ひとつずつ

「ナラのキッチン間仕切りカウンターのオーダー」

茅ヶ崎 N様

design:Nさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:tatsuya suzuki
painting:iku nogami

茅ヶ崎の戸建てに住むNさんから、

「はじめまして、Nと申します。
現在一戸建てに住んでいます。I型キッチンとダイニングの仕切りとして、カウンターを取り付けたいと考えています。
大まかなイメージはあるのですが、ご相談しながら進めたく、どのようなフローで進めれば良いか、教えていただければ助かります。」

というシンプルなメールを頂きました。

ステンレスとナラのダイニング間仕切り収納

ねむそうだね。

私はどちらかというと自分勝手(というと乱暴な言い方ですが)に形を考えることが不得意でして、どちらかと言うと、与えられた条件の中で何ができるかを考えるほうが好きなのです。
やっぱりね、何もない状態からムクムクとあたらしい形を生み出すってものすごく大変なことだと思うのです。
だから家具を考えるためにできるだけいろいろなヒントを頂きたいと思っているのです。
そこで、こうお返事させて頂きました。

ステンレスとナラのダイニング間仕切り収納

シンプルなキッチンが特長的なNさんのこの空間。本当はこの間仕切りができたら、お子さんがキッチンでいたずらしないように、通路の出入り口となる部分に簡易的な扉をつけようかな、とおっしゃっていたのですが、今のところは何もなくてすっきりした印象。子供たちは自分で危ないことを危ないと学んでゆくと思うので、このままの印象でよいかもしれませんね。

「はじめまして、お問い合わせありがとうございます。
間仕切りとなるカウンターのご相談ありがとうございます。
家具の打ち合わせの進め方ですが、可能でしたら、イメージされているカウンターについて簡単なもので構いませんのでスケッチして頂いて、そこにサイズや収納の様子(例えば引き出しにどんなものをしまいたいか、どんな家電を置きたいか、など)を描いて頂いて、それを写真に撮って、(もしくはプリンタでスキャンして)、メールに添付してお送り頂ければ大変助かります。
そのスケッチを元に、こちらで一度図面を作成して、その形で家具を製作した場合にどのくらいの費用が掛かるかを見積もって見まして、そしてその図面と御見積をお送りしたいと思います。
その図面と御見積を元に、イメージに近づくように変更を重ねて、そしてイメージ通りの形になりましたら、設置場所を一度拝見させて頂き、それから製作をスタートする、というような流れになります。
そこで、お手間かも知れませんが、スケッチを描いてお送り頂ければ幸いです。
それが難しい場合は、文章で細かくカウンターの内容についてお書き頂いてお送り頂く形でも大丈夫です。
もしくは、直接私たちのショールームまでいらして頂いて、ここにあるキッチンやそのほかの家具を見ながら打ち合わせすることも可能です。
その場合は、私が空いている日をお伝えしたいと思います。
ご検討下さいますようよろしくお願い致します。」

ステンレスとナラのダイニング間仕切り収納

「ハンドルは妻が使いやすいように少し長いものにして頂けますか。」ということで、いつものシンプルなステンレスのハンドルの長めのものを取り付けました。今回面白いのは、この建具が1枚しか入れていないこと。片側半分は常にオープンなスペースとして使うのです。

最近は、皆さんにこのようにお伝えしてスケッチを描いて頂くことを多いのです。
「でも、絵は苦手で・・。」とおっしゃる方も居りますが、いいんです、どんな絵でも。私に気持ちが伝わればそれでうれしいのです。
立体ではなくて真正面から見た簡単な形でも良いですし、小学校の時に描いた絵のように真正面から見ているのに、電気ポットの奥にあるはずの電子レンジがレンジの上に載っちゃっているように見える絵だって全ていいんです。
中には、その絵にパンや珈琲が入っていたり、お鍋がきちんと重ねられていたり、苦手と言いながらも楽しんで描いてくれている様子が伝わってくる絵もたくさんあります。
それを見ながら、ああ、このひとはこういう感じが好きなのだ、きっとこんな感じの家なのかなあ、なんて思い巡らせながら私も形を考えていきます。
それでも、どうしても描くのは苦手で‥。と言う方ももちろん大丈夫です。
ただその場合は、大まかな情報だけで私のほうで形を考えても見当はずれな形になってしまうといけませんので、具体的にこういう木が好きで、こういう色が好きで、こんなふうに使いたくて、こんなものをしまいたくて、と細かく教えて頂いております。
そうして初めて最初の形を考えることができるのです。

ステンレスとナラのダイニング間仕切り収納

ですので、引戸の溝は1本のみ。またアルミのレールを入れると急にその部分の印象が変わってしまうので、今回は堅木のナラ材ということもあって、そのまま溝を彫りこんでレールの代わりにしています。建具が重くないので、それほどすり減ることはないでしょう。また、常に半分はオープンということもあって、棚板の水平面は掃除しやすいように白い化粧板を使いましたが、見付け(正面)部分は全体の印象を合わせるためにナラ材で仕上げています。

今回のNさんはここからお近くにお住まいということもあって、直接お話しに来て下さることになりました。
「こんにちは、いらっしゃいませ、はじめまして。」
物静かな印象のご主人とおなかが大きな奥様。奥様は小柄なので、よりおなかが大きく見えて大変そう。
お話を聞くともうすぐ下のお子さんが生まれるというこのタイミングで、部屋の模様替えを考えているのだそうです。
その日はいろいろと詳細なお話を聞かせて頂き、こちらで原案を作ってみて頂いた後に、その空間を見せて頂くことになりました。

ステンレスとナラのダイニング間仕切り収納

カウンタートップは使いやすさを考えて、ステンレスヘアライン仕上げの板を貼っています。でも見付は、棚板同様ナラ材で仕上げています。

「お邪魔します。」
海からほど近く茅ヶ崎美術館からもほど近い比較的ゆったりとした通り沿いに建つNさんのお宅。
搬入は少し考えないといけなさそうでしたが、2階のリビングを拝見させて頂くと大きなワンルームのゆったりした空間。
その中にある半間くらいの大きさのクローゼットがキッチンを圧迫しているようで、これを取り払ってしまって、代わりにそこに入っていたものを間仕切り収納にしまいたいのです、ということでした。
収納のボリュームは小さくなるけれど、自分たちの暮らしに箱のクローゼットの収納量よりもキッチンとリビングダイニングを分ける存在のほうが大切で、その分けるものもそこに在って美しい形にしたいのです。
Nさんとお話をしていると、ご主人がお話しながらも奥様が必要なことをうなずき合ってひとつずつ確認していくその様子。
丁寧に暮らしているんだなあと言う印象を、最初に工房に来て頂いた時もNさんのご自宅で打ち合わせした時も感じたのは言葉を一つずつきちんと選んでお話されて、静かだけれどもしっかりとした、そんな印象を受けたのです。

ありがとうございます、よい形になるように頑張ります。

ステンレスとナラのダイニング間仕切り収納

側面をカウンター面まで下げるかどうか悩んで、傾斜をつけることで圧迫感を無くしました。

できあがった家具は、シンプルだけれどNさんらしい形にきちんとなりました。
テーブルと同じナラ材を使い、ステンレスと白い色がきれいに入り混じったきれい形にまとまったのでした。
すっかりクローゼットが取り払われてより広いひと間になったこの場所にとんと置かれたこの間仕切りはこの家のランドマークのような存在になりました。
後日写真を撮らせて頂きにお邪魔した時は、下のお子さんももう小さなお母さんに優しく抱っこされていて、Nさんの道具たちがきちんとその家具にしまわれている様子を見て、言葉を選ぶようによい暮らしかたを選択しながら前に進んでいることが感じられてとてもうれしくなったのでした。

ナラとステンレスの食器棚

価格:395,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は10,000円から、取付施工費は24,000円から)

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