
フィーカ
「北欧スタイルの白いキッチン対面カウンター収納」
駒込 F様
design:Fさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:kenta watanabe
painting:kenta watanabe
「初めまして。Fと申します。
家のキッチンカウンターが割と奥行きがあり、その下がデットスペースでして、常々ここに馴染む家具を置きたいなと考えておりました。
「ゆるやかな家具たち」三島 M様
こちらのページがイメージに近く、ガラス部分はある方がいいかどうか迷っておりますが、ご相談できればと思います。
すぐ傍にテーブルを置いているので、上部は引き出し、その下は引き戸仕上げにできればと考えております。
しまいたいものは文庫本、新書、写真集、dvd、裁縫道具、語学参考書類、花瓶、飲み物缶詰お菓子など、あらゆるものです。」
というご相談を頂きました。

Mさん、懐かしいなあ。
お客様にこうして過去の制作例をお知らせ頂くと、そのご相談の家具の形を考えなくてはいけないのに、当時の様子を思い返してしばらく「ああ、懐かしいなあ」タイムが始まってしまうのでした。
あの時、Mさんは、「さあ、あそぼう。」川崎 W様の形を見て、相談をもらったのだっけ。
Wさんの当時あのアールをどうやって作ったのだっけ・・。今から15年前だから成型合板はまだやっていなかったし。Mさんの時もどうだったかなあ。
アールもたいへんだったけれど、あのブラックウォールナットの本棚は大変だったなあ、小田原の工芸技術所までNCルーターを借りに行ってどうにか実現できたのだったよなあ・・。
あのあとにアキコと一緒に三島のウナギ屋さんには記念に一度入ったっけなあ。
と、ひと通り思い出してから、Fさんの形に取り掛かります。
まずはスケッチを描いて送らせて頂き、Fさんがどのような印象を思い描いていらっしゃるかを尋ねてみました。

「素材・色についてですが、我が家のカウンターの色がクリーム色っぽい白なので、今回はすべて白で作るのがいいかなと考えております。
そして参考に考えているこちらMさんの形が、ガラスが入り反射があるのはやはり素敵だなと思っております。(一番下の部分はガラスなしでも良いかもしれませんが)
こちらと、我が家のサイズは大体一緒でしたでしょうか?
また一番右の縦長の扉は、中に棚板がある作りにされたのでしょうか。
バランスが絶妙でとても良いなと思っております。」
と、あらためてMさんの形に強く惹かれているというFさんの思いを聞かせて頂きました。

そして、
「そしてアルテックが大好きで、以前フィンランドのアアルト邸にも行ったことがあります。
今カウンターの下に置いているベンチとダイニングテーブルもアルテックです。」
と、お知らせくださったFさん。アアルトの形は素朴にやさしく取り入れられた曲線が多く表現されている家具が多いですものね。その印象がMさんの白い家具の印象と重なったのでしょうね。
ということで、打ち合わせにお伺いしてFさんの暮らしの様子を拝見させて頂きながら、再びあの難しい形に挑むことが決まっていったのでした。ただ、あの時と違うのは、アールの部分がボックス状ではなく扉になること。
どちらかというと箱状になっているほうが形を固めやすいのですが、扉になることで逃げのない形になっていったのでした。
何が逃げのない形なのかというと、曲面のある形を作る時はまずはその下地を曲面で作ってその上に仕上げ材を貼っていくのですが、仕上げ材もある程度のコシがあるので戻ろうとします。そのために曲面がまっすぐに戻っていこうとするので、曲面の先の先端は予定して作っていた下地の角度よりも開いてしまうことが多いのです。
ですので、これが箱状になっていれば両端もしっかり固定できるので、その開きをある程度無理やり抑えることができるのですが、扉となると開いた角度はなかなか直せない。
アルテックの家具のようにプレスして曲面を作る治具があればもう少し効率よくできるのかもしれませんが、一度きりの制作で治具を作るコストもと考えるとかなり高額になってしまいますので、制作を担当するワタナベ君と相談しながら別の方法を探ることにしました。
今回家具の表面にはメラミン化粧板を使用しています。
手を掛ける部分だけは同色で塗装をして継ぎ目の目立たない柔らかな印象で仕上げております。
ただ、そのメラミン化粧板。その厚みは昔は1.2ミリが主流でしたが、今は1.0ミリのものが主流。しかし1.0ミリでも相当の反発力があって、きっと扉の角度がバラバラになっちゃうよ・・。と思っていたところ、最近はもう少し薄いメラミンが販売されていることを知りまして、0.7ミリのものを使うことに。
下地は昔のように合板でアールに合わせて骨を組む形ではやはり戻る力には抗えないだろうからということで、1枚から作ってくれるという成型合板をオーダーしてアールの部分を作り、直線部分に新たに合板を足す形で扉の下地が完成。
おぉ、メラミンを貼っても戻らないぞ、と喜んで扉を吊りこんでみたら、1枚だけ扉が出っ張ってしまう・・。
やはり薄いメラミンでも戻る力は大きいのでは、と思って3枚を並べて確認してみたら、アールの径が変形しているのではなく、アールと直線の接合部分の角度がわずかに違ってしまっていたようでした。
1度以下の誤差でも扉の先端までが15センチほどの距離があると大きく角度が変わっていってしまっていたのでした。
そこで角度が気になる扉だけあらためて切削し直して調整し再び確認。
どうにか3枚の角度が良い具合に揃って完成してひと安心。
こういう曲面のある家具は読めない部分が多いので緊張します。
そして、納品。
キッチンの対面カウンターというのは、壁から30センチほど出っ張っているものが多いのですが、壁からそれだけ出っ張っていると手前が垂れ下がっていることが多かったりします。
Fさんのカウンターも左手前が少し垂れさがっていたのは採寸の時に確認していたのですが、実際に家具を入れていくと結構きつくて、これはぴったり過ぎたか・・と冷や汗が出ましたが、どうにか入れることができました。
壁自体はマンションのため大きな歪みが出ていることもなく(木造戸建て住宅で数年経っている家だと、やはり木は動きますので、壁が膨らんでいることもあったりしますので)あとは背面の壁にねじで固定して無事に設置完了。
「お世話になっております。Fです。
あれから片付けに取り掛かっていますが、初めからあったかのような馴染み方をしていてお願いして良かったなぁ、とうれしさをしみじみかみしめております。
見れば見るほど愛着が湧いてくるこの棚、綺麗に使って行きたいと思います!
あのあと家に来た友人にも褒められました。
この度はありがとうございました。」
と、うれしい感想も頂きました。
そして、使い始めてしばらく経った頃にアキコと二人であらためて伺わせて頂きました。
Fさん、ガラス戸の部分の使い方もとても印象よくて、家具を楽しんで使ってくださっている様子がよく分かりました。
そして、取付の時はバタバタとしていてあまり気に留めなかったのですが、お茶を頂きながら、ふと気が付いたのでした。
豊島区というと賑やかなイメージがあったのですが、大通りから少し入ったこのあたりはとても静かで、また目の前に小さな森のように木々が集まっている様子がよく見えることもあって、すごく気持ちが落ち着くのです。Fさんがここに住むことを決めようと思ったことの一つはその様子がとても魅力的だったからだそうで。
写真を撮らせて頂きながら、室内の様子をぐるりと拝見させて頂くと、この家具のようにいろいろなものたちがそこかしこに楽しそうにFさんの暮らしのそばに居る様子がよく分かりました。
その撮影している傍らで、Fさんがリビングの窓に掛けているカーテンに目が留まったアキコの話し声が聞こえます。
「すてきなグレーのカーテンですね。わたしも次女の部屋のカーテンをいろいろと探していたのですが、なかなか良い色って見つからなくて・・。このような淡い魅力的な色のカーテンがあるのですね。」
「ありがとうございます。生地問屋さんを捜し歩いてようやく見つけたのですよ。」
と楽し気におしゃべりする二人の声が風に乗ってこちらに届くような感じ。そんな軽やかで楽し気な空気がそこかしこに漂う、そのような様子を拝見させて頂くことができて、とてもうれしくなったのでした。
北欧スタイルの白いキッチン対面カウンター収納
価格:540,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は25,000円から、取付施工費は40,000円から)
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