大磯の小道を抜けて
「ブラックチェリーとステンレスバイブレーションのペニンシュラキッチンとバックカウンター」
大磯 N様
design:Nさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:hideaki kawakami
painting:daisuke hirose
「新築の平家のプラン検討段階です。
工務店指定のシステムキッチンはリクシルさんですが、どうもイメージと異なるため、オーダーキッチンを手がけているお店を探している最中です。
2500サイズのペニンシュラのような形のキッチンで、背面に同サイズくらいのカップボードをつくりたいと思っています。」
と、オーダーキッチンのカタログご応募の感想を書いて送ってくださったNさん。
その後、カタログをお送りしましたあとにあらためてご連絡を頂いたのでした。
「お世話になります。カタログのご送付ありがとうございました。
カタログやウェブサイトを拝見しまして、やはりすてきなキッチンばかりで夢が膨らみました。
できれば、訪問してご相談させて頂きたいのですが、直近の土日あたりで、お時間いただくことは可能でしょうか。(ショールームも見させていただけたら幸いです)
一番理想の形で簡単に絵を描きましたので、添付いたします。
予算の兼ね合いもございますので、全て思い通りという訳にはいかない気がしていますがコスト感、実現可能な範囲に、イメージを持って最終的にはどんな形がよいか考えたいと思っています。
工務店さんにはオーダーキッチンの導入はOKと言われていますが、大手さん以外の場合、アフターサービスの観点から、簡単にお勧めできないとご忠告頂いております。
私自身キッチンの買い物なんて初めてですから、アフターサービスや、何かあった場合の緊急の対応についても、確認すべきだなぁと思いました。
お打ち合わせ時に、そのあたりもご説明いただけますと幸いです。
新築戸建てで、着工は11月→竣工3月頃の予定ですが、確認申請が7月中と間取り決定の期日が迫っております。時間に余裕があると思い、確認不足でした・・・。
手前勝手で大変恐れ入りますが、早めにお打ち合わせが可能であれば、大変ありがたいです。
以上、よろしくお願い致します。」
ありがとうございます。
たしかに大手キッチンメーカーさんと違ってオーダーキッチンとなると各メーカーさんのそれぞれの考え方もあったりしますので、不安になる部分はあると思います。
金額的にもNさんおっしゃるようにメーカーさんのものよりもコストがかかってしまうことが多いですので。
そこで、Nさんがいらしてくださった時に、キッチン自体の打ち合わせのほかに私たちが行なえる部分、工務店さんにご協力いただく部分などをひと通り説明させて頂きました。
この工房はもともと父がオーダー家具を制作する工房として立ち上げましてかれこれ37年になります。オーダーキッチンは初めて作らせて頂いてから18年になります。
それなりの経験は積み重ねてきてキッチンメーカーと言って頂ける体制作りはしてきましたが、やはり考え方としては家具を作る工房です。
家具を作ること以外はできない部分があるのです。
例えば、水道管やガス管、電気配線を扱ったりする部分は、やはり専門業者さんにお願いしないといけないので、そのあたりはいつも工務店さんにご協力を頂いております。
多くのキッチンメーカーさんもこのような大勢だと思うのですが、中には、キッチンセットを丸々施工してしまうメーカーさんもあるようで、そうなると私たちではなかなかそこまでの対応ができないのが実情です。
そのあたりをNさんや工務店さんにお伝えしまして、無事にゴーサインを頂くことができたのでした。
大磯や二宮といった通称「西湘」のエリアは最近とても若いエネルギーにあふれているように感じます。
コロナ禍でリモートワークが推奨されて、住みやすい街に移動される方々が増えてきていることもあってか、湘南地域全体が活気づいているといわれているのですが、その中でも西の地域はゆったりした空気が流れているように思えて、心地よいと感じることが多いのです。
Nさんもその空気を感じられてか、この大磯にご新居を建てることになったのでした。
「こんにちは、はじめまして。」
とショールームにいらしてくださったお二人は、どことなくテレビでご活躍されている方のように見えて(マスクをしているのでよりそのように見えたのでした)とても都会的なお二人に見えました。まだこの時はお二人ということで、このようにスッとしたお二人が大磯に住まわれると聞いた時になんとなく不思議に感じでしまったのでした。(すみません・・。)
そして、いろいろとお話を聞かせて頂くと、古道具屋さんで手に入れたとても古い建具をキッチンの背面に入れるそうで、それが引き立つキッチンにしたいのです、ということで、てっきりきれいに整ったものを好まれるのかな、なんて思っていたので、印象だけで考えてはいけないのだなあとあらためて教えられた気持ちです。
きちんと時間を経て生まれた表情が好き、ということで、そのような考えのお二人に選んで頂けたのはとてもうれしかったのです。
キッチンはペニンシュラタイプのキッチンで形自体はシンプルで、背面もカップボードも複雑な形にはせずに使い勝手重視でシンプルな形にしたので、ほどなくしてプランはまとまりどうにか工期に間に合わせることができそうです。 そうしていよいよご新居の建築が始まります。 施工会社は地元大磯の湘栄建設さん。 国道1号線を小田原に向かうときによく目にしていた工務店さんでどのような家を建てられるのかなと気になっていたのでした。 今回こうしてお邪魔させて頂くことができて、楽しみでありながらもドキドキと緊張していたのでした。 また、建設地の大磯のこのあたりは昔の住宅街のままの道が狭い地域で、数年前にすぐ近くでやはりキッチンを作らせて頂いた「、姉妹で作る家」のKさんの時に駐車が不便だったことを思い出して、ちょうどこれからキッチンの配管を立ち上げるというタイミングで電車で現場確認にお伺いしました。
実は大磯は今まで電車で降りたことがなく、このあたりの仕事の時は駐車の不便を感じながらも車でばかり出かけておりました。
たいへん味わいのある大磯駅を降りると、ツーバイフォー住宅としては最も古いといわれている大磯迎賓館という名前のレストランがあり、そこから西に向かって歩いていく道がまたすてきで、町並み保全の意識がきちんと行き届いているからか、そこかしこに古い石やらタイルや板屋根の蔵や家が残っていて、さらに現場に向かうためには人がどうにかすれ違えるくらいの落葉で敷き詰められ、隣に小川が流れる小道を通り抜けて、と大変心地よい時間を持つことができる町並みだったのでした。
これは良いやと一人ほくそ笑みながら現場に向かいます。
「はじめまして、フリーハンドイマイと申します。」
ご年配の設計士さん、同じ年くらいの快活な大工さん、そして、うれしそうな奥様といつものようにスタイリッシュなご主人。
設計士さんも大工さんも私たちの施工しやすいように段取りして頂けて、このように見ず知らずの家具屋に暖かな対応をしてくださいまして、たいへんありがたいのでした。まずはこの日は配管位置を確認しまして、あとは今回はキッチンはフロアタイル、ほかの部分はフローリングと、汚れても掃除がしやすいように床材を切り替えるので、その切り替え位置をどのあたりにするかについて大工さんとおさまりを確認します。
現場はまだ柱の状態なので、ボードが張られて間仕切り壁ももう少しできあがってきたタイミングであらためてすてきな小道を通って現場を確認させて頂きまして、これでようやく制作に取り掛かれます。
ちょうどこの時期のお客様は、食洗機を入れるにもミーレやボッシュが手に入りにくい時期で、ASKOだけがきちんと流通していてさらにオートオープンも備え始めて使いやすくなったので、この頃の皆さんはみんなASKOを導入しています。
それ以外は材料の流通が滞ることなどはなく、問題なく制作は進んでいきます。
今回のキッチンやカップボードに使用した樹種はブラックチェリー。設置工事時から写真を撮らせて頂いた時期までそれほど時間が開いていたわけではないのですが、やはり日焼けの早い木ですので、かなり良い色になっていました。
また、最近使う突板は、なるべく端の表情まで見せたいと思っていて、可能な範囲で幅の広い単板を使うようにしています。このあたりは個人的な好みになるのですが、私としては少し白太が入るくらいの表情が好きなので、今回もそのようにして突板を作ってもらいました。
こうして制作も完了し、設置工事も無事に終わりました。
「イマイ様。
お世話になっております。Nです。
先日、完成検査時にキッチンを拝見しました。
とても仕上がりが良く、感動しました。また、キッチンのおかげであのLDKの雰囲気が増し、大変気に入りました。
ありがとうございます。」
と、ご連絡を頂けまして、これで無事に完了しました。
後日、再びご挨拶に伺わせて頂きました。
お引き渡しからまだ3ヶ月ほどしか経っていないのにやはりチェリーは日焼けが早く、当初の導管が際立ったシャープな印象が薄れて、柔らかい赤褐色になり始めておりました。
写真を撮らせて頂いた時に入り込んできた柔らかい光はこの町独特優しい印象に思えて、このゆったりとした空気が流れる大磯の町で新しい暮らしが始まっているのだなあと思わせてくれる時間だったのです。
ありがとうございました。
天板 | ステンレスバイブレーション |
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前板・扉 | ブラックチェリー板目突板 |
本体外側 | ブラックチェリー板目突板 |
本体内側 | ポリエステル化粧板 |
塗装 | オイル塗装仕上げ |
ブラックチェリーとステンレスバイブレーションのペニンシュラキッチン
価格:960,000円(制作費のみ、塗装費、設備機器費用は別)
ブラックチェリーのバックカウンター(食器棚)
価格:490,000円(制作費のみ、塗装費、設備機器費用は別)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は40,000円から、取付施工費は150,000円から)