センの色み

2023.09.13

アキコがブログやインスタグラムのどこかで書いているかもしれないのですが、以前鎌倉の湖のそばで暮らすKさんから15年ぶりに今年になってお声掛け頂いたのです。

センの魅力」というタイトルで書いた制作例のテレビボードがKさんのことです。

メールを頂いてとても物静かなご主人のイメージだけが思い出されて、ふと懐かしくなりました。


今度は新しく藤沢のマンションに引っ越されるとのことで、先日の内覧会時に採寸にお伺いした時に、「イマイさんはそういえばあの時自転車で我が家に来られましたよね、懐かしい。」なんて挨拶してくださいました。

そういえば、当時33歳の私は自転車大好き無我夢中でして、打ち合わせや採寸にも自転車で出掛けていましたね。汗だくの男が来るわけですから来られた方はたまったものじゃない。

今じゃ滅多にできません。

そのKさんからは新居に合う食器棚のご依頼と、システムキッチンをその食器棚の表面材と揃えるというお仕事を頂いて、タケイシさんが一生懸命作っているところで、ちょうど引っ越しが行なわれるタイミングでもう一つお題を頂いてしまったのでした。

「イマイさん、実はいは引越し屋さんと相談していて、作って頂いたテレビボードが新居に入らなくって・・。」

いろいろとお話を伺うと、Kさんの新居は玄関からリビングにたどり着くまでに一度90度に曲がる部分があって、そこがどうにも入らない。

当時は戸建て住宅の1階でしたから、なるべくシンプルに作ろうと心掛けて1本で作ったのですが、それがかえって15年後にネックになってしまうとは・・。

個人邸向けの家具の資料は2000年から取ってあって、あれから時々、思い入れの家具ごと引っ越したいというお話も時々頂くようになりましたので、今ではなるべくそれが実現できる作りを心がけていますが、2008年当時はそこまで思いが回らなくて、1本で作ったわけです。

さてどうしようと思案しまして、一番細工がシンプルに済むように5つのブロックに分かれている収納部分の1つを分断するということにして、どうにか納められそうで、胸をなでおろしました。

しかし、今作る家具に対して、私たちはどこまで先を見た作りをすべきなのだろうと、こういう場面に立ち会うたびにいろいろと考えさせられます。

皆さんが楽しく使ってもらえるのが一番ですから。

それにしても15年ぶりに再会したセンのテレビボードは、センという木がケヤキの代わりに使われるとはよく言ったもので、自然の日掛けでここまで赤みが出るなんて思っておりませんでした。まるでケヤキのような良い色ツヤになっております。

今度納める食器棚はまるで若い肌が絹のようにきらめいておりますので、それがこの色になるのはまた何年もかかりますね。

楽しんで使ってもらえるとうれしいなあ。