キッチン収納の形を考える :家具屋の家づくり

2019.01.27

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仕事柄、皆さんの色々な収納の形を見せていただいてきました。どれもすてきな形ばかりで、「製作例をたくさん見てるからすぐ決まるのでは?」と思われるかもしれませんが、みなさんが出した答えの形だけを見ても、それが自分の家の新しい間取りには必要なのものなのかを考えるとよく分からなくなってしまいます。
途中でまたわからなくなってしまわないように順番に考えていくことにしました。

設計士さんと家の間取りを考えていく中でキッチンの形が決まりました。
形はペニンシュラ。
キッチンとバックカウンターと食器棚を作ることが決まりました。
・オーブンレンジ・トースター・炊飯器を置くオープンな棚はほしい
・引き戸が好き
・天板はステンレス
・シナ材が好き
・ガスを使いたい
・高さは90cm
はじめからある要望をまず伝え、それ以外の部分を収納にした図面をおとうさん(イマイダイスケです)に書いてもらいました。
次に、何をどこにしまってどうすれば自分にとって使いやすいキッチンになるのかを考えます。ここが1番大変なのですが。
今まで我が家に集まったもの達、今持っているものを全部活用できているわけではありません。使う頻度・その物の重さもあります。
取り出しやすくなったら使うのかそうじゃないのか・どう判断すればいいかよくわからなくなってしまいました。
まず、新居でも使うものを決める作業をしないと収納の大きさと形は決められません。
こういう時は整理収納のプロの人のアドバイスをいただこうということで、野中幸子さん の講座を受けた時を思い出し、いただいた資料を見返してみました。チャート式になっているので読み込まなくてもどうすればいいかをすぐ見直せるので大変助かりました。
まず、「全部出す。」
ダイニングテーブルの上に出してみました、我が家の鍋・フライパン・土鍋たち。
1500×900のスペースいっぱいです。
整理収納作業の順番は
(1) 全部出す (2) 1年以内に使っているかいないか (3)目的別に分ける (4) 使う場所に収納する と大きく分かれるそうです。
いきなり(4)を考えようとするからわからなかったのかと、まず今自分のいる位置がわかるだけでも助かりました。
新居でも使いたいもの、結婚した時からずっと持っているけど、これからも使わないなと思われるもの…などなど。
記憶なんて曖昧なもので、「え?これ持ってた?」なんて物も出てくるわけです。
収納場所をオープン棚にするのか、引き出しにするのか、スライドワイヤーシェルフにするのかなど、収納の形と場所を考えていかなくてはいけません。
それぞれの重さと大きさを調べることにしました。
1番重いものは、OIGENの鉄鍋で高さが17cmで重さは5キロありました。
1番高さがあるものは、佐久間さんの炊飯土鍋と平和の圧力鍋が21cmでした。
新居でも使う調理道具が収納に収まるのかどうか、テーブルにマスキングテープを貼って大きさを確認しながら、シュミレーションしていき、収納の形と場所を決めていきました。

整理収納の資料と今までの経験から収納を考えていきますが、いつまでに図面ができあがってなくてはいけないのでしょうか?
着工、もしくは上棟です。
上棟後すぐに設備屋さんが床下に配管していくために、図面が必要になります。洗面台も同じだそうです。
引き出しの深さなどはまだ変更可能ですが、工程によっては、上棟後すぐに製作に掛からないと間に合わない現場もあるので、基本的に上棟後は変更ができなくなります。
お家作りで考えることはキッチン収納だけではありません。9月下旬に契約・地鎮祭を終え、「11月末に上棟予定だよ。」とおとうさんにプレッシャーをかけられながら、こどもを習い事に連れて行っている間にも図面を持って歩き考えたりして、やっと11月に入ってから決まったような感じでした。(笑)
今までオーダーしてくださった皆様も、こういう風に色々と考えて出来上がってできた形なのかと思うと、製作例の一つ一つが素晴らしいなぁすごいなぁとしみじみ感動してしまいました。
自分の図面は書き込みすぎていて載せられるようなものではないので、キッチンが完成した時に写真とともにお伝えしていきたいと思います!

HUDSONSさんのShoe Loungeへ

2019.01.27

いろいろとご縁がありまして、以前に「姉妹で作る家」大磯のKさんのところでお世話になりましたプラスマイズミアーキテクトさんにお声掛け頂きまして、ハドソン靴店さんのラウンジで使う家具を作らせて頂くことになりました。
代表の村上さんとのお話は、自分の中をあらためて探索するような気持ちで形を見つける自問自答の作業の繰り返しで、マイズミさんに手助け頂きながらどうにか形をまとめることができたのでした。
春から製作に取り掛かる予定です。

Sさんのキッチンと食器棚:スタッフ コバヤシ君の制作日記

2019.01.26

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今回特に気を付けたことは、キッチンのリビング側の鴨居と敷居の長さが2540mmの長さがあったので、木口に練り付けていくのために2人がかりで作業していきました。
また、この扉は無垢材の表情を出すことと反りを抑えることを考慮して、無垢材と合板を合わせて作る少し特殊な方法で製作しているのが特長です。
背面収納(食器棚)の扉も同じく無垢材と合板をプレスしているのですが、こちらの引き出しの前板は無垢そのままで仕上げているので、木取りの方法が異なるため、きれいに木目を通すことに気をつけていきました。
(プレス時、板はぎ、切り回しの時に手掛けの無垢と隙間等を計算しながら加工していきました。)
それと、食器棚の天板がステンレスと無垢のカウンターが並ぶ形になるので、材が多少動いても柔軟に適応できるように、バックガードを欠き取る加工して差し込むようにしています。
できあがりはとても良い表情にまとめることができましたので、大変満足しています。

リビングボードのオーダー「ナラのリビングボード」

2019.01.24

20190124002Sさんのリビングとダイニングに収納を作らせて頂きました。前回作らせて頂いた食器棚とのつながりを考えて、シンプルな形にまとまりました。
食器棚を作った時からずっとコのリビングをどう使っていくと良いかを悩んでいました。大きなワンルームのような間取りになっているので、玄関から廊下がワンクッションになっていますが、廊下の引き戸を開けると、奥のキッチン前が目に入ってきて、もう少し気持ちの仕切りがあると良いかな、というお話を続けていたのです。
そこで考えていたのは、最初はもう少し華やかなイメージだったのですが、結果としてこういうさり気ないかたちにまとまりました。この質素な印象で暮らしを支えてくれる姿が良いです。
ここに住む人の色が見えやすいですものね。

はじめさんの発酵食作り・手前味噌づくりの日でした

2019.01.21

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今週のはじまりは、小さいお子様の泣き声や、味噌玉を保存容器に叩き入れる音で賑やかなショールームでした。
金曜日に続いて、発酵食の塩麴・醤油麹・甘酒とお味噌を作るはじめさんの教室でした。
「こんなに簡単にできちゃうんですね。」という発酵食を作る方々と、「結構大変だ~。」と大豆を潰す作業をする方々の差が印象的でしたが、生麹の柔らかい匂いが漂ういい時間でした。作業の合間に先生とするお話しも楽しみの一つで、お勉強になるお話も色々聞けるのでいいですよね。
ご参加いただいた皆様ありがとうございました。はじめさん、お疲れさまでした。
皆様の作られたものがご家庭でおいしいものになりますように。できあがりが楽しみですね。

ベッドのオーダー「ホワイトアッシュとバスウッドのベッド」

2019.01.20

201901200012頭のどっしりしたパグとたしかすぐ逃げられちゃったけれど大きなネコも居たっけなあ。みんなで一緒にここで寝るんだそうです。マットレスの間は彼らの通り道なのだそうです。
館山まで、カナイ君、コバヤシ君、ノガミ君が無事にSさんのもとにこのフレームを届けてくれました。

ちょうどみんなが戻るころ、Sさんからも連絡が届きました。
「この度はありがとうございました。
たいへんステキなベッドでうれしいです。無事、ルンバも使えました。設置に来てくださった皆さんも丁寧な作業をして下さって感謝しています。 ご縁がありましたら、またお願い致します。」

ありがとうございました。

はじめさんの「身体に優しい発酵食ランチ作り&ママ交流会と離乳食ぱくぱくセミナー」の日でした

2019.01.18

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新年最初のショールームイベントは、Hug Babyのはじめさんのクラスでした。昨年からはじめさんのクラスは何度か開いていただいていますが、
時々撮影をさせていただく時に聞こえてくる講義内容も、「へぇ~。」と思うことばかりで、改めて食の分野は本当に奥が深いのだなと感じました。そして、匂い。この匂いを深く吸い込んだだけでも健康になれるのではないだろうかという位のいい匂い。幸せな気持ちになれます。
打ち合わせの時に見て触るだけのキッチンを活かしていただいてとてもうれしいのです。
すてき時間をありがとうございました。
続いて、来週月曜日は手前味噌づくりの日です。ご予約された皆様、当日お待ちしております!

壁面収納のオーダー「ブラックウォールナットの壁面飾り棚」

2019.01.17

20190117003201901170022019011700420190117005先月、家具を設置したOさんのところに追加で製作した刀の鍔を掛ける台をお持ちしました。これで完成。
「家具を作るってこういうことなのですね。家具はもちろん、イマイさんも設置に来てくださった皆さんもとてもすてきです。」
おお。

飾りたかったというブロンズ像もきちんと納まっていて、その隣には、少し照れながらご紹介してくださいました、お母さまが語ってくれたという生まれ育った山口県の昔話を絵本にしたというご自身の著書「ちゃっくりかき」。
「ふふふ、お恥ずかしいのですが、私が書かせて頂いたのです。イマイさん、もしよかったら、ぜひお子さんにお贈りくださいな。」とうれしいお話。
「ぜひ、読ませて頂きます。まずは私が。」
とうれしいお土産を頂きまして、ホクホクしながら帰ってまいりました。

ただしい声をした鳥

2019.01.16

ある夜、淋しい夢を見たような気がして流れた涙を伝う感触と、その淋しさで大きく肩をふるわせながら目を覚ましたタルベルの佇む窓辺に、深い夜でもはっきりとした青い羽根をもった低くただしい声をした鳥がやってきてこういうのでした。
「タルベル、私も淋しい夢を見ました。一人になってしまって、風と一緒に飛んでいくみんなの後を追いかけて、夜のなかを飛んでいたのです。
やがて空が白んでくるころ、ふと気が付くと私のほうがずっと先を飛んでいました。
強い思いは自分の目をくらましてしまうこともありますが、自分を大きく前に向かわせてくれます。私はあの夜、危うく大きな空の向こうに落ちてしまうところでしたが、お日様が私の目を覚ましてくれて、皆のもとに戻ることができました。あなたが見た淋しさは、きっとあなたを強くしてくれますよ。」

青い羽根が朝日を浴びてまるで銅色に輝き始めた正しい声の鳥のさえずりを心地よく聞いていたタルベルは見つめていた西の空からただしい声をした鳥のほうに顔を向けるとこう言いました。
「ありがとうございます。気持ちが正しくなりました。ごきげんよう、さようなら。」

ただしい声をした鳥は、この冬が終わりを告げて春がやってくることを教えてくれたのでした。
タルベルはもう居ません。

内引き出し

2019.01.14

20190114002おしゃべり」のFさんのキッチンにうち引き出しをつけてほしいと頼まれまして、その取付に伺ってきました。ガスコンロにラインを合わせることで、シンクまですっとした印象になって美しいのですが、引き出しが深くなってしまうのです。
そこで、内引き出しをつけましょう、ということで、せっかく作るのですからトレイになるような形にしましょう、アガチス材で作ったトレイに手を掛けるところをくりぬいて、かんざしにブラックウォールナットを差したら、良いかたちになりました。
そのあとは、Fさんが手掛けるご友人宅のリノベーション煮てキッチンを担当させてもらえそうということで、Oさんファミリーがいらしてくださって、Fさんのリビングで日が暮れるまでキッチンのご相談。Fさんが実際に自分のキッチンを使う様子を交えながらお話しするのはやはりうんうんと納得してもらいやすい。
アトリエもそうしてゆきたいなあ、とOさんのキッチンと自分の場所を重ね合わせながら時間が過ぎてゆくのでした。

オーダーキッチン「オークのペニンシュラキッチンとバックカウンター」

2019.01.13

20190113003201901130012昨年の9月にキッチンを設置したSさん。11月に無事にお引渡しを終えて、ご新居での暮らしがひと段落したこの頃、ご挨拶にお伺いしてきました。
電車に揺られて3時間。物静かな町から、これから賑やかな朝を迎えようとする町を抜けて静かな住宅街につく頃、電車の中の乗客もほとんど乗り下りてしまった頃、Sさんの住む静かな町につきました。
「天板を20㎜手前に出して頂いた部分はやはり正解でした。洗い物をしていても水は木に付かないし、ここで生地をこねたりするのですが、今まではよくその粉が引き出しの中に入ってしまったりしたのですが、それも無くなりましたので。」
と、Sさんがお話ししてくださいました。
うれしいですね。
皆さんの言葉が私たちに力を与えてくれます。

前に進むよ

2019.01.12

昨年末からいろんな方面で活躍されている方々の家作りにかかわらせて頂ける機会を頂いております。
知らないかたちが目の前で広がることは純粋に楽しいです。
頂いた課題を工房に持ち帰って練り直していると、なるほどおもしろい。
驚きと喜びです。
春を迎えて初夏が顔を出すころには、また魅力的な形がいくつも現れていることでしょう。

オーダーキッチン「チェリーのアイランドキッチン」

2019.01.11

2019011100220190111003お料理教室を開きたいって言っていたSさんのキッチン。だいぶ遅くなってしまったので、写真が暗くてキッチンの魅力が伝わりにくい本日。代わりにそのスケッチも載せましょう。最初のイメージから細かな納まりが変わってますが、Sさんの気持ちは変わりませんよ。

ウェブサイト更新

2019.01.04

ナラ節アリ材のカップボード懐かしい団地を魅力的な空間に変身させたSさんのダイニングに納めた小さな食器棚とテーブルの記事

クルミとコーリアンの食器棚Yさんのご家族皆さんと楽しみながら、学びながら、自分たちの求める形や空間が何だったのかを探しあてて作らせて頂いた食器棚とテーブルの記事と、

ナラとグレーの化粧板とステンレスを使った食器棚新しい素材のまとめ方を提案してくださったTさんに教わるようにしながらまとめることができた魅力的な食器棚の記事の3つの作例を掲載させて頂きました。

よろしければ、ご覧いただければうれしいです。

つたえる楽しさむずかしさ

2019.01.04

「ナラとステンレスとグレーポリのセパレートタイプの食器棚のオーダー」

横浜 T様

design:Tさん
planning:daisuke imai
producer:hideaki kawakami
painting:iku nogami

化粧板と木をうまく組み合わせた食器棚を作りたいのです、と相談にいらしてくださったTさん。
今までにない素材の選び方に感心するばかりでした。
その化粧板も白ではなく少し曇ったようで明るいグレー。
そして、カウンターにはステンレスのバイブレーション仕上げを使いたいということでした。
なるほど、そういうきれいな形、ありますよね。
少し懐かしくもあって、どこかヨーロッパの空気を感じるような。
私では全く思いもつかなかった素材の使い方に、聞けば聞くほど勉強になります。

ナラとグレーの化粧板とステンレスを使った食器棚

食器棚棚のスケッチにTさんが採色してくれたもの。

「でも、イマイさん。迷っているんですよ。どの部分にオーク材を使って、どの部分を単色で見せるかって。」
なるほどなるほど。
Tさんのイメージを聞きながらこちらで描いたスケッチはTさんの手によって茶色とグレーで色付けされていました。
これはなかなか難しい。
どうしたら木目が映えて見えるのかって。私も悩みながらもアドバイスをしてみますが、もうこのイメージはTさんが持っているものですので、Tさんも「イマイさん、」って聞いてはくれるのですが、話しかけながらもイメージは決まっていっている感じで、私を見ながらも私の後ろを見てお話ししてくださっているような・・。
Tさんにとっては頼りがいがなくて情けなく見えてしまったかもしれませんが、こういう経験が私にとってはたいへん糧になります。ありがとうございます、Tさん。

ナラとグレーの化粧板とステンレスを使った食器棚

食器棚全景。

ナラとグレーの化粧板とステンレスを使った食器棚

正面から見た様子。

こうして、おおよそイメージがまとまって、いよいよ内覧会。
部屋を見ながら、一つずつイメージを確認して行きます。
最近のマンションの内装は流行があるからなのか、建具などが濃い色でさらに鏡面仕上げ、壁が少しくすんだ白になっている内装をよく見かけます。
キッチンのカウンターも御影石をきれいに磨き上げた仕上がりで、どこか華やかな内装にまとまっていることが多いのです。

ナラとグレーの化粧板とステンレスを使った食器棚

取っ手の様子。これは吊戸棚の取っ手。指をかけ安陽に上にくぼみがあります。さらに扉を開けた時に取っ手が吊戸棚の側板に干渉しないように、端を斜めにカットしています。

ナラとグレーの化粧板とステンレスを使った食器棚

こちらはカウンターのすぐに他についている引き出しの取っ手の様子。ステンレスの天板とその下のグレーの目地、そして側板のグレーのポリとなら材の関わり方がよく分かります。

ナラとグレーの化粧板とステンレスを使った食器棚

同じく引き出しの取っ手。扉と違ってまっすぐに伸びています。それがほかの引き出しと揃うことで、とても良い印象にまとまるのです。

Tさんのイメージはどちらかというと、淡い色とナチュラルな色を組み合わせた印象で、内装のイメージとは少し離れた感じになります。
その空間に合わせるにはどうしたらよいかな。
あれこれと内覧会の限られて時間の中でイメージを重ね合わせて、ようやく形がまとまりました。

ナラとグレーの化粧板とステンレスを使った食器棚

吊戸棚の内部。グレイーの化粧板の地板とナラ材の地板が二重に見えるのは、照明を点検できるようにした工夫。どんなふうになっているか知りたい方はぜひ聞きにいらしてくださいね。

と思ったら、さらに細かい部分についてのご相談が。
ひとつが解決すると、次の形が見えてきて・・。薄明りのなかを何となく進んでいたら不意に進む道がはっきりと見えてきて、次にどちらに進んだらよいかを考えているような、そういう手さぐりに近い驚きやうれしさを感じながら、家具を作るという作業は進んでいくのだと思います。
そういうことってきっと楽しいのだろうなあ。って思うのですが、自分はどこかそういうことが苦手なのです。

ナラとグレーの化粧板とステンレスを使った食器棚

扉2枚分のオープンラック。この部分のナラとグレーポリの使い方をTさん一番悩んでおりました。結果、背板のみグレーにして、あとはナラで作る形に。

先日も44歳にしていよいよ近くのものが見えにくくなってきて、これが老眼なのかなあって思いで、アキコと一緒に眼鏡を見に行ったのですが、自分の思いを伝えるのがなかなか苦手でして、「一応視力を見てもらったら。」とアキコに言われて、言われるがままに娘と変わらないくらいのかわいらしい女性にいろいろと確認してもらったのです。
私が目の前の細かいものだけが見られれば良いということをもっときちんと伝えていればよかったのですが、その方は一生懸命私の普段の視力に合わせたサイズがどのくらいなのかを丁寧に提案してくださったりとても親身になって時間を使ってくださったのですが、結局最初に思っていた度の強いものにすることになりまして。
これが本当に皆さんのイメージに合わせた家具を作っている人物なのだろうかと、不甲斐ない思いだったのです。
でも、皆さんのお手伝いをする側になることにはもちろん自信がありますよ。安心してください。

ナラとグレーの化粧板とステンレスを使った食器棚

ゴミ箱はケユカのゴミ箱。いろいろなゴミ箱が発売されているので、皆さん迷うところ。

ナラとグレーの化粧板とステンレスを使った食器棚

ケユカの特徴は、ふたを開けるスペースが少なくて済むこと。

はい、おかげさまで良いかたちがまとまりまして、無事にHさんのキッチンに魅力的な形にまとまった食器棚が無事に据えられたのでした。
不器用ながらも皆様のかたちをきれいに整えていけるようにこれからも頑張ります。

ナラとグレーの化粧板とステンレスを使った食器棚

こちらは炊飯器を置くスライドテーブル。

ナラとグレーの化粧板とステンレスを使った食器棚

引き出しの様子。

ナラとグレーの化粧板とステンレスを使った食器棚

最上段の引き出しの下に作業用のスライドテーブル。奥様の身長に合わせてこの高さにしたのです。

ナラとグレーの化粧板とステンレスを使った食器棚

引き出しの様子。

ナラとグレーの化粧板とステンレスを使った食器棚

引き出しの様子。

ナラとグレーの化粧板とステンレスを使った食器棚

こちらはゴミ箱の上の引き出し。

ナラとグレーの化粧板とステンレスを使った食器棚

こちらは、炊飯器のスライドテーブルの下の引き出し。ご実家から送られてくる豆が便に小分けにされている姿がとても美しかったのです。

ナラとグレーのポリとステンレスの食器棚

価格:600,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は15,000円から、取付施工費は30,000円から)

ぼくもあの子もくらす町

2019.01.04

「ナラ節アリ材の食器棚とナラのダイニングテーブルのオーダー」

大倉山 S様

design:Sさん
planning:Sさん/daisuke imai
producer:iku nogami
painting:iku nogami

ナラ節アリ材のダイニングテーブル

陽だまりって言葉がよく似合う住まいでした。

「お母さん、僕、このまま友達のところに遊びに行ってもいい?」
「いいわよ、どのいくの?」
「・・・のところ!」

ああ、あったね、こういう感じ。
Sさんを待つ間に吹いていた風はむかしに嗅いだ匂いがして、ちびっ子のこういう話声を聞くと、昔懐かしく自分の子供の頃が思い出されます。

ナラ節アリ材のダイニングテーブルとカップボード

懐かしさが残る、と思っているのは私だけかな。Sさんはまだお若いし、かえって新鮮な印象なのかもしれませんね。


ナラ節アリ材のダイニングテーブルとカップボード

最初はキッチンも作りたいというご要望を頂いていたのですが、予算オーバーになってしまって断念。シンプルな白いキッチンはこの場所にはよく似合っていて、かえってナラ材の印象よりも優しさが出てよかったように感じられました。


ナラ節アリ材のダイニングテーブルとカップボード

このダイニングとリングを仕切る大きな梁は、182センチの私にはちょっと厳しいけれど、懐かしい。(笑)テーブルのサイズは、この空間に合わせて2メートルで作っております。ただいまナラ材がかなり高価な材になっていて、このくらいの大きさのテーブルと作ことは少し難しくなってきています。大切に資源を活用していかなければいけません。

「イマイさん、お待たせしました。エレベーターが各階に止まらないから、お待たせしちゃってすみません。」
にぎやかに駆け降りるちびっ子のあとから、Sさんが階段から降りてきました。
ああ、さっき私を自転車で追い越したのはSさんだったのだ。
それにしても、懐かしいくらい古い集合住宅なのに、Sさんのように若い方が多く住んでるのですね。
「こんにちは、Sさん。納品の時にはお伺いできませんでしたので、今日は家具を見せて頂けるのが楽しみですよ。」

ナラ節アリ材のダイニングテーブル

天板と脚の印象は、少し丸みを持たせました。

私が子供のころ住んでいた団地も、駆けって2分で友達の家だったから、みんなで住んでいるって感じがいつもしていて。
好きな子もいれば、楽しい子もいたり、もちろん嫌いな子もいたり、みんな一緒だったね。
自分は鍵っ子だったから家に戻ると、フタバさん(だったかな。)の食材が発泡スチロールの箱の中に届いていて、それを自分が家の中にしまうのが、帰宅後の最初の仕事だったかな。
そんな大事な仕事があるのに、時々鍵を忘れてしまって、3階だからベランダからすんなり入ることもできないわけで、そういう時には隣の階段のオリモさん(階段が違うから、こういう時しか会わない人なのですが)に「すみません・・、鍵を忘れてしまいまして・・。」とお願いして、「あら、いいのよ。どうぞ、どうぞ。」とおばさんにお願いして、ベランダに通してもらうのです。
ベランダには、隣の家につながる非常用のパネルがあって、その下が子供だったら通れるくらいの空間があるのです。そこを先にランドセルを放り投げて、はいずりながら自分のベランダへととおっていくわけです。
「おばさん、ありがとうございます。」
ベランダのカギはそういう時のためにいつも開いていて、そこから帰宅するのです。何食わぬ顔でね。
そういう風が吹いている集合住宅だったのです。

ナラ節アリ材のカップボード

こちらはカップボード。表情豊かな節アリ材を使っています。

「お邪魔します。」
リノベーションした室内はそういった昔の面影はどこかに行ってしまって、名残といえば低い天井を取り払って出ている大きな梁くらいでした。
「この場所が気に入ってしまって。それに私の事務所の代表もここに住んでいるから仕事もしやすくて。」
Sさん、設計士さんなのです。代表も女性設計士さんで、お母さん目線で作る保育園や幼稚園を作るお仕事を主にされているのだそうです。
おもしろいなあ。

ナラ節アリ材のカップボード

カップボードは壁に固定しないで、ここに置いてあるだけ。「いつかこの場所以外でも使いたいなって思いもありますので。」とSさん。


ナラ節アリ材のカップボード

引き戸は、下に車をはかせていて、ナラ材の敷居を作って、そこを戸が滑っていきます。金物を使うとどうしてもキラッとしてしまうし、車をつけないと、戸が重くなるし、でこの納まり。

入ってすぐは、広い土間と前室のようなスペース。そこに少し小さめのテレビがぽつんと置かれています。
「今はこの場所は、子供たちが帰ってきたら友達と一緒にここで賑やかに遊べるようにしているんです。」
へぇ、たまり場だ、良いです。

「どうぞ!」と案内してくださったスペースはコンクリート造ならではの大きな空間。
「この大きな場所で過ごしたかったのです。」
入ってすぐのところがキッチン、というか台所。そこに私たちが作らせて頂いたダイニングテーブルと、小ぶりなカップボードが置かれていました。
「とても良い印象にまとまりましたよ。」とSさん。

ナラ節アリ材のカップボード

取っ手をちょっと印象付けて。ここはただのオイル仕上げではなく、鉄染めして仕上げています。


ナラ節アリ材のカップボード

独特の色合い。

そして、広いリビングからは向かいの棟が見えます。
フフン、この感じも懐かしいね。

「お写真撮り終わったら、良かったらどうぞ、お茶を入れますね。」と言って、さっき買い物をしてきたのは、このお茶菓子だったのですね。
近くにすてきなお店があって、玄関を出ると学校が見えて子供たちの声も届いてくる。下を見ると年配の方々がそこかしこでおしゃべりしていて、若い人たちの往来もそこそこあって。
色褪せそうに思えた記憶が鮮やかによみがえる、そんな町に住んでいるSさんはずっとニコニコしておりました。

ナラ節アリ材のカップボード

こちらの天板もダイニングテーブルと印象をそろえております。


ナラ節アリ材のカップボード

引き出しの様子。


ナラ節アリ材のカップボード

引き出しの様子。

ナラ節アリ材の食器棚

価格:310,000円(制作費・塗装費)

ナラ板目材のダイニングテーブル

価格:340,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は25,000円から)

いっしょに学ぶ

2019.01.04

「クルミのセパレートタイプの食器棚とテーブルのオーダー」

横浜 Y様

design:Yさん
planning:daisuke imai
producer:kouhei kobayashi
painting:iku nogami

クルミとコーリアンの食器棚とダイニングテーブル

キッチンとダイニングの様子。食器棚だけを作らせて頂くお話だったのですが、お話を進めるうちにダイニングテーブルも合わせて作ることで、部屋の印象を整えましょう、ということに。

食器棚のご相談にいらしてくださったYさん。
Yさんはこれから新しいマンションに入居する予定なのですが、内覧会まで部屋には入れないし、自分のイメージするインテリアの明確な印象が自分の中でもまとまらずモヤっとしてしていたのだそうです。

クルミとコーリアンの食器棚

食器棚全体の印象。

私はこの仕事をしていて、家具を作ることって、家具だけを作ることだとばかり思いながら昔はやってきたのです。
でもね、家具を作ることってその人の住み方を考えることでもあるんだなって、そういう気持ちが最近はより強く感じるようになってきました。
私たちが作る家具は、奇抜な形でもオリジナリティあふれるような突出した形でもなくて、だれでもどこかで見たことのあるような形です。
その形の中にある小さなことがとても大事で、それは目に見えたり、見えなかったりするけれど、その使う人には良く見えていることで、それをきちんと表現できることが大切なんだって思えるようになったのです。
もちろん、住む人はその人だから、私たちの意見が押し通ってしまってはいけません。
こういう形もありますし、こういう表現もありますが、どういう表現にたどり着きたいですか。というワインディングロードを一緒に歩いていくのが私たちの仕事なのかもしれないって、最近強く思うのです。

クルミのランダム接ぎ

「豊かな色」のGさんに言われたことは、木目をランダムに並べてほしいということ。つながりのない自然な色のばらつきを見たかったというGさんの思いにYさんにも気に入ってもらって、この食器棚もあえてランダムにしたのです。

「初めまして。」とYさんにお会いしてお話を始めたのです。
ご主人がどちらかというとお子さんの子守できたんです、という印象で、ちびっ子のおもちゃがある部屋でお子さん二人と一緒に遊んでくれていて、奥様が打ち合わせに専念できるように、という感じでした。
当の奥様は、何となく自分が好きなインテリアがあるけれど、それを新居で実現するにはどうしたらよいかがなかなかつかめなくて‥、という感じです。

クルミとコーリアンの食器棚

吊戸棚内部の印象。

というのも、ご新居のマンションの内装が、このところよく目にするちょっとゴージャスな印象。
なんというのかな、濃い色の建具と床でキッチンのカウンターは御影石。
でも、奥様が思い描くのは北欧のイメージ。もっと明るい木の色に囲まれた空間だったのだと思います。(思いますというのは、これからまたいろいろと変わっていったからですね。)

クルミとコーリアンの食器棚

家電の熱の影響を受けない半分にはオープンラックをつけています。

私は家具を作ることや考えることはできても部屋全体の整えるのは、私にはきっと難しいことだって思っておりました。
そういう仕事はコーディネーターさんがやってくださることで、私たちはその一部を作り上げていくのが本分だと思っていたのです。

クルミとコーリアンの食器棚

カウンターにはコーリアンのクラムシェルというシートを採用しています。この部分はYさんがずっと悩んでいたところ。最初はもう少し茶色が濃いシートを選んでいたのですが、実際に使おうとしたら廃番になっていて、あれこれ悩んでこの明るいシートにしたのです。

でもYさんとお話しするうちに、どんなことに悩んでいて、どんなふうにイメージを実現していったらよいか、一緒に考えることで部屋ができあがっていくということがとても自然なことで、家具を考えていると、いつのまにかその部屋ができあがっていくことがいまさらながらとても当たり前のことに思えたのです。

クルミとコーリアンの食器棚

ハンドルはゴーリキアイランドさんの真鍮磨き仕上げのハンドルです。

まず、Yさんが北欧風ということで見せてくださったのが、とある家具屋さんのダイニングのイメージ。ブナやカバを連想させる明るい木に角に丸みを帯びたディテール。床は黒い石で少し色があせたような印象に見えて。

クルミとコーリアンの食器棚

食器棚のプランはシンプルで、炊飯器を置くスライドテーブルとごみ箱を置くスペースとトレイなどが置けるちょっとしたスペースのほかは引き出し式の収納です。

よくよく考えると、北欧というと樹種も淡かったり黄褐色だったりして優しい木の色に鮮やかな色のファブリックやパステル調の色彩が並ぶようなイメージが一般的だったのかもしれませんが、そのダイニングのイメージから、すこし色あせた空間に木の生き生きとした表情が映える感じをイメージしたのでした。
ところどころにアンティークな要素を入れたりして。そうなると北欧、というイメージとは違うのでしょうけれど、Yさんも「あぁ、その感じ好きです。」なんて言いながら、イメージはいろんな方向へ飛んでいくのでした。

クルミとコーリアンの食器棚

引き出しの様子。


クルミとコーリアンの食器棚

引き出しの様子。


クルミとコーリアンの食器棚

引き出しの様子。食器洗浄機で洗いあがった食器をそのまま引き出しに移せるようにという要望で、この食器棚の設置スペースが限られてしまっていることもあったのですが、ある程度使いやすいレイアウトにできたのは幸いでした。


クルミとコーリアンの食器棚

引き出しの様子。


クルミとコーリアンの食器棚

引き出しの様子。

そうしていろいろな話を重ねるうちに、木の表情もはっきりと生き生きとした表情のナラやタモといった材よりも、少し陰りがあるけれど粗野だったり、優しかったりする表情のクルミに目が留まりました。
豊かな色」の印象です。こちらはドイツ人のご主人なので、北欧ではないのですが・・。
新居の床の濃さも使い込んで褪せてくると、このクルミの色とより合ってくるのではないか、でもすべて重い色ではなく、明るい色を取り入れながら・・。

クルミとコーリアンのダイニングテーブル

食器棚と一緒に作らせて頂いたダイニングテーブル。

そんなお話を奥様と繰り返すうちにイメージしていくことの楽しさがご主人にも伝わって、いつの間にかご主人のほうが前のめりにお話を聞いてくださっていたりして。
話は家具だけでは収まらず、どういった布が窓に掛かってくるか、床にはラグが敷かれるのか、新居の濃い床が使い込まれていくとどのような感じになっていくのか、Yさんの気持ちや色の印象をいろいろ思い巡らせながら、だんだんと形がひとつの方向にまとまっていくのでした。

クルミとコーリアンのダイニングテーブル

天板小口の様子。

その後、内覧会にも参加させて頂いて、実際の部屋の印象とイメージしている家具を照らし合わせて、ようやく形がまとまりました。
長かったですね。
でも私自身とても勉強になる時間でした。
ありがとうございました、Yさん。

クルミとコーリアンのダイニングテーブル

脚部も丸みを持たせて、全体的に優しい表情で仕上げることができました。

クルミの食器棚

価格:610,000円(制作費・塗装費)

クルミのダイニングテーブル

価格:280,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は15,000円から、取付施工費は30,000円から)

新年のご挨拶

2019.01.01

_DSC2765
お節を食べて、地元の神社に初詣にいき、冬休みの宿題の書初めをしました。
家族でゆっくり過ごせるこの時間をありがとうございます。
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

ふだん作りの手の跡を残して

2019.04.04

「ナラ節アリ材とステンレスバイブレーションのオーダーキッチン」

浦和 O様

design:Oさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:yasukazu kanai
painting:yasukazu kanai

ナラ節アリ材とステンレスバイブレーションとアイアンの脚のアイランドキッチン

リビングから見るキッチン全体の印象。


ナラ節アリ材とステンレスバイブレーションとアイアンの脚のアイランドキッチン

ダイニングから見るキッチン全体の印象。

跡をのこす」という独特の表情のキッチンを作らせて頂いたことがありました。あの時はKさんのご要望で、木部はあえて鋸のナイフマークを残して、平面も出さず、アイアンにはビートを残して、とイレギュラーな納め方をしたキッチンだったのですが、そのキッチンの様子を見て自宅にもあの形を取り入れたい、というのがOさんの希望。

ナラ節アリ材とステンレスバイブレーションとアイアンの脚のアイランドキッチン

洗剤ポケットのあるステンレスシンク。仕上げはバイブレーション。

Kさんと同じ仕上げ方法で作ると普通に作るよりもかえって手間が掛かる部分があったりしてかなりコストが掛かってしまうと思われましたので、印象を大きく変えることなく実現できるように考えたのがこの形になります。
Oさんのイメージの、「節のある力強い木々を支える鉄の武骨な感じ。」を大切にして、どのように表現できるかを考えていくのです。

ナラ節アリ材とステンレスバイブレーションとアイアンの脚のアイランドキッチン

シンクの下は、今回は引き出しになっています。


ナラ節アリ材とステンレスバイブレーションとアイアンの脚のアイランドキッチン

内引き出しになっている上段の様子。


ナラ節アリ材とステンレスバイブレーションとアイアンの脚のアイランドキッチン

なぜ内引き出しにしたかというと、皆さんやはりこのあたりにタオルを掛けたいと思うのですが、やはりOさんもこのあたりにタオルをかけたくて、できれば引き出しのハンドルと兼用となるタオル掛けが良い、ということになりまして。しかし、引き出しは1段だけだと深すぎて使い勝手が悪いから、2段にしたい。でも2段にするとタオルをかけていると引き出しを閉める時に挟まっちゃう。それで、引き出しの前板は1枚の大きな板にすればタオルが挟まることはないよね、ということで内引き出しにしているのです。

私たちからしてみると、節がある材は反りが出やすかったり、刃が通りにくくて仕上げづらかったりと使いづらい材なわけでして、たしかに言われてみると、表情の豊かさは普通の板目材にはないほど豊かな部分もあったりして、物の見方はこうも時代によって変わるのだなあと感心させられます。
しかしそれを凹凸があるままで仕上げるのは私たちはやはり仕上げとは思えず、そういう手の跡が必然的に残ってしまった家具たちが作られてきた、使われてきた文化が評価されているからであって、それを真似て意図的に手の跡を残しすぎるのは、なかなか受け入れづらかったりするわけです。

ナラ節アリ材とステンレスバイブレーションとアイアンの脚のアイランドキッチン

食洗機とガスコンロの間の引き出しの様子。


ナラ節アリ材とステンレスバイブレーションとアイアンの脚のアイランドキッチン

食洗機とガスコンロの間の引き出しの様子。


ナラ節アリ材とステンレスバイブレーションとアイアンの脚のアイランドキッチン

食洗機とガスコンロの間の引き出しの様子。

そこで、今回も素材はナラの節がある部分を使うのですが、平面はきちんと平滑に仕上げていきます。本来、家具の板は4面(木口もいれると6面)がきちんと平らかで直角になっていることでしっかりとした形が作りやすくなります。どの部分の凹凸を残して、どの部分を平滑にしてと考えていくのは、やはり家具屋の仕事としてはかなり手探りな部分が出てきてコストが高くなってしまったりするので。
収納部の前板は無垢材ではなく突板を用いています。板をつく技術もすごいなあと思うのは、節がある突板を作れる、ということ。
突板というと人工的と思われがちですが、板のバランスを整えて作るという無垢材にはない魅力があります。
きれいに並べたり、左右反転させたり、そういう表情の遊びというかゆとりができるのは突板ならではで、コストを抑えていろいろな樹種を活用できるのも魅力です。
節アリの突板なんて今までは聞いたこともなかったのに、当然節の部分は抜けてしまうのですが、それでも板は割れずにきれいにスライスされている。決して表情が人工的にはならないで、色バランスよく整って張られている。
無垢材、突板、それぞれが持つ役割と魅力があって、そう言ういろんな選択肢からよいと思われる使い方をしていくことが私たちの仕事だと思っております。

ナラ節アリ材とステンレスバイブレーションとアイアンの脚のアイランドキッチン

ガスコンロはプラスドゥ。火力が強いというのも魅力ですが、全面に五徳が敷かれているのが個人的にとても気に入っております。

それでも、最近は雨が少ないせいか乾燥がひどくて、突板でも修復しようがないほどの大きな反りが出てしまうことがあって、やっぱり気は難しいな、と頭を悩ませながら作る日々です。

ナラ節アリ材とステンレスバイブレーションとアイアンの脚のアイランドキッチン

ガスコンロ下の引き出しの様子。


ナラ節アリ材とステンレスバイブレーションとアイアンの脚のアイランドキッチン

ガスコンロ下の引き出しの様子。


ナラ節アリ材とステンレスバイブレーションとアイアンの脚のアイランドキッチン

調味料用の引き出し。下段は油などのボトル用引き出し。

キャビネット内部はいつものように掃除がしやすいように化粧板を用いています。
本来でしたら、内外とも同じ材を使うと美しいのでしょうけれど、コストやお手入れの簡便さを考えていくとやはりしっかりと塗膜が形成されている化粧板を使うことが多いのです。
特にキッチンですと、お水が使われます。
内部を突板やシナ合板で仕上げたこともありますが、その方の住まう環境のせいなのか、しばらくしてご挨拶にお伺いすると、「イマイさん、実は引き出しに黒い点々が・・。」とか言われてしまうこともありました。
それほど湿気を感じていなくても、毎日きちんと開け閉めしている場所でも、いつの間にか小さなカビがついてしまうことがあるようです。
そうなった時には化粧板のほうが掃除がしやすいのではないかな、というお話をさせて頂き、皆さんはおおよそ化粧板を使われる方が多いのです。

ナラ節アリ材とステンレスバイブレーションとアイアンの脚のアイランドキッチン

節アリ材の表情。

天板はステンレスバイブレーション仕上げ。
余談ですが、先日自分でバイブレーション仕上げを施してみたいと思いまして、オービタルサンダー(グルグル円を描いて研磨する電動工具)に100番のやすりをくっつけて、手元にあった端材を磨いてみたら、速度と力の入れ具合で良い印象に仕上がるのでした。番手を少し上げて120番くらいでもどこか繊細なバイブレーションに仕上げになります。
これはなかなか面白い。
餅は餅屋だっていう思いはずっとあって、自分も家具屋だから木のことならという気持ちでいたのですが、こうしてだんだんと家具からキッチンなども手掛けるようになってくるといろいろな素材や器具にさわる機会も増えてきます。その分責任も大きくなってくるのですが、純粋に何かを作ったり、何かに施す作業って楽しいのです。
物を作る楽しさって、純粋にこういうことだよね、なんて思いながら、では次はみんなで使って傷が増えてきたショールームのキッチンの天板をやってみよう、と思い立ち、こちらはヘアラインでしたので、ひたすら包丁研ぐように手を行っては返しを繰り返すと、ホホォ、やっぱりきれいになります。
物ごとが新しく生まれたり整ったりする喜びはやはり楽しい。
いつか金属の表面仕上げのワークショップとかやりたいなあ。

そして、脚部はスチール。お馴染みのオヌマさんに作って頂いて、今回は溶接痕もきれいに除去して、塗装もメラミン焼付塗装で上品な印象に仕上げています。
オヌマ工業の高橋さんとはまだ4、5年のお付き合いですが、子供たちの学校を通じて知り合ったということもあって、仕事だけのお付き合いにはない細やかな提案や仕上がりをしてくれて大変頼もしい方なのです。

こうして、それぞれの素材が集まりまして、一つの形ができあがりました。

ナラ節アリ材とステンレスバイブレーションとアイアンの脚のアイランドキッチン

スチールの脚とナラ材の印象はとてもきれいです。そして、シンク下はよく見ると黒い箱になっています。これは、配管が露出してしまうと掃除がたいへんなのと、配管、配線で見た目がうるさくなるので、陰になるように黒い化粧板で囲っているのです。

「イマイさん、キッチン素敵です!
ありがとうございます!
とてもうれしくてメールでお伝えできないくらい感激しています。
キッチンが一番最初に我が家に入った家具ですが、少しづつ他の家具がそろっていき、わたしたちもだんだん今の家に馴染んできました。
気づけば床もキッチンもテーブルもほとんどの家具が無垢材のものになりました。
キッチンもやっぱり無垢材で、気に入ったデザインのものを製作してもらってよかったな、とあらためて感じております。
涼しい季節になったら、ぜひ家に見に来ていただければと思っております。」

Oさんにもその普段使いの仕上がりの良さが分かって頂けましたようで、とてもうれしく思っております。

キッチン仕上
天板 ステンレスバイブレーション
扉・前板 ナラ節アリ無垢材/ナラ節アリ突板
本体外側 ナラ節アリ無垢材/ナラ節アリ突板
本体内側 ポリエステル化粧板「ホワイト」
塗装 オイル塗装仕上げ

ナラ節有り材とステンレスバイブレーションとアイアンを使ったアイランドキッチン

価格:1,250,000円(制作費・塗装費、設備機器は別途)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は40,000円から、取付施工費は90,000円から)

信じて頼ってくださる

2019.04.04

「ガラストップの円卓とラウンジチェアのオーダー」

台場 A様

design:Aさん/daisuke imai
planning:Aさん/daisuke imai
producer:yasukazu kanai
painting:yasukazu kanai

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

リビングボードの納品を終えて、満を持してテーブルと椅子を納品したのです。

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

しかし、このあと大変なことになろうとは‥。

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

美しい納まりですね。この時はとてもほっとしておりました。

[libra]と名付けたテーブルがあります。藤沢のMさんの依頼で生まれた傑作です。(傑作と思っております。)
スチールなのにとても繊細な表情は鉄工のオヌマ工業のタカハシさんのセンスですし、それをナラと組み合わせた形はとてもバランスよくて、Mさんのところにはもう少し明るい印象で天板にはセンを使って、脚部はダークブラウンで仕上げたこのテーブルはMさんに納品させて頂いた後も数台ご依頼を頂けた美しいかたちです。その初代であるナラの試作は私たちの工房でいつでも見られるようにしてあるのですが、ちょうどそのような時期にとてもお久しぶりにAさんからご連絡を頂いていたのでした。

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

今回は、ほぼテーブルとイス外メインのご紹介になってしまっていますが、リビングボードもなかなか手が込んでいたのです。

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

奥のカップボードは、その後ろの壁を将来取り払ってキッチンとつなげることを考えて、置くだけの家具にしています。グラスたちは天板がフタになっていて(天板もガラス製)フタを開けて出し入れできるようになっています。

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

一番難しかった部分で、コンセントは壁のちょうど角にあって、そこから左方のテレビボードのAV機器収納部にスムーズに配線できるように、アクセスしやすいかたちで設計して、さらには異なる高さの格子扉の格子とすき間を合わせる部分など、一見地味なところが大変な作りだったりするのです。

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

持ち帰った郵便物をテーブルの上に置きっぱなしにしないで仮置きしやすくした半オープンの引き出し。一日分がたまったら、引き出しているものと要らないものを確認するというAさんの面白いアイデアです。

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

初回に納品したテーブル。華奢なところが美しいわけでありますが、使ってみるとやはり華奢だったのだなあと反省。

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

小オンラインがいろいろと交差して見えてくる印象はとても美しいのでしたが、うーん、よい勉強になりました。

Aさんは、「color」のAさんです。この家具を作らせて頂きましてから、もう12年が経つのですね。あの時、家具の取付の終わり絵手紙を書いてくれたお嬢さんは、もう高校3年生だそうで、子供の成長を目の当たりにすると、あらためて時間の経過がどれほどだったのか目を細めて考えてしまうのでした。
そのAさんには、以前から年賀はがきを頂いていて、「イマイさんはキッチンのお仕事を手掛けておられるようですので、次は我が家のキッチンをうまく使いやすいようにしたいと考えております。」と数年前のはがきに書かれていたのでした。
そうして、あのお話はどのようになったのかなと思っていたところに、メールをいただいたのです。
「キッチンを使いやすくしていく前提で、まずはリビングの使い方を変えていきたいのです。リビングのいろいろなものたちをうまく整理してからキッチンに取り掛かれたらよいなと考えております。」

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

まずは椅子の試作を開始です。これがご飯を食べる時のダイニングチェアとしての角度。

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

普通の椅子としての角度。

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

ご飯を食べ終わって、リラックスできる角度。

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

もうここで寝てしまいそうな角度。ただ、座面もそれなりに飛び出るので、前方に体重をかけると座面がポンと浮き上がっちゃうのですが。ちなみに置いてある座面は合板下地ではなく、ウェビングベルと下地のもの。そのあたりの座り心地も検討していったのでした。

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

角度の機構も確立できたので、続いては背もたれの印象について検討していきます。工房に展示してある椅子たちを使ってイメージを重ねていきます。

それでは、お久しぶりにごあいさつを兼ねて、ということで、Aさんのところにお伺いすることに。
Aさんは住まいはお台場にある背の高いマンションです。あの当時は、とても格式高そうなエントランスなのに、集会所でお勉強食べさせてもらったり、車ものんびり留めさせて頂いたり、という思い出がありましたが、どうやら今は違うようです。
「数年前に管理組合が一新されましてね。昨今の社会事情を踏まえてセキュリティが厳しくなったのです。」
なるほど、搬入に少々時間が掛かりそうですね。

そうして、案内されたリビングは懐かしいあの時のままで、あの時作らせて頂いたそれぞれのお部屋の家具たちは、色こそ日焼けしたり、手の跡がついたりしていますが、12年が経ってもきれいなまま。
「とても気分よく使わせてもらっていますよ。」
あの頃、ブナを使って作る機会が少なかったので、特にブナをホワイトオイルで仕上げるなんてなかったものですから、仕上がりのとても良い色合いだったのが思い出されました。

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

そして、こちらが試作の完成。座面は合板下地にして、クッションは少し厚めにして革ベルトでクッションを固定するいつもの方法で納めています。なかなか良いかたち。

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

後ろ姿を美しくしたい、というのが今回の椅子の課題と自分で考えていました。この椅子を作る少し前に天童木工のソファを見る機会があったのですが、その背骨の美しさに見とれてしまいまして、いつか実現させたいなって思っていたところにAさんからお声が掛かってので、そのよい機会だったのでした。

あの当時のままですが、家族は大きくなるので物はだんだんと増えていってキッチンもリビングもちょっと窮屈な感じです。
ぐるっと見回した感じでは、リビングだけでどうにかするには物が多すぎるようにも思えます。
できれば今ここで家具を作りつけるのではなく、もう少しすると一人暮らしを始めるだろうというお兄ちゃんの独立を待って子供部屋をリノベーションするのもリビングを広くするためには良いかもしれない・・。
そういったいろんな案をあれこれとAさんと話しながら、それでもまずはリビングだけでも快適に過ごせる方向で整え、将来的にキッチンを隔てる壁や子供部屋を隔てる壁を取り払った場合でも使いづらくない収納を設けたい、というお話になったのでした。
そのお話の中で、ダイニングとリビングが一体になったこの場所で、ダイニングチェアとソファを置くことが難しいから、というお話になり、そこで両方の用途を兼用できる椅子と、回遊できるような円卓を置くことでこのスペースを広く使いたい、というお話になったのでした。
円卓は、藤沢のMさんと同じデザインで提案して、椅子は当初は軸が開店するようなデザインのものを考えていたのですが、打ち合わせの中で背もたれが可動する形へと変わっていったのでした。
そして、テーブルのデザインもここで変わっていったのです。

ブナのベッドフレーム

今回、リビングの家具たちと一緒にお嬢さんのベッドも同じくブナ材で作らせて頂いてます。ヘッドボードはピンクの革張りで、印象をかわいらしくボタン止めしているのです。

Aさんのご自宅にお伺いしてしばらくしましてから、今度はAさんが工房を訪ねてくださいました。
そこに置かれていたあのテーブルを見て、「いやあ、美しい形ですね。」とおほめ頂いたのですが、その後で、「イマイさん、我が家の場合は天板をガラスにしたいので、ガラス越し見見える脚部はアイアンではなくて、ぜひ木で作ってもらいたいのです。」と、信じられない提案が飛び出しました・・。

「木で脚を作るのですか‥。」

実はAさんからこういうお話を頂く以前にも、このテーブルをご覧になった方から、ここが木でできたら、また魅力的な形になりそうですよね、なんてお話のためになったこともありましたが、あくまでもお話の中でって思っていたのです。

このテーブルはくの字の部材とパイプ状の細い棒で構成されていて、5枚のくの字
はそれぞれ接していなくて、パイプがくの字と固定されて、成り立っているという、自分で言うのもなんですが、絶妙な形なのです。
タカハシさんにはそういった部分で大変苦労してもらったわけですが、この形を木で作るには強度が持たなそうですし、どうしたらこの3次元の組み合わせを実現できるのか自分でもイメージできなかったですので。
でも、長いお付き合いのAさんからそう言われたときは、ああこれはもういよいよ気を引き締める時が来たのだなってそう思ったのです。
Aさん、一度決めたら気持ちが変わらない部分がありますので。(笑)

「・・では、まずは試作してみますので、少しお時間を頂けますでしょうか・・。」

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

ここからはテーブルの試作の様子。鉄のタカハシさんの時もそうでしたが、くの字の脚は接しないでそれぞれ独立して立っているので、その脚を支える治具作りから始まります。

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

クロス部材の先端とくの字の接する部分は、手作りですので1本ずつ位置が微妙に違ってきます。無理に位置を合わせようとするとひずみが出てがたつきが出たり、ゆがんで材が破損したりするので、時間をかけて一を出していきます。

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

クロスの部分。たしかに華奢でしたね。でもこの部分には負荷が掛からないはずって信じていたもので・・。

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

クロス部分の接合も終わって、先端部分の位置出しも終わって、いよいよ組み立て。

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

そして、塗装。格好良いです。

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

ガラスを載せてみます。きれいです。

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

この試作には木口をラウンドさせたガラスを使ってみて、脚のシャープな感じに対照的に柔らかな感じにしてみたのです。そして、このテーブルとアイアンのテーブルを一対としてコンテストに応募してみましたら、とても良い評価を頂くことができて、それは一つの糧になったのでした。

ここからは、試行錯誤の繰り返しです。
テーブルとイスはカナイ君の担当で、ノガミ君はリビングボードの担当で、ノガミ君のほうは順調に進めることができそうなので、まずはこちらの家具を先に進めて先に納品できるようにして、カナイ君とあれこれ悩みながら試作、そして本政策へと進めていったのでした。

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

しかし、喜んでいたのもつかの間。クロス部分が破断して、新たなる形を探し始めるのです。これは2回目の試作の時の部材ですね。これでも壊れちゃったのですけれどね。

椅子の角度を変えて固定する機構、座面がずれないようにする部材、張地の選定やベルトの製作。そのあたりはうまく進んでいきます。
問題はテーブル。
くの字の構造はうまくいきそうで、そこに天板が載るとどう荷重が掛かるのか。それがいまいち分からなくて。
でも、天板の重さはすべてくの字が支えてくれるはずなので、あとはくの字同士をつなげるパイプの部材をどのように木で作るか・・。
最初は、ただ、くの字同士をクロスした部材でくっつける形で考えていたのです。でもね、その形って何というか格好良くなかったのです。
どうにかあのアイアンのかたちを表現したい、1本の棒が連続してつながるイメージを表現したいなあ・・。
それにはクロスする部分の接合をどのようにしたらよいのかなあ・・。
暗くなった工房で一人もやもやしながらあれこれ思っていたのですが、あれっ、こういう方法はどうかなってちょっと思いついたのです。
そういえば、アイアンのテーブルを考えた時も一人の夜だったなあ。
こういう静かな時間はやはりクリエイティブになれるのもねえ。
さっそく思いついた形をサクサクと芯材を削ってみまして、うんよし、何となく良い印象になってきた。
翌朝、カナイ君に相談。この形で接合部の強度を出せれば完成できるかも。

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

クロス部分を別々の棒で作るのではなく、1枚の板を削りだす方法で作っていったのです。

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

クロス部分の容積も増やすためにきっちり十字型にせず、真ん中は多少ふっくらと。これでもまだ完成形ではありませんでしたが。

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

そして、これが完成形です。Aさんのテーブルにはさらに補強を施しましたが。

ワクワクしながら作業を進めまして、ハイ、完成!秋ごろにできたその試作のテーブルはちょうど冬に開かれる工房のイベントでみんなに座ってもらって、それで強度の試験をしてみよう。
そうして、リビングの家具の納品は無事に終わった後でも試作と試験が続きます。
工房にいらしてくださったお客様にこのテーブルでお茶を飲んでもらうこと2か月ほど。
ガラスが載ると均等にテーブルに負荷が掛かって安定していたし、どうやらくの字
だけが荷重を受けているだけのように見えるし。
よし、大丈夫だね、ということでさっそくブナを使って本製作に入ります。
2回目の製作とあって、カナイ君の作業はスムーズです。
ハイ、完成。
さっそくAさんのところに納品させて頂いて、同時に椅子も完成させていましたので、これですべてが揃いました。
ちょうど乾燥のきつい時期で、リビングボードの天板が大きく縮んだ部分がありましたが、それを手直しさせて頂いて無事に納品終了。
Aさん、楽しんで使ってくださいね。
と、ひと安心して帰ってきたのでした。

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

さて、椅子は形が確定しているので、角度が変わるタイプを2脚、角度固定のタイプを2脚の本製作を進めていきます。角度を固定させる機構が、試作よりもシンプルになっているのに気づきましたでしょうか。どのようにしているのかは内緒でございます。

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

背のクッションと背のフレームの印象。きれいです。

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

革ベルトは、父が昔に使っていた川道具を引っ張り出して、皆が工房を帰った後にちまちまと作っていきます。

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

背骨の美しさ。

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

回転軸部分もどのようにしているかは内緒。座枠がフレームからずれないようにする機構もシンプルな構造ですが、うまく機能しています。

と、ここでお話が終わるはずなのですが、工房で使っていた試作の上でお茶を飲むのではなく、ちょっとした作業をしていた時です。
ガラスにフィルムを張る作業をその上で行なっていたのです。
引き続きの強度試験を兼ねて。
フィルムの空気を抜くのにスクレーパーを当てていたら、ピキッという音とともにクロス部分が1本折れてしまったのでした。
「お、お、おやっ・・。」
クロス部分には負荷が掛からないものと思っていたのですが、1か所に荷重が掛かるとくの字だけでは支えられなかったのでした。
幸い、1本折れただけでテーブルが瓦解することはかなったので、ガラスが落ちてくることはなかったのですが、もうぐらついています。
Aさんのところは大丈夫なのだろうか・・。
と、案の定ほどなくしてAさんから電話が。普通に使っていたのに、折れてはいないそうですが、クロス部分に亀裂が入っていてもうすぐで破断してしまいそう、と。
おお、危ない。
さっそく工房に置いてあるアイアンの脚を代わりにお持ちして、グラつく脚としばらく交換。
うーん、どうしたものかなあ。
Aさんも、実現が難しい場合はくの字同士の頂点を接してしまっても良いですよ、と提案してくださるのですが、やはりアイアンはイメージとは違くて、木で実現させたい部分は譲れない。(笑)
アイアンならば、完成形なので問題なく納品できるのですが、なかなか難関です。
さて、どうしようか、とカナイ君と再び悩みます。
今まではクロスの部分は3本の棒で構成して、2本が交差しているように見せていました。クロス部分のホゾもそれなりにしっかりと作ったつもりでしたが、それで壊れてしまったのですから、クロス部分を1つの部材にしてみよう。
四角い板を十字型に切り出して再びチャレンジ。
うん、うん、よい感じです。
そうして、ハイ、完成。
できたね、しっかりした形、とみんなで喜びます。作ったカナイ君が一番うれしそう。じゃあさっそく塗装だね、と思ったら、再びパキッて音とともにクロス部分が割れました。
えっ、なぜ・・。
いろいろ探るうちにどうやらクロス部分の木取りに原因があるようでした。
最善だと思っていた木取りの仕方が、逆に負荷に対して割れやすかったようで。
こうして何度か繰り返すうちにAさんも気長に待ってくださって、応援してくださいまして、私たちも作業の中で最善な形がようやく見えてきていたのでした。
具体的な構造は、説明しちゃうともったいないので書かないわけですが、ここからさらに2回試作を繰り返して、さらに3か月ほど使用してみて、ようやく安心できる形が完成。
そうして、満を持してAさんの本製作に取り掛かり、試作開始から丸2年が経ってようやく納品できたのでした。

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

テーブルは、最終的には補強のリングを付けさせてもらいました。リングがないほうがスッキリしていて美しいのですが、くの字の脚が開くのを防止するための形として提案させてもらいました。

ブナのダイニングチェアとブナとガラスのラウンドテーブル

工房の試作はリングなしにしていて、相変わらず強度が大丈夫かを試しながら使っていっています。無しでも大丈夫、と確定できればもっと作っていくことができるのですが、今のところは世界にこの2台しかありません。(笑)

ありがとうございました。
試作は今でも工房に置かれています。できあがりの美しさのなかにある時間や手仕事の苦労も見て頂けるとうれしいです。

ガラスとブナのラウンドテーブル

価格:720,000円(制作費・塗装費)

ブナのラウンジチェア

価格:300,000円(制作費・塗装費)

ブナのL型リビングボード一式

価格:1,150,000円(制作費・塗装費)

ブナのベッドフレーム

価格:340,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は25,000円から)