夏のショートトリップ

2023.08.16

なにしろ、ちびっ子たちとは時間が合わなくなってくるのです。

私たちにとってはちびっ子でも彼女たちはもう大学1年と中学3年で自分たちの時間のほうが重要ですから、この夏家族みんなで時間が揃えられるのはこの日だけでして、アイは相変わらず朝夕ご飯を食べさせてくれと帰ってくるので(最近はほぼ外で暮らしています)、その時間内でさぁどこかに行こうかと考えて。

私は「詩」のことはほとんど分からなくて、いつどなたの詩を読んでも耳のまわりをそよぐ風のように感じることしかできないので、もっと豊かな心持ちでいられたらと読むたびに思ってしまうのですが、ヒアシンスハウスだけはいつか見に行ってみたいと思っていて、ではこのタイミングに見に行こうと思い立ったのでした。

その足で見たいと思っていた杉浦非水の展覧会が川越市立美術館で見られるのを知りましたので、埼玉周遊に。

私は版画を見るのが好きで、時間さえあれば町田の版画美術館に出かけるのですが、版画というのは、性質上その時代の流行や風俗や文化が描かれていて、ユーモラスに感じられるものが多くて、楽しく見ていられるのが好きなのです。

非水という人物の作品も大正、昭和の時代がよく分かる作品で見ていて、クスッとしてしまう題材があったりして楽しい時間でした。興味深かったのは作風がガラッと変わる部分。図案家という仕事柄なのでしょうけれど、見ていて今の私の家具作りの考え方と比べてしまいました。

私自身、好きな形はあるのですが、どちらかというとその形を作ることが大好きなのかというと特別そういうわけでもなかったりして、どちらかというとある条件が示されて、その中でできる良い形作りを探していくことのほうが好きだったりします。

ですので、「イマイさんらしい」という言葉が一番自分にとっては複雑で、何を求めて皆さんは私のところに来てくれるのだろうと、いつも自分自身の良さに自覚がないままこの仕事に取り組んでいるような気がしているのです。なんだかとても頼りない意思なのですが、この展覧会を見ていて、(大変失礼な思いかもしれませんが)そういう在り方でもやはり良いのかもしれないなんて思えたのでした。

私はいつか自分の時間が持てる小屋を建てたいと思っていて、このヒアシンスハウスのことを知った時に、「ああ、いいな。ああ、いいな。」と思っていたのです。

風がビュービュー吹き抜けて、雨はバチバチ窓をたたいて、鈴虫がリンリン足元で鳴いていたとしても、こういう気持ちの良い場所にいつか居たいなと思っていたのでした。

この日は残念ながら公開日ではなかったので、旗も出ていなくて、室内の心地よい様子も見ることはかなわなかったのですが、相変わらずこういう暮らしがしたいなという気持ちがあることを知ることができたのでした。