Kさんのタモのキッチンを見に

Category : 日記「自由な手たち」

2023年1月28日

今日と明日で完成見学会が開催されているKさんのお宅を拝見させて頂くためにアキコとふじみ野まで出掛けておりました。

昨年の11月にタモのペニンシュラキッチンと背面のカップボードを作らせて頂いたKさんです。

お二人は設計士さんで、立てた工務店さんも学校の同期のご友人というすてきな関係でできあがった家はね、何というかかわいい(と言うのは失礼になっちゃわないかな)家だったのです。

外壁はそとん壁ですが白い外壁に凹凸の影が生まれて少しグレイッシュに映る表情やどうしてもこれを採用したかったのです、とおっしゃっていた雨樋の様子、駐車場に敷かれた石材(なんだったっけ?)の印象などすべてがきちんと調和しているというのでしょうか、その印象が総じてかわいいという言葉で表せるような魅力的なおうちでした。

室内をいろいろ見させてもらった帰り道にアキコが言っていました。

「お部屋の中の印象がしっかり引き締めて見せる部分と使い心地がよく分かる部分がきちんとそこに在ってすてき。」と。なるほど、そうだそうだ、それが心地良いのだ。

そういう印象が初めて見る私たちにもきちんとよく分かる家というのは本当に良いです。そして、そこに私たちのキッチンを置かせて頂けることはとてもうれしいことでした。

みんなで心地良い家を作ったのだなあ、というのが分かるというのはそこに居てとても気持ちが良いのでした。

わたしたちが自分の家を建てた時の新鮮な気持ちを二人で思い出しながら帰ってまいりました。

次はお引越し後の様子を拝見できたらうれしいなあ。

明日まで完成見学会は開かれているとのことですよ。

→まるよし工務店さんブログ「OPEN HOUSE

群馬県へ

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2023年1月27日

ご縁がありまして、工房からちょっと離れた群馬県に新居を建てるIさんのキッチンを作らせて頂けることになりました。

Iさんが私たちを見つけてくださったのか、設計事務所さんが私たちを見つけてくださったのか、あの時電話で設計士のNさんがどうおっしゃっていたか忘れてしまったのですが、設計と施工を一貫して行なって頂ける会社さんに巡り合えたので、ちょっと遠くてもお話を請けさせて頂いたのでした。

作ること自体は、どの地域にお住まいの皆さんのところにも作ることはできるのですが、納品した後のことを考えると遠距離というのは使う人にとってもなかなか大変なことが多いと思うのです。

キッチンというと使っていくと必ず消耗している部材が出てくるので、そうなった時に距離が遠いとちょっとしたことで伺いづらかったりします。そうなってしまうと、不具合や不便を感じながら使うことになってしまうかもしれないので、今までこのくらい距離が遠い場合はなかなかお請けできなかったのでした。ですので、初めての群馬県。

そして、今回のように設置後のメンテナンスについても工務店さんのバックアップがあると私たちも仕事がしやすいなあ、とあらためて思うのでした。

そのIさんの現場確認のために3時間ほど電車に揺られて藤岡市に。八高線は途中からディーゼルに変わって、初めて乗る二両編成のディーゼル車にワクワクしたのでしたが、若干車内で感じる油の匂いと、何気なく車内で読み始めた国枝史郎の「神州纐纈城」がスマートフォンだと難しい漢字と言い回しで目がチカチカしてしまって何となく子供の頃の車酔いが激しかった時分を思い出しながら揺られていたのでした。

キッチンの床:家具屋の自宅

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先日行ったスタッフを招いての新年会の時には、お料理の準備だけではなく、お掃除もしました。

お客さんが来てくれる時だけする(笑)キッチンの床の掃除をしました。

暮らし始めての4年目のキッチンの床。アカマツ材です。

キッチンマットを外すと色味の違いがよくわかりますね。
うちの場合は日陰のキッチンなので、日焼けではなく汚れによる変色と思われます…。
キッチンマットで覆えないキッチン近くの床の汚れがすごかったのでそこをきれいにすることにしました。

汚い画像を失礼します。油跳ねの汚れがシミのようになっていますね。

扉にも跳ねているのが見えますね。

我が家は無垢材無塗装の床ですので、セスキ炭酸ソーダ水を吹きかけて、お掃除シートでごしごし擦り、乾いた布ですぐふき取る方法で行います。

完全にではありませんが、きれいになりました。

再び汚い画像を失礼します。後ろ側のパントリー近くの床・扉まで汚れていますね。ワークスペースの幅は100㎝です。自分の想像よりも油が跳ねているのですね。

こういう汚れを見ると自分の体も油を浴びているのだから、調理中はエプロンをした方がよいのだなと改めて思います。

汚れは落ちてべたつきはなくなりました。扉にも同じようにしましたが、オイル塗装がされているので、洗剤が浸透しないからか、床ほどははっきり汚れは落ちませんでした。

この方法で行えば、床全体の変色具合も和らぐのでしょうか。

暖かい季節になったらさらに油汚れは落ちやすいと思いますので、その頃に試してみようと思います。

その時にはまたご報告したいと思います。

ナラのキッチン背面収納

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2023年1月25日

Yさんのところに取り付けた新しい食器棚。

10年前にキッチンを作らせて頂いた時から暮らし方が大きく変わってきて、あの時、Yさんの子育て方法をいろいろと教えてもらったのに、その子たちがもう成人するのだそうで、早いなあ。

家族の動線も変わってきて、お母様とも一緒に暮らす日々が始まるということで、「しまうものが増えちゃうのよ。」と言われて始まったこの形作り。

当時あの食器棚を作ってしばらくして、Yさん肩を傷めてしまった時期があって、上に開く扉が少し億劫になっていたこともあり(大変勉強になりました)今回は大きな引き戸の収納になりました。

10年前に蓄熱暖房で板がひび割れるほどそっくり返ってしまった扉もきれいに取っておいてくださって。「イマイさん、あの時割れた扉を突板っていうのかしら、その突板の扉に変えて頂いてあの木目は主人はとても気に入っているのだけれど、私はやっぱりあの当時の扉のほうが良くってね、ずっと取っておいたの。」と物置から引っ張り出してこられた時には、ハッとしたのでした。

・・そうか、板が歪んだりしても好きな表情ってあるのだなって、今さらながら気づかされたのでした。

それで、その扉を引き取らせて頂いて、湿らせてラップをかけて少し強めに矯正して、さらには反り止めの金物をつけたら、どうにか元に近いくらいまで戻すことができて、10年越しに扉が帰ってきた、と喜んで頂けたのでした。

というところで、私がうっかり1ヶ所採寸に思い違いがあって一部の部材だけ取り付けることができなくなってしまって・・。

ノガミ君とワタナベ君にはその部材だけ持って帰ってきてもらってちょっと加工し直すことに。

来週それを取り付けたらすべて完了です。

おまたせしてすみません、Yさん。

準備

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2023年1月22日

前日はダイスケさんと新年会の準備をしておりました。

スタッフのみんなスリムな体型なのによく食べることは知っていたので、来てもらうからにはおなか一杯にして帰ってもらいたいですからね。

どうしよう、どうしようとダイスケさんと思案する中で、「餃子が良いよね、餃子が良いよね。」ということでまずは餃子。焼いていると火の前から離れられなくなりそうなので、水餃子にしようと。

「あとはやっぱり焼売が食べたいよね。」

「それなら煮豚と煮卵も作らないと。(何かそれならなのか結局分かりませんでしたが。)」

「野菜がないよね、ポテトサラダ食べたいよ。」とダイスケさん。

彼は私の母が作うマヨネーズがほとんど混ざっていないようなあのサラダが好きなのです。

「でも、しっかりした料理ばかりだから、魚だ、魚だ。」ということで、漬けた魚と、漬けたトマトも用意することに。

もう居酒屋ですね。

さて、作業としては、OIGENの深型鍋でロース塊肉3つをぐつぐつ煮込んで煮豚を仕込んでいきます。今年の個人的なテーマは、じっくり煮込むものはざらめ糖を使うこと。

昨年、ざらめ糖使ってみたいなとずっと思っていたのですが、買うのを忘れて調理の時に、「あ、買うの忘れてた。次は買っておこう。」というのをずーっと繰り返し(笑)、あっという間に1年経ってしまいましたので、それでは何も変わらないのでよくないとようやく反省したのです。人生変わるほどのことではないのかもしれませんが、小さなことでもやってみようと思ったことは、一つ一つちゃんとやっていこうと思っています。

ダイスケさんには、焼売と餃子を担当。私はこんなに小さく切りませんが。やるとなったらちゃんとやる細かい性格のO型ダイスケさんと、A型だけど大雑把な私の性格の組み合わせで、我が家のバランスが保たれているようです。

我が家の焼売にはタケノコとシイタケを入れて、蒸すときに千切りキャベツを敷くスタイル。そして、餃子は合い挽肉にニラしか入れないスタイルで、我が家の味を食べてもらうことしました。円卓を真っ白にしながら黙々と包みます。(焼売おおきい・・。)

それと並行して、ポテトサラダもダイスケさんに。そんなに入れて良いの、と思うくらいコショウを入れておりましたが、翌日のみんなには好評でしたね。マヨネーズは母の味が良いと言っていたけれどやっぱりたくさん入れておりましたね。(笑)

ここでダイスケさんは工房へ戻っていきましたので、あとは漬けるお料理だけを仕込んでひとまず準備完了したのです。

たまにこういう時間も楽しいわけです。

翌日みんなにはとても喜んでもらえてそれが私たちへのご褒美。

ケーススタディ:家具屋の自宅

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2023年1月21日

昨日の午後は新年会でした。

ダイスケさんが「みんなにうちに来てもらいたいな。」としばらくずっと言っていたので、では新年会もかねて、みんなで我が家でご飯をたべようかという話になりました。

キッチンや家具は約4年前に主にノガミ君が担当して作ってくれたもので、取り付け時にはワタナベ君も参加してくれて、(ほかのスタッフはすっかりうちから出ていってしまいましたね。)暮らし始めて約半年後のオープンハウスにはノガミ君も応援に来てくれたのですが、そういえば、それ以降は実際に使っている様子をスタッフのみんなに見てもらう機会はなかったのでした。

みんなおなか空かせてたから用意しながら慌てて撮ったらビールにピントが合ってた、残念。

張り切って前日から準備に取り掛かったメニューは、煮豚、餃子、シュウマイと蒸し野菜、漬けマグロ、鯛の昆布じめ胡椒、ポテトサラダ、煮卵、トマトのマリネでした。みんなおいしいと言ってよく食べてくれたのでよかったです。

お酒を飲みながら、「えー、そうだったの!」と聞かせてもらえるエピソードの数々は裏話のようで面白く、普段忙しくてなかなかゆっくりお話聞く時間もないので新鮮でした。

時々真面目にこれから私たちはどういう風にやっていけばいいのかのお話もちゃんとしました。

楽しくって、暗くなってしまいましたが、せっかく来てもらったので、作ってもらったキッチンや家具たちの現在の姿を確認してもらいました。

「ここってどうやって加工したのですか?」

「鏡板は何ミリのもの使ったんでしたっけ。」

「框にしたけど膨らんで擦っちゃって鉋かけたけど2年くらいしたら落ち着いたかな。」

「このサイズだと角のみが入らなかったので、ドミノを使うことにしたんです。」

「こんなに薄いのに留めが開かずにきれいなままですね、作った時ちょっと怖かったんですけど。シナって動きづらいんですかね。」

などなど、キッチンや家具を一つ一つ見ながらみんなで意見交換できたのでした。

「図面通り作った家具の使ってる様子をこうしてじっくり見られる機会はないですから。よかったです。」とノガミ君。

我が家を建てるとき、ショールームのキッチンはあくまで展示用で使えることは使えても毎日使っているわけではないので、できれば自宅のキッチンは、木のキッチンを使っている様子とその経年変化を見せられたらいいよねという自分たちの思いは自分たちで使う心地良さのほかにお客様にその様子を見てもらいたいという要素が強かったのです。

でも昨日みんなに見てもらっていて気づきました。制作スタッフのみんなにとっても、自分たちが作ったものを実際に使っている様子を見ることができる場所なのだなあと。

「そうだった、そうだった。ここはケーススタディの場でもあるんだ。」と改めて気づくことができました。

みんなで加工の仕方など作り方を振り返れて、これからのキッチンや家具作りに活かしていけることでしょう。

よい新年会だったのでした。

お礼

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2023年1月18日

今年もたくさんの年賀状を送っていただきありがとうございました。

ご家族のお写真やお出かけ先のお写真だったり、皆様が健やかに過ごされていることがわかり、

その生活の中に私たちが作らせていただいた家具やキッチンがあるのかと思うと、改めてうれしい気持ちになります。

ありがとうございました。

ちなみに、今年は切手シートが数枚分当たっていました。有効に使わせていただきたいと思います!

湘南にしひがし

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2023年1月17日

おーさむい、さむい。

まるで冷蔵庫の中のようで、アイもなかなか事務所から出ていかないでちょっと階段のそばまで出ていってもまたすぐに戻ってきちゃうくらいで、コロコロしてきたね。

5年前に食器棚とテレビボードを作らせて頂いたSさんから最近声掛けして頂いて、家を移るのだそうです。

私よりもぜんぜんお若いSさんなのですが、将来的にご両親と住むことを見越した家にするということで、「近くですてきなところを見つけたのです。」とご相談を頂いたのでした。

テレビボードは新居に移動するそうですが、食器棚はその場所に合わせてきちんと作ったので、次にその家に住まわれる方に使い方などをきちんと説明をして、「ちゃんとイマイさんのウェブサイトのことも紹介しておきましたから。」と私たちの宣伝もしてくださって(笑)、引き渡すことになったのだそうです。

そこでその新居にまた食器棚を、というご相談で昨日は鵠沼まで出掛けておりました。途中で雨も降ってきたらもうかき氷の中のような寒さでしたね。でも久しぶりにSさんにお会いできてうれしい時間でした。帰りはそのまま辻堂まで近道できそうなことが分かりましたので散策のつもりで。

こうして歩いてみると、以外にうさぎパンさんやandmandoさんが近かったり、やはりうれしい時間だったのです。

そして、今日は大磯。

「イマイさん、わざわざ電車で来られたのですか!駐車場の案内しておけばよかった・・。」と今回家具のお話を取りまとめてくださったecomoのKさんに言われたのですが、「全然電車で良いのです。」

今回家具を作らせて頂くMさんのお宅に来るまでも、車じゃ辿り着けないところにお魚屋さんがあったり、こうして水路があちこちにある様子を見ることができたり、帰りに通り過ぎたお魚屋さん(が多い)でも「よかったら、うちで炙っていきましょうか。」「あら、ほんと!助かるわ。」なんて心地良い会話が聞こえてきたりして、車だと気持ちがせかせかしてしまいがちな自分にとってはこういう時間がよいですね。

Mさん、すてきな家具をお持ちで、Kさんと一緒にどんな形が実現できるかをいろいろとお話させて頂きました。

楽しみですね。

価格改定のお知らせ

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2023年1月16日

皆様、いつもフリーハンドイマイを支えていただきありがとうございます。
私たちはキッチン・家具と合わせて、木製雑貨の製作も行っておりまして、細々ではありますが、目に留めていただいたお客様からご注文をいただき、作らせていただいておりました。
皆様もご存知の通り、
昨年から制作に関わる全てのコストが値上がりしておりまして、
新年を迎えたタイミングで見直しを致しました。
作り続けていくとマイナスになってしまうことがわかり、価格を維持することが困難な状況となってしまうので、やむなく値上げをさせていただくことになりました。大変申し訳ございません。
今後もより一層サービスの向上に努めてまいりますので、ご理解いただきますよう、よろしくお願い致します。

お味噌づくり:家具屋の自宅

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2023年1月15日

SNSを見ていると、味噌づくりワークショップをお知らせをされるお料理教室の投稿が目立つようになってきましたね。

この家に越してきてからお味噌作ったことがないな、株分けした植物も元気だし、家族もここでの暮らしが体に馴染んできた気がするので、お味噌づくりをしてみることにしました。

キッチンを作らせていただいたご縁のキッサコさんのワークショップに参加したことがありましたし、(もう5年前のことでしたが…。)レシピをいただいていましたので、思い出しながら作ってみることにしました。

1キロの大豆を茹でるのに、3倍の容量の鍋が必要ということで、会社から直径25㎝高さ25㎝の寸胴鍋を持ち帰り用意しました。

「大豆を最低18時間は水を替えながら漬けて置き、柔らかくなるまで4~5時間茹でる。」という所要時間の逆算ミスで、ガスコンロ渋滞しながらの夕ご飯支度となりました。

このことで気づいたことがありました。我が家はプラスドゥを使っていますが、大きい鍋を選ぶ時に、平たく大きなアルミ鍋を使っていたら、他の二口との火元がずれて何も作れていなかったと思います。

長時間煮込む料理をしやすくするためには、ほかの火元に干渉しない形のものをえらぶこともポイントだなと思いました。

夕ご飯を食べ終わった後、材料とありったけのボールとお鍋をテーブルに置いて、「みんな手伝って~!」と半ば強制的に家族みんなで味噌づくり開始です。

ハルとダイスケさんには煮た大豆を袋に詰めてつぶす作業、チアキには米麴と塩をすり合わせる作業をしてもらいましたが、「なんか手がすべすべしてきた。」というチイ。

「え、どれどれ?」と触らせてもらい、「ほんとだ~!」と目を合わせて、大きくなってきて一緒に過ごす時間の減った子供たちとの、こういう時間って楽しいですね。(私だけでしょうか。)

我が家は直径130㎝の丸テーブルを使っています。4人暮らしには大きめのサイズになりますが、こいう作業をするときには小さく感じます。

ダイスケさん「これでどのくらい分のお味噌になるの?」

私「出来上がりが約4キロだっていうから、1キロ3週間持つかなくらいなので、2~3か月分かな。」

ダイスケさん「え~、1年分なんて大変だよね。」

という話をしながら作業は進みます。何でもそろっている生活に慣れてしまうと日々のありがたみを忘れてしまうから、自分で手を動かして時々思い出さないといけないと思っています。

つぶした大豆と塩、米麹を混ぜたら、味噌球を容器に投げいれ空気を抜きながら詰めていくのですが、この作業で、ペンダントライトまで味噌が飛び散りこびりついていました。

テーブルからペンダントまでの高さは約80㎝。周りも結構汚れる作業ですので心の準備をしてやろうと思います。作業の後は床の水拭きもしました。

容器は、タッパーウェアのものを使っています。実家の頃、母は緑色のものを使っていました。

海苔とか昆布とか乾物入れにしてたかな。

母と同じアイテムを使うとお守りのようで、うまくいく気がしているのです。

家族みんなの協力で無事に出来上がりました。

家の中で一番涼しい場所は玄関土間なのですが、西日が当たるからか、そんなに寒い場所でもないので、今回はビニールを二重にして縁側の下の置いてみることにしました。

さて、どうなりますかね。おいしくできますように。

現場へ

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2023年1月14日

Tさんのキッチンと家具の現場調査に行くダイスケさんに東静岡まで同行させていただきました。

T さんご夫婦は昨年の6月に我が家の暮らしている様子を見に来てくださったお客様で、民藝にもとても詳しくていらして、私よりもはるかに年上のお二人なのでしたがとても思いが近く感じさせてくださるお客様なのでした。

その後、平成建設さんの静岡支店で行なわれた家具やキッチンのお打ち合わせの時にも同行させていただいておりましたので、今回の現場調査にもダイスケさんと一緒に伺わせていただいたのでした。

現場調査というと、トラックで通れる道順を確認したり、足場はいつ外れるか、搬入経路、最終図面から変わったことはないか、そのようなことを現場監督さんと確認するのかなと思いながら、一緒にお話を聞かせていただきました。

今回は何度も一緒にお仕事をさせていただいている平成建設さんでいつもの納まりを分かってくださっているのですべてゼロの状態から確認しなければならないような細かさはなかったそうですが、

キッチンにおいては、使うタイルによってその厚みがキッチンや機器に干渉しないように逃げをみてレンジフードを付ける方法とその設置のタイミングを確認したり、

洗面所においては、片側の壁に「方立て」があるの、壁と方立のチリの出を確認しておかないと引き出しを引き出した時に方立てに当たってしまうからチリよりも少し大きめに逃げを見る時にどのくらいのサイズにすることが適当か、またこの場合は「インロウ」加工が使えないので、別の施工方法を検討したりなどなど。

私にはまだまださっぱりなのですが、お家が完成してから取り付けるわけではなくて、大工さんたちの作業の途中で取付作業に入らせていただくわけですから、現場の進み具合に合わせて家具の作り方・納まりが変わるのだなと、あらためて勉強になったのでした。

キッチンと家具の取り付け予定は3月、お家に完成は5月ということで、いよいよこの仕事が始まるのですね。

Tさん、楽しみですね。

東静岡まで

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2023年1月12日

いよいよ始まる年明け一番の大きな仕事が平成さんから相談頂いたTさんのキッチンと家具作り。

民藝についてのいろいろなお話を聞かせてくださったTさんの形を実現するために頑張ります。

現場のほうが進んできたところで、今日は監督のOさんと納まりの打ち合わせをしてきたのです。

家具の台数も多いし、寸法確認も大変かもしれない、ということでアキコを連れて出掛けたのですが、やはりそのあたりはいつもの平成さんの精度で仕上げてくださるということでほぼ図面通りの寸法で制作して問題ないことになりまして、細かな打ち合わせと搬入経路を確認したらあっという間に終わってしまいました。

2時間ほど掛かるかなと思っていたのが30分ほどで終わりましたので、そうだちょっと寄りたいところがある、ということで、ちょうど先日テレビで見ていた久能山東照宮をお詣りしてきたのでした。

1159段あるという参道の石段(ここまで積まれた石の存在がすごい)を登りきる頃には一人で汗だくになってしまいましたが、日光の印象とはまた違って物静かなで心地良い場所でした。

いろいろな神様がいらっしゃってみんなの健康と幸先良いお仕事の始まりを感謝して挨拶してまいりました。

さあ、頑張ります。

クルミとステンレスバイブレーションのアイランドキッチン

Category : 日記「自由な手たち」

2023年1月11日

今回の天板は5ミリのステンレスバイブレーション仕上げのものでしたので、重量は100kgは越えるのです。

それを2階に搬入するとなるとバルコニーの手摺りを乗り上げるのは力が入らないだろうし、笠木を傷つけちゃうだろうし、どうしようかと思案していて、工務店さんの提案で階段の取付を後回しにしてくださったおかげで無事に上げることができたのでした。ひと安心。

また、茗荷谷のこのあたりは私の祖父母が小石川の辺りに住んでいたのでよく分かるのですが、細い道が迷路のように入り組んだ土地で、トラックで現場に到着するまでも延々と後進しながら入っていかなければならずいろいろ悩ましかったのですが、もう安心。

このあと制作を担当したノガミ君と今回はサポートのヒロセ君、タケイシさんの3人できれいに仕上げてくれました。

次回はIさんがオイル塗装を行なうタイミングでお邪魔させて頂きます。

ナラ板目のカップボードとオープン棚

暮らしかたの思いかた

Category : オーダー家具・オーダーキッチン制作事例, 食器棚のオーダー

2023年1月8日

「オーク板目の吊棚と食器カウンターの制作」

東村山 S様

design:Sさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:daisuke hirose
painting:daisuke hirose

ナラ板目のカップボードとオープン棚
リビングダイニングから見た時の印象。Sさんのイメージ通りにすっきりした印象に納まりました。

「はじめまして、Sと申します。
ウェブサイトの制作例を拝見してとても気に入りました。
キッチン周りのリフォームを考えておりまして、現在キッチンはトーヨーキッチンのアイランド型の白いものに決めております。
キッチンの背面に270cmの収納を考えており、シンプルなカウンターにしたいのですが、デザインと機能性で好みのもの見つからず、こちらの家具に興味を持ちました。
ぜひプランを作っていただきたいと思っております。
近々、工房にも行きたいのですがご対応可能な日はありますでしょうか。
よろしくお願い致します。」
と、Sさんからメールを頂きました。

さっそく日程を調整させて頂いて、こちらにいらして頂けることになりましたが、その前に大まかなイメージを考えておけると良いかと思いまして、Sさんにどのような形を考えていらっしゃるのかをお聞きしました。
そのほうが当日はより具体的なお話もできますので。

Sさんから頂いたスケッチ。

「イマイ様、ご連絡ありがとうございます。
スケッチを添付ファイルでお送りします。
私たちは、もともとカントリーな感じは好きなのですが、40代になり今回は落ち着いた雰囲気にしたいと思っています。
購入を決めたキッチンの天板や脚はステンレスが重厚な感じです。
木目で取手のないシンプルな収納であれば、合うのではないかと思っています。
また、気に入っているタイルがあり、壁面に使おうか検討中です。
このキラキラした感じがイマイさんの家具とよい感じに合わせられるかが分からなくて。
よさそうであれば、このタイルを使おうと思いますので当日ご相談させてください。
壁から出ている一枚棚は工務店さんにも相談していますが、壁面はおそらく石膏ボードなので補強工事が必要とのことです。
今週末に工務店さんと打ち合わせをします。
大変恐縮ですがその前に分かる範囲で情報等ご提案をいただけたら幸いです。
よろしくお願いいたします。」
というメールと一緒にスケッチを頂きました。

その頂いた内容をもとに、私のほうで作りやすさと使い勝手を検討してあらためてスケッチを描いて、概算の御見積と一緒に送らせて頂きました。

Sさんのご要望からどのような形が実現可能か少し手を加えさせて頂いて考えた形。ただ、このプランだと予算を上回ってしまうということで、この形からもう少しシンプルな形にできるように考えていかないといけないのでした。

「イマイ様、早速ありがとうございます!!
詳細な情報もご提案も大変参考になります。
スケッチも素敵です。
吊棚のご提案、とても魅力的です。」
と、さっそくお返事を頂きました。
ただ、予算オーバーでどうしたらよいかを迷っているということでした。

宙に浮いたオープン棚
当初、食器棚の上には壁から飛び出た板を2枚付けたいというのがSさんの希望でした。そうなると、壁を一度解体してその壁の中に板を差し込まないといけないので、工務店さんに施工をして頂く形になります。リフォーム工事とは切り離して考える必要もありましたので、今回は私たちのほうで施工しやすい形で提案させて頂きました。そこで、ただの板ではなく箱状にすることで強度に問題のない形にしようと思いまして、かつ、板だけが飛び出た印象に見えるようにと、最初のスケッチでは考えていたのですが、あの形だとちょっと加工の手間が掛かるので、今回のようなシンプルなボックス型にしました。
宙に浮いたオープン棚
角は留めに見えるような印象で仕上げています。また壁に取り付ける際にビスが見えないような工夫をして取り付けています。

直接こちらにいらして頂く場合、その場でどのくらいの制作費用が掛かるかをお伝えすることはなかなか難しいことが多いです。
私たちの考え方としては、どのくらいの材料を使うかを拾い出して、その家具を何日間で制作できるかという形で見積もっていきますので、細かい加工が増えれば材料も増えますし、加工時間も増えます。
小さな加工でも加工時間が大きく掛かってしまうこともあります。
配線を通す穴を一つ増やすだけでもただ穴を開けるだけではなく、穴の周りもきれいに仕上げないといけなかったり、本棚などを作る時も高さが変えられる可動棚よりも固定棚のほうが返って加工する手間は複雑になったりします。
そのような工夫のしかたを考えていくとその場で「ざっくりいくらくらいでしょうか。」とよく言われるのですが、見当はずれな答えになってしまうこともあります。
ですので、こうして事前に大まかな形と金額をお伝えできるほうが確実で、この時点で大きく予算とかけ離れてしまうようでしたら、東村山から来られるSさんとしても時間を掛けてここまで来るべきかどうかの判断材料になると思いますので。

ナラ板目のカップボードとオープン棚
カウンターの様子。なるべく左右の壁ギリギリまで延ばして作れるようにしています。ただ、建築の壁が必ずしも真っすぐできているものではないので、現場にて削り合わせる必要も出てきます。そうなる時にこの分厚い板を削るのはなかなか大変ですので、削りやすいように見えない部分で削り代を設けています。また左右のキャビネットと壁の間は多少の逃げを見ておいて、最後に同じオーク材で隙間を埋めるようにして仕上げています。
フライパン、鍋の収納部分
右のキャビネットはオープンの棚です。奥行きをフライパンの奥行に合わせているのでちょうど取り出しやすい形になっています。

そして、オーバーと言いつつも予定通りに伺いますとおっしゃってくださいました。
そのように考えてくださっているのですから、どうにか減額できる方法も考えないといけませんね。

そして、いらして下さった当日に、どのような部分でコストが掛かってくるのか、どの部分で減額ができるのかといろいろとお話をさせて頂きました。
市販されている家具のように、このパーツを取るといくら下がりますというような分かりやすさで説明できないため、この部分をこうして作り方を簡素化するとこうなります、というようなかなり具体的なご説明をしながら、コストと使いやすさのメリットデメリットをお伝えしていきました。

そうしておおよそ形がまとまりました。

ナラ板目のカップボードとオープン棚
天板はこのように使ってくださっています。オイル塗装仕上げの天板なので、金属類をそのまま置くとシミができやすかったり注意は必要なのですが、やはり触った時の質感が良いものにしたいということで、オーク無垢のオイル塗装仕上げにしています。また、今回打ち合わせをする中でおもしろいアイデアが生まれたのがこの中央の棚板です。
ナラ板目のカップボードとオープン棚
中央の棚板は、ただの木の板ではなくて、棚の中にハンガーパイプを渡しています。これはまな板などの湿ったものが置けたらよいな、というSさんの言葉から生まれた形で、フキンやフックをぶら下げていろいろな収納方法にもなるかも、ということで、このような形にしています。この下はゴミ箱を置く予定で考えていたので、棚の高さは変えられるようにしていて、不便があれば取り外したり、高さを上げることもできます。

いよいよリフォームが始まり、背面収納を作るタイミングとしては、「その工事が完了して少しキッチンを使ってみて動線が分かってきてから作りましょう。」というお話にしていたので、そのあたりのタイミングで採寸に伺わせて頂きました。
この動線については、エッセイでも個人的な意見を書いておりますので、興味がありましたら読んでみてくださいね。
例えば、このような感じです。

・no.8 2021/10/14 パントリーについて

・no.232022/5/6 キッチンとの向き合いかた

・no.24 2022/10/4 引き出しの高さについて思うこと

ナラ板目のカップボードとオープン棚
今回の引き出しはシナ合板で作りました。レールはいつも使っているハーフェレのソフトクローズレールですのでレールが見えずにすっきりしています。
ナラ板目のカップボードとオープン棚
私たちの家具では通常はこのソフトクローズレールを使っています。また、ソフトクローズレールもいろいろなメーカーやいろいろな取付方法があるのですが、私たちは今のところこのレールで落ち着いています。
ナラ板目のカップボードとオープン棚
この底付けのレールのメリットはレールが見えないことです。レールが見えないということはどういうことかというと、以前にお客様から頂いたお話で、横付けレールを使っていた時にお水がかかった、お塩が掛かったということですっかり錆びてしまったことがあったのです。そのようなことが起きないというのは長持ちの方法のひとつなのかと思っております。
ナラ板目のカップボードとオープン棚
ソフトクローズレールには横付けと底付けの2通りのものがあります。私の感覚としては底付けのほうが引き出しの底を上げないというデメリットがあるのですが、底面につけるダンパーはレールの機構的に安定しているので、クローズするバネの力がちょうど良いのです。このバネの力が結構大切で、普段キッチンや食器棚をよく使うのは女性が多いと考えられますので、手指で引き出しを引く力が弱くなってくる時にバネが強いと使いにくいという声を頂いたことがありました。そういう面も考えるとこのレールが最適だと考えております。

やはり家具というのは暮らしながら必要だと感じるものだと思うのです。
ですので、可能であれば暮らしながら形作られゆくことが望ましいと思いますので、今回のような形はこういうタイミングで作らせて頂けることでより明確な形が分かったということで、当日現地を拝見させて頂きながら良い打ち合わせができました。
もちろん、キッチンのように住み始める前から用意しておかなければいけないものももちろんありますので、そういう形はなるべく形や使い方がイメージできるようにお伝えすることも私たちの大きな仕事です。
リフォーム工事の最中では、こうしたイメージを伝えるコミュニケーションが工務店さんに不足していたそうで、大変困難なリフォーム工事になってしまったというお話もお聞きしたのですが、こうしてSさんの希望される形が無事にできあがって納品後にお話しさせて頂いた中で、今はキッチンも快適に使えているようでこの背面収納との組み合わせがとても快適です、と喜んで頂
けているとのことでうれしく思っているのです。

ナラ板目のカップボードとオープン棚とキッチンとの距離
キッチンと食器棚の間のスペース。食器棚両側の壁のほうが食器棚よりも出ているので、一般的な形で考えると壁のでっぱりに合わせてすっきり見せようという話が出るのですが、今回はあえて少し引っ込めて奥行400ミリにしています。
食洗機から直接引き出しに食器をしまう
それは、その奥行でもSさんがしまいたいものが十分収納可能だということと、何よりもこの食洗機を開けた時と引き出しを開けた時のバランスがちょうど良くなるようにしたい、ということで今回のサイズにしているのです。この部分がSさんにとって一番ストレスなく感じられる点だったようで、ご挨拶に伺わせて頂いた時には大変喜んでお話してくださったのでした。

オーク板目の吊棚と食器カウンター

価格:550,000円(制作費・塗装費)

 

*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は40,000円から、取付施工費は40,000円から)

Eさんのところに

Category : 日記「自由な手たち」

2023年1月9日

お父様が使ってくださっているこのサクラとウォールナットとシナを使ったテーブルのある収納。足腰に力を入れづらい時があって、そういう時にこのスライドテーブルが気づかないうちにスルスル入り込んでしまって、あやうく食事が落っこちそうに、ということがあったりして引っ張り出した状態で固定できたらよいのですが、とEさんから相談を頂いておりました。

引っ張り出した時にロックするスライドレールというのもあるのですが、むかしに何度か使ったことがあったのですが、何となく使いにくいなあ、と思ってそれきり使わなくなっていたのですが、それを今回使うとしてもお父様が細かな動作がしづらいこともあって、ロックの解除がしづらいだろうし、他に何か方法はないかなあとあれこれ思案しまして、一番シンプルに板とフェルトを使ってあるポイントに来たら摩擦で動きにくくなるという形にしました。これが一番動作が少なくてさらには構造も単純なので、摩耗しても交換しやすい。

Eさんにもお父様にも喜んで頂けてひと安心。

ちょうど使っている感じも拝見させて頂けて良い時間でした。

この革張りの天板はお父様にもケアする看護師さんが物書きをする時にもとても良いとおっしゃってくださっているとのこと。うれしいお言葉。

家具作りって紋切形には収まらないことが多いですから、その人の使い方に合わせて工夫ができる余地や可能性がある形だと作るほうも使うほうも都合が良いのです。

明日から仕事始めとなります

Category : 日記「自由な手たち」

2023年1月8日

新年のスタートはゆっくりとなっていて、私たちは明日から始業となります。

数日前からノガミ君がやってきては自宅の家具作りに励んでおりますが、今日は家族みんなで来るそうです。

先日自分の家具を仕上げたヒロセ君も荷運びに使った布団を返しに来るということで、奥様とララさん(犬さん)と一緒に来るそうです。

賑やかなスタートです。

今朝、工房に来る途中、満月が沈むのがよく見えました。

心地よい日です。

私のアトリエ、ソファ

Category : オーダー家具・オーダーキッチン制作事例, オーダーチェア、オーダーソファ

2023年2月23日

「シナとフェザーとファブリック張りのオーダーソファ」

海老名 イマイ邸

design:akiko/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:iku nogami
painting:iku nogami

【最初に】

「イマイさんのところでは、ソファは作られるのですか。」
時々そう聞かれます。
大きな造作家具をオーダーで作ることをメインにやってきたこともあるせいか、ソファを作っているという印象がうすいのでしょう。
「もちろん、作りますよ。」
と皆さんにそう伝えているのですが、やはりなかなかご依頼頂く機会は少なかったりします。ソファというと専門で作っている工房もありますし、またそれ自身の形もなかなか浮かびにくいところもあったりして、作ることはできても作ろうと思える機会が少なかったのでした。
今まで作らせて頂いた形もソファというよりは、長椅子という印象で、やはりソファを作れるメーカーとは分かりにくいのかもしれませんね。
それならば、と自宅で使いながら皆さんに見てもらえるような形を考えよう、と思い立ったのでした。思い立つまでが長かったですね。

全体像。幅はひじ掛けを含めて1960mmあります。ひじ掛け自体が幅100mmずつあるので座れる部分は1760mm。体が大きなイマイ家でも3人で余裕をもって座れます。
ひじ掛けを外した様子。この形が美しい。背とひじ掛けのラインと形状が続いていく様がよいのです。ちなみにカラフルなクッションは真木テキスタイルスタジオさんの「ちくちくクッション」。

【ソファの思い出】

では、どんな形なら自分にとって必要な形になるのだろうか。少しずつ考えることにしたのです。
でもまず浮かんできたのはちょっと変わった思い出ばかり。
もちろん、子供時代にもソファがありました。
でもそこに座るというよりはそこを飛び越えて隣の部屋に行くための、自分の中の一番身近なプレイグラウンドにある障害物という感じだったり、風邪をひいて隣の部屋で寝ている時の心細い気持ちから、いつもソファのハイバック越しに両親の頭が見えていないと不安になるような心象が残っているくらいで、実際にそこに座って心地よいなと思って暮らしていたことはなかったかなあ。
それから、ソファの座面の間に自分がいつ変わってしまったコカ・コーラのグラスの破片が挟まっていて、不意にそこに膝をついた時に我知らず膝が血だらけになってしまっていたり。
それによくある話のようにソファに座るよりもソファを背もたれにして床に座っちゃうような、そんなスタイルのほうが落ち着いていたりして、なかなかなじみが薄かったのでした。
もともと、私は自分の暮らしの中でソファを必要と感じていなかったのかもなあ。

座面の高さをどのくらいにするか検討中。結果として予定通りの120ミリの厚みで仕上げてもらうことにしたのです。あと難しいのはひじ掛けの高さ。数字で表しづらい部分で、その人の腕の長さや肩の形、浅く座るか深く座るかで感じ方はいろいろですので、やはり座ってみてどう感じるのかを知ってもらうことが大事なのだなと実感します。

【暮らしの中のソファとは?】

ではどんな形にしたら良いだろうかとあれこれ思いめぐらすのでした。
自分の暮らしにあう形とはどんな形なのだろうって。
まず思ったのは、やはりオーダーキッチンや大きなオーダー家具とは違って、なるべく暮らし始めてから考えたほうが良いだろうなということでした。
暮らし方っていろいろあって、一つの家庭でも季節や年代が変われば暮らし方が大きく変わることもありえます。
先の変化は分からなくても、家族がどういう動線で動きたいのかって言うのは住み始めると分かってきます。
そういう姿が見えてきた時にあったら良いなと思える形が見えてくると思うのです。

我が家は玄関から2階に上がる動線上にリビングダイニングがあって、はっきり通路と居間との境もなく、また決して広いスペースではないので、リビングの中央にソファを置くと邪魔になっちゃう。なので、玄関寄りの壁に沿う形でソファを置いています。
それはもともとこの家を考えている時からの福原さんとのイメージ通り。
大きさについては、我が家はみんな体が大きいので、ゆったりしたサイズで。でもここに全員が座ることはないだろうから、ゆったり座れるくらいの2.5人掛け~3人掛けくらいのサイズにしたいと思ったのです。
それ以上広くすると動線の邪魔になりそうだということもありました。
高さは低め。これはアキコのリクエスト。なるべく足を投げ出して座れるようにしたい、ということで、普通のソファよりも低めにしています。
さらには奥行は体を預けられるくらいの深めにしてよりゆったり座れるようにしたいと考えました。
全体の形としては、やはり張り包みの仕上げは淋しいかなあ。木工やってるなら木組みの様子はきちんと表現できるような形にしたいなあ。
ひじ掛けはやはり必要です。ひじ掛けの仕上げをどうするか、デザインをどうするか、そのあたりは私のイメージがあって、カップが置けるくらいの広い面があって肘を置いても肩が疲れない高さで時々寝そべったりしたときに、クッションを充てると枕のようなちょうど印象が良いなと考えておりました。
形としては、「ぼくらの椅子」のひじ掛けのような感じ。
座面は硬めのほうが良いかな。でも印象として厚みを出したいからウレタンで調整しようかな。
背は柔らかめにしたいよね。どうしたらよいだろう。
そうやってあれこれ考えを突き詰めていくと、その形は当然のように素朴な形に帰結していったのでした。
奇をてらうような表現は好きではないし、あるがままの形をシンプルに見せたいと考えるとこの形になるのかな。
ただ、背の表情はとても良い形にしたいって思いがありました。
信じて頼ってくださる」のAさんのチェアの時もそうでしたが、椅子の後ろから見た時の美しさってとても興味を引くのです。
だから、今回のソファも今は壁に接する形で使っているけれども壁から離した時に表情の良さが掃除をするたびに気づかせてくれるのです。(笑)

背もたれ考察。背と肘の接合方法と背の補強の入れ方が正しいかどうか、制作を担当したノガミ君と一緒に試作を作って確認します。
脚の形状。どうしても丸みを出したかった部分。
その丸い脚が少しだけ末広がりになっている印象。
フレーム組みあがり。背と肘の関わりや背の補強の様子など、細かい部分が一番わかる写真。

【できあがりまで】

こうして、大まかな形がまとまりまして、制作に取り掛かったのでした。
素材はキッチンや食器棚などそのほかの家具の素材と合わせてシナの無垢材で作りました。
オークなどに比べると多少柔らかい材ではありますが、組み方さえしっかり考えればかえって弾力が出ておもしろい形になると思っております。
座の形状は後ろに向けて勾配をつけるかどうか迷ったのですが、ゴロっと横になる時の感覚と、また側面から見た時にソファの形を考えるとフラットにしたいと思ったのです。
では座り込んだ時の深さや傾斜といった感じ方をベルトやスプリングなどの素材で変えるかどうか迷いましたが、やはり座面は一般的な仕上げのウレタンにしました。
ベルトを使って感じられるほど座面を薄くする考えはなくて、スプリングの感触はなんとなくなじめなかったもので。 そして、今回張りを依頼したフジタケさんにもいろいろ相談に載ってもらって、フラットな座面でもかけ心地がよい形になることが分かってその仕上げで進めることにしたのでした。
下地は15ミリ合板でそこに硬いものから徐々に柔らかいあたりのウレタンで作ってもらい、脚のあたりが優しくなるように前後だけ丸張りしてもらって左右はマチを取って張ってもらったのです。
マチを取ると角が直角にしやすいので座面と座面の間の隙間が少なくシャープな印象になります。
また、座面を左右のフレームに少し入れ込むような形になっているので、丸張りだと納まらない部分もあったのです。
背も同じく、厚みをきちんと出して四角い印象を出すために左右はマチを取っています。
背の素材はフェザー。
3人でも十分座れる幅なので、座面も背も3分割にすると使いやすかったのかもしれませんが、何となく窮屈に見えてしまいそうでしたので、2つの大きな座と背にして作っています。それでも背が型崩れしないようにフェザーは中で羽毛がばらつかないようにブロック状に仕切られたクッションをサイズオーダーで作っています。
張地は革ではなく、布にしたくて、さらには少しザラっとした肌触り(ごわごわしない感じ)の毛やウールベースのもので考えて、フジエテキスタイルさんのタイムという張地で張ってもらいました。
夏でも冬でもさらっとした触り心地です。
そして、フレーム。丸みのある脚と、構造となっている材の接合をどう見せたらよいかを悩みながら考えていきます。 どうしても前後の脚は丸みをつけたうえで、強度と見た印象を考えてハの字にしたかったのです。そして、背もたれの印象。細い格子が並ぶ形でさらにはひじ掛けの形状と揃えたいと思っていまして。
そのひじ掛けと背もたれが非常に繊細な接合になっていて、華奢な印象だけれどもしっかりした作りにしたかったのでした。
そうしてようやく完成です。

脚の印象と座面が載せられた時のボリューム。前脚と座が微妙に変形しながらかかわりあっているところが可愛らしい印象。
普段見えない背中の印象。張地のマチの様子。そして、ちょっとくたっとなったフェザーの背とウレタンで張りつめた座の様子。座面もあまり大きな一塊にすると、ウレタンがへ経ってくると布地が撚れてシワが寄ってくるのでこのくらいの座面の大きさがバランスが良かったと思っております。
背の印象。背を支える補強とその補強を下で支える幕板の様子。ここがちょっと複雑で強度が必要なので、後ろの幕板は幅を広く作っています。

【できあがってみて】

完成してこの形が最良かというと、座る人の体の大きさにもよるかもしれませんが、私としてはやはり課題は多少あったりします。
座り心地はとても良い感じです。
背がそれなりの厚みがあったので、座の奥行をもう少し取った方が体を預けて座りやすかったのだろうと思えます。
背を外すとちょうど良い奥行と感じるくらい。
ソファの考え方として、背を低くする場合は座を硬めにして奥行を深く取って、デイベッドにもなるような使い方をすることが多く、背が高めの場合は奥行をすこしだけ浅くして使う形が多いようです。
そう考えるともう少し奥行きがあっても良かったかもしれません。
ただ、我が家のスペースを考えるとこれ以上奥行を増やすと部屋がかなり狭く感じてしまうこともあって、そのあたりのバランスは悩ましいところです。
奥行を取れないなら、少し座面を後ろに傾斜させてもよかったかも、という話にもなりました。そのぶん膝の位置が上がって、桃の裏のあたりにクッションを感じられてよいかもと。
でもそうなると印象がだいぶ変わるのと、座る時と立ち上がる時に高さが低いぶん力が必要だったりして、ここも悩ましいところです。

背の印象。座り込むとだんだんとくたっとなってくるのですが、左右にマチを取っているので高くずれしづらいのです。日干しするとまたパンっと膨らんでくれるのがフェザーの良いところ。体を預けるとふんわり沈み込んでいく感じはやはりとても心地よいです。
「櫂(カイ)」のような形をしたひじ掛け、そして背もたれ。この形好きなのです。今回はよりのっぺりした印象にしたかったので、うすくて面もそれほど大きく取らないで、素朴な表情のまま仕上げました。

しかし、こうして一つの形ができあがることで、いろいろな方向性が見えてきました。
自宅は、家具や建築の経年変化を見て頂く良い場所だと思っておりますので、定期的にオープンハウスを開催したいと思っております。
そういうタイミングで(それ以外の時でもご予約頂ければ見学できますよ。)キッチンや家具を含めて触って座って感じて頂いて、この家具たちを皆さんのかたち作りの最初のモノサシのように見て考えて頂けたら幸いです。
我が家で使い始めてもうすぐで1年。いつも誰かしらが体を預けている暮らしの道具になってきました。

シナとフェザーとファブリック張りのオーダーソファ

価格:480,000円(制作費・塗装費)

ブラックチェリーとコーリアンのL型キッチン

杉並モダニズム

Category : オーダー家具・オーダーキッチン制作事例, オーダーキッチン

2023年1月4日

「ブラックチェリーとコーリアンのL型キッチンとサクラのベッドフレーム」

杉並 S様

design:Sさん
planning:Sさん/daisuke imai
producer:kenta watanabe/kouhei kobayashi
painting:kenta wataknabe/honoka takeishi

「イマイ様。
カタログを拝見しまして、先日主人からお電話にて連絡させていただきました。見積もりをお願い致します。
キッチン図面は少し古いのですが添付させて頂きます。
・冷蔵庫を収納する棚は不要です。
・キッチン上部に飾り棚をつけたいです。
・食洗器はコンロ横になっていますが、シンク横に後々設置したいと思っています。
・シンク下部は引出し式のゴミ箱にしたいです。
・可能であれば、木目を縦方向にしたいです。
引出し等は添付のキッチンイメージ参考写真のような色をイメージしておりますので参考にして頂ければと思います。
宜しくお願い致します。」

マホガニーのような赤みの強い海外のキッチンの写真が貼付されたメールが届きました。

ブラックチェリーとコーリアンのL型キッチン
シンク側の印象。チェリーを縦目使いにしているのが今回の特長です。木目が規則正しく多数が並ぶ形も美しいのですが、個人的には赤みから白太に移っていくグラデーションが好きなので、単板に余裕があるなら少し贅沢ですが幅900ミリの材で3枚の単板で接ぎ合わせるように作っています。シンク右下は将来的に食洗機を入れるためのスペースで、今はプッシュ式の扉になっています。
ブラックチェリーとコーリアンのL型キッチン
コンロ側の様子。すべてきれいに隠せるようにということでこのデザインに納まりました。

そういえば先日男性からキッチンのことについて電話を頂いていろいろと話をさせて頂いたのでした。
電話ってね、その場で思うことを離していくわけですのでとてもリアルな意見をお伝えすることができるのですが、少し経つと忘れちゃうことが多いのです。
こういう場合はこういう作り方をするとよい形になります、とかこの高さならこういう引き出しの割付がちょうど良いかもしれません、とか決まりにのっとった話なら伝えやすいのですが、特に費用のこととなるとその場でお伝えするのは大変難しい。
システムキッチンと違って、キャビネットが一つの金額がいくらです、という形とは違って、この形だとどのくらいの量の材料を使って、何日くらいでできるかと考えていくので、なかなかその場で計算しづらいのです。特に電話しながら計算するなんててんびん座生まれの私でもなかなか難しい。

むかし、村上春樹の話の中で、右のポケットに五百円玉と百円玉、左のポケットに五十円玉と十円玉を入れておいて、手で触って同時に数えるって件がありましたが、そのくらい器用なら電話だけで鋭い話ができるかもしれませんね。
と、お話がそれてしまいましたが、その男性とどのような話をしたのか詳細までを思い出せないうちに、このメールをきっかけにしてキッチンのお話が進んでいくのでした。

洗剤ポケット付きのステンレスシンク
シンクの様子。洗剤ポケットを設けただけのシンプルな作り。また、シンクとコーリアンの開口を揃えてすっきりとした印象に。水栓器具はクリンスイのF904ECO。

印象としては使い古された深紅な印象を目指すというのでしょうか、あとあと気が付いたのですが、少し古めかしいフランスのインテリアという印象にまとまっていったのですが、当時はまだそのイメージなんだということに私自身がたどり着けなくて、マホガニーのような素材と白い石の天板の印象をイメージしながらお話は進んでいったのでした。

ところで今回はL型のキッチンの制作です。L型のキッチンというと、一人でキッチンをフル活用したい、というお話が多いのですが、今回のSさんのようなレイアウトだとキッチンの手前のダイニングスペースがとても広く採ってあるので、どのような使いかたでもストレスなく使えます。

シンク下はゴミ箱が収納できる引き出し
シンク下のゴミ箱用引き出しの様子。

今回のキッチンのプランを進めるにあたっては主に奥様ではなくご主人とお話しする時間が多くて、ご主人がお料理を主にされるのかというと、よくお聞きするとご主人は著名な方々のポートレート写真を多く撮られているフォトグラファーで、調理のメインは奥様になるのでしたが、このシンクとコンロが離れたレイアウトでしたらお二人で作業しても気持ちよく使えそうです。
それから、L型というとコーナーの部分がデッドスペースになってしまうことが多いのですが、今回もやはりその点には少し悩みました。
ただ、この部分にいろいろな工夫をしてもそれほど活用できなさそうで、コストもかかってしまうことと、将来的に食洗機を入れたいということで、そうなるとコーナー部分はおのずと使えなくなるので、潔くこのスペースは使わない形で話を進めたのでした。

コーリアンのシームレス加工
コーリアンL型部分の様子。写真だと分かりませんが、ちょうどケトルが載っているあたりがつなぎ目になります。また、高さ100ミリあるバックガードは機能的にもとても優れていますが、印象がどこか懐かしく映ります。

さて、今回のキッチンの天板はコーリアンで制作しています。
ステンレスというのは最初のイメージからかけ離れてしまうのでSさんとしては考えていませんでしたが、最初のイメージはクォーツストーンのように思えたのでその素材での制作も検討したのですが、L型だとつなぎ目が出てしまうことやコストが高くなることを考えて人工大理石のコーリアンにしたのでした。

まず、キッチンキャビネットはブラックチェリーを使って作るシンプルな構成でしたので、ある程度に分割して制作して搬入もスムーズに行なうことができたのでした。
コーリアンのカウンターも分割したので重量はありましたが問題なく運び込めて、天板の仮設置までは順調に進みました。
そして、コーリアンをつなぎ目部分の加工です。

ブラックチェリーとコーリアンのL型キッチン
引き出しの様子。1段目。
ブラックチェリーとコーリアンのL型キッチン
引き出しの様子。2段目。
ブラックチェリーとコーリアンのL型キッチン
引き出しの様子。3段目。
ブラックチェリーとコーリアンのL型キッチン
引き出しの様子。4段目。おやっ、炊飯器がしまわれています。こういう収納方法もあるのだなあ。

コーリアンはそのつなぎ目を消すことができます。
ところで、このSさんの間取りがとても特徴のある空間になっていて、1階は撮影のスタジオを兼ねた広いアトリエになっていてそこにポツンと大きな階段があります。その階段を上ってくると、このロフトのように思える2階の暮らしのメインフロアに辿り着くという感じです。
2階のメインフロアは、仕切りのまったくない大きな一つの空間になっていて、階段を上がるとすぐにこのキッチンが見えて、そのまま右を向くとリビングの先にベッドルームまでが見通せる、という不思議な空間です。
これほど大きな空間なので、当初はコーリアンをL型で制作したまま搬入しようと思ったのですが、重量的にそして階段を振り回すのに少し読み切れない部分がありました。
どうしようか迷っているところに、コーリアンの加工メーカーさんから、「このサイズを一体にして作って運ぶのはちょっと危ないと思われます。」という連絡を受けて、2枚の天板を現地でつなぐ、という施工方法にすることにしたのでした。
コーリアンは、樹脂でできているのでこういうつなぐ加工を行なうことでそのつなぎ目をきれいに消すことができるのが大きなメリットです。

ブラックチェリーとコーリアンのL型キッチン
ハンドルはかなぐやさんの「真鍮とって六角棒コの字」です。いつもサイズオーダーでお願いして作ってもらっていまして、ちょっと大きめの引き出しには約17センチほどの長さにしています。

ただ、今回の場合は、少し大変だった部分があります。バックガード(カウンター材と同じ素材で作る立ち上がり)の部分です。

壁付けキッチンの場合にバックガードをつけるかつけないかはそこで暮らす皆さんによってまちまちですが、個人的には付いているほうが安心かなあと思っています。
ただ、キッチンを見た時の印象として、バックガードがあると少しスッキリした印象が薄れることが多く、つけない方が今のところは多いかなあという印象です。
では、つけない場合はどういう仕上げになるのかというと、壁に張られたキッチンパネルやタイルとカウンター材の接する部分はコーキング仕上げになります。
コーキングは最初のうちは弾力があって隙間をしっかり防いでくれますが、10年以上経過してくると部分的に硬化して壁と隙間を作っちゃうことがあります。
その時に気がついてきちんと再充填するならそれで大丈夫ですが、うっかり忘れてその隙間から水が浸みこんじゃうと、ちょっとならよいのでしょうけれど、じわじわ継続的に染みこんでいくと中でカビがうまれる原因にもなったりするので、バックガードがあるとそういう心配が軽減されるので安心かなあと思うのです。

レンジフードはアリアフィーナのアンジェリーナ
レンジフードはアリアフィーナのアンジェリーナ。傾斜天井でしたので、ダクトカバーを変形させるのは納まりが良くないと思われまして、工務店さんのほうで下がり壁を作って設置しています。また、その隣のチェリーの壁付けの棚板。これはチェリー無垢材で作っています。私たちのほうで壁に穴を開けて取り付けるのは得策ではないので、大工さんに取り付けてもらっています。

今回はそのバックガードの立ち上がりの高さが100ミリとけっこう高いのです。
その高さがあるとちょっとした角度の差が上端では数ミリの誤差になってきます。カウンターもバックガードも基本的に樹脂を加工して接着して手作りで作っていくのでそういう誤差は当然出るのですが、それを現場で調整してフラットに仕上げていく部分が少し大変だったのですが、無事きれいに施工も終えることができたのでした。
このあとに設備屋さんやガス屋さんが無事に工事は完了してお引渡を行なうことができたのでした。

ガスコンロはノーリツのピアット
ガスコンロはノーリツのピアット。そして、今回は収納部分をすべて隠したいということで、その下は大きな引き出しにしています。

そして、それから4か月ほど経った頃、あらためてご連絡を頂きました。

「フリーハンドイマイ様、お世話になっております。
先日お電話でお伺いしました家具製作に関してご連絡いたします。
今回はベッドの製作をお願いしたく思っております。
添付にてイメージしている写真をお送りしておりますが、これを忠実に再現することは可能でしょうか?
素材が異なると思いますので細部まで完璧に、とはいかないことは重々承知しておりますが、木部のディテールなどは再現できるものでしょうか?
またこのような製作をお願いする場合に費用はどれくらいかかるものでしょうか?
ベッドはクイーンサイズを想定しております。
ご検討のほど宜しくお願い致します。」

ブラックチェリーとコーリアンのL型キッチン
ガスコンロ右の調味料用の引き出し、上段。
ブラックチェリーとコーリアンのL型キッチン
ガスコンロ右の調味料用の引き出し、中段。
ブラックチェリーとコーリアンのL型キッチン
ガスコンロ右の調味料用の引き出し、下段。

そういう内容のメールと一緒に送られてきた写真はどこか懐かしく美しい形のベッドでした。
調べてみると、シャルロットぺリアンがデザインしたというベッド。
たしかにそう言われれば、この不思議な室内空間にキッチンの色合いもどこかで見た色あいに思えたのです。
それはコルビジェの建築が載っている写真集で見たような無駄をそぎ落としたような色あいと形に思えたのです。
なるほど。
Sさんがイメージしている空間はそういう印象だったのか、と今さらながらに気が付いたのでした。

ヤマサクラのベッドフレーム
シャルロットぺリアンに習って作らせてもらったサクラのベッドフレーム。
ヤマサクラのベッドフレーム
フレームと脚はサクラで、スノコはコストダウンを図るためにシナベニヤ(シナランバーでは壊れてしまいますので)で制作しています。

このシンプルな形でしたらキッチン同様に実現可能ですよ。とお伝えしたのです。
「それはとてもうれしく思います。ただ、このベッドのような使い込んだような印象に近づけたいのですがそれは可能でしょうか。」と再びSさん。

たしかに写真に写るフレームの姿は、退色して塗装のツヤも落ちてしまった印象です。
しかも材の種類までは写真からは特定できず、似ている材で考えるとするならサクラが近いでしょうか。
ということで、そのあたりをSさんにご説明させて頂きました。

ヤマサクラのベッドフレーム
脚のサイズ感も習って。さらにSさんが一番気にしていたのが、脚がフレームの端から内側に入る印象。かなり内寄りの位置に脚がついているためフレームの端部がひずむといけないと思いまして、作りは複雑になって行きましたが補強となる力板を適宜入れて、さらに中央にも補助脚を1本設けています。

どのようなことかというと、素材の使いこまれた印象というのはとても美しく映ります。
ただ、それをできたての状態で表現することは難しく、意図的にダメージ加工、アンティークな塗装などの風合いを持たせることもできるのですが、私個人としてはそのような風合いというのは時間を経て生まれるものですから、人工的な工夫では生まれにくく、またそのような加工を施することで、時間が経った時に返って見え方に不都合が出てくるのではないかと思われるのです。
例えば、経年変化で木材の色が変わって来たのに、意図的に部分的に入れた色はなかなか日焼けしないで、時間が経つごとに不自然に目立ってしまったり、意図的なダメージと自然に生まれるダメージでは表現のされ方が変わって見えたり・・。
ですので、あくまでも写真の印象は写真の印象でしかなく、使い込むことでそこに辿り着くのだと思うのです。
というようなお話をさせて頂いたのでした。

お仕事柄、物事の見え方、美しさを理解されているSさんには納得して頂けまして、ヤマザクラを使ってその形を表現させて頂いたのでした。
本当はマットレスもあの独特の枕のようなクッションも実現できたらなあ、と思っていたのですが、そのあたりはコストの兼ね合いでこれからご自身で気に入ったマットレスを用意されるとのことでした。
でも、あの空間にマットレスが置かれた姿のベッドと使い込まれたキッチンがしっくり納まっている姿がいつか拝見したいなあ、とその時が来るのを楽しみにしているのです。

ヤマサクラのベッドフレームとシナ合板のスノコ
フレーム自体をうすく見せるためとマットレスのずれても脱落しないようにするため、(と、私は解釈しました)フレームの木端面はテーパーをつけています。
天板 コーリアン「カメオホワイト」
扉・前板 ブラックチェリー板目突板
本体外側 ブラックチェリー板目突板
本体内側 ポリエステル化粧板
塗装 オイル塗装仕上げ
キッチン仕上げ

ブラックチェリーとコーリアンのL型キッチンとサクラのベッドフレーム

費用につきましては、お問い合わせくださいませ。

元旦

Category : 日記「自由な手たち」

2023年1月1日

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

初日の出を見にダイスケさんと近くの公園へ行くと、丘の上は人でいっぱいでしたので、ずっと山を見ていました。

相模川からの朝霧と、日が昇るとともに紫色になっていく丹沢の山々がとても美しくてきれいでした。

家に帰り、夜更かしして起きて来ないチアキを起こして、家族で新年の挨拶をしてからお節を食べました。(ハルは友達と早朝から出かけていました。)

お節の栗きんとんは、ハルカ担当で、茨城のOさんの暮らしている様子を拝見させていただいた時に購入して冷凍しておいて栗を甘露煮にしてから作りましたが、混ぜていると栗がすぐ崩れてしまったのは残念でしたが、味はおいしくできました。

(我が家のお節は自分が食べたいものだけ作るスタイルです。)

チアキには、お雑煮に入れる大根と人参を型抜きしてもらいました。クッキー型でしたので、花型やウサギだけではなく、クマや猫も出来上がって、にぎやかなお雑煮になりました。

あまり寒くなく、いいお天気で穏やかな一日でしたね。

こうしてゆっくりすごせる時間があることが幸せなのだと思います。

ナラ節アリ材とステンレスバイブレーションのセパレートキッチン

開かれたキッチン

Category : オーダー家具・オーダーキッチン制作事例, オーダーキッチン

「大雪山のナラとステンレスバイブレーションの壁付けキッチンとアイランドカウンター」

港区 M様

design:平成建設さん
planning:平成建設さん/daisuke imai
producer:iku nogami
painting:iku nogami

ナラ節アリ材とステンレスバイブレーションのセパレートキッチン
キッチン入り口から見た全体像。アイランドカウンターのコの字の天板はそのまま吊戸棚の下までつながっているデザインでこの天板の搬入が大変困難だったのです。表面に使用している突板は安多化粧合板さんに作ってもらった「大雪山のナラ」材を使った突板。図面を基に突板を作ってくださるので、木目のつながりがきれいに続くのです。突板を作ってもらうということが今回初めてでとてもすてきな仕事でした。

平成建設の設計士さんWさんから相談を頂いておりました。
「今度都内でちょっと大きなキッチンの制作をイマイさんにお願いしたいと思っているのです。またお話まとまったらご連絡しますね。」
と、いううれしいご相談。ただね、Wさんの設計はいつもシビアな納まりが多いので、ちょっとドキドキするわけです。
どんな形なのだろうとぼんやりとした不安を持ち続けて考えていましたら、数か月後に大きな図面が届いたのでした。
それはもう大きな。
というのも、大きさはそれなりの大きくはあったのですが、その内容の大きさというか内容の濃さに気持ちが案の定落ち着かなくなってしまったのでした・・。

ステンレスバイブレーション仕上げの吊戸棚
吊戸棚の表面材はカウンターと同じステンレスバイブレーション仕上げ。この扉材もカウンターと一緒に高橋製作所さんに作ってもらっています。
ステンレスバイブレーションの扉面材
ここもステンレスカウンターから右側のパネル、吊戸棚の下面がすべてステンレスバイブレーションになっているのですが、さすがにここは一体で作ることは不可能でしたので、いくつかに分割して制作し、現地でうまく組み合わせることできれいに納めています。

今回、Wさんはこの住宅を総合的にまとめる設計としての立ち位置で、キッチンに限っては実際の設計はOさんというまだ私よりも全然若く可愛らしい女性が担当することになったのでした。
「初めまして、イマイさん。まだキッチンの納まりなどで分からない部分もありますので、いろいろと教えて頂けますと助かります。」という挨拶を頂いていて、まだお若いのでてっきりキッチンの設計なんてまだ詳しくは分からないことが多いのではないだろうかなんて勝手に思っておりました。(Oさん、ごめんなさい)
こういう言い方をすると失礼かもしれませんが、家具やキッチンを細かく設計できる設計士さんはなかなか少なかったりすると思っているのです。通常よりも奥行きの深いキッチンなのに、開き扉になっていたり、吊戸棚の奥行が700ミリもあったり。高さが900ミリもあるのに引き出しが2段になっていたり・・。今までいろいろな形を見てきましたが、設計士さんは線を少なくすっきり見せたい、と考える方が多かったりして、使い勝手がその次になる方もいらっしゃったことがありました。
しかし、それが実際にその家に住む施主さんにもきちんと確認されていて意図的にその形になっているケースもあったりします。また、私たちには使いにくいのではないかと思える形でも施主様自身今までその形で使い慣れてきたからそれがベストだというお考えの方もいらっしゃいます。そのあたりを踏まえると何か正解かは一つではないのですが、ちょっと使いにくい形になってしまったというところを今までには何度か目にしたことがありました。
そういう形になると怖いなあと思って、「ここはこうするとこうなって良いですよ。」「ここをこう見せたい場合はこうするのはいかがでしょう。」なんてちょっと物知りになった気分で当初はお話をしていたのですが、いつの間にか私が知りたいと思うことの質問への答えが大変的確なことに気づき、そのうちには私よりも良い納まりを提案されたりして、いつの間にか私のほうが勉強させられている形になっていて、これはこれはお見事です、と唸らされてしまうことも。
ですので、このキッチンの納まりはOさんのアドバイスがあってきれいに納められたと言っても良いくらいでした。
そうして教えたり、教わったりしながらこの大変難しい形は徐々にまとまっていったのでした。

ナラ節アリ材とステンレスバイブレーションのセパレートキッチン
壁付けキッチン全体の印象。ステンレスカウンターの奥が一段高くなっていてそのままサッシに差し込まれるようになっています。この納まりと右の縦のパネルの納まりがたいへんシビアで何度も現場に通っては確認しながら製作を進めました。
スライドバスケット
壁付けキッチンの一番左端はハーフェレのトールユニットシステムというものを採用しています。初めて使う金物はとてもセッティングが難しいのでした。

それで、具体的に内容の濃い部分がどう難しかったのかというと、もうこの形の全部でした。ただ、ありがたいことにこの現場を担当してくれた監督さんも大工さんも顔なじみのお二方で、現場で納めやすいように調整してくださり、とても話が進めやすかったことが幸いでした。
さらにはいつものように平成さんの精度で図面通りの寸法でこの現場を仕上げてくれるので、今回のように壁のできあがりを待ってからの制作では間に合わないような場合でも安心して先に手をつけることができるのでした。

ミーレの電気オーブンをウォールキャビネットにビルトイン
その左隣は、2台のミーレのオーブンをビルトイン。
ミーレの電気オーブンをウォールキャビネットにビルトイン
レンジ付きのものと専用オーブンのものを入れて用途によって使い分けるのだそうです。
ガスコンロはリンナイのドミノ式コンロを導入。今回は2口コンロを2台とIHヒーターを1台という組み合わせ。

それでもこわい部分がたくさんあったのです。
怖いというのはそのまま言葉通りで、現場の様子が分からないと納まりが読めない部分がいくつかあったのでした。
今回のキッチンは壁と床ができたらそこにポンと置くだけで済むような形ではなくて、ステンレスカウンターの一部がそのままサッシの枠までにつながるような窓台になっていたり、吊戸棚やレンジフードがサッシの上端よりも低く設計されていて、背面が少し見える仕上げをどのように見せるかが複雑な形状になっていたりと、複雑な納まりになっている部分がたくさんありました。
また、壁との逃げも最小寸法になっていて、というか逃げがほぼなくて、最終的には下地の段階で2~3ミリの逃げを見ておいて、その上から仕上げの板を大工さんが張ってもらうことで、逃げのまったく見えない作りにするというシビアな仕上げがあったり。数えきれないくらいの納まりの細かいこわいポイントがあったのでした。

ミーレの食洗機
食洗機もミーレ。
ミーレの食洗機
ドアをオープンするとこのような感じ。
洗剤ポケット付きのオーダーダブルシンク
シンクはダブルシンク。左のサブシンクには水が張れるように考えていますが、オーバーフローを設けていないので、水が溜まり過ぎたら中央の仕切り板を乗り越えた水がメインシンクに流れ込むような設計。洗剤ポケットも備えて、その奥がライニングのようになっていて、このあたりがとても複雑な構成になっています。

また、作り方や設置方法だけではなく、搬入についてもどのくらいの困難が出てくるか読み切れなかったのでした。
今回、ステンレスのカウンターに関してはなるべく継ぎ目を無くした形で表現したい、ということで話が進んでおりました。
もちろんそれを作ることは可能なのですが、その場所に運び入れることができるのかどうかは最後まで分からない部分だったのです。
問題になったのは、アイランドカウンターの上に乗せるステンレスのコの字の大きなパーツで、これが大きすぎて玄関からだとキッチンまでの道のりがくねくねしているので入らないので、キッチンの勝手口から入れようと想定しておりました。勝手口のサイズは小さかったのですが、コの字の形状になっているので、横に倒してグルグル回していけばどうにかなるかも、と考えていたのです。
ただ、いきなり当日にやってみる、というのはさすがに怖かったので、書き上げた図面をグルグル回しながら、机上の検討を繰り返して、さらにはベニヤでこしらえた型板を持参して、「どうにかなりそうだ」なんて自分の気持ちの中では思っていたのですが、実際にはそのパーツのかなりの重さと屋外からの経路の狭さ、そしてこの勝手口付近に集中している電気配線とエアコンのダクトに水道管が道を阻んで、さらには勝手口の手前に組まれた足場があって、実際は大丈夫だろうか‥という不安を設置当日まで悶々と抱えたまま過ごしたのでした。
そして、さらに今回はキッチン以外の機器類もかなり多くありまして、これも一緒に設置する必要がありました。さらには、電気屋さんが設置する埋込エアコンのスペースをうまく確保したり、さらにはその下に冷蔵庫まであったりして・・、これは大変だ・・。

ナラ節アリ材とステンレスバイブレーションのセパレートキッチン
アイランドカウンターのキッチン側の様子。突き当りが冷蔵庫と冷凍庫、ゴミ箱スペースと家電収納部という感じです。
リープヘルの冷蔵庫
こちらがリープヘルの冷蔵庫と冷凍庫で合わせて120kgあるという大変動かすのが難しい家電です。2台を分割してここに運び入れて、ここに出ジョイントした後にこのスペースにしまうようにしていきます。モールテックスの床は大丈夫なのだろうかと思ったのですが、以外に滑らせやすい形状になっていて、ジョイントしてからはスムーズに作業できました、とノガミ君。そしてこの上には壁埋め込み式のエアコン。このエアコンと冷蔵庫と冷凍庫の諸々のパーツがエアコンの奥に隠れていてそれを反対側の扉からメンテナンスできるようにしているたいへん複雑な作り。
ゴミ箱ワゴン
ゴミ箱は山崎実業のタワーに前板をつけています。シンプルです。ただ、しまった時に全面を揃えられるように専用のブラケットを作ったりして、シンプルだけれど贅沢な作りになっているのです。
炊飯器収納スライドテーブルと蒸気排出ユニット
蒸気排出ユニットを備えた家電収納テーブル。
炊飯器収納スライドテーブルと蒸気排出ユニット
シンプルなスペースなのですが、庫内をステンレス張りにするという部分でなかなか手が込んだ形になっています。ステンレスも切板をペタペタ張っていくのではなく、ボックス状のものを作ってそれをこのスペースに組み込んでいるので見た目はシンプルでも納まりはかなり複雑。特に小口はステンレスの断面が見えないように工夫して仕上げていて、言われると「へぇー。」という感じかもしれませんが、かなり手間のかかる仕上がりになっているのであります。

そのような不安を抱えたままではありましたが、制作は順調に進んでいったのでした。

どきどきするわけです。

そして工房では無事に仮組までが完了し、いよいよ取付日を迎えます。

ナラ節アリ材とステンレスバイブレーションのセパレートキッチン
こちらが冷蔵庫裏の分電盤スペース。この電気配線や冷凍庫用の給水管などが勝手口付近で渦巻いていたのであります。扉はこの大きさだと突板でも確実に反りが出ると思われましたので、あらかじめ反り止めを埋め込んでいます。

まずは2日間かけてキッチンを設置していきます。
ちょうど通学路沿いに建つM様の現場は、子供たちが行き交う時間帯は車が進入できないようになっているため、少し時間を調整して臨みます。
それでも住宅街にしては往来の多い場所で、車を寄せてその都度運び入れるのですが、重い形が多いことで体力的にも疲れてきてなかなか時間が掛かってしまい、時折渋滞を招いてしまったり、通行する人の邪魔になってしまったりして、気持ち的にも疲れてきたりしたのですが、キッチンのキャビネット自体はそれほどの混乱なくどうにか無事室内に入れることができて、3メートルを超える一番長い天板もかろうじて搬入完了。
そしていよいよコの字のステンレスカウンター。
搬入時にどうしても足場にぶつかって運び込めなくなる部分は事前に一時解体してもらっていたので、準備万端でいざ搬入開始。しかし、1.2ミリを折って作ったコの字は予想以上に不安定。特に横に向けると歪んできますし、この形状になってさらに合板も裏打ちしてしまうとかなりの重量になったのですが4人がかりでどうにか進入していきます。
コの字の頭部分を侵入させながら横に振りつつ他の部分も進入させていくのですが、電気配線用のケーブルが干渉してきます。このケーブルも何十本と束になるとそう簡単に動くものでもないわけですが、どうにか2人掛かりでそれを壁に寄せつつさらに進級させてコの字がぐるりと輪を描くようにエイヤッとまわしてどうにか搬入完了。
ホーッと息をつきます。
これがうまくいけばもう今日の作業は半分終わったようなものです。なんて思うのですが、実際は窓枠に合わせてステンレスカウンターを仕込んだり、電気配線を取り込みながらキャビネットを組み立てたりと、2日間をフルに使ってようやくひとまず完了、と言えるところまで作業を終えることができたのでした。
このあとは作業を一時中断して、大工さんが壁の仕上げ材であるシナベニヤを張って、左官屋さんが床にモールテックスを塗って、と仕上げが終わるまでは時期を待ちます。

ナラ節アリ材の収納キャビネット付きのダイニングテーブル
追加で作らせて頂いた「大雪山のナラ」を使った収納付きのダイニングテーブル。
ナラ節アリ材の収納キャビネット付きのダイニングテーブル
こちらはコストダウンを図ってシンプルな引出しの作り。ただ、オープンスペースにコンセントを取り込んだり、それが天板上で使えるようになっていたりと細かな工夫が施されています。

そうして、すべて内装が仕上がったタイミングで今度は機器類の設置です。
一番の困難だったのは、重量120kgのリープヘルの冷蔵庫。2台で120kgなので、分割して運べば60kgなのですが、それでもすでに外構工事が始まっているなか運ぶのは大変な困難で、大工さん、監督さん、外構屋さんの手を借りながらどうにか門扉にもサッシにも当てることなく設置完了。
制作を担当したノガミ君が「これはつらいです。」と言ったほど大変だった一連の作業がこうして無事に完了したのでした。

今回は、オーナーさんとお話しする機会はなくて、設計士のWさんとOさんを通じてこの形を実現させたのですが、ひと家族が使うキッチンにしてはかなりのボリュームでしたので、どういう意図で作られたキッチンなのかをお聞きすると、ここで子ども食堂を開くのだそうです。
なるほど、そういう地域に開かれた場所としての多機能なキッチンなのですね。
大変勉強になった形だったのでした。
ありがとうございました。

天板 ステンレスバイブレーション
扉・前板 安多化粧合板「大雪山のナラ」
本体外側 安多化粧合板「大雪山のナラ」
本体内側 ポリエステル化粧板
塗装 オイル塗装仕上げ
キッチン仕上げ

大雪山のナラとステンレスバイブレーションの壁付けキッチンとアイランドカウンター

費用につきましては、お問い合わせくださいませ。

ブラックチェリーとステンレスのセパレートキッチン

柾目の魅力

Category : オーダー家具・オーダーキッチン制作事例, オーダーキッチン

「ブラックチェリー柾目とステンレスヘアラインのセパレートキッチン」

三島 O様

design:平成建設さん/Oさん
planning:平成建設さん/daisuke imai
producer:kouhei kobayashi
painting:kouhei kobayashi

ブラックチェリーとステンレスのセパレートキッチン
リビングダイニングから見たキッチンの様子。柾目の突板の場合は、幅が広くても12センチくらいの単板になるので、同じ模様が細かく連続した見え方になります。
ブラックチェリーとステンレスのセパレートキッチン
セパレートキッチンということで、シンク側はアイランド型に、コンロ側は壁付けのレイアウトにしています。アイランドと壁付けの通路の幅は800ミリと少し狭くしていますが、メインは奥様お一人で使うことが多い場合は、今回のようなサイズ感だと向かい合うカウンターの距離が遠すぎることがないので、コンパクトな動線で動けます。また、シンクとコンロを人一人が立って作業する分ずらしているので、複数人で作業する時もストレスなく分業することができます。

「箱根の山は天下の嶮 函谷關もものならず」

と、言われた箱根山を越えた三島や沼津近辺で仕事をさせて頂ける機会が増えたのは平成建設さんと知り合うことができたからですね。
大変ありがたいことです。
今回はその箱根山のふもとから三島へ抜ける見晴らしの良い小高い住宅街の一角にキッチンを作らせて頂きました。

ステンレスの段付きオーダーシンク
シンクは900ミリと通常私たちが作るシンクよりも広めに設計しています。シンクの前後だけに段をつけて苑子水切りプレートを載せられるようにしていて、プレートを常に載せていても水仕事が不便なく行なえるようにこのくらいの幅にしています。
水栓器具はグローエのK7
水栓器具はグローエのK7を採用。この水栓はシャワーホースをシンク下に格納する必要がないためホースの劣化が少ないというメリットがあります。その分ばねの形状になっているところのお手入れが手間が少しかかるかもしれませんね。
オーダーシンクと専用の洗剤ポケット
市販のワイヤーポケットを引っ掛けられるようにフックを加工してシンクに取り付けています。洗剤ポケットを設けるよりも低コストで作ることができるのがメリットです。水切りプレートの段よりも少し下方にフックをつけているので、低めの洗剤ボトルでしたら、水切りプレートが掛かっても邪魔になりません。

クライアントのOさんがずっと熱望されていたのはブラックチェリー材を使ったキッチン。その中でもおとなしく規則正しい印象の柾目材を使いたいとのことでした。
今回のような柾目の表情を無垢材で表現することは難しくて、特にブラックチェリー材のような北米材だと柾目取りされている材の入手はほとんどない状況です。
柾目材というのは、大まかに言うと丸太材に対して中心から放射状に取るような木取りのしかたに近いので、よほど径の大きな材じゃない限りどうしても幅の広い材が取りにくいのです。

そこで、ブラックチェリーブラックウォールナットやクルミなどで柾目仕上げの表現にしたい時は突板を使って作る形が最も適した作り方になるのです。
ただ、そのように突板で作る場合は、ただでさえ幅の狭い材しか取れないのに、柾目という規則正しくおとなしい木目になると、ときには少し不自然にも思えるような人工的な表情に見えがちなのです。
しかし、この印象はブラックチェリーに限っては違った表情になり、とてもそしてよりよく見えてくることが多いのです。

パナソノックのミドルタイプの食器洗い乾燥機
食洗機はパナソニックのディープタイプのものを導入しています。
コンロ側壁付けキッチン
ハンドルはシロクマ印のステンレスハンドルで少し角ばったデザインの「HL-12」でステンレスカウンターと同じくヘアライン仕上げのものを採用しています。
シンク側アイランドカウンターの様子
シンク前の印象。
内引き出しの様子
シンクしダリ上の引き出しはこのように内引き出しにしています。

それを教わったのは、このOさんのキッチンを作らせて頂いた時期よりもずっと後の品川のKさんのリビングボードを作らせて頂いた時でした。
(ちなみにこのキッチンは2015年に作らせて頂いているので今から8年前になりますね。)
ブラックチェリーは他の材に比べて日焼けのスピードが速く、数か月でうすい桃色のような明るい印象から深い赤褐色へと変わっていきます。
そのスピードは皆さんの想像以上で、チェリーで作った天板の上の夏場に1,2時間ほど物を置きっぱなしにしてしまうだけでその部分だけ日焼けの跡がくっきりと残ってしまうくらい。(だから制作中もその扱いを気を付けないといけません。過去にそうなって泣く泣く作り直し他パーツがありましたね・・。)
赤みも白太も一様に濃い色へと日焼けしていき、ついには全体的にしっとりと落ち着いた赤褐色へと変わっていきます。
そうなった時にこの柾目の繰り返される直線の印象が、不自然に映ることなく、かえって落ち着いた様子がとても自然に活きて目に映るのです。

その良さを知って、以前にもチェリー柾目で作らせて頂いたいくつかお客様がいらっしゃいました。

三鷹のOさんの食器棚
川越のSさんのオーダーキッチン
そしてその良さをとても上手に表現してくださった「品川のKさんのリビングボード

どのお客様も日焼けしたその印象が表れるのをたのしみに家具やキッチンを使ってくださっています。
まさに育てながら使う、というのはこう言うことを言うのでしょう。
設置工事後にOさんに一度ご挨拶にお伺いしました時もその時が来るのを楽しみにしながら使っていってくださっているとおっしゃってました。

シンク側アイランドカウンターのリビング側収納の様子
ダイニング側の上段はこのくらい奥行の小さいシナ合板の引き出し。
シンク側アイランドカウンターのリビング側収納の様子
下の両開き扉の収納で、内部はシナ合板無塗装のままで仕上げています。

チェリーに限らず、木は日焼けをすることで色が濃くなる樹種が多いです。(ブラックウォールナットやアルダーは反対に明るくなっていきますが。)
そうなってくるとどの樹種で作ってもとても良い表情に見えてくるのです。その中でもブラックチェリーの経年変化は丸で美味しいお酒のように格別です。

私たちのショールームにご相談にいらして下さった皆さんが色濃く焼けたナラの家具を見て「この色がすてきですね、こういう色の家具にしたいです。」とおっしゃってくださるのですが、その色は最初から出せるものではなく、時間とともに出てくる色なので、皆さんにはそのように説明をさせて頂きます。
それでも最初からその色に近い印象を望まれる方々には、木に色を付けることでなるべくその表情に近づけますが、やはり時間を経て出てきた色とでは印象の感じかたは異なることが多いです。
そういう使い方ができる暮らしかたの楽しさ、そして、その楽しさをいつまでも見届けられる距離に私たちがいられることの良さ、そういう良さを見て取ってくれているからでしょうか、少し距離があるにもかかわらずこうして平成建設さんが声をかけてくださることをとてもうれしく思っております。
もうきっと良い色ツヤが出ている頃でしょうね。またお声掛け頂ける機会があるのを楽しみにしております。

コンロ側キッチンの上の吊戸棚
吊戸棚も内部はシナ合板無塗装。
コンロ側キッチンの上の吊戸棚
手掛け部分の印象。
サブシンク下の様子
今回特長的なのがコンロ側の一番右、ちょうど冷蔵庫の隣になる部分にサブシンクを設けていることです。なぜそうしたのかはこの時は設計士さんにお任せでしたので、聞き忘れてしまいました・・。冷蔵庫の隣だから調理の下ごしらえ用なのかな。水栓もお水のみの単水栓ですし。
コンロ側壁付けキッチン
コンロ側壁付けキッチンの全体像。
ブラックチェリーとステンレスのコンロ側壁付けキッチン
引き出しの様子。この時の引き出しのレールはソフトクローズレールではなく、一般的なベアリングレールを使っています。
スライドワイヤーシェルフの様子
ガスコンロ(リンナイのデリシア)の下はスライドワイヤーシェルフ。
天板 ステンレスヘアライン
扉・前板 ブラックチェリー柾目突板
本体外側 ブラックチェリー柾目突板
本体内側 ポリエステル化粧板/シナ合板
塗装 オイル塗装仕上げ
キッチン仕上げ

ブラックチェリー柾目とステンレスヘアラインのセパレートキッチン

費用につきましては、お問い合わせくださいませ。

あけましておめでとうございます

Category : 日記「自由な手たち」

本年もたくましくしなやかによいかたち作りを心がけていきます。

どうぞよろしくお願い致します。

よいお年をお迎えくださいませ

Category : 日記「自由な手たち」

2022年12月31日

今年はチアキが整えてくれました。

みな大きな病気も事故もなく健康で過ごせました。(私の謎の膝の痛みやハルカのコロナ罹患などはありましたが)

毎日元気できちんとご飯が食べられることが一番うれしいことです。

来年も元気でいられるように毎日きちんと過ごしてきます。

皆様、良いお年をお迎えください。

お正月飾り

Category : 日記「自由な手たち」

2022年12月29日

1枚目はショールームの入り口に飾ったもの。2枚目は工房入り口のお飾りです。
我が家の玄関もすてきになりました。
我が家の鏡餅はTV台の上に飾りました。

28日はお正月飾りをする日ですね。

今までは、倉見の農家のスズキさんにお飾りをお願いしていたのですが、年齢的に作るのが難しくなってきたということで、今年から購入することはできなくなってしまいました。

どうしようかと困っていたのですが、以前イベントクレミルでしめ縄づくりのワークショップを開いてくださった cocohanaflowerさんがいらっしゃるじゃないか!ということで、お願いすることにしました。

今までお飾りしていた形が昔ながらの形でしたので、cocohanaさんの形がスマートでおしゃれでしたので、年神様がお飾りなのかなって気づかれないのではないかと思い、半紙で作った紙垂を付けさせていただきました。

大掃除をしてお飾りをすると気が引き締まりますね。

cocohanaさん、ありがとうございました!

鏡餅は、木の小物「cone」に飾りました。猫ちゃんワンちゃんのご飯台としていますが、我が家では、木の飾り台として使っています。