Kさんのナラ節アリ材を使ったキッチンに会いに

2020.10.28

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無事に搬入できたことを見届けて、私は逗子まで。
1年半前に作ったKさんからご連絡を頂いたのでした。
「キッチンのサイドパネルに水切り棚が売れていたのかもしれなくて、ちょっとパネルが黒ずんでしまって。」
ということで、お伺いしたのです。
たしかにパネルとステンレスカウンターの角の部分がずっと湿気ていたようにパネルに黒い筋がいくつも入ってしまっています。
おそらく表面にカビがついてしまったのでしょう。
木に水が跳ねてもなるべく早めに拭きとって通気良くしておけば、あまり黒ずむことはないのですが、気づかずたまった水が乾くまでずっとそのままで自然に乾いた、となるとだんだんとその部分が黒くなってしまうことが多いのです。これはオイル塗装だからなる、というわけではなく、ウレタン塗装でもなることがあります。
(特に私たちのウレタン塗装だと厚塗りしないで導管の手触りを残すので、以前ウレタン塗装でも黒ずみが出てしまったことがありました。余り厚塗りしてしてしまうと表面は平滑になって汚れなどは付きづらくなりますが、手触りが樹脂を触っている感覚しかなくなるので、それはそれで淋しいのです。)

そこでなるべく表面をきれいにするために粗めのサンドペーパーから極細目の
ペーパーまであてて表面の手触りを良くし、黒ずみをなるべく除去したうえで、蜜蝋を擦り込みます。
ステンレスカウンターとのコーキングが切れてしまった部分は再度充填し直して、メンテナンスは完了。
まっさらなきれいに印象に戻るわけではないですが、黒みも少なくなって、汚れた印象は無くなり、使い込んだ良い色になりました。

良い感じです。
Kさんの住むこの家は、古い集合住宅。築50年近いのかな。
スケルトンにして、間取りを考えたこともあって、一般的なマンションのようなステレオタイプの印象にはならず、Kさんらしい独特の室内になっていて。
特に細長く取った玄関が心地よくて、さらにはこのリビングダイニングに入ってくる手前の前室のような広い空間がとても心地よいのです。
お兄ちゃんが遊ぶのでしょうか、小さなティピが置かれていて、白い壁は落書きがいっぱいあって、気持ち良い場所でした。
そういうのびのびした場所ののびのびしたキッチン。
「とても使いやすくて助かっています。」と仕事から帰宅した奥様がそううれしそうにおっしゃってくださいました。
ありがとうございます。
ひと通りメンテナンスのご説明をあらためてさせて頂きまして、「それではまた何かありましたら、いつでもお声掛けくださいね。」

タモ板目のペニンシュラキッチン

2020.10.28

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無事搬入できた、ああ、よかったよかった。
工務店さんから頂いた階段の勾配の図面や2階の平面図を見ながら、「ああ、うまく2階に上がるだろうか、どうだろうか・・。」となかば夢にまで出かけていたIさんのキッチンは無事に2階のその場所までたどり着けたのでした。
何度かお話しているかもしれませんが、キッチン自体はね、工房で仮り組みするので、現場に着いたら同じように組んでゆけば問題なく納まるという確信があるのです。
でもそこに運び入れるって言うのは見えない部分があって・・。
以前、もうだいぶ昔のまだ父も現役で現場作業に取り組んでいた頃、渋谷にあるメガネ屋さんの大きな陳列棚を搬入していた時です。
これ以上分割できない、というデザインで、それでもどうにか入るだろうというイメージはあったのですが、うーん、これが入らない。
どうにも階段でつっかえてしまう・・。
これはダメかな・・。持って帰って一度ばらさないといけないのかな・・。
なんていうことがありました。
(結局、搬入経路上にある照明を取り外して、みんなでエイヤッと取っ組んだらどうにか入ったのですが。)
それ以前にもまだ内装屋さんから数多く仕事を頂いていた頃、(この頃は採寸も内装屋さん任せでしたね。)入らなかったことが何度かあったのです。そうなると工房に持ち帰って、少し淋しくなりながら一つで作った家具を分割し直して・・。
そういう時に思いや苦い味の感覚はいつまでも覚えていて、こういうシビアな現場になると苦みが思い出されるのです。

ああ、よかった。無事に納まってとても魅力的なIさんらしいキッチンができあがりました。