
一枚板の天板を探しに
2025.01.31


キッチンを作らせていただいたFさんのところにお邪魔させて頂いた時に「イマイさんにテーブルをお願いしたいとおもっているのです。」とお声掛けを頂いておりました。そのテーブルのテーマが「有機的」かつ「天板は一枚板」がよいというお話でした。
私たちの仕事をご存じの人は、一枚板のテーブルの制作例がないことにお気づきだと思います。ダイスケさんに聞くと、接ぎ合わせて天板を作っていく工程と一枚板を削って天板を作っていく工程は違うことも多かったりすることから、なかなかその一歩を踏み出せずにいたのだとか。今回はその良い機会を頂いたのだと思います。ただ、一枚板を取り扱う材木屋さんも限られているし、私たちもあまり詳しくないものですから、どうしようかと思っていたところに日頃お世話になっている北洋木材工業さんから、「銘木をお探しなら三島の谷田木材さんが良いですよ。」と教えて頂いたのでした。
せっかくの機会ですので、Fさんご家族と現地で待ち合わせをして、ダイスケさんに同行して私も倉庫を見学させていただきました。
倉庫に入るやいなや、一枚板が壁を覆いつくすように立てかけられていて、まるで迷路のよう。それぞれの木々が持つ立派な表情には「圧倒的」という言葉しか思い浮かびませんでした。「ここは7~8メートルサイズの倉庫で、あと他にも二つ倉庫があります。」と問い合わせした時に担当してくださったKさんが迎えてくださり、そう説明してくださいました。板の販売だけではなく、加工も請け負ってくださるそうで、テーブル用に契りやレジンで割れを加工したものも見せてくださいました。
こんなに木の種類があるのだな、元はこんなに大きな木だったんだ、なんて立派な木目、その自然に現れたなんてきれいな色、立派な枝が出ていたのだろうなとわかる大きな節。
Fさんの小さいお子さんが風邪をひいてはいけないから、と焚火をして倉庫を温めてくださりその火の熱と煙の匂いがこの空間で私を独特の気持ちにさせてくれます。
日々木を扱う家具屋に働いていながらこんなことを言ってはいけないのですが、切られなかったらもっと生きていられただろうにと申し訳ない気持ちにもなってしまいました。今まで木の生き生きした様子を感じにくい挽いた板の状態は、「樹」というよりも「板」という見え方で工房に届いていたので、こういう気持ちが現れづらかったのだと思います。
そうか、一枚板の魅力はその木が自然にあった姿を感じることができることなのか・・と、今回あらためて気づくことができました。ありがとうございます。
そういう思いを抱きながらも、その表情に圧倒されながら倉庫の奥へ奥へ進むとFさんの思い描く表情を持つ板が現れたのでした。それは「有機的」という言葉が良く合う縮んだ杢目が現れ、勢いのある割れが大きく出ていて、大きさも希望によくあった楓でした。
豪放磊落な社長さんと親身にそばに居てくださった担当のKさん、親切に対応してくださりありがとうございました。
これからこの天板を支える脚のデザインと仕様を考えていきます。
ダイスケさんは仕事の悩みが増えて大変ですが、私はFさんのお家にテーブルが完成するという楽しみがひとつ増えてうれしかったのでした。谷田木材さん、すてきな機会をありがとうございました。
最後の写真はお土産にとくださった槙の木の卵です。ショールームのおもちゃとして活用させていただきますね。