また逢う日まで
「リメイクしたシナ合板の家具たちと食器棚」
藤沢 E様
design:Eさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:daisuke hirose/kenta watanabe
painting:daisuke hirose/kenta watanabe
大変久しぶりにEさんからメールを頂きました。
Eさんに家具のご依頼を頂いたのは今から17年前になります。
「show time」というタイトルで制作例を掲載しているリビングボードのご依頼を頂いたのでした。
あの時は、シナとウォールナットをおもしろく使って、壁に柱型が出ていたから天板と家具を変形させなくちゃいけなかったし、壁が躯体だったから固定するのに頭を悩ませたなあ、くらいしか思い出せなかったのですが、Eさんにお会いすると、あの時の様子を、まるで昨日のことのようにEさんお話してくださいました。
「あの時のイマイさんたち、とても素敵だったのですよ。たしかこの左端の扉が、その手前に家具が据え付けられていたから全開しなかったんですよ。それをイマイさんそのままお昼に持ち帰って夕方にはきれいに仕上げ直して持ってきてくれましたものね。」
ハハハ、何だか恥ずかしい。
「でも、あれから何の不具合もないし、色もきれいなままだし、とても気に入っているのです。」とEさん。
たしかに17年使い続けてきたように見えないほどきれいに使ってくださっています。傷も細かな傷こそついていますが、当時のままのきれいさがそこかしこに見られたのです。
さてそのEさんからのご相談はこのような感じでした。
「イマイさま、大変ご無沙汰しております。2015年にマンションのリビングに家具を入れて頂いたEです。
私事ですが市内に住んでいた私の両親の介護が必要となり、現在家族構成も変わり、市内に引越しを検討しております。
その際、お作り頂いた家具を形を変えて(分割して)新しいマンションに持ち込む事は可能でしょうか?
間取りも変わる為、分割して使用出来ればと考えているのですが、諸費用等考えると、新しく作って頂く方が良いのかな?とも思いますし、搬送費取付費プラスアルファくらいで済むのであれば、今の家具が使い易く愛着もあり持って行きたいという気持ちも強くあります。
また、それとは別にお作り頂きたい家具もございます。(食器棚と本棚/予算の関係で最初は一つだけになるかもしれません)
引越しそのものも確定していないのですが、もし住替えが進めば今年の9月から10月頃の予定です。
先ずは今の物を持っていくには、どのくらいの費用が掛かるのか?教えて頂けますと幸いです。
お忙しい中恐れ入りますが、宜しくお願いします。」
ということで、そのリビングボードを活用しての新生活ができるかどうかをまずは判断するためにお伺いしたのでした。
私たちの家具作りの考え方としては、今回のEさんのようなお話が少なからずあると考えており、実際に過去にもお引っ越しに合わせて家具を作り替えたお客様はいらっしゃいましたので、できるだけその家具を壁に固定してもなるべくきれいに取り外せるようにしたいと考えております。
具体的には、壁などに接着したり、壁の中に大掛かりに埋め込んだりして、まったく動かすことができない、という状態にはしたくないなと思っているのです。
ましてや、家具は消耗品ですから、移動しなくても故障したり、傷んだりしたときには部分的に交換できるようにしておかないといけないと思っています。
そういう時に取り外しが容易なようにしておきたいのです。
今から20年近く前にもこのような形で家具をリフォームしたことがありました。
「生まれ変わる」鶴川Hさん
Eさんの場合、背面の壁は躯体でしたので、ねじ止めはせずに(集合住宅のコンクリートの壁へのねじ止めはリフォームなどで施工会社さんの判断がもらえる時以外はねじ止めしていないのです)左右の壁に固定して、背面にはあとでカッターを入れれば採れるようにシリコンを接着剤代わりにして固定しておりました。
ただ、Eさんのリビングに合わせて設計しているので、取り外してもそのまま使えるものと、手を加えないと家具として成り立たない部分とが出てきます。
今度お引っ越しされるマンションの設置したいスペースは、今よりも幅が狭いので、このリビングボードの一部を活用することにして、さて残りの部分をどこに使おうかと考えていくことになりました。
今回、Eさんとしては3つの家具を考えていらっしゃいました。
リビングボードと食器棚と可能ならご主人の書斎の机です。
そこでリビングボードはこの形をなるべくそのまま生かせるように考えることにしました。
食器棚にはどこか活用できるのかというとなかなか難しかったため、すべて新しく作ることに。
そして、ご主人の書斎の机というのは、以前のリビングボードでも左端のスペースはご主人の机として使ってくださっていたのですが、それがとても使いやすいということで、できればそのまま新居に机部分だけを移設したいと思っていたのだそうです。
では、その3台をうまく考えていきましょう。 まずは素材ですが、当時のリビングボードはシナ合板を白くオイル塗装で仕上げていました。また、手をかける部分だけアクセントとしてブラックウォールナットを使っていたのです。 この印象はいまだに美しく、Eさんの好まれる北欧のテイストだったり、中村好文さんのテイストだったりによく合う印象でしたので、新しく作る部分もこの印象に合わせるかを悩んだのですが、ちょうど私の自宅の様子を写真などで見て頂いていたこともあり、(我が家はほぼシナやバスウッドで構成しましたので。)今まで懐かしんで使う部分はこのままにして、新しくする部分はもう少し印象が柔らかくなるように素材は同じシナ合板にしたのですが、色はクリアで仕上げましょう、ということになったのでした。
そして、そのもとの形をどのように当てはめていくかですが、まずは新居のダイニングのサイドボード部分に4枚の扉部分と4段の引き出しを活用することに。それでもそのダイニングの幅ピッタリというわけにはいきませんので、左右の端はサイズ的に使えそうにない扉をカットしてフィラーとして見せることに。
これでサイドボードの印象は、以前の面影のまま残すことができました。
それでは天板は活用できるかと考えたのですが、開けた合ったコンセントの穴と天板を分割して作った部分があったりと、きれいに見せることが難しそうでしたので、ここはシナの無垢材で新たな天板を作ることにしました。
そして、吊戸棚は新しく制作しました。
食器棚のほうも活用できる部分がなかったので、すべて新しく。
食器棚のデザインは引き違い戸の吊戸棚と引き出し式の食器収納と家電収納という構成。
そして、ご主人の机はなるべくそのまま使いたいところでしたが、リビングボードのほかのキャビネットがあって初めて自立するかたちでして、そのままだと倒れてしまうので、天板とキャビネットの大部分は再利用して、右の側板だけを追加で制作したのでした。
こういう形でお話をまとめたのですが、実際にそれでうまく調和するのかどうかは私にも読めない部分がありました。
また、今回は新築のマンションだったのですが、壁を取り払って可動間仕切りを入れたい、というようなご相談も頂いていたので、いつも内装工事でお世話になっているkotiさんにも工事に入ってもらって、プチリフォームも行なったのでした。
こうして、あの時のリビングボードは、新しい暮らしの中に自然となじんでいくことができたのでした。
「フリーハンドイマイ イマイさま
いつもお世話になっております。
昨日取り付けに来てくださった、ヒロセさんとタケイシさんがとても素敵でした。
とても丁寧なお仕事をされていて、ヒロセさん主導でタケイシさんを気遣いながらなさっているのが見てとれ、また、タケイシさんも指示に従い一生懸命で、ゆっくりと着実になさっていて、見ていて微笑ましかったです。
いつも感心させられるのは、イマイさんの所のお仕事は、本当に仕事が綺麗で、家具が美しいのは勿論の事、ゴミ一つ出さず、最後タケイシさんが持参された掃除機までかけて下さっていました。
そして雑談の中で、お二人がこの仕事が楽しいと仰っていて、そんな素敵な方達の家具に囲まれ生活出来る事がこちらもうれしいです。
ご紹介頂いたkotiの伊藤さんにも良くして頂き、希望していたウォールドアも11月には完成しそうで、それもイマイさんのお陰です。
この度は大変お世話になり、ありがとうございました。
16年前のお作り頂いた家具も、形を変え更に綺麗になって(以前より綺麗にして頂いていました。有難うございます。)新しい家にマッチしておりました。
私が言うのは僭越ですが、イマイさんの所の家具は、派手な今風な感じではなく、最初からそこにあったかのようで、使い始めると実に機能的でシンプルでいて美しいですね。
物が多過ぎてなかなか理想の形に近付けませんが、イマイさんの家具に相応しい生活が出来るよう、頑張ります!
スタッフの皆さんにも、くれぐれも宜しくお伝え下さいませ。」
と、うれしいメールを頂いてしばらくしました頃に、あらためてEさんからご相談を頂いたのでした。
「フリーハンドイマイ イマイさま
いつもお世話になっております。
先日はありがとうございました。あの時に見て頂いた父の部屋の収納についてですが、デイサービスから帰宅した父にイマイさんのお話をしました所、金額によるのですが作って頂きたいと申しており、概算で構わないのですが、おいくら位か教えて頂けますでしょうか?
父は私達とは全く違う発想ですごい良いアイデアだ!と感心しておりました。」
と、同居して暮らすお父様の部屋に快適に過ごせるような机を作ってほしいという相談を頂いたのでした。
ただ、介護用のベッドが入っていて、お父様の生活に必要なものものもあるので、うまく工夫しないとせっかく作っても使いづらい形になってしまうかもしれません。
どういう形が使いやすいのか、また、その家具を好かっていることが楽しめるようにただ機能的なだけの形にはならないように考えていったのです。
今までお父様が使われていた机がEさんのお嬢さんのためにお父様が以前にプレゼントしたものを今お父様が使っているということで、デザインがとてもきれいな机であることと使い込んだ愛着もありますので、それを変えても良いと思える形にならなくては新たに作る必要が無くなってしまいますので。
そこでEさんといろいろ相談しまして、好みと使い勝手を反映させた形をスケッチしてEさんにお送りしました。
「お世話になっております。
先日のスケッチ、イメージが浮かびおおむね良くて、この様な家具がで出来るのだなとイメージできまして、父にも見せて喜んでおります。
ただ、父は主人の書斎の机を大変気に入ったようで、茶色のウォールナットが良いと言っております。
天板の色がとても良いと申しており、今同じようにお作り頂いても同じ色にはならない旨も伝えました。
そのあたりをいまだ悩んでおりますが、家具の作成、宜しくお願い致します。
5年前死にかけてそのまま7ヶ月入院、以来我が家に来て抗がん剤治療も3種類既に使っており、4種類目の現在、幸い薬が効き癌は抑えられておりますが、なかなか厳しい状態はかわらず続いているのですが、家具作成の話をしていると父も楽しそうで細やかながら良い時間が持てたなと思っております。
そう言った意味でも、より具体的にイメージを膨らませ色々アイデアを下さったイマイさんに感謝しております。
お忙しい中恐れ入りますが、宜しくお願い致します。」
と、うれしくもありがたいご依頼を頂けることになったのでした。
そうして、できあがった形は素材のバランスや細かいディテールの美しい形になりまして、Eさんもお父様も私もとてもうれしかったのでした。
「フリーハンドイマイ イマイさま
先日は、お忙しい中お越しくださいまして有難うございました。
昨日、今日と通院があり、お礼のメールが遅くなり申し訳ありませんでした。
常に使う人の身になって考えて下さり、大変感謝しております。
父にも簡単に使用することができて、また今までより使いやすくなったと喜んでおります。ありがとうございます。
こうしたキメの細かさが、オーダー家具の醍醐味ではないかと思っています。
お作り頂いた家具を、これからも大事に使っていきたいと思います。
先ずはお礼まで。」
ありがたくうれしいお便りでした。
Eさん、そして家具たち、また逢う日まで素敵にお過ごしくださいませ。
リメイクしたシナ合板のダイニングボード
費用につきましては、お問い合わせくださいませ。
リメイクしたシナ合板のデスク
費用につきましては、お問い合わせくださいませ。
シナ合板の引き戸のある食器棚
価格:620,000円(制作費・塗装費)
ヤマザクラとシナとブラックウォールナットのデスク付き収納
価格:350,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は20,000円から、取付施工費は40,000円から)
シナ合板の引き戸のある食器棚
費用につきましては、お問い合わせくださいませ。