隣の家の解体:家具屋の自宅

Category : 日記「自由な手たち」

2025年3月17日

住宅街の旗竿地の我が家。
外観の全体像を見られる日が来るとは思っていませんでした。暮らし始めて6年目で初めてのことです。
旗竿地の竿部分、道路側のお家が売りに出されていて、取り壊されたからなのでした。

(その写真はまたお家が見えない状態になった時にお伝えしますね。)

玄関側の植栽、アオダモと出猩々もみじに葉がない時というタイミングの悪さで余計に丸見えなのでした。
家主のHさんとは一度も会うことはできませんでした。
この土地を購入した時から、不在で一度もお会いできたことはなく、ご近所の方のお話では、高齢の女性一人暮らしで、施設に入られて不在なのだということでした。
竿地部分に沿ってお庭になっていたので、
南天、薔薇、沈丁花、ブルーベリーなどどの季節も楽しめるような植栽で、お家に入るまでの間楽しませていただきました。ありがとうございました。
そして、この土地は売りに出されて間もなくしてから投資会社さんが買い取られたようで、ここに3階建高さ10メートルの単身者用の賃貸住宅を建てるのだそうです。わお…。
ちなみにここの土地、約100㎡は私たちが購入した当時より倍以上の金額になっていて驚きました‥。
そして、この先オーナーさんを見つけるにあたり、境界がはっきりしている物件でないといけないそうで、
境界の真ん中にあったブロックを取り除かせてもらい、相手の敷地内に敷き直すいうことになりました。


お家を取り壊した後、ブロック塀・柵の撤去、
その後、測量をやり直し、造成して建物を建てていくそうです。工期の予定は11月まで。

お隣の敷地との境界がない状態がこんなにそわそわと不確かな落ち着きのない感覚がするとは思っていませんでした。

でも煉瓦の草目地のダイカンドラと西洋芝が頑張ってくれています。

今まで、道路から玄関が見えなかったので、パジャマのまま鳥ちゃんに餌をあげに外に出ていたりしたので、丸見えなのはやり辛くなりました‥。

玄関を出るたびに急に道路まで開けている光景に慣れなくて胃がきゅ~となります。少しの間と思って慣れるしかないのですが。

防火壁として、お隣さんとの間と窓の横南側に作られたか壁の効果が絶大で、この壁がなければもっと外からの視線が気になっていたと思います。自分たちでは気づけないところでしたので、設計士の福原さんには本当に感謝しています。

メリット的なこともありました。今まで玄関側にある照度センサーで付いていた外灯の点灯時間が短くなりました。近くに建物がないと明るいのですね。電気代節約につながっていることでしょう。

造成されたら、お家を建てる間は足場が組まれると思うので、期間限定の丸見えな我が家暮らしを楽しめたらと思います。

長さ3640ミリのステンレスバイブレーションカウンター

私たちの町

Category : オーダー家具・オーダーキッチン制作事例, オーダーキッチン

2025年3月14日

「ホワイトオーク突板とステンレスバイブレーション仕上げのワークトップの壁付けキッチンと吊戸棚」

目黒 N様

design:すわ製作所さん/Nさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:kenta watanabe
painting:kenta watanabe

ホワイトオークとステンレスバイブレーションの壁付けキッチンと吊戸棚
リビングから見たキッチンの様子。今回は壁付けの長さ3640ミリのキッチンを私たちが制作を担当して、その向かいにあるアイランドカウンターとその奥の家電収納はすわ製作所さんが制作をして頂きました。キッチンの奥の壁はキッチンパネルが張られているのですが、ちょうど右端に木製の見切りがつくことになり、その見切りが床の見切りと連続して見えるような納まりでしたので、見切りピッタリまでキッチンを作らないといけないという納まりでしたので、まだ壁ができ上っていない状態での打ち合わせでしたが、(壁ができ上ってからの打ち合わせだとキッチンの制作が間に合わなくなってしまうので)設計士さんと監督さんの絶妙な段取りのおかげでピッタリに納めることができたのでした。
ホワイトオークとステンレスバイブレーションの壁付けキッチンと吊戸棚
キッチン奥から見た印象。ここでもやはりキッチンパネルのジョイント部分と吊戸棚のラインを揃えるというなかなかシビアな納まりになったのですが、きれいに納めることができたのでした。

目黒という場所はなかなか思い出深い町であります。

以前どこかにも書いたことだと思いますが、特に環状七号線と目黒通りが交差するあたりには20代の前半に週3回通い続けた学校(ICS)がある思い出深い町です。
寒川から単線に揺られて夕暮れの目黒の町の夜間部で学んでは、再び単線に揺られて終電で帰る、というあのサイクルでやっていられたのも今よりもなんだかのんびりとしてからなのでしょうか。
きっと采配を振るう父としては、もう少し一途な思いでこの仕事に取り組んでもらいたいと思っていたのでしょうけれど、私としては、月水金の15時からは自分だけで時間を独り占めすることができた甘い甘いわがままな時代だったのです。

そして、私がこのICSに通い始めたあたりから「インテリア」「家具」「建築」という言葉が次第にみんなの暮らしの中でよく耳にするような気がしていて、お茶の間でも「建築家」や「家具作家」がドラマの主人公になった時代でもあったように思えます。
30年ほど前の話です。

ホワイトオークとステンレスバイブレーションの壁付けキッチンと吊戸棚の初期スケッチ
最初にNさんが私たちのところにいらしてくださった時のキッチンのイメージ。ペニンシュラキッチンでワークトップから一段上がったところにカウンターが浮いているように在るという今の納まりとは全く違ったレイアウトでした。

入ったばかりの大学を数か月で止めてしまい、アルバイトで貯めたお金で車の免許を取り終わってのらりくらりとしていた頃に父に「時間を持て余しているのなら手伝ってほしい。」と言われて始めたこの仕事は、当時は個人邸向けの家具を作る需要などほとんどなく、作っては短期間で改装されてしまうお店の家具ばかりだったように思います。
奇抜なデザインの図面が元請けさんから降りてきては、こんな形どうやって作るんだ・・なんてぶつぶつ言いながら奇抜な色をした仕上げ材に苦労しながら作っていたように思います。
だから仕事の合間を見て、木を削ったり、何かを工作したりと、化粧板ではない無垢材をこねくり回す時間がとても楽しかったのでした。
そんな奇抜な物作りに生意気にもつまらないという思いを抱いてしまいまして、週3日学校に行くという(大変失礼な言い方になってしまいますが)自分にとっては気晴らしのような気持ちで通い始めたように思います。
ところが学び始めてみると、やはり知らない世界はおもしろい。物を作ること、デザインするということの良い部分や良くない部分などいろいろなことを自分なりに知ることができてたいへん愉快な2年間だったのです。

ホワイトオークとステンレスバイブレーションの壁付けキッチンと吊戸棚のスケッチ
こちらがすわ製作所さんにバトンタッチされてから最初に出てきたイメージ。家電収納も組み込むかなり大掛かりなキッチンになる予定でした。ただ、キッチンから洗面所に抜ける動線が少し狭くなってしまうことがネックで、最終的には間取りを調整してうまく導線を確保したらシンプルなI型のキッチンになっていったのでした。

その2年の間に目黒通りが大きく変わり、家具屋さんやインテリアショップやモダンはホテルまでオープンする通りになっていったのでした。
週末以外でも若い子たちで賑わい、何やらノート片手にいろいろとメモを取っていく男の子たちも多くいたように思えます。
その頃からですね、少しずつ個人邸向けの家具の相談を頂くことになったのは。

仕事の合間に初めて作ったホームページというものに(当時はNHKの教育テレビなどで、「HTML言語を使ってホームページを作りましょう。」なんて言う番組がやっておりました。)家具作り以上に取りつかれてしまって、ようし、ここで自分たちが作っているもののことを表現しやるんだ、なんて意気込んで、きらきら光る「BACK」や「HOME」や「NEXT」のアイコンを使って「私たちのホームページへようこそ」なんてやりながら長い文章ばかり載せていたら、父に「そんな小さい字ばかりでだれが読むのだい。」ってあきれられてしまったものでしたが、うれしいことにその朴訥とした文章の中に何か良いものを感じ取ってしまわれた皆様がなんだかじわじわと増えてきて、こうして、使う人に直接家具を作らせて頂くことができるようになったのです。
そうして今ではキッチンを作らせてもらえるなんて、よもや、あの学校を通じて知り合った友人たちが今でもそばで助けてくれていて、まさか自宅まで設計してもらうことになるなんて、20代のひょろっとした青年には思いもよらなかったことでしょう。

ホワイトオークとステンレスバイブレーションの壁付けキッチンと吊戸棚
シンクは洗剤ポケットを付けたデザイン。シンク右にも物が置けるように、また床への水跳ねが軽減できるようにと、また窓との取り合いも考えて、シンクを右端には寄せないでこの位置にしています。

今では少し静かな印象に落ち着いたこの目黒通りですが、それでも通り沿いにきれいな家具が並んでいたりすると今でもワクワクしますね。
その目黒通りのおかげなのでしょう。通り沿いではとても素敵な形を何度も作らせて頂く機会がありました。

ポーカーフェイス」のMさん

わたしのものとあなたのもの」のHさん

音がうまれる部屋」のTさん
(今はこの家具と一緒にスタジオをお引っ越ししてしまいましたが)

跡をのこす」のKさん

お待ちしておりました。」のEさん

猫との暮らしはこれから」のKさん

gridding」のHさん

ここに挙げていない形もたくさんありまして、この通りを走っていると、あの時はこうだったなあ、とかあれはたいへんだったなあ、なんて思いがふとよみがえるのです。

ホワイトオークとステンレスバイブレーションの壁付けキッチンと吊戸棚
その右端の引き出しの最上段。
ホワイトオークとステンレスバイブレーションの壁付けキッチンと吊戸棚
その右端の引き出しの3段目。
ホワイトオークとステンレスバイブレーションの壁付けキッチンと吊戸棚
その右端の引き出しの4段目。
ホワイトオークとステンレスバイブレーションの壁付けキッチンと吊戸棚
そして、今回はシンク下は2階の階段を上がってくるとキッチンが丸見えになるので、オープンではなくてすっきり見せられるように引き出しにしています。その1段目。
ホワイトオークとステンレスバイブレーションの壁付けキッチンと吊戸棚
その2段目。また、ひとつ気を付けたいのが、今回は水栓にリクシルのナビッシュの浄水器タイプを選んでいます。浄水カートリッジの交換や給排水や電気配線のメンテナンス時にはこの引き出しを外す必要があります。その外し方を忘れてしまうと奥に手が届かなくなってしまいますので、もしお伝えした方法を忘れてしまった場合は、いつでもご連絡ください。先日、1年が経過したNさんからカートリッジ交換のためにこのことで連絡を頂いたのでした。

そして、今回のNさんも目黒通りから1本住宅街に入ったところにご新居を建てる予定。
キッチン納品後にお話を聞かせてもらった時は、ご主人も奥様もこの町で育ったのだそうで、私にとっては学びの町でもお二人にとっては懐かしい故郷なのでした。

Nさんから最初のご相談を頂いたのが2020年12月13日となっています。
何度かメールをやり取りさせて頂きましたのちにこちらにいらしてくださることになったのでした。
「おぉ、やっぱりいいよね。」と響きわたる声で、どちらかというと奥様よりもご主人が興味津々で私たちのキッチンを見つめてくださっていたのを覚えております。
その時にお話がまとまったプランが最初のスケッチにあるペニンシュラタイプのキッチンでした。キッチンの上に宙に浮いたような笠木を載せる形で、その笠木を支えるステンレスのうすい板をどうやって作ろうか・・、なんて悩んでいたのでしたっけ。
どうにか実現できるような形を思い描いて図面にまとめたところだったのですが、しばらくしてNさんからご連絡が。

「ウッドショックの影響で工事が着工できなくなってしまったのです・・。」とのことで、再開の見通しが全く立たないようでしてNさんもとても沈んだ様子でした・・・。

あれからどうなったろうか・・。と思っていた頃に、ようやくNさんからご連絡が入りました。
これが2022年の12月、ここまで来るのに早2年が過ぎておりました。

食洗機はBOSCHの60センチタイプ
ドイツの工場が止まる、ということで供給がストップする前にNさんご自身で購入されたミーレの食洗機。約1年間私たちの工房でずっとたたずんでおりましたが、ようやく活躍の場を得ました。

「お世話になっております。
大変長らくお待たせすることになってしまい、申し訳ございません。
実は、以前一緒にお邪魔させていただいたデザイナーとは破談になりまして、あらたに「すわ製作所」さんとお話を進めることになりまして、やっと基本設計が決まりました。
以前のプランからは大幅に変更があります。
詳細につきましては、また相談させてください。」

とのことで、ひとまずNさんも私も胸をなでおろしたのでした。
というのも、この頃ウッドショックのほかにミーレの供給が止まりそうな状況で、ミーレの食洗機を気に入ってしまったNさん、実は供給が止まる前に先にご自身で食洗機を購入されていたのでした。
キッチンができあがるまで私たちのほうでお預かりしていたのですが、ご新居の工事がまだ止まったままだったものですから。

そうして、新居のプランニングと並行してキッチンのプランもまとまりまして、いよいよ工事の着工は2023年の7月下旬からとなりました。

ホワイトオークとステンレスバイブレーションの壁付けキッチンと吊戸棚
食洗機左横の引き出し1段目。
ホワイトオークとステンレスバイブレーションの壁付けキッチンと吊戸棚
食洗機左横の引き出し2段目。
ホワイトオークとステンレスバイブレーションの壁付けキッチンと吊戸棚
食洗機左横の引き出し3段目。
ホワイトオークとステンレスバイブレーションの壁付けキッチンと吊戸棚
食洗機左横の引き出し4段目。

「すでに連絡があったかもしれませんが、今後は、すわ製作所の設計のSさんと進めていただくようお願い申し上げます。
進めていくなかで、私もお話に加わるかもしれません。
大変長い時間がかかりましたが、ようやく進んでまいりました。
引き続き、よろしくお願いいたします。」

とNさんの決意のメールを頂いていよいよ始まりますね。

ガスコンロはリンナイのリッセ
ガスコンロはリンナイのリッセ。

キッチンのプランは、間取り自体も変わったので、当初のものからレイアウトも形も全く変わって壁付けのキッチンでお話が進むことになりました。
最初は2枚目のスケッチのように家電収納も組み込む形のキッチンを想定していたのですが、背面に来るすわ製作所さんのほうで制作してくださる収納に家電を置くことができるようなプランに変わっていったため、キッチンのステンレスカウンターは3600ミリを超える大きなものにすることができました。

そうなると、気にかかってくるのは搬入です。
キッチンのレイアウトは引き出しを多く用いた形になったので、ある程度細かくキャビネットを分けて制作できるのですが、ステンレスカウンターだけは1枚で作りたいですので、今回のような2階にキッチンがある間取りだと場合によっては作ることはできても運び込むことができなかったりする場合も出てきます。
そこで、ご新居の上棟後に現場で打ち合わせをする際に、搬入経路についても確認。
今回は階段まわりが広く、また天井も高く抜けていることもあって、どうにか室内から搬入できそうだと判断。
もし難しい場合でも、大きなバルコニーがありましたので、図面通りで問題ないことを確認出来たらいよいよ制作です。

コンロ下のスライドワイヤーシェルフ
コンロ下のスライドワイヤーシェルフの様子。
コンロ下のスライドワイヤーシェルフ
コンロ下のスライドワイヤーシェルフの様子。

今回の形は引き出しを多用したシンプルな形になっているのですが、キッチンパネルとの寸法の割り付けやパネルの端部とキッチン右端部の見せ方など、細かい部分で現場とあうんの呼吸が合っていないときれいに納まらなさそうな部分が多かったのですが、設計士さんと監督さんが家具の細かい作りまで分かっていらっしゃったので、とても納めやすく作ることができたのでした。
そして、設置当日の2023年の12月末。まわりは少し年越しの雰囲気になっておりましたが、気を緩めずにみんなで乗り込みまして、お天気にも恵まれて搬入も問題なく進めることができて、無事に2日間で設置が完了。

コンロ横の調味料用の引き出し
コンロ左横の調味料入れの引き出しの上段。皆さんここには調味料を入れないで、調理道具が入っていることが多いですね。
コンロ横の調味料用の引き出しはハーフェレのフレームバスケット
ハーフェレのフレームバスケット「コンフォートⅡ」。

「イマイ様
お世話になっております。
キッチンありがとうございました!
実際に使ってから感想をお伝えしたいと思いますが、ひとまず写真だけでも気分が上がります!!
今回は当初の予定からいろいろと変わってしまい、たくさんの無理を聞いていただきまして、本当に感謝しかありません。ありがとうございました。
住んでいくなかで、また何かしらお願いできることがありましたら、是非よろしくお願いいたします。
本年、大変お世話になりました。
良いお年をお迎えくださいませ。」

と、Nさんにも喜んで頂けました。長い期間でしたがこうして無事に終えることができて、やっと本当に気持ちが落ち着いたのでした。

ホワイトオークとステンレスバイブレーションの壁付けキッチンと吊戸棚
左端の引き出し1段目。
ホワイトオークとステンレスバイブレーションの壁付けキッチンと吊戸棚
左端の引き出し2段目。
ホワイトオークとステンレスバイブレーションの壁付けキッチンと吊戸棚
左端の引き出し4段目。
ホワイトオークとステンレスバイブレーションの壁付けキッチンと吊戸棚
ちょっと写真のピントが合っていませんが、引き出しの手前に通気口があります。この通気口について時々悩ましいことがあります。今回のようなレイアウトで、引き出しを引き出した時に通気口に引き出しが当たってしまうということが過去に何度があったのでした。キッチンを検討していく段階に見せて頂くご新居の図面では通気口の位置は見えにくかったりするので、キッチンという空間を考えていくうえで注意が必要な場所でもあります。

それから2ヶ月後にお引き渡し、さらにお引っ越しとなり、そして少し落ち着いた頃にご挨拶に伺わせて頂きました。
すわ製作所さんの独特の木の表情を生かした心地よい空間とNさんご家族で塗装したという壁面収納のペンキの優しい表情の横にキッチンがきれいに使われておりました。
キッチン設置工事時にはまだなかったすわ製作所さんで制作したカウンターと家電収納もキッチンときれいに揃えて作られていて、キッチンというスペースが静かに華やいで見えました。

その心地良い空間のなかで、お二人が育った目黒の町の様子を聞くことができて、四半世紀前の若々しかった頃の思いがよみがえって、なんだか私自身懐かしくなったのでした。

ホワイトオークの吊戸棚
Nさんからのご要望で、吊戸棚の可動棚の奥行を少し奥まったサイズにしてほしいということで、棚板は手前が100ミリほど空く位置で奥行を止めています。物の見通しがしやすいということと、背の高いものを手前にしまう可能性があるということでこのようにしたのでした。
ホワイトオークの吊戸棚の奥には間接照明を収納
吊戸棚の奥には、すわ製作所さんのほうで照明を仕込んでもらいました。
天板 ステンレスバイブレーション
前板・扉 ホワイトオーク板目張り突板
本体外側 ホワイトオーク板目張り突板
本体内側 ポリエステル化粧板
塗装 オイル塗装仕上げ
キッチン仕上げ

ホワイトオーク突板とステンレスバイブレーション仕上げのワークトップの壁付けキッチンと吊戸棚

価格:1,700,000円(制作費・塗装費、設備機器費用は別)

*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は50,000円から、取付施工費は200,000円から)

シーザーストーンとステンレスとホワイトオークのセパレートキッチン

Category : 日記「自由な手たち」

そして、こちらは昨日設置工事が無事に完了したTさんのセパレートキッチン。

ご実家のリノベーションということで、だいぶ前からお話を頂いていたのですが、私たちが忙しくなってしまっていることと、建築設計のお仕事をされているTさんご自身も仕事が慌ただしく、かつ自分たちである程度リノベーションを進めたいというだったのですが、なかなかまとまった時間が取りにくかったこともあって、ゆったりと工事は進んでいたのでした。

まずは、私の弟が塗装業を営んでおりますので、内部の塗り壁を再塗装し、そのあとにkotiの伊藤さんに今まで使っていたキッチンの撤去を行なってもらっていました。

そうして、私たちのキッチンができ上ったタイミングで、Tさんがオスモカラーを使って、この独特の色に塗装をされて、そうしていよいよ一昨日と昨日の2日間んで設置工事となったのでした。

3メートル近いシーザーストーンはなかなかの重量でさらにはちょっと変形しているものですから割れちゃいそうでおっかない。

1日目にノガミ君とワタナベ君が天板を載せる手前のところまで作業をしておいて、2日目にみんなでうまく運んで無事に載せることができました。

あとは明日伊藤さんのほうで給排水がガスをつないでもらって完了の予定です。

鉄染めのキッチン

Category : 日記「自由な手たち」

ただいま制作している3500ミリあるSさんの壁付けキッチンは、レッドオークをおそらく鉄染めしたものだと思われます。

というのは、今回は設計士さんの指定で、いつも節のあるオークの突板を使う時にお世話になっている坂商会さんのオリジナルの突板を採用しているためです。今はもうすっかり抜けましたが、届いた時は酢の匂いがふわっと広がったので、おそらく鉄染めされているのだろうと思われます。

独特の表情と、手掛けの独特のデザインでとても引き締まった印象のキッチンに仕上がりました。

Sさんのご主人がリノベーションの陣頭指揮を執られて現場で作業されていて、手掛け部分や細かい部分はご自身であとから塗装して頂いて完成となります。

いよいよ来週設置工事に入ります。

タモとクルミの食器棚

Category : 日記「自由な手たち」

2025年3月9日

今月は設置工事の合間に家具の制作を行なうというような慌ただしさで、みんなうまく時間を見つけて制作を進めてくれていて、しっかりとした休息も取れないような状況で連日遅くまでの作業にもなっています。

そのようなわけで、この日曜日の取付は私とアキコの二人で。

Kさんとはお話を進めるうちにすてきな形になっていきました。

クルミの少しくすんだ表情を気に入ってくださったので、表面材はクルミで仕上げているのですが、天板にはもう少し固めの材を使いたいというお話が出て、タモを使うことに。極端な色の差はないのですが、使い込むことでじわじわとお互いの表情の良さが出てくると思います。それがまた楽しみです。

今回はKさんご自身で塗装を行なうということで、食器棚が取り付け終わる頃を見計らって、アキコが塗装方法をお伝えし、ご主人と奥様で手際よく作業を始めていったのでした。

途中ちょっと買い物があったので外に出たのですが、戻ったころには1回目の塗装はほぼ終わっている状態。よい感じです。

このあと2回目の蜜蝋を塗って完成。

こういうのって良いです。家具がもっと好きになる。

シーザーストーンとナラのコの字型キッチン

Category : 日記「自由な手たち」

いよいよ納品が立て続けに重なる3月が始まりました。

まずは技拓さんからご依頼頂いていたコの字のキッチン。

L字型キッチンやコの字型キッチンで一番悩むのはコーナーの納め方。コーナーの収納をどのように使いやすくできるかをかんげるのも悩ましいのですが、キャビネット同士がぶつかるコーナーの入隅の見せ方がいつも悩ましい。今回のこのOさんのキッチンはシンクと食洗機の周りに寸法の余裕がなかったので、いつもなら入隅のあたりは、引き出し同士が干渉したり、食洗機を空けてもぶつからないようにと40ミリくらいの逃げ寸法を取ることが多いのですが、今回はほかの側板と同じ厚みの21ミリで見せています。引き出しにハンドルをつけないデザインにしたので可能になった納まりです。

やはり見付が細くほかと揃うというのは美しいです。キッチンや家具っておおよそ同じような条件で構成されていくので、どのような形も大きく見ると大差がないように思えるのですが、こういう細部の納まりで見え方がきちんと美しくなっていってその形らしさが現れるように思えます。

もちろん、40ミリの時もきれいに見えるように心掛けますので、40ミリには40ミリの21ミリには21ミリのあるべき見え方があるのだと思うのです。

きれいに納まりました。ここから技拓さんが器具付けをしてくださって完了となる予定です。できあがりが楽しみです。

建具の調整:家具屋の自宅

Category : 日記「自由な手たち」

2025年3月7日

先日、ダイスケさんにお家を整える作業をお願いしました。二か所、ドアの丁番の調整と、玄関の洞床の障子の調整です。

お家を建てている時のキッチンを取り付けた後の写真です。懐かしいです。

まずは、玄関からリビングに入る間のドアの調整です。壁が動いたのか、建具が動いたのか、ドアの木が痩せたのか、ラッチボルトがカチッと閉まらなくなってしまいました。

ドアと建具の間の埃は後できれいに拭き取りました。お見苦しくて失礼しました。

使っている丁番は、堀商店さんのオリーブナックル。

私「今乾燥しているからで、梅雨の時期になって木が膨らむなら別に気にしないけど。」

ダイスケさん「やだ。ドアが閉まらないの、気持ち悪い。」ということで調整することになりました。

(ちなみに、私、血液型A型、ダイスケさんO型です。)

ダイスケさん「1㎜くらいの板挟めば閉まるのではないかな。」ということで、丁番にサイズに作った部材を足して付けました。

丁番の金具を合わせてネジで止めるまでの間、ハルにドアを持ち上げていてもらいました。

(私は写真撮りたかったので…。一つ返事で応じる長女。しかも私より力強く安定している。ありがとう。)

調整後、無事ドアが閉まるようになりました。

続けて、洞床の障子の枠の調整です。障子の枠がいつの間にか外れていたのですが、木が膨らんで入らなくなってしまっていたので、削って調整しました。

障子の枠がずれていることに気づくことができたのはダイスケさんだけでした。

眼鏡をかけないと鉋の刃の調整ができないお年頃のダイスケさん。(1枚目の写真)

お客様のお宅ではちゃんとシートを敷いて作業しますのでご安心を。

建具の材料がヒノキだったようで鉋屑からいい香りがしていたので、器に入れてしばらく玄関に置いておきました。

玄関の洞床の障子を枠を付けたのは約1年前。やはり木という素材は1年季節を通しても動きますから、おおらかにその様子を受け止められるか、家族に調整できる人がいないと難しいのかなとも思います。

ちょっとした不具合は必ず出るものです。

その時に、ドアを外すことなく、丁番のネジの閉まり具合などで調整できる丁番などは本当に便利だと思います。ただ、用いた丁番のデザインから生まれるインテリアの雰囲気もあります。我が家のドアにはそういう丁番は合わなかったと思います。

どちらを選べばよいか悩ましいですが、私たちはお家の形を考えてくださった福原さんが進めてくださるものにしました。

暮らし始めて6年目の我が家。暮らしを整えた時のお話でした。

家具屋姫のひな祭り

Category : 日記「自由な手たち」

2025年3月4日

昨日はひな祭りでしたね。早いものでハル20歳、チイ16歳です。

小さい頃はみんな集まって食卓を囲めていましたが、成長と共に子供の方が不在になりがちなのは、どこのお宅も同じなのではないでしょうか。(ハルは、ダンスサークルの大会に参加していて、翌日にお昼ごはんとして食べることでしょう。チイは塾で遅い帰宅でした。)

食卓につけるのが家族バラバラのタイミングになろうとも、習わしですから、お祝いの食事はちゃんと作りたいなと思っています。(年に1回このタイミングでしかお金かけてわざわざ用意しないのもありますし…。)

子供たちが小さいころに、ちらし寿司とお吸い物に何かプラスして~とリクエストを募ったら、「ナゲット。」という返事だったのでそれから恒例メニューになりました。今回、ラップでくるんで冷凍庫で固めた後包丁で切ってナゲットの平らな形を出すのが時間がなくて面倒だったので、そのままスプーンですくって揚げていたら俵型になってしまいました…。それはそうですよね。味はおいしかったです。

ちらし寿司の具を用意しておいて、チイに寿司桶の盛り付けをお願いしました。

昆布じめしていた鯛の切り身で真ん中にお花を作ってくれて、すてきな雰囲気にしてくれました。

(1枚目の写真です。)

飾る場所は吹き抜けの2階の収納の上です。
両親がプレゼントしてくれた立派なお雛様なのです。ありがとうございます。
灯りを付けましょ~ということで。雰囲気がありすぎてお顔が見えなくなってしまいますね。

お雛様は毎年節分が終わるとすぐ出していたのですが、今年は2月18日の雨水の日に出しました。

もうお年頃ですから、「この日に飾ると良縁に恵まれる」というところに重きを置きたいと思いまして。

こちらがハルのお雛様。髪を下ろしているいるのです。
こちらがチイのお雛様。髪を結ってある方です。どちらも美しくて見惚れてしまいます。

会社のショールームにも毎年、ダイスケさんの祖母、陶芸が趣味だったリツコおばあちゃんの手づくりお雛様を飾っております。手の平に載せて包むとなんだか心が落ち着くのです。

今年も家族みんな健やかにこの日を迎えられてよかったです。

そんな我が家の、家具屋姫のひな祭りでした。

タモの飾り棚とブラックウォールナットのミニキッチン

Category : 日記「自由な手たち」

2025年3月1日

前回、2月中旬に設置工事に入らせてもらったIさんの現場に再び。1階の床が全面タイル張りなのでタイルが施工される前に取り付けられるものをつけておこうということで。

今回の取付はシンプルな納まりのものが多かったので心配は少ないのですが、気になっているのは、次回3月半ばに取付する予定のタイルの壁面に取り付ける家具たち。タイルの穴開けってなかなかおっかなくて、タイル用のキリを使ってもすぐに切れなくなっちゃうし下手すると割れや欠けが出ちゃう。特に磁器のタイルになるので、今までも割った経験のある私から見るとおっかないわけです。

それで、タイル絡みのところだけでも先行してタイル施工前に取り付けられるかなあ、なんて思っておりまして、ワタナベ君がタイル屋さんに相談していたのですが、タイル屋さんとても良いお人柄で、「できるけれども小さな入隅が手でカットすることになるから少しラフになるかもしれないよ。」とおっしゃって、そうだよね‥、私たちが後から付ければタイルはきれいに張れるものねえ、と思い悩んで、やはりタイルが張られてから取り付けすることに気持ちを決めました。いずれにしてもタイル後じゃないと施工できない家具もあるわけなので、気持ちを決めてすべてタイル後に割らないようにやろうではないかと。

でもすぐに切れなくなっちゃうタイルキリのことを思うとやっぱり不安で、タイル屋さんにお勧めを聞いてみることに。

そうしたら、タイル屋さん、手を止めて道具を見せてくださいました。

「キリはね、やっぱりすぐ切れなくなってしまうんですよ。だから、ホールソーがいいんです。」

「ホールソーですか!そんなに小さなホールソーがあるのですか・・。」

「はい、こういう形のものです。これをね、振動掛けないで回すんですよ。ホームセンターでも手に入りますよ。」

「なるほど。力で切削するというんもではなく、研磨して削り取っていくのですね。」

ということで、不安がひとつ消えてほっとひと安心。今度試してみましょう。

ナラのコの字型キッチン

Category : 日記「自由な手たち」

先日、Sさんのタモのコの字型キッチンの設置が終わったばかりですが、3月は納品が続くのです。

こちらは技拓さんからご依頼を頂いていたOさんのナラのコの字型キッチン。ナラはランダム張りの突板を使用し、天板には、シーザーストーンの「4004 RAW CONCRETE MATT」を採用。コンクリートの斑紋が表現された天板で、皆様に好まれるカラーでもあります。

不思議な順番」のJさんや「素直な家」のIさんのキッチンカウンタトップにも採用したカラーです。

そのシーザーストーンが先日無事に届きまして、ヒロセ君がすべて組み上げて本日家具チェック。上品な仕上がりになりました。いよいよ来週取付です。

お魚用の包丁

Category : 日記「自由な手たち」

2025年2月28日

我が家の包丁は結婚当初に買った万能包丁3本セットを研ぎながらずっと使ってきました。

お魚をちゃんとさばけるようになりたいなと思いながら、万能包丁を研ぎながら使ってきました。

お魚用の包丁を使えばもうちょっとやりやすくなるのではないか?と思い、購入することを決めたのですが、お魚用の包丁と調べただけでもたくさん出てきて、どこの何がいいのかは全く分からず困っていたのです。

(実家で父が使っていた刺身包丁と出刃包丁は大きくて立派な包丁なので、我が家の包丁入れには入りそうにはありませんでした…。)

お料理研究家のヒラノさんのお家に伺う機会があり、キッチンを拝見させていただけたので、お魚をさばくのに使いやすいお勧めの包丁を教えていただきました。

我が家の包丁入れにも入る大きさの物でしたので、購入しました。

松井刃物さんの包丁。モリブデンステンレス製で少し重めでかっこいいです。

いつもは刃先を下に向けて立てて収納していますが、これはしばらく箱に入れて収納していこうかと思います。新しいもののえこひいきです。

早速、鯵を捌いてみましたが、よく切れる分、刃先や向きの運びが影響するのですね、難しい…。練習します。そして、盛り付け方も…。鯵一匹一人分だとお腹いっぱいになりますね。量の配分も、勉強します…。

NHK「教えてウエカツさん」のコーナーが好きでよく観ているのですが、

「捌くのがうまくいかなくて骨に身が残ってしまっても、あら汁にすればもったいなくありませんから。」とおっしゃっていた通り、そのおいしさに残念な気持ちが薄らぎました。

これからはこの方法で、目標はイサキくらいまでのサイズのお魚料理にチャレンジしていきたいと思います。

キッチンに新しいアイテムが増えるとうれしいですし、楽しいですね。

裏打ち(天板の接着)

Category : 日記「自由な手たち」

2025年2月23日

このところかなり慌ただしくしていて、作業をスムーズに進めるために土日でも誰かしら工房で作業をしている状況だったのですが、ようやく3月末までの予定が見えてき始めたところでこの連休は静かな工房。

本日、都内からKさんがキッチンの相談にいらしてくださいまして、「ステンレスカウンターの天板が熱でボワンってならないように。」というお話が出ました。

私たちが使っているステンレス板は通常は1.2ミリのものを使用することが多いです。コストや面取りのバランスなどを考えてこの厚みになったのですが、それでも以前はボワンってなることがありました。ステンレス板自体に厚いものを置くことは全然問題ないですが、その下につける下地合板を接着する接着剤が耐熱用のものを使っていても熱で軟化することがあったからです。

そこで、それからは接着剤を変えてシリコン系の接着剤を使用しています。ただ、それでも特定のキッチン機器を組み込んだ時に熱の影響を受けたことがあったので、部分的にセメダインのスーパーXを併用したりしています。

これでけっこう天板はしっかりするのですが、シンク自体は1.0ミリで作ることが多いので、ここに熱湯を流すとボワンって言うことがあります。でも、排水管が耐熱ものでも熱湯でストレスを受けるので、できれば、パスタをお湯を捨てたりと熱湯を流す時はお水を流しながら湯切りしてもらえると安心です。

Kさんとの打ち合わせでそういうお話が出たのでちょっと思ったことを書いてみました。

そんな日曜日。写真は、ちょうど昨日横浜のSさんのステンレス天板と下地合板をプレスに入れてシリコンで接着していたのでその様子です。

タモのコの字型キッチン

Category : 日記「自由な手たち」

2025年2月19日

関西で設計のお仕事をされているSさんの学生時代の先輩が、今回Sさんのご自宅を手掛けることになったという経緯から、「都内で施工してくださる施工会社さんご存じないでしょうか。」と、キッチンだけではなく会社さん探しのご相談も受けることで始まったことご依頼。

ちょうどその時に内田雄介さん設計のH様邸のキッチンを手掛けていたのですが、その工務店さんの仕上がりがきれいだったことと、HさんとSさんのお住まいが比較的近いこともあって、お話をしてみたのです。そうしたら、とんとんとお話が進みまして、その施工会社さんである諫早建設さんがSさんのご新居を手掛けてくださることになったのでした。

そして、昨日と今日でおおよその取付が完了したのがこのタモのコの字型キッチンです。今回はリボスのタヤというシリーズでタモにしっかりとした色を入れています。環孔材なら色も入れやすいだろうと安易に思っていたのですが、突板と無垢では色の染み込み具合が大きく違って、なかなか着色の仕上げに難儀した部分がありましたが、こうしてきれいに納まりました。あとは、細かい作業を終えればすべて完了する予定です。

来月にはお引き渡しになるということで、全体の様子がもうすぐで見られます。

オーダー家具とオーダーキッチンの制作例を更新しました。

Category : 日記「自由な手たち」

プッシュオープンソフトクローズレールを採用したナラの食器棚

ちょっと変わった機能金物を組み込んだ食器棚を作らせて頂いたHさんの記事と、

矛盾した心地良さ」藤沢 H様

ナラ板目ランダム張り突板を使った食器棚

ナラのランダム張り突板とグレイジュの化粧板を使ってとても良い表情に仕上がったOさんの食器棚の記事と、

小さな積み重ねがその人の形になっていく」世田谷 O様

4年ぶりに再会できたKさんのキッチンとそして新たに作らせて頂いたダイニングテーブルの記事の

懐かしく思い出深く」草加 K様

3つのオーダー家具とオーダーキッチンの制作例をを掲載しました。

お時間ございましたらご覧頂けるとうれしいです。

Nさん、こんにちは。

Category : 日記「自由な手たち」

2025年2月17日

先日、設置工事が完了したNさんのキッチン。今日はいよいよそのお引き渡しの日でした。

包丁差しの取付位置をお持ちの一番長い包丁に合わせて取り付けましょう、ということで、無事にお引き渡しが終わったこのタイミングでお邪魔させて頂きました。

私もアキコも完成した姿をきちんと見るのは今日が初めてでしたが、うれしさよりも引き戸の反りが出ていないかどうかが私にとっては一番の心配でした。引き戸を取り付けたのは完成見学会が行われる数日前でしたので2週間ほどこのままになっていたはずですし、今の時期はけっこう乾燥していますからね。

すでに「幅の広いサイドパネルは少し縮んでいました。」って先日引き戸を取り付けてきた後にノガミ君から聞いていたので、取り付けるまで約1か月間ショールームで養生させていた引き戸でもちょっと心配だったのです。

「こんにちは、Nさん。」

「あっ、イマイさん!このたびはありがとうございます!どうぞ入ってください。」とNさんが招いてくださったリビングには試運転ということでペレットストーブがホクホクと焚かれていました。おぉ、これはより乾燥してしまうのでは・・。

と心配したのですが、引き戸は問題なくきれいに納まっておりました。ほっとひと安心したのでございます。

しかし、この環境になじむまで1年間くらいは様子を見てみないといけませんね、とNさんにお伝えしながら、包丁差しを取り付けて、浄水器をつないで無事にすべてが完了。

次はお引っ越し後にお邪魔させて頂きますね。

ありがとうございました、Nさん。

懐かしく思い出深く

Category : オーダー家具・オーダーキッチン制作事例, オーダーキッチン

2025年2月18日

「ナラランダム張り突板とスパイスニッチのあるペニンシュラキッチンとクルミのダイニングテーブル」

草加 K様

design:Kさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:masakane mukrakami
painting:iku nogami

ナラ板目ランダム張りのペニンシュラキッチン
Kさんのキッチンはダイニングに向かったレイアウトではなく、玄関からダイニングへと抜けていく途中にあるペニンシュラキッチン。キッチンに入る前にパントリ―にもアクセスできる使いやすい動線なのですが、リビングからキッチンの手元が丸見えになってしまうため、目まくしになるようなデザインを希望されていました。そこでステンレスカウンターよりも1段高いところにナラのカウンターを設けています。
ナラ板目ランダム張りのペニンシュラキッチン
リビングから見るとこのような感じ。廊下側は6枚の扉になっていて、内部はA4サイズのものがしまえる奥行の収納になっています。扉を閉めるとランダム張りの印象がよく分かりますね。また、扉と床の間の台輪部分は結構高さを取っているのが分かりますでしょうか。今回、Kさんのお住まいはリノベーションということで、元々のキッチンの向きとは異なる向きにしているのですが、そのため排水管の水勾配を確保する時に床下で配管することが難しかったので、床上に配管されていて、その給排水管を隠すために台輪が高くなっているのです。

2024年に入ってKさんから久しぶりにご連絡を頂きました。

「こんにちは、ご無沙汰しております。
2020年の7月頃にキッチンを納品していただいた草加のKです。
その節は素敵なキッチンを製作していただき、ありがとうございました。
搬入も大変ご苦労されたようで、感謝しております。
引っ越しが終わったらご連絡する予定が、コロナの状況がもう少し落ち着いてからなどと考えているうちに、すっかりご無沙汰してしまいました。大変失礼しました。
今回は2つご相談したいことがありまして、ご連絡させていただきました。

1つ目はキッチンのタオル掛けについてです。
シンク前に真鍮のタオル掛けをつけていただいたのですが、だいぶ緩んできてしまいました。
使ってみて気づいたことですが、シンクで作業していると必ずタオル掛けに足が当たってしまうので、直すことができたとしてもまたすぐに緩むということの繰り返しになってしまいそうです。
そこで、タオル掛けをもっと幅の狭いものに付け替えることはできないだろうかと考えております。ただその場合、最初にタオル掛けをつけた場所の穴を片方埋めたりすることは可能なのでしょうか?他の方法も含め、検討したいと思っておりますので、何か良いアイデアがありましたらご提案いただけるとうれしいです。

もう1つは、テーブルの製作をお願いしたいと考えております。
以前、ショールームで見せていただいたことがあるのですが、再度お伺いして見せていただけたらと思っております。
お忙しいところ恐縮ですが、ご検討くださいますよろしくお願いいたします。」

ナラ板目ランダム張りのペニンシュラキッチン
側面から見るとこのような感じ。奥がパントリーになっていて、そこから直接廊下に出られるというぐるぐる回遊動線。手前の側板にコンセントがついているのは、この側板にダイニングテーブルをくっつけて使う時に電源を取りやすいようにということで。シンク前の幕板が白く汚れているのように見えるのは、ひしゃげてしまったタオル掛けがついていた部分。タオル掛けを外して、軽く研磨した状態で写真を撮ってしまいましたので。
スパイスニッチのあるステンレスカウンター
ステンレスの天板とスパイスニッチ部分の様子。もともとは天板からスパイスニッチまで一体で作りたかったのですが、どうしても搬入が難しくて。集合住宅や戸建て住宅の2階以上となると実現したい形も制限されてしまう場合があります。でも、なるべくその人の思いを実現したいところですので、いつも悩みながら形を考えていくのです。
スパイスニッチのあるステンレスカウンター
結果として、スパイスニッチと天板は分けて作ったのですが、ニッチ部分に水が流れないように奥は高さを数ミリ上げています。

そうか・・、あれからもう4年も経つのですね。
Kさんからオーダーキッチンのご相談を頂いていたのはコロナが流行する前のことで、ちょうど発生時期を挟んで納品になったのでしたね。
現地確認する際にうっかりマスクを持ち忘れて、慌てて現地近くのコンビニエンスストアで購入した数枚入りのマスクは、現場で忘れた時にって思ってあれからずっと軽自動車のグローブボックスに入れっぱなしにしたままだったなあ・・、いけないいけない。

なんて思い返すうちにあの時の様子が思い出されてきました。
Kさんのご新居となるお住まいはリフォームするマンションなのでしたが、2550のキッチンが無事に搬入できるかどうかが心配だったんだっけ。
特に今回のステンレスカウンターはカウンターの奥にスパイスニッチのような形状を設けることになったので、ほんとうなら天板からニッチをすべて一体で作りたかったのですが、搬入が不可能ということで、天板部分とニッチ部分を切り離して作ったのでした。
懐かしいなあ。

ナラ板目ランダム張りのペニンシュラキッチン
キッチン収納部のレイアウトは私たちのオーソドックスな形。また、今度のタオル掛けはシンク前ではなくシンク下につける形にしたのでした。
シンク前のコンセントとボッシュの食洗機
シンク前のコンセント。最近は色の強さがやさしいグレー色が選ばれることが多くなりましたね。
ボッシュの食洗機
食洗機はBOSCHの45センチフロントオープンタイプ。ゼオライトを搭載したタイプなので、乾燥しやすく使いやすい食洗機になっています。

ところで、真鍮のタオル掛けのお話は以前にも同じような意見が出たことがありました。
たしかにちょうど腰や太ももが当たる位置につけることが多く、私も自宅では知らず知らず体重をかけてしまっているなあ、とこの話を聞いて思い起こされました。
でも、お送りくださった写真のようにひしゃげてしまうのだなあ。ということで以前のお話が出てからはあまり細い径のものは使わないようにしておりましたが、Kさんにもご迷惑をおかけしてしまったということですみません。

引き出しの様子
引き出し最上段の様子。ハンドルは真鍮丸棒直径8ミリの磨き仕上げのもの。
引き出しの様子
引き出し2段目の様子。布巾がしまわれることが多いのはどのお宅も一緒なのですね。
引き出しの様子
引き出し3段目の様子。
引き出しの様子
引き出し4段目の様子。

このタオル掛けの具体的なお話とテーブルの件で、Kさん、久しぶりにお母様とお二人でいらしてくださいました。
4年前の思いで話をしながら、その時にテーブルのお話をしていたことはすっかり私は忘れていて、こうして覚えてくださったことがとてもうれしかったのでした。
そのテーブルはちょうど今打ち合わせで使っているクルミの脚の先が細くなっているテーブル。
このテーブルは今はここから独立して一人で頑張っているムラカミ君が作ったもの。
全体の雰囲気を伝えて、細かい部分は彼に任せて仕上げてもらったのですが、脚先がかなり細くなっていて華奢に見えるのですが、実はしっかりしていてその形が洗練されて見えるためかけっこう皆さんによい形ですねと言ってもらえるのです。
そのテーブルのデザインをKさんのイメージに合うように細かく調整して作らせて頂くことになりました。
ありがとうございます。

ガスコンロはノーリツのプラスドゥ。
スライドワイヤーシェルフ
そして、ガスコンロ「プラスドゥ」の下は3枚のスライドワイヤーシェルフ。
スライドワイヤーシェルフ
ワイヤーシェルフ1段目の様子。
スライドワイヤーシェルフ
ワイヤーシェルフ2段目の様子。
スライドワイヤーシェルフ
ワイヤーシェルフ3段目の様子。

「テーブルのために事前に切らして頂くのは申し訳ないので、搬入できるかどうかは私のほうで確認しますので。」とそうおっしゃって頂けたので、ここだけは周囲しておきたいと思うポイントをKさんに伝えて支あらべて頂くことに。
そうして搬入には問題がなさそうだったので、組み立て式のテーブルにはしないで、脚と幕板をしっかりと固めた作りで進めることにしたのでした。

調味料用の引き出し
コンロと壁の間は壁を火元から離す必要があるので、細長い引き出しにすることが多いのです。その調味料用引き出しの1段目。
調味料用の引き出し
調味料用引き出しの2段目。
調味料用の引き出し
調味料用引き出しの3段目は主にボトルがしまえるように設計することが多いです。

納品は制作を担当したヒロセ君と向かいました。
ちょうどこのキッチンを作った年にヒロセ君がこの工房に来てくれたんだっけ。
ショールームのキッチンを入れ替えようと思ったきっかけとなった湘南料理道具市の搬入の時にはたしかヒロセ君も居たっけなあ。あの道具市の最中に「新型コロナが・・。」なんてニュースが入ってきて、何だろうと思っているうちにあっという間に周りが重々しい空気になっていって、道具市の人足もいっとき少なくなってしまったのを思い出しました。
あの寂寥感が少しよみがえってきました。
私たちがどんなに良い方向に向かうように願ってもまわりから物音が聞こえなくなっていくような自分の感覚が無くなっていくような気持ち。あの一時期は先が全く見えなくなって、この仕事を続けたくても続けることが難しいとアキコと話し合った時期でもありました。
それでも、こうして心待ちにしてくれるみなさんや、声を掛けてくれるみなさんが居てくれたおかげで今があるのだなあ、とKさんの住む町に近づくにつれ、寂寥感だけではないうれしい思いがよみがえってきたのでした。
ヒロセ君もKさんのマンションのエントランスを見て搬入が大変だったことを懐かしそうに思い出しておりました。
そして、キッチンがとても丁寧に使ってくださっている様子をうれしそうに眺めていて。私も実は搬入時までしかこのキッチンを見ていなかったので、どちらかというと設置完了までを見ていたヒロセ君よりもその姿を見ることができていなかったので、その使い方のやさしさに彼以上にうれしくなったのでした。

テーブルの搬入を終えて、天板と幕板の固定をヒロセ君が行なっている間に、もう少ししっかりした径のタオル掛けを取り付け直して、元の穴は研磨してビス穴や汚れがある程度目立たないように補修して作業は完了。
また、機会ができたらぜひ使い込んだ様子を拝見させて頂けたらうれしいです。
Kさん、ありがとうございました。

クルミのダイニングテーブル
そして、クルミのダイニングテーブル。足の先細る感じは私たちのショールームのものに近づけていますが、面取りの感じなどはもう少しエッジを残したデザイン。
クルミのダイニングテーブル
天板はこのような感じ。私たちの良く作るデザインで、10アールの丸みに上下C2ミリの面取りという仕上げ。
天板 ステンレスバイブレーション/ナラ板目無垢材
前板・扉 ナラ板目ランダム張り突板
本体外側 ナラ板目ランダム張り突板
本体内側 ポリエステル化粧板
塗装 オイル塗装仕上げ
キッチン仕上げ

ナラランダム張り突板とスパイスニッチのあるペニンシュラキッチン

価格:1,020,000円(制作費のみ、塗装は施主様施工、設備機器費用は別)

*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は50,000円から、取付施工費は130,000円から)

クルミのダイニングテーブル

価格:310,000円(制作費、塗装費)

*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は30,000円から)

ナラ板目ランダム張り突板を使った食器棚

小さな積み重ねがその人の形になっていく

Category : オーダー家具・オーダーキッチン制作事例, 食器棚のオーダー

2025年2月17日

ナラ板目ランダム張りの食器棚

世田谷 O様

design:Oさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:daisuke hirose
painting:daisuke hirose

ナラ板目ランダム張り突板を使った食器棚
食器棚全体の様子。今回のOさんの食器棚の幅は1700ミリ。そして奥行は深めの600ミリ。吊戸棚もいつもよりも容量大きく奥行420ミリで作っています。
ナラ板目ランダム張り突板を使った食器棚のイメージ図
Oさんから頂いた原案となるスケッチ。

「イマイ様
初めまして、Oと申します。
今回、食器棚の設置を考えておりご連絡させていただきました。
汚い絵で恐縮ですが、なんとなく添付の図のようなものをイメージしております。横幅170センチ、奥行きは50センチから55センチくらいで考えています。

・飾り棚はできる限りシンプルにしたいです。
・下の棚は、ゴミ箱収納以外は引き出しにしていますが、引き出し収納を一部削って、炊飯器or電子レンジorトースター用のスペース(スライドテーブル?)を1箇所作るか悩んでます。
・上の棚は、扉3枚か2枚。3枚であれば、そのうちの1枚は、ガラス(アクリル?)もいいかもと思ってます。
・木の種類は決めてません。色味の雰囲気や、お値段を考慮して考えたいです。
・天板や、棚の内部は、お手入れのしやすい素材が良いです。

一旦、つらつらと書かせていただいたのですが、この後、どのように進めさせていただければよいか、ご教示いただければ幸いです。
おおよその見積もりや、スケジュール感を知りれたらなと思っております。」

食器吊戸棚の内部はナラ突板とアクセントカラーの背板で仕上げています
いつもは標準の仕上げとして、扉を閉めると表面から見えなくなる内部は白いポリエステル化粧板やシナ合板を使うことが多いのですが、今回は外側と同じくナラの突板で仕上げています。さらには、引き戸の戸棚は開けっぱなしのまま使うことも多いと思われまして、(開き扉だと閉めないと頭にぶつかっちゃうことがあるので)開けっぱなしにしていても印象が良いように背板のカラーだけをナラ材とは変えてみました。今回は食器棚の天板に使用しているグレイジュの化粧板を使うことで雰囲気よい内部の仕上げとなりました。
食器吊戸棚のソフトクローズ引き戸の様子
引戸の上のほうに見えるシルバーの部材は、上吊引き戸のレールになります。上吊引き戸のメリットとしては吊戸棚野地板に溝を掘り込まないので、その溝にゴミがたまることがないフラットな仕上げにすることができるのですが、もう一つの大きな特徴としてソフトクローズ機能を持たせることができる点にあります。今回Oさんの戸にはそのソフトクローズ機能を持たせてあります。

壁から飛び出た棚板というのはなかなか難しかったりします。
よく大手キッチンメーカーさんの施工例でも見かけますし、私たち自身もそのような形で納めたこともあります。
ただ、私たち自身で作る時は新築工事やリフォーム工事の最中に大工さんに取り付けてもらう形を採っています。
完成された空間に後付けすることはできることはできるのですが、強度的に不安があるのです。
そういう専用金物(T字型をしていて、金物を壁につけることで壁から棒が突き出たような形になる物)も出ているのですが、てこの原理で棚の先端に強い力が加わるとあっという間に金物が壁からもげてしまうと思うのです。
ですので、いつもは棚板を壁内に埋め込む形で大工さんに付けてもらうか、専用金物自体を私たちのほうで自作して強度を確保するか、棚板ではなく、ボックス状の形にするかというお話をさせてもらっています。
ボックス状というのは、吊戸棚の下にカップなどを並べて置かれているあのオープン棚のことです。

吊戸棚の引き戸の手掛けのイメージ
引戸の引手部分の詳細。通称アールの突き通しと呼んでいます。突板の途にスリットを入れるのですが、スリットを入れると下地材が露出してしまうので、あらかじめ無垢を仕込んでおいて、その部分にスリットを入れて仕上げています。
真鍮のワイングラスハンガー
ワイングラスハンガー。私たちはいつもはハーフェレのワイングラスハンガーを使っています。ちょっと高いのですが、厚みがしっかりしていてひずみがないことと、溶接がきれいなのです。以前別のものを使ったことがありましたが、厚みが薄かったため溶接部分でひずみが出てしまっていたことがありまして、それからはハーフェレのものを使うようにしているのです。

Oさんにもそのお話をさせて頂きまして、まずは少し木としての存在感が出てしまうのですが、以下の日記に載っているような棚を作る場合でお話を進めることになりました。

2019年6月21日「荒川のMさんのところへ

でも、結果的にはOさんは私のお伝えした注意点と使い勝手をはかりにかけて一枚板はつけないことにしたのでした。
ですので、できあがりの形は写真を見るとシンプルにまとまっておりますが、ここに至るまでは、このようにいろいろと行きつ戻りつしながら決まっていったのでした。

ナラ板目ランダム張り突板を使った食器棚
今回の天板の高さは920ミリにしています。いつもはキッチンに合わせて850ミリや900ミリにすることが多いのですが、こちらの天板の上ではそれほど調理作業をしないということで、それであれば引き出しの深さをもう少しとる形が良いかな、ということになりまして、家電の使いやすい高さとのバランスを考えてこの高さとなりました。

例えば、樹種。
いつもは希望の木の色などが決まっていない場合は、タモで見積することが多いのです。
以前はナラも使いやすかったのですが、価格がかなり上がってきてしまっていることもありまして、価格な標準的なタモで全体の金額の印象をつかんでもらいながらお話を進めることが多く、そこからOさんの場合は、タモに比べてもう少し濃淡の柔らかいナラを選んで、さらに杢目があまりきれいに並びすぎないようにということでランダム張りの突板を使うことになりました。
さらには、ハンドルや吊戸棚の内部の仕上げ方や天板の見せ方など、一つ一つがOさんの形となっているのです。
詳しくはそれぞれの写真のキャプションをお読みいただけますとうれしいです。

食器棚の天板はグレイジュのメラミン化粧板
天板はメラミン化粧板。細かいエンボス仕上げになっているアイカのカラーフィットメラミンを使い、グレイジュカラーのものを採用したので、このナラの印象ととても良く合っています。
食器棚の天板はグレイジュのメラミン化粧板
そして、その天板と天板の小口材の見せ方について。天板を上から見た時にグレイジュのメラミン化粧板しか見えないように仕上げることもできますが、今回は木部の印象を大切にしたいということで、メラミン化粧板を囲むように木の縁を見せる仕上げにしています。

こうしてできあがった形は、心配だった搬入も問題なく済ませられて、無事にOさんのキッチンに据え付けられたのでした。

「お礼が遅くから申し訳ありません。
とても素敵な食器棚を作っていただきどうもありがとうございました!
想像以上に良い感じに収まってとてもうれしいです!
吊り戸棚の背板も色を変えて大正解でした。
真鍮の取手なども可愛く、昨日から食器棚を眺めては幸せな気分になっております。
これからゆっくり楽しみながら食器などを収納していきたいと思います。
昨日作業に来てくださいました皆様にもどうぞよろしくお伝えください。」

後日、ご挨拶に伺わせて頂いて、とても丁寧に使ってくださっている様子を見させて頂きうれしくなりました。
今回のナラはちょっと大柄だったためか、多少ざらつきが出やすいかなと思っていたのですが、ツルっとした手触りのままお使い頂けていたので、いつも通りのお手入れの方法をご説明させて頂きました。

家具が一つ入ることでキッチンの印象は大きく変わります。
また、何かワクワクしたアイデアが生まれたらいつでもご相談頂けたらうれしいです。

炊飯器収納上の棚板
下の食器棚の右上は炊飯器のスライドテーブルとなっているのですが、その上に可動棚をつけて、ラップやマットなどがすぐ取り出せるようにしています。
炊飯器を収納するスライドテーブル
そして、炊飯器のスライドテーブル。今回は食器棚の奥行が600ミリで作っていますので、炊飯器の奥にも写真のように物がしまえるのが特長です。また、写真だとまったく見えないのですが、私たちが家電を収納する部分を作る時にその奥にコンセントをつけるのですが、そのコンセントは上のほうにつけることが多いのです。なぜかというとコンセントを下のほうにつけておくと、スライドテーブルを閉めた時にコンセントケーブルを挟んでしまうことがあって、その都度手を差し込んでケーブルを持ち上げないといけないことがあって、上にしておくとそういうことにあまりならないことが分かりまして、上気味につけるようにしているのです。
炊飯器収納下の引き出し
その下は深めの引き出し。
食器棚の引き出しの様子
食器棚の中央の列は食器用の引き出し。今回引き出しのハンドルにはかなぐやさんの「真鍮とって六角棒コの字」を採用しています。いつもオーダーでこのサイズで作ってもらうのです。
食器棚の引き出しの様子
食器用の引き出し2段目。
食器棚の引き出しの様子
食器用の引き出し3段目。
食器棚の引き出しの様子
食器用の引き出し4段目。
食器棚の引き出しの様子
左の上段の引き出しはちょっと薄い引き出し。
食器棚の天板はグレイジュのメラミン化粧板
左下にはゴミ箱。ゴミ箱はケユカのアロッツ。フタを開けた時にその場で引き出すことなく大きなゴミ(例えば、お肉やお魚のプラスチックトレーなど)が捨てられるように高さに余裕を持ったスペースになっています。

ナラ板目ランダム張りの食器棚

価格:760,000円(制作費・塗装費)

*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は20,000円から、取付施工費は50,000円から)

プッシュオープンソフトクローズレールを採用したナラの食器棚

矛盾した心地良さ

Category : オーダー家具・オーダーキッチン制作事例, 食器棚のオーダー

プッシュオープンソフトクローズレールを使ったナラの食器棚

藤沢 H様

design:Hさん/ecomo Kさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:kenta watanabe
painting:kenta watanabe

プッシュオープンソフトクローズレールを採用したナラの食器棚
食器棚全体の様子。食器棚が1200ミリとコンパクトなスペース。個人的には廊下側から使用する物入はキッチン側から使用する形ならパントリーとしても使いやすかったのではないかなあと思えるマンションの間取り。

久しぶりにecomoさんから、「ちょっとしたリフォームを行なう中で食器棚を新しくしたいというお客様がいらっしゃるのです。」とお声掛け頂いたのです。

ecomoさんは藤沢にショールームがあるのですが、実は私はまだ一度もお伺いしたことがなく(すみません・・)いつも私たちのショールームまでいらしてくださって打ち合わせを行なうことが多いです。
「イマイさんのところで家具の感じを見てもらったほうがイメージをつかみやすいと思いますので。」と担当のKさんはいつもそうおっしゃってくださるのでありがたいのですが、実は今回の形は、私たちもショールームにあるものではなく初めて作る形だったのです。
そこでお二人にはこちらまで足をお運び頂いてマンションのキッチンという限られたスペースの中でどのような食器棚が使いやすいのか、いろいろと悩みながら形を考えていったのでした。

食器吊戸棚の内部
吊戸棚内部の様子。吊戸棚の下で床から1370ミリと、Hさんの身長に合わせて中が見通せるようにかなり低めに位置まで戸棚を下げています。

限られたスペースと言えば、余談ですが、こういうことを言うと怒られてしまうかもしれませんが、最近のマンションはキッチンのスペースが狭いように感じることがあります。
マンションの間取りの見栄えとして部屋数の多さを表現したいためなのか、狭くなりがちなリビングを広く見せるためなのか、キッチンが機能的にはなりにくい広さになってしまっている間取りを時々見かけることがあるのです。
食器棚を置くスペースが狭い間取りだったり、食器棚を置いてしまうとキッチンと食器棚の間の通路幅が800ミリ以下になってしまう間取りだったりと最近そのようなケースを見かけるようになりました。
料理をする時間よりもくつろぐ時間を重視したいというお話をどこかで聞いたこともありますが、このようなレイアウトではみんなで料理するには少し窮屈ではないかなあ、と思えたのです。
Hさんの間取りもそのように感じられて、食器棚のスペースが幅1200ミリほどというコンパクトなスペース。
マンションは四角い躯体の中に間仕切りを立てて、余すところなく収納や居室として考えられて結果このスペースになったのだと思うのですが、1200ミリだとちょっと狭いように思えまして・・。
さらには、個人的には食器棚の右壁の物入は元からなくてもマンションの魅力は十分に生まれたのではないだろうかなんて思ったりして。 でも、今回のリフォームでそこまで大掛かりに行なうことはできなかったので、この1200ミリのスペースを上手に活用する方法を3人でいろいろと悩んでいったのでした。

食器吊戸棚の木目の様子
家電を置くスペース。最近のオーブンレンジはコンパクトでも容量の大きなものが出ているので、もう少し吊戸棚を下げても良いのかもしれませんが、取扱説明書の通りの放熱寸法だと多少は戸棚の下面が熱を持ったりするので、もう少し余裕を見た空間を確保しています。

その中でHさんの一番の課題となっていたのはゴミ箱スペース。
最近のシステムキッチンでは、シンクの下にゴミ箱を置くようなものも出てきているのだそうですが、主流はシンクの下は大きな引き出しになっているタイプです。
Hさんのキッチンもそのようなタイプでしたのでゴミ箱を置くスペースがない。
ゴミ箱は食器棚側に置く、ということをはHさんの念頭にあったのですが、やはりリビングダイニングから見えてしまうのがちょっと残念に思えていたのだそうです。
そこで、今まで制作したオーダーキッチンや食器棚の中からゴミ箱を隠すタイプのものをいろいろと見ながらお話を進めていったのです。 その中でちょっと変わった方向にお話が進んでいったのでした。

食器棚の天板の様子
扉や引き出しの前板はナラの突板を使っておりますが、カウンターはナラの無垢材で幅接ぎして制作しています。

先ほど、「私たちも初めて作る」と言ったのは、このゴミ箱スペースのことでした。
こうして全体の写真を見るとシンプルな食器棚に見えるのですが、右下の大きな引き出しにゴミ箱が潜んでおります。
引き出しですからもちろん、引き出して使うわけですが、ゴミ箱の台数が増えると大きな引き出しになり、大きな引き出しになると引き出す時にある程度の力が必要になってきます。

食器棚の引き出し
上段左側の引き出しの様子。この引き出しは通常のソフトクローズレールを使っています。
食器棚の引き出し
上段左側の引き出しも同じく通常のソフトクローズレール。ちなみに私たちが引き出しを作る時は、底付けのレール(外側から見えにくいレール)を使っています。側板につけるタイプのレールもありますが、そのタイプのソフトクローズレールは最初の引きがかなり重いことと、レールがむき出しになるので、ホコリやゴミ場付着しやすくて底付けのレールよりも故障する機会があるように思えまして。以前にも、キッチンを作ったお客様から引き出しにしまってあるお塩を直接手づかみでお鍋に振っていたら、いつの間にかレールが錆びてしまったという貴重なご意見を頂いたこともありました。

また、余談ですが、以前どこかにも書いたかもしれませんが、最近主流になっているソフトクローズタイプのスライドレールで個人的に一番引く時の力が軽くて済むのはヘティヒのクアドロだと思っています。(最近は触る機会がなくなってしまいましたが。)
以前はしばらくの間そのレールを使っていたことがあるのですが、使いたい時にすぐに手に入らないことが多かったことと、レールサイズがほかのどのメーカーとも互換性がなかったことで、それほど使用することなく切り替えてしまいました。
ちなみにショールームとわが家の一部にクアドロを使用しています。機会がありましたら見にいらしてください。
そして、現在はハーフェレのダイナムーブを採用しています。この話をハーフェレの担当のカトウさんに話した時に、「やはりそうですね、私もそう思うところはあります。」と言っていました。結果、その軽さに近づけるように今のダイナムーブは改良されていて、このレールなら手の力が入れにくい場合でも比較的楽に引き出すことができるのです。

プッシュオープンソフトクローズレールを使ったごみ箱用引き出し
こちらがそのプッシュオープンソフトクローズレールを使った引き出し。写真だと分からないのですが、「膝で押して開けて、閉める時も膝で押すとスムーズに閉まりますよ。」とおっしゃってくださいました。引き出しのレールは特に中身に物が入った状態だと安定した動きになります。工房では空っぽの状態だったのでより重さを感じたのですが、このくらいならHさんのように小柄な女性でも不便なく開け閉めできます。また、念のため、他の引き出しと同じようにプッシュオープンが不要となった場合のために手を掛けるスリットも入れてあります。

ただ、それでも大きな引き出しで、さらにハンドルをつけないで手を掛けて開けるような形にすると開けるのに指が疲れちゃう。また、ゴミを捨てる時って手が汚れていることが多かったりします。そうなる時の板を汚れた手で長年触っていると、汚れが落ちにくくなってしまうことも考えられます。
それならプッシュ式の引き出しはどうだろうか・・、と思うのですが、閉める時はきちんと押して閉めないとまた引き出しが開いてしまうからちょっと慣れが必要かもしれません・・、と思いながらいろいろと探していたら、今はプッシュして開けて閉まる時にゆっくり閉まるというプッシュオープンソフトクローズというレールがきちんと出ているのですね。
以前、「glamorous」の王禅寺のMさんのキッチンを作らせて頂いた時に、Mさんが自身で調べて取り寄せたブルムのプッシュオープンソフトクローズを採用した時は電動で動くもので、そのギミックに驚かされたものでしたが、今は電動ではなく金物の機構だけでそれを実現できてしまう時代になったのです。すごい時代です。

炊飯器収納用スライドテーブル
左側の上部は炊飯器をしまっておくスライドテーブルになっています。

この矛盾した動きをするスライドレールってどんな感じなのだろう・・ってカタログではちらっと見ていた程度で使う機会はないだろうと思っていたのですが、ここでそのお話が持ち上がってきたのでした。
そして、最終的に採用したのはスガツネのプッシュオープンソフトクローズ。
スガツネの担当のアキヤマさんは、この倉見まではるばるいらしてくださることが多く、いろいろな金物の説明をしてくださるのですが、今回のレールはまさにアキヤマさんの説明がなければその良さが分からないものでした。
「現在、各金物メーカーでプッシュオープンソフトクローズレールは出ているのですが、スガツネはプッシュオープンとソフトクローズの切り替わるタイミングがほかのメーカーとは異なるのですよ。」とアキヤマさん。
ふむ、それが何を表すのだろうか・・。と考え込む私。

食器棚の引き出し
スライドテーブル下の引き出し上段。

詳しく聞くと、他のメーカーは閉まる途中でソフトクローズのバネが作動し始めるのだそうで、言い換えると、そのバネが効き始めるポイントまで勢い良く引き出しを閉めない限りはソフトクローズしてくれなくて、弱い力で引き出しを閉めると、またポンと引き出しがプッシュされて戻って開いてしまうのだそうで、代わりにスガツネは引き出しが全開したタイミングですでにソフトクローズのバネに引っ張られていて閉める瞬間だけ少し強く押せば、そのバネを固定しているトリガーが解除されてあとは勝手にしまっていくというもの。
自分で書いていてなんだかよく分からない・・。
簡単に言うと、スガツネ以外のレールは、開ける時は押せば簡単に開く。閉める時はある程度勢いよく引き出しを押せばソフトクローズしてくれる。
スガツネのレールは、開ける時は押せば簡単に開く。閉める時は閉めようとする最初の動作がちょっと重いけれどあとはずっと滑らかに閉まっていく。

食器棚の引き出し
スライドテーブル下の引き出し下段。

実際の生活に置き換えると、勢い良く閉めて途中でソフトクローズのブレーキがかかると中のグラスなどが倒れちゃうんじゃないか・・と思えたのです。
スガツネのは閉める最初がちょっと重いというだけなので、ちょっと行儀は悪いですが、腰や膝で押すとあとは途中で急にブレーキがかかることなくスムーズに閉まっていく。
ということで、今回は初めてこのスガツネのプッシュオープンソフトクローズレールを使ったのでした。
実際に使ってみたらその印象がよく分かり、思っていたよりも重さを感じにくく使いやすいと感じたこのレール。
ただ問題は金額が普通のプッシュオープンレールやソフトクローズレールの何倍もすること。引き出しが多いキッチンや食器棚の場合は、なかなか大変な金額になってしまうので、こういうゴミ箱用の引き出しに使うというのはとても有効な使い方だと思うのでした。

設置後にKさんと一緒にHさんのお宅にお邪魔させて頂くと、やはりとても使いやすいそうで、コンパクトながらもとても機能的な食器棚が実現できました、と嬉しそうにおっしゃってくださって私もひと安心したのでした。

 

プッシュオープンソフトクローズレールを使ったナラの食器棚

費用につきましては、お問い合わせくださいませ。

きびだんごを手に入れた

Category : 日記「自由な手たち」

2025年2月16日

先日、岡山県からの来客があったのです。私にとって、とっても特別な存在、kitobitoさんです。

kitobitoさんとは、お問い合わせをいただいたお客様の中で私たちでは遠方過ぎて対応が難しい方をご紹介させていただいたり(自分たちが勝手にしていたことなのですけど)、また、kitobitoさんが関東方面からお問い合わせがあり、自分たちの所では対応が難しい場合に私たちを紹介してくださったりする関係でした。

今までお会いしたことは一度もなくて、Website を拝見してご夫婦で運営されているので、勝手に親近感を持ってファンになり、SNS上でもフォローをさせていただいたりしていたのです。

今回奥様が東京まで来る用事があったとのことで、私たちの工房をに寄る時間作ってくださり、お会いすることが実現したのでした。前日にお電話をいただいた時には、自分たちが会いに行くことはあっても会いに来てくれることなんてないだろうと思っていたので、「はい?」と突然のこと過ぎて失礼な対応になてしまっていたかもしれません。すみませんでした。

ショールームと工房をご覧いただいて、制作中のキッチンや家具を見ながら、色々なお話をすることができました。ダイスケさんは現場から帰ってきてその後塗装屋さんへ行かなきゃいけなっかたので、ご挨拶を交わすだけでしたが、工房や現場での具体的な作業の様子はヒロセ君がお話してくれました。

私たちの会社の様子で大丈夫なのだろうか、と心配になったのですが、後日「ありがたい時間でした。」とメールをいただいたので安心しております。

同業者の人がわざわざ会いに来てくれるのってうれしいのです。数年前にsync-furnitureさんが来てくださったときも、同じようにキッチンや家具を作ることを生業として頑張っている人たちがいるのだ、と元気をいただきました。ありがとうございます。

米戸さんから、お土産にきびだんごと調味料をいただいたのですが、これからもお互いに頑張っていきましょうね、とエールをいただいたと思っています。

桃太郎のサルやキジや犬も、別にきびだんごが食べたいだけで桃太郎について行ったわけではないですよね。桃太郎が鬼退治に行くという目的について行ったと思います。

スタッフみんなで分けていただきました。ごちそうさまでした。

これからもお客様の望むキッチンや家具を形にして届けていくという目的に向かって進み続けていけそうです。すてきな機会を本当にありがとうございました。

次回は私たちが機会を見て伺います!その時はよろしくお願いいたします。

ヴァレンタインデー

Category : 日記「自由な手たち」

今年のヴァレンタインデーのメニューは、ハル作成のクッキーシューと3種のチョコ、チイと私で焼いたシンプルチョコレートケーキでした。

ハル「私サークルの合宿行っちゃうからヴァレンタインデーいないんだよね。何がいい?」

ダイスケさん「何でもいいよ。」

私「シュークリーム!」

ということで、聞かれていないのに答えた私の案が採用されました。

チョコは、ラム酒とソルト入り・いちご・マーマレードジャムが入ったホワイトチョコの3種類でどれもおいしかったです。

アルバイトとダンスサークルの練習時間の合間を縫って、動画を見ながらさっと作れるハルの身軽さと技術が羨ましいですね。タイミングが合わなかったので作っている時の写真が撮れなかったのが残念ですが。

そして、初めてチイと焼いたチョコレートケーキ。

ご存じの通り、我が家は長女ハルがお菓子作りが得意でよく作っているの環境なので、次女チイはやり辛いだろうなとは日頃から思っていたのです。機会をみて聞いても「私はいい。」という感じでしたし、ダイスケさんに言わせると、私とハルがキッチンでやんややんやとしている中には入りづらいよ、と言われる環境なのでした。ごめんね…。

チイひとりで家にいる時には台所を使っているようでした。

今回ハルが合宿に出かけて留守でしたので、やってみようと思えたようでした。

その日、材料とレシピ本をテーブルの上に出しておいたのです。

チイ「お母さんケーキ焼くの?」

私「うん。一緒に焼く?」

チイ「ううん。」 一回目断られる。

各材料を計量して、卵とバターを室温に出して置いていると、

チイ「これから焼くの?」

私「うん、やる?」

チイ「…。(うなずく)」 二回目で同意。

うーん…、私はチイの性格やこのペースをわかっているのでよいのですが、高校生活では最初の声掛けで答えられないと色々なチャンスを逃す気がするので心配になりますが、これも彼女の性格なので仕方がないですよね。

今までも興味はあったようなので、参加しづらい環境にしてしまっていて申し訳なかったのですが、今回一緒に作れてよかったです。何より私が楽しかった。チイもできるじゃんと確認できましたし。

これからも機会を見ながら一緒に台所の立つ機会が増えたらいいなと思います。

そんな我が家のヴァレンタインデーだったのでした。

シナのキッチンのリメイク

Category : 日記「自由な手たち」

2025年2月15日

一昨日から始まったSさんのキッチンの工事。

今回のSさんからの依頼はちょっと変わったものでした。新築の時に作ったキッチンの壁付けのほうはしっかりした収納を作ったのだそうですが、このペニンシュラカウンターのほうは予定していた作りを簡素化して収納を作ることなく今まで使い続けてきたのだそうです。

そしてこうして長年使っていてやはり収納がないと使いにくいと思えてきて、その施工会社さんにあらためて相談したらできないと言われてしまったのだそうです。その理由は聞かせて頂かなかったのですが、Sさんからお送り頂いた写真を見てみてもそれほど難しいことでもないと思えたのですが、少し残念な話です。

でも、おかげでこうしてSさんと私たちの接点ができまして、いよいよ先日から設置工事が行われたのでした。

昨日の日記にも書いたのですが、シンクに独立した洗剤ポケットがついていて、メインの排水管とは別にポケットから細い蛇腹の排水管が来ていたのを私はうっかり見落としていて、初日の作業で、設備屋さんに「あれっ、ここにも排水が来てるね。」と言われてドキッとなったのでした。

伊藤さんに用意してもらったのは通称KITと呼んでいる浅型のトラップで、細い排水管をつぎ足すことはできません。

「どうしようかねえ・・。」と伊藤さんと設備屋さんがいろいろと考えてくださった結果、使われていなかった食洗機の排水管を利用して小型のトラップを経由させることで、問題なく蛇腹の排水管をつなぐことができたのでした。良かった。

良いアイデアがなかったら、家具も一部作り直しになっていたし、工期も延びてしまうところでしたので、お二人のアイデアには本当に感謝しております。

そうして、翌日制作を担当したヒロセ君とノガミ君が無事に収納を据え付けて、その翌日である本日、再び伊藤さんと設備屋さんに来てもらって無事に配管を接続して完了したそうで、伊藤さんからの作業完了の報告よりも早くSさんがショートメールでうれしい言葉を添えて作業完了のご連絡をくださいました。

ありがとうございました、Sさん。

タモのクローゼットとパントリー棚

Category : 日記「自由な手たち」

2025年2月14日

ご依頼が重なっていろいろと作らせて頂いておりました家具やキッチンたち。昨年から作り続けて今年も1月はひたすらみんなで作り続けて一度の納品に行く機会がなかったのでした。

そろそろ、作業場も、倉庫も、ショールームの半分も、みんなが日報を書く食卓テーブルまでも、できあがった家具たちで埋め尽くされつつあり、そろそろ作業するスペースも無くなってきてしまいそうなタイミングでようやく納品の機会がやってきました。

そしてワタナベ君が手掛けるIさんの家具たちを先日取り付けてきました。

このIさんの家の設計は、久しぶりにお声掛け頂いたシキナミさん。施工はこの度初めてお世話になります茅ヶ崎の大勝建設さん。監督さんと大工さんがとても丁寧に段取りしてくださったおかげで、まずは無事にタモで作るクローゼット内の収納家具やパントリーの棚などを納めることができました。

Iさんの家具の量がたいへん多いもので、この納品が終わって休む間もなくシンプルな飾り棚をひたすらワタナベ君は作り続けております。新しくなったハーフェレのテープライトをうまく納める工夫がこの飾り棚の難しいところで、配線計画を練りながら作り進めております。

そして、昨日からkotiの伊藤さんにご協力いただいて少し変わった家具の設置を行なっております。昨日、今日、そして明日で工事が完了する予定。

昨日は現状のキッチンシンクの排水管の構造でうっかり私の見落としがあって、「これは作業が遅れてしまうかもしれない‥。」となりそうなところを伊藤さんと設備屋さんが工夫をしてくださってうまく配管のルートが取れるように考えてくださり、ほっと一安心。そして、今日はその家具の取付に制作を担当したヒロセ君とサポートでノガミ君とで作業に入らせてもらいました。私は無事に納まりそうな様子を確認したら先に戻らせてもらいましたが、クライアントのSさんは搬入の時からとてもうれしそうに見ていてくださり、私たちもうれしくなったのでした。

昨日の三鷹はそれはもう寒風が吹いておりましたが、今日は暖かいのでした。

シーザーストーン4600オーガニックホワイトとチャコールグレーのキッチン

Category : 日記「自由な手たち」

2025年2月10日

T-SITEで湘南料理塾を開催していたカラコルフードネットの平野さんがたまたま私たちのキッチンを見てくださったのが最初のきっかけだったのだそう。

カラコルフードネット

https://caracolfoodnet.com/

ちょうどあの時、「湘南料理道具市」にキッチンを出させて頂いていた時でした。私たちにとってはとても大胆でうれしいご提案を頂いて、1ヶ月ほどキッチンをいろいろな皆様に見て頂けたとても良い機会だったのです。

そこで見かけた私たちのキッチンの印象を、家作りが始まった当初、建ててくださる加賀妻さん(素敵な出会い)から私たちの名前を聞いて、そういえば・・と思い出してくださったのだそう。

うれしいです。いろいろなパズルのピースがきちんとその場所に当てはめられていくような不思議な感覚。何も知らなかったのに、こうしてすべてが知っていたところに納まっていくのでした。

そして、昨日はそのキッチンの様子を拝見させて頂きにアキコと二人でお邪魔させて頂きました。

つい先ほどまで教室が開かれていたというそのキッチンはホクホクして見えました。木の表情が良く見えるキッチンと違って無機質に見えがちな単色のキッチンはやはりこうしてその人の色が入ると途端に鮮やかさで圧倒されるくらい美しいのです。

なんというかとても居心地の良い教室。暖かな毛布にくるまれているような空気感というのかな。

平野さん、ご主人、そしてご主人のお母さまもご参加くださって、その3人の様子が丸々映し出されたような温かなキッチンになっているのだなあ、とあらためてうれしく思ったのです。

平野さん、ありがとうございました。

アイの入院

Category : 日記「自由な手たち」

そうそう、やっと日常に落ち着いたので。先日アイが入院したのでした。

写真の手前のずんぐりしたシルエットはチャロ。まだシロが元気にここに通っていた頃に仲が悪いのによくここにきてはご飯を食べていたっけ。時々撫でさせてくれたけれど、ポンポンと弾力のあるお腹が特長でした。

その奥に映っているのはアイかなあ。でもおでこに一文字の模様がないから、隣の畑あたりに住んでいるアイそっくりの子だろうか。そうするとその奥にぼんやり映っているのがアイかな。

アイはいつからここに来たのか忘れてしまいましたが、この写真は2014年。ほかに写真を見返すとショールームで撮ったものがあってそれは2015年。この頃にはもう生後半年から1年くらい経ったような大きさに見えるから、今は11歳くらいなのだろうか・・。人間でいうと私よりも少し年上なくらいかな。

アイは最近夜通し出かけてしまうことが多く、ネコはネコ、ヒトはヒトでよいと思っているので、放り出したまま工房を閉めて帰ってしまうのですが、翌朝になるといつも元気に帰ってきて、ご飯を食べてひと眠りをしたらまた日なたに向かって歩いて行ってしまう。気ままに様子が私は気苦労無しでよいと思うし、アイもストレス無しのように思える。

しかし、朝、出社するとアイの声がどことなく小さい。鍵を開けるといちおう元気に一緒に階段を上がって行ったのだけれど、よく見ると口の周りがもさもさしている。

なんだ毛束でもくっついちゃっているのか、なんて思ってぬぐってやるとそれはよだれで口の周りがガサガサに濡れていたものだった。

どうしたの、と聞くと、どうやら口が閉じられないらしい・・。なんだろうと思って口の周りを開けてみたり顎を触るけれどよく分からずアイも特に反応しない。しかしよく見ると犬歯の1本が少し内側に曲がっていてそれが口を閉じようとすると下あごに当たってしまう。これか・・、なんて思って犬歯に触れたら「ぎゃっ」と大きな声を出した。「ああ、ごめん!」と謝るとすぐにいつものしずかな様子になったのだけれど、口が閉じられないからご飯がうまく食べられないらしくいつものような食欲を見せずにすぐに眠り込んでしまった。どうしよう・・。

「いやあ、もし事故にあったり病気になったらそれは自分で選んだ道の途中で起きてしまったことだから仕方ない。それよりもここに家の中にかくまってしまうことのほうがネコにとってはストレスのように思えてしまって。だから病院なんてほぼ連れて行ったことないのです、はははっ。」と、ネコもヒトもお互いの深く関らないほうがよいのです、なんて猫と建築社さんにも話したことがありましたが、本当はネコを病院に連れていくことが怖いのでした。

もともと、この工房には絶えずネコが出入りしていて、ここに工房を移る前の場所では最盛期は13匹のノラさんが入れ替わり出入りしていた時期もありました。ご飯をあげているだけの間柄でしたが、やはり情も移ってきます。時折来ていたボスネコなんかは、どこでケンカしたのか傷が膿んでそのまま額が割れてしまっているのに元気にご飯を食べくる子だけは貫禄があって誰も寄せ付けなかったのでそのままでしたが、子猫たちが時折具合が悪くなると、やはり苦しそうにしているのはかわいそうでしたので、父と一緒に当時はいろいろな病院に出かけることがありました。

いろいろなというのは、どこの病院で見てもらってもよい結果にならなかったことが多かったからでした。入院中に感染症にかかって無くなってしまった子や診察に連れていったら触診中に痛がってそのまま息を引き取ってしまった子までいました。もちろん先生たちは最善を尽くしてくれたのだと思うのですが、自分がここに連れて来なければもう少し長く生きられたのではないだろうか・・、なんて思ってしまうようになって、病院に連れてくることが怖くなってしまったのでした。

だから、ちょっと具合が悪くなるくらいなら猫だからきっと自然と元気になるさ、と思ってきて、実際にアイは具合が悪くなっても数日でケロッと元気になることが多かったので安心していたのですが、やはりこうして不自由にしている様子を見るとかわいそうだなあ。

そこで、このあたりのネコ事情にも詳しい父に相談して岡田にあるブリスペットクリニックさんに連れていくことに。

「外傷が無くても歯だけがこれほど曲がることもなかなかないので、ひとまず全体を調べてみましょう。」ということで検査をしてもらうとやはり健康な様子。少し食べすぎなくらい。歯が内側に向いてしまった原因は分からないのですが歯茎はやはり少し腫れているようで、悪さをするといけないし、これだと生活しづらいだろうということで抜歯することに。大丈夫だろうか・・

その日の夜はやはり見知らぬネコが夢に何度が出てきました。みんなどこか痛そうに顔をしかめておりました。

翌日は15時頃にはきちんと麻酔も切れるからその頃に来てくださいと言われていたのですが、なかなかね、仕事が手がつかないのです。どうやら私はアイのことが好きだったようだ。

で、迎えに行って結局きれいに歯は抜けて無事に終わったのでしたが、私とアキコの声が聞こえたからなのか、奥のほうから、「おろおろおろー」という声が聞こえてきて。

「とても大人しくて良い子でしたよ。でも全く何も食べなくてちょっと心配していましたが、大丈夫ですね。」と先生も優しく教えてくださって。

そうかそうか、よかったよ、よかったよ。

どうやらアイも私のことが好きなようだ。

無事に工房に戻っておじさん二人は「おろおろおろー」と喜び合ったのでした。