継いで、色を変えながら

「ホワイトオークとシーザーストーンとステンレスのセパレートキッチン」

あざみ野 T様

design:Tさん
planning:Tさん/daisuke imai
producer:iku nogami
painting:Tさん

ホワイトオークとシーザーストーン、ステンレスのセパレートキッチン
独立前には欧州で建築設計の事務所に勤めていたことあるTさんの目指したキッチンは、心地よくミックスカルチャーの印象。今回のように使い込まれた木製の壁が面積を占める空間では、ともすると、もっさりとした小屋のような印象に見えてしまうこともあるかもしれませんが、グレーの色がすごくよいスパイスになっていて、ピントの合った場所(という感じかな)になっています。

建築設計のお仕事をされているTさんからキッチン周りのリノベーションのご相談を頂きました。
私たちは、なぜか設計士さんや建築士さんのご自宅のキッチンを作らせて頂く機会が多かったりします。
自分でもどの部分を評価いただけているのか確信が持てないのですが、いろいろな作り方に対して柔軟に対応できる点がお話しやすいと思って頂けているのかもしれません。
皆さんからお話を聞くと、「これはできてもこういう微妙な部分は対応できない」とか「レスポンスがよくなくて話が通じにくい」などという声を聞くことがありましたので。
いずれにしましても、声をかけて頂けるということはとてもうれしいことです。
良い形を目指して頑張ります。

ホワイトオークとシーザーストーン、ステンレスのセパレートキッチン
Tさんからリノベーション前の資料をお借りしました。海外で見かけるキッチンのような印象。すてきな緑の扉。お父様が建築したというこの家は当時はモダンな印象だったのでしょうね。
シンクのあるペニンシュラキッチンのダイニング側
今回苦労した点の一つがこのシーザーストーンの設置です。長い部分で3000ミリの長さがあって、ここは空間的には1階なのですが、地階が駐車場になっているので、外階段を振り回して入るかどうかが微妙なところで、これを荷揚げするとなると、破断しないだろうか‥ということがひとつの心配でした。そして、搬入は無事に振り回せたのですが、続いてはこの木製の壁にうまく合わせることができるかという点がもう一つの心配でした。木製の壁との隙間を大きく採るときれいではないので、念入りに寸法を確認して臨んだのでした。

そのTさん、普段のお仕事では住宅よりも大きな建築を手掛けることが多いのだそうで、住宅を手掛ける施工会社さんとのつながりも少ないということで、今回リノベーションをするにあたってはまだ施工会社さんも決まっていなかったのでした。
それなら私たちとしてもやりやすい会社さんが良いと思いまして、いつも一緒に仕事させてもらっているkotiさんにお願いすることに。

【ATELIER CHIYODA】
https://www.atelierchiyoda.com/

水切りプレートと洗剤ポケットを備えたシンク
シンクは、ステンレスバイブレーション仕上げ。いつもはシンクのサイズ(420ミリ×770ミリ)に合わせて、天板を開口することが多いのですが、今回は水切りプレートを置きたい、ということでシンクよりも一回り大きく開口して、そこに天板と同じ厚みで少し薄めの水切りプレートを作りました。洗剤ポケットは標準サイズの100ミリ×230ミリで制作。
シーザーストーンはフロートタイプ
水栓は、KVKの浄水器一体型のものを導入。シンク下はオープンにしておいて、ゴミ箱を置けるようにして、さらにちょっとした洗い物用の水切りカゴも置かれています。
ペニンシュラキッチンのシンク下の様子
シーザーストーンは標準の厚みの12ミリのままで見せて、その下に10ミリの目地を取ってフロートタイプに仕上げています。
シンクのあるペニンシュラキッチンのレイアウト
納まりでもう一つ難しかった部分が、キッチンのタイルとリビングダイニングのフローリングの床の高さが異なっていた部分です。キッチン側のキャビネットとダイニング側のキャビネットの高さを変えて作ることで対応し、それをサイドパネルで囲う感じできれいに見せています。サイドパネルはその高さに対応できるように下部を延ばしておいて、フローリングや見切りのサイズに合わせて加工しています。また、今回はセパレートキッチンになったのですが、元々のキッチンは赤いスツールが置かれていた部分に食洗機がありました。そこを撤去したことで壁が現れてしまい、当時のタイルが残っていなかったため、キッチンパネルと同じ材を張っています。

この家はもともとやはり設計のお仕事をされているご両親が建てた家だそうで、築年数がだいぶ経っているので、キッチン以外も少しずつ手を入れていく必要があるのだそうです。
「やはり、父が建てた家ですので、その手の跡は残せる部分は残していきたいと思っています。愛着がありますし。でも、緑の扉はもうよいかなと思っていて。」とはにかみながらTさん。
なるほど。でもとても良い緑色なので、どこか部分的に残っていったら、すてきだなあ、なんて思いながらお邪魔させて頂いた室内をぐるっと見渡します。
「全部の工事をお任せするのではなくて、なるべくは住みながら自分たちで手を加えていこうと考えています。ただ、仕事も慌ただしくなってきているので、どこまでできるか読めなくて。それでもキッチンだけは良い形にしたくて、よいメーカーさんを探していて、それにイマイさんに目が留まりました。」
うれしい言葉です。
「それから、キッチン以外にも自分たちでは難しいと思っている部分がありまして。」と言ってTさんが指さしたのが、室内のくすんだ白い壁。
「この壁は当時のままなので、かなり色があせたり変色しているのできれいに塗り替えたいと思っているのですが、何しろ入り組んでいる建築なので、自分たちでは難しいと思っていまして。」ということで塗装屋さんも探しているのだそうです。
それならということで、私の弟が塗装業を営んでいるので声をかけることに。

オークのキッチンの引き出し内部の様子
食洗機の隣の引き出しの様子。今回引き出しの素材は濃いグレーの化粧板を使ってキッチン全体のトーンを合わせています。
オークのキッチンの引き出し内部の様子
食洗機の隣の引き出しの様子。
オークのキッチンの引き出し内部の様子
食洗機の隣の引き出しの様子。

実は、弟は若いころはなかなかの勉強嫌いでして、早くから働き始めていて、もともとはこのフリーハンドイマイで私よりも半年前から入社していた工房では先輩にあたるのですが、数年後にここを出て、大工として数年働いた後に外壁塗装の仕事につき、今は独立して県央地域を中心に塗装の仕事で飛び回っております。
「私が言うのもなんですが、彼の仕事はとても良いですよ。」とTさんにお伝えして、後日ユウに見てもらうことになったのでした。
今回Tさんの室内の壁の一部がジョリパッド(だったかな)仕上げのところがあり、一部と言っても室内のジョリパット仕上げの部分をすべてとなるとかなりの面積で、さらにはけっこう入り組んだ設計になっていて、塗装に手間がかかりそうなのでした。
もともと私よりも細かい性格の弟なのでそのあたりは安心して任せて、内部足場を掛けたりする必要があったので、まずは塗装が終わったタイミングでkotiさんの解体が始まる、というスケジュールで進めていきました。

ステンレスシカル曲げカウンターの印象
コンロ側キッチンの天板はステンレスバイブレーションしあげ。写真では分かりづらいのですが、いつものバイブレーションカウンターとは少し違って、角が立っている仕上げです。いつもは厚み1.2ミリのステンレス板を使って、それをグィッと曲げて希望の厚みに見せる形で仕上げています。そうすると、天板の手前の上面は1.5ミリから2.0ミリのアールに丸みがつくのですが、今回はその曲げる時にステンレス板の裏面をちょっとV型の溝を取りましてから曲げることで丸みがほぼない直角に近い仕上がりになります。これをシカル曲げと言います。見た時の印象がエッジが際立つのでとてもシャープで美しい印象になるのですが、角に丸みがない分ぶつけるとそれなりに痛いです。印象を優先するか触り心地を優先するか、意見が分かれるところであります。

キッチンのプラン自体はTさんが細かい部分も含めてプランニングされていましたので、私のほうではその形が制作可能な形に置き換えることと、現地できれいに納まるように調整することが今回の主な役目でした。
そのメインのプランニングはできあがっていたわけですが、今回は板張りの壁にキッチンを設置する形になるので、出っ張り引っ込みの具合を調子を見ながら寸法を決めていったり、キッチンとダイニングにまたがるシンク側のキッチンはそこに存在する床の段差をどのように吸収したらきれいに納まるのかなど、頭を悩ませる点が多かったのでした。
さらにはその納まり以外にもなかなか悩ましい点がありました。

壁に埋め込まれた引戸収納
壁に埋め込まれた引戸の戸棚。最初のリノベーション前の写真を見て頂くと、当時はここには緑色の開き扉がついた戸棚が埋め込まれていたのが分かります。その戸棚を外すとぽっかりと空間が開いておりました。その空間を活かしつつ奥行を増やしたいという点と、戸棚の上にちょっと物が置けるスペースを設けたいということで、今回は戸棚を壁から約120ミリ飛び出させる形にしました。通常は壁ピッタリになるくらいにする納まりを取ることが多いケースなので、どんなふうになるのかなと思っておりましたが、これがなかなかチャーミングが納まりになりました。特にトップライトから差し込む陽ざしがここに当たるととても良い印象。
壁に埋め込まれた引戸収納の戸の手掛け
引き戸の手掛けは溝を上から下に突き通すシンプルなデザインにしています。
壁に埋め込まれた引戸収納の内部
引き戸を開けるとこのような感じ。内部はやはりグレーの化粧板で仕上げています。

それは塗装の仕上げ色についてでした。
Tさんの希望としては、キッチンの天板をグレー色で作りたいのでキッチンの表面も同じような色で整えたいということでした。
ただ、ウレタン塗装で仕上げるとかなり塗装のコストが上がってしまうため、これを自然塗料のオイルで表現したいという方向になったのですが・・。
オイルの着色仕上げというのは、簡単に均一に塗ることができるように思えますが、同じ塗料でもロットが違うと微妙に色は異なりますし、その突板の状態や素地状態での仕上がりに色の乗り方が大きく左右されます。さらに突板と無垢材では色の乗りが全然違うので、刷毛塗りで仕上げるオイル塗装で着色仕上げにするというのはけっこう大変で、イメージピッタリの仕上がりにすることがなかなか難しかったりします。
さらにTさん、メーカーのオリジナルカラーから少し色を変えたいということで、2色のオイルを混ぜることを考えていたのだそうです。そうなると必ず色ムラが出てきます。その色ムラを木の吸い込み具合の「味わい」と見るか、「仕上がり不良」と見るかはそのひとの感覚に依ってきますので、うーん、難しいところです。
Tさんにそのようなお話をしていると、「ちょうど床も自分で一度研磨してきれいに塗ろうと考えていたので、キッチンの塗装も自分で納得する色になるまで塗ってみます。」ということでご自身で塗装して頂くことになりました。

ハーフェレのスパイス用の引き出し、ベースユニット
ここはハーフェレのベースユニットという細長い調味料専用の引き出し金物を採用しています。
オークのキッチンの引き出し内部の様子
コンロ右隣の引き出しの様子。
オークのキッチンの引き出し内部の様子
コンロ右隣の引き出しの様子。
オークのキッチンの引き出し内部の様子
コンロ右隣の引き出しの様子。
オークのキッチンの引き出し内部の様子
コンロ右隣の引き出しの様子。

そうして方向がすべて決まったので制作が始まります。
キッチン周りのリノベーションは、基本的に1週間から2週間ほどの短期間で済むことが多いです。
キッチン自体の制作は1ヶ月から1.5ヶ月ほど掛かることがありますので、今回も現状の様子で採寸させて頂き、先行して制作に取り掛かる形かと思っておりましたが、Tさんの現在の住まいは別にあって、このご実家は空いている状態でしたので、一度kotiさんに入って頂いて、現在のキッチンを撤去して頂いてからあらためて採寸することに。
このほうが壁や床の納まりがはっきり分かりやすいので大変助かります。
リノベーションの多くは、古いキッチンを解体する時点で既に新しいキッチンがほぼ完成していないと間に合わないというスケジュールが多かったりしますので、ほっとしたのでした。

オークのキッチンの引き出し内部の様子
その右隣の引き出しの様子。先ほどのシカル曲げの様子がこの写真だと光が当たって良く分かると思います。
オークのキッチンの引き出し内部の様子
その右隣の引き出しの様子。
オークのキッチンの引き出し内部の様子
その右隣の引き出しの様子。この引き出しはTさんのご要望で、ここから右の壁のほうまではすべて3段で構成しています。高さ900ミリのキッチンで3段の引き出しとなるとそれぞれが深めの引き出しになります。今回は上段が130ミリ、中段が165ミリ、下段が330ミリという深さにしています。

そして、キッチンの制作がほぼ完了したタイミングで、ひとまず納品することに。
ユウに連絡を取ると、「うん、無事に終わって、とても喜んでもらえたよ。天井の見切りの形がちょっと複雑で手間取ったけれどきれいに言ったと思う。残った塗料はTさんに私ってあるけれど、何かあったら言ってね。」と、しっかり終わらせてくれたようで、足場も取れてすっきりした空間に持ち込ませて頂くことに。
ちょっと心配していたシンク側のシーザーストーンの搬入も無事に室内に運び込むことができてひと安心。
今回のようにシーザーストーンをそのままの厚みで見せる場合は、補強の板を入れにくかったりして、過去に2回ほど割ってしまったことがありましたので・・。
そうして、すべての納品がひとまず終わりましたら、そこからTさんが塗装を開始。
今回のリノベーションは、Tさんがご自身の設計の仕事と並行しながら行なうということでしたので、きっとしばらく時間がかかるかなと思っていたのですが、Tさん、早々塗装してくださったようで、「イマイさん、塗装終わったので、お時間を見て設置しに来て頂けますか。」とほどなくして連絡が入りました。
「もう、塗り終わったのですか。早いのですね。」ということで再びお邪魔させて頂くと、きれいにグレーに塗られたキッチン。
「すごくきれいに塗りあがっていますね。大変だったんじゃないですか。」 「そうですか、少し手間はかかりましたけどうまくいきました。」とうれしそうなTさん。
そして、いよいよその完成したキッチンを据え付けていきました。
やはり築年数がたつ空間は歪みがそれなりに出ているのですが、それを吸収できるように作り方に逃げを取っておいたので、無事にきれいに設置することができました。
そのあとに再びkotiさんに入って頂いて、水道やガスや電気をつなぐ工事をしていただいて、無事に完了。

ステンレスシカル曲げカウンターの印象
家電が置かれている部分の壁面もタイルが足りなかったためキッチンパネルを張っています。このブラックつや消しでマグネットがつくボードがなかなか良い印象でした。
コンロ側キッチンの家電スペースの様子
一番右の背が高い収納は家電やすぐに使う調味料などがストックされたオープン棚になっています。シンプルな形なのですが、天井の高さを考慮して作ったのでしたが、部分的に見切り材などで天井が下がっているところがあり、うっかり寝かせた状態から立てることができなくなりそうでヒヤヒヤしたのでした。

そして、間もなくご家族みんなで引っ越してこられてひと段落した頃にメールを頂きました。

「イマイ様、いつもお世話になっております。
返信遅れてしまい申し訳ありません。
いろいろ仕事でバタバタしておりまして、とりあえず住み始めて2か月経っているのですがまだ家の中が整理できていない状況ですが、総じて新しいキッチンでの生活、満足しております!」

うれしい言葉、ありがとうございます。
後日、お手入れ方法について説明させて頂くためにお邪魔させて頂くと、公園に遊びに行っていた奥様と遊び疲れて顔を赤くほてらせたお姉ちゃん、お兄ちゃんがちょうど戻ってきて、奥様が子供たちの服を直している間にTさんが麦茶を入れて、ほてった二人に飲ませていたりと、みんなが自然にここにいる様子をふと見ることができて、うれしくなったのでした。

Tさん、ありがとうございました。

寸法 シンク側:幅3,000(2,070)ミリ・2,340ミリ/高さ900ミリ/奥行1,200ミリ
吊戸棚:幅1,970ミリ/高さ450ミリ/奥行450ミリ
コンロ側:幅4,715ミリ/高さ900ミリ、2,300ミリ/奥行650ミリ
天板 シンク側:シーザーストーン「4003 スリークコンクリートマット」
コンロ側:ステンレスバイブレーションシカル曲げ仕上げ
前板・扉 ホワイトオーク板目突板
本体外側 ホワイトオーク板目突板
本体内側 ポリエステル化粧板「グレー」
水栓器具 KVK[KM6091SCECM5]
食器洗浄機 BOSCH[SMI4MDS016]
ガスコンロ ハーマン[DW35S9JTKSTED]
ガスオーブン ハーマン[DR601CST]
レンジフード アリアフィーナ[BAR-903S4]
キッチン仕上げ

ホワイトオークとシーザーストーンとステンレスのセパレートキッチン

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