Yさんのキッチン背面収納を制作して:スタッフノガミ君の制作日記

2024.04.12

初めて図面を見た時は大変そうな家具だな、というのが正直な感想でした。
今回の家具は吊り戸棚、引出し収納、そして元々お部屋にある備え付けの物入を新しく作る家具に合わせて扉を交換して、部分的に引出しに作り替えるというものでした。
また、新しく作る家具と一体感をだす為に物入の左の袖壁の上からパネルも一緒に造り付けるのです。

このお仕事のどこが大変かというと家具を作ることでなく、取り付けることが何より大変なのです。

あまり知られていることではありませんが、マンションにしても戸建住宅にしても、壁や床がまったくの水平や垂直に仕上がっているところはなかなかありません。これは欠陥住宅とかそういう話でなく家を建てる時には様々な事情でミリ単位の多少の誤差は少なからず出てしまうものです。(でも、日常生活を送る上では全く問題ありませんよ。)

ですが、家具を取り付けるとなるとそうはいきません。
家具は工場で作っているので直角、直線を守って作りますので、それを水平や直線の出ていない所へ取り付けるとなると隙間や段差になってしまいます。

なので予定寸法より材料をあらかじめ延ばしておいて制作して、現場で削って調整できるようにして置いたり、フィラー(隙間調整材)を用意していく、コーキングを入れるなどして対応します。
こういう作業も現場に合わせてその場で作っていくので大変な作業ではありますが、今回の一番難しいところは、そこではなくて備え付けの可動棚収納を引き出し収納に変えるところだったのです。

特に他の家具屋さんや内装屋さんが制作された家具の仕様を変えるとなると、その家具がどのような構造で作られているのか、どのように取り付けられているのかは分からないことが多いのです。このような見えない部分が多い状況では何を準備していくかどのようにアプローチしてしくか、段取りがしづく、取り付け当日まで少し不安でした。

今回の取り付けは現場で行う作業が多いので、中一日を工房で作業する可能性も踏まえて2日間の作業日程を取らせて頂きました。
レーザー水平器で取り付け位置の様子をみると壁の立ちは良かったのですが、床の水平と袖壁の直角がでていなかったため、最初の難関となりました。

取り付け方法は悩みましたが、持っていった家具の前板と仕様変更する引き出しの前板の高さをきれいに揃えないといけないので、家具の下端を削ったりパネルの裏にパッキンを挟むなどして対応しました。またサイドパネルを削れるように少し伸ばして造っていったので現場での微調整にもうまく対応できました。

一番心配だった引き出しへの仕様変更ですが、こちらは備え付けの収納の構造や水平レベルがそんなに悪くなかったためそのまま作業に入れることができました。
レールを取り付けるには、位置出しの型ベニヤを持っていきましたので現場での墨出し時間を短縮することができました。
その後、多少のレールの位置調整が必要だったものの、順調に作業を進めていき、予定通り2日間で取り付けを終えることができました。

取付作業中にはY様にはとてもすてきな心配りをして頂きまして、お昼ご飯や作業途中の差し入れまでして頂いたりと、私たちは家具を届けに来たのに、なぜだかとても素晴らしいおもてなしを受けてしまったかのようで、大変恐縮してしまいました。ごちそうさまでした。

今回の家具は、新しく作った部分と仕様変更した部分の一体感を出せるかが一番の要で、それがうまくできたことに安心しました。
Y様にも気に入っていただけたようで、この家具がこれからの生活にどんどん馴染んでいってくれたらうれしいと思います。