
明かりが灯る
2026.05.19
このところのドクダミロード。
「こちら側はね、ヒューケラで、こちら側はドクダミを残しておくことにしたの。」とアキコが雨風に打たれてひなびた印象さえ持ち始めてきたコンクリートブロックの両横を指さして言っていたとおりに庭へ続いている質素な側道はきれいに色が分かれてさりげなく華やぐ心地よい道になってきた。
わたしはドクダミが好きなんです。
可憐な花が宵の中にボゥッと照らされている様子がぼんぼりの明かりが灯るような具合に見えてその奥へと誘うじゃないですか。
その先を辿っていくとひっそりとポラーノの広場が現れるような。
我が家の明かりを数えてたどり着くのは、いっこうに実がつかないけれど葉の様子は元気なレモンやそろそろ隣家を侵食しそうなソロやもじゃもじゃ千両、鉢からあふれ出つつあるハラン、チューインガムの香りのカラタネと背比べをしているサカキ、と賑やかでこんもりした緑が迎えてくれる小さな庭に辿り着くことができる。
そんなふうに導いてくれる白い花たちはどうやらそこら中に増えてしまうらしく、彼女にとってそれが気になってそれほど好きになれないのだそう。
そういえば、先日フクハラさんたちが来てくれた時にキョウコさんが「この前仕事に出かけた先で八重のドクダミを見たのよ。とても可愛らしくて。」と言って写真を見せてくれたっけ。
きれいなのになあ。
週明けの朝ごはんを冷蔵庫をガサゴソしているとふとその時のホットケーキの1枚が出てきた。
そのフクハラさんとの楽しい時間の後のまわる頭を抱えながら過ごした翌朝はアキコがホットケーキを焼いていたっけ。
ホットケーキというと、土曜日の朝を思い出す。
母が良く焼いてくれたんだよね、土曜日に。
せまい田の字型の典型的な団地の狭い空間に牛乳と小麦粉と佐藤が温まってこんがり焼かれていく香りがあっという間に充満する。
私とユウ(弟です)は今か今かと台所から母がこちらに振り替えるのを待ち構える。
「はい、どうぞ。」と茶色い円盤が目の前にコトンと置かれる。
わぁ、と笑顔がこぼれる。
でも、メープルシロップは高価な物なのでたっぷりはかけられないのだ。
だから、私とユウはどこか厳粛な面持ちで大事そうに食べていく。
おいしいのだ。
むしゃむしゃ。
だからホットケーキの朝は、自分にとっては、学校が半日で半日まるまる遊べる特別な気持ちになれる甘いお菓子なのだ。
そう、私たちの時代は土曜日は半日学校の授業があったのだ。
そして、土曜日の授業と言うとBタイマーだね。
きっとAという時間割があって、その相対的に見てBという子供たちにメリットが大きい時間割があったのだと思うのだけれど、今では何のことだかいい加減に忘れてしまったのだけれど、Bタイマーの時は早く帰れたって思いだけが今でも覚えているなあ。
むしゃむしゃ。
でも、Bタイマーのタイマーってなんなんだろう。
むしゃむしゃと事務所のパソコンの前に座りながらホットケーキをほおばりながら、ホットケーキは私の明かりのひとつなのかもしれないと思ったのでした。
