取捨選択

2022.08.23

仕事の関係で自宅をずっと人に貸していて、このたび自宅に戻ることになったのできれいに直したいというKさんの依頼を建築設計の仕事をされているMさんからメールでご相談を頂きまして、築17年経つマンションでお仕事をさせて頂きました。

今回はオーダーキッチンを新たに作るというのではなく、今あるキッチンや洗面台の傷んだ部分をオーバーホールする形でリノベーションしましょうということで進んだ今回のお話。

文章で読むと、すべてを作り直すよりも今あるものを生かすほうが簡単に思えたりするのですが、実際は今あるものに合わせて、新しい形をはめ込んでいく作業は真っ白なパズルを組み立てていくかのように大変な部分があって、取り掛かってみないと分からないことも多かったりします。

内装を手掛けてくださったのはいつもの心強いkotiの伊藤さん。

今回は、伊藤さん、私たち、初対面の石屋さんの三者共同のリノベーション。

私たちの作業としては、キッチンは汚れた扉や引き出しの前板をオフホワイトの鏡面仕上げで再塗装して、ガスコンロからミーレのIHに交換して、グリルがあった部分は共材で塞いで、食洗機もリンナイの物からミーレに交換。

洗面室は扉の木口の接着剤が劣化して剥がれている部分を再接着。のつもりが軽く触るとどんどん剥がれてしまう部分が多かったので、急きょきれいに剥がして木口だけ再塗装。

もともとAEGの洗濯機が入っていたところには、今の自宅で使っているという少し大きめのドラム式の洗濯機をいれるということで、洗濯機の上に渡されていたコーリアンの天板をカットして、その隣のキャビネットを幅を狭くしたものを新設して、どうにか完了。

工房ですべて組み上げて完成の様子が分かるいつもの家具作りと違って、現場で試行錯誤しながら組み立てていくというのは、やはり大変な作業。

でも今まで傷んでいたものがきれいになって気持ちよく使えるのは、とても気分のよいこと。長く使ってゆけるものを長く使えるように整えてあげられるというのはとても良いことで、反面、新しくすることで暮らしかたや気持ちの持ちようが大きく豊かに変わるのなら新しくすることも大事なこと。

その選択のバランスというか、選択肢が、以前の習慣のように何もかも新しくしましょうという考えだけではなく、こういう方法で長く使うことができるという筋道が見えることで、いろいろな暮らしかたを考えてゆけるのですから、大変な作業ではありますが、とても気持ちのよい仕事でもあるのです。