その時はもう夕方でご家族皆さんでいらっしゃったので、あまり長い時間は取れず、結局お話できたのは、床材とキッチンの仕上げ材の関係についてで、家具のお話までは進みませんでした。まあ、時間はあるからゆっくりと良い方向に家作りが進めばよいのです。
「イマイさん
本日はお父様の大切な会なのに突然にお邪魔して大変ご迷惑をおかけしました。
やんちゃな息子たちにいやな顔もせず迎えてくださり、ありがとうございました。
イマイ社長、お母様にもどうぞよろしくお伝えください。
カウンターと棚につきましては、床からのとりとめのないところからの相談にものってくださりありがとうございます。
今井さんと話すことで自分の好きなイメージがちょっと見えてきました。
またご相談させてください。
取り急ぎ、お礼まで。」
そのあとも、数回メールのやり取りをさせて頂いて、ようやく床やキッチンについてはどんな表情にするかが決まってきたようでした。そして急に連絡が来なくなって・・。
と、思っていたら1ヵ月後に。
「イマイダイスケ様
ごぶさたしております。10月頃、床の選択でアドバイスを頂いたTです。
そろそろ内装のイメージが固まってきまして、床も1階がシルキーメープル、2階がパインでほぼ確定となりました。
無塗装で自分たちですべてリボスオイルを塗る意気込みです。
その節は暖かいアドバイスを本当にありがとうございました。
それで、3月末完成予定なので、家具を依頼するにはまだ余裕があるのですがまたアドバイスをいただきたく・・
キッチンの背面の上の棚とカウンター、家電収納、をイマイさんでお願いしたいと思っていますが、今冷蔵庫の位置を決めなくてはならず迷っています。
ちょっと古い図面なのですが添付します。これを元にご説明すると、キッチン背面を奥から、1)-3)で迷っています・・・。」とここからがとても長いやり取りの始まりです。
良く言わせて頂くと、Tさんは私の意見に全幅の信頼を寄せて下さっていて、ここからキッチンとリビングのコーディネートについてさまざまな意見の交換が始まったのです。私としてはうれしいことですが、家具のお話だけではないので責任を感じて気が引き締まります。そして、とうとう一つの方向が決まったのです。そのメールを送った数は、30通を越えて、現地にも数度通って、一つの形が決まったのです。

ブナの家具のスケッチ

Tさんが描いてくださった食器棚のスケッチ。

ブナの家具のスケッチ

こちらは、リビングに設置したテレビボードと本棚のスケッチ。

ブナの家具のスケッチ

その本棚はこのように変形していますよ、の図。

ブナの家電収納と食器収納

吊戸棚はこんな感じ。今回は吊戸棚の扉を最上段とその下の段とで分けています。これは、使い勝手を考えてと言うよりは、キッチンが狭くなりがちなので、すっきり見せたくて、冷蔵庫の上の戸棚の扉の高さがそのまま、一番右の家電収納まで通っている印象にしたのです。

ブナの家電収納と食器収納

勝手口だけではなく、窓があるおかげでこのキッチンはかなり明るい。ブナの色が良く映えます。

ブナの家電収納と食器収納

その上に炊飯器とコーヒーメーカー。ここは蒸気が出るので、スライドテーブルです。

ブナの家電収納と食器収納

根菜収納引き出しのルーバーの様子。コストダウンできるようになるべくシンプルな形状のルーバーにしました。

ブナの家電収納と食器収納

その引き出しを中はこのような感じです。左の一部だけ根菜収納にして、引き出しの前板をルーバーにして通気ができるようにして、さらに泥付きの根菜がゴロゴロしても掃除が楽なように引き出しの中はラッカークリアを吹いています。そして右側と区別して使用できるように真ん中に仕切りを立てています。

ブナの家電収納と食器収納

家電収納の一番下は、最近良く見かけるゴミ箱「クード」を収納しています。その場でペダルを踏んで使うのではなく、引き出してペダルを踏んで使うスタイルになっています。

Tさんの好きなイメージは、北欧のインテリアに見る温かな木の質感と布の使い方など。それを幾度となく打合せの間に言われてきました。(笑)
いろいろな本も見せて頂いて、シンプルな家具のなかに本やファブリックが彩りを添えるようなインテリア。たしかに家具はそれが主張するのではなく、そこに入るものや使われ方がその人の暮らしを表現するものと思っていますので、家具をそういう位置づけで作るのは大好きです。こちらのリビングの家具はそういった意味でTさんのコンセプトをよく表現できたのではないかと思っています。
リビングの広さも考えて、なるべく存在感をなくしたような色使いで、物が映えるようにと食器棚と同じブナ材ですが、こちらは白く仕上げています。また食器棚は掃除がしやすいようにとウレタン塗装で仕上げていますが、こちらは使い込んできた良さを見たい、と言うことでオイルのホワイトカラーで仕上げているのです。だから、陽が入って、みんなが触って、どう変わっていくかが楽しみなのです。
家具はここから育っていくのです。

ブナを白く塗装したテレビボードと本棚

私は当初テレビボードだと思って考えていたのですが、そうではなく、部屋のポイントになるような家具として、このボードを作りました。ですので、下面には間接照明。最近は使う機会が多くなったLEDです。

ブナを白く塗装したテレビボードと本棚

ここには、AV機器が入る予定。機器はここから壁内にケーブルを通してテレビにつながれると言う不思議な構造。そのようなわけで、リモコンが聞くようにルーバー扉にしています。

ブナを白く塗装したテレビボードと本棚

スイッチはこんな感じ。いつもは小物は時間のある時に私が探しに行くのですが、今回はバタバタとしている時間が多くて、今回製作を担当してもらった河口君に「良い具合のものを探してきてください。」とお願いしたところ、見つけてきたのがこのスイッチ。入り切りするたびにカチッとなるこの感触がたまらなく良い。

ブナの食器棚

価格:680,000円(制作費・塗装費)

ブナのテレビボードと本棚

価格:530,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は20,000円から、取付施工費は80,000円から)

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