トンネルとみかんとつづら折り

2025.01.10

正月休みの間にどこかに出かけよう、とアキコと話をしていて、県西の地図をあれこれと眺めておりました。二人とものんびりと緑の中を歩くくらいが好きなので、ふと目に留まったのが国府津から曽我丘陵を抜けるという小田原市の観光課で作られたウォーキングマップ。

良いね、良いねと国府津駅に降り立ち、神社で挨拶をしてから歩き始めたのでした。「丘陵という優しい言葉には騙されてはいけないね。」と息を切らしながら、トンネルのように木々が覆いかぶさるなかを抜けてかなり高度を上げたあたりで、みかんを卸している民家がありました。

そこに同じ地図が張られていて、「今はどのあたりだろうか・・。」と思い、「こんにちは。」と声を掛けて立ち寄ったら、「あら、どちらさんだっけ?よかったみかん持って行ってください。ほら、カバンが大きいからまだ入るでしょう。」と、にこやかに話すご年配のおじさまに促されて、「さあさあ、どうぞ、よかったらこの奥で景色も見張らせるから、みかんを給水代わりに休憩していってください。」なんて奥に招かれてしまいました。

あらあら、これはうれしい。

「このみかんは先代の頃からここで穫れるのですが、市場に売りに出すほどの量でもないものですから、こうしてここで皆さんにお分けしているのですよ。」

とお話をしながら案内してくださったのが、手作りの見晴らし台がある広場。

おお、すてき。

「もともと小田原のみかんはすっぱいものが多いのですが、今回穫れたのは甘いんですよ。しばらく寝かせておいたのも良かったですね。」

「2月に入ると梅の季節が始まっちゃって、みかんもあまりお裾分けできなくなるから、もし今度お車でいらっしゃったら、また声を掛けてください。こうしてお会いできたのも良いご縁です。」

と私たちがもぐもぐやっているところに丁寧にいろいろとお話をしてくださったのでした。確かに良いご縁です。風は冷たいですが、温かな気持ちとみずみずしいみかんを頂いて元気が出てきた私たちは再び緑のトンネルへ。

そして、古墳自体の末期(七世紀ごろ)に作られた岩、風外禅師が晩年過ごしたという風外窟を見学。ここで過ごす時間はとても静かで清らかだったのでしょうけれど、お墓に寝泊まりするのは怖いなあ、なんて思いながら山をくだり、途中で「箱根のホテルにも卸しているのよ。」とうれしそうにお話するおばさまのトマトを頂いて、宗我神社で終点。

帰りは御殿場線に揺られてのんびりと。

健やかな一年の始まりでした。