少し北のヨーロッパ

2021.09.06

「ナラ節アリ材とアイアンレッグの円卓とタモのダイニングチェアのオーダー」

相模原 K様

今から6年前に作り始めたこの円卓。過去に同じ形で6台作らせて頂いて、また別に木製のこのデザインの脚で1台と、今まで7台を作らせて頂きました。
6年間でその方々にしか良さを表現できなかったのは私の力不足だなあ、なんて思っていたら、「まだそれだけしか生み出されていない貴重なデザインなのですね。」なんてうれしいことを言ってくださった方もいらっしゃいました。
ですので、7台しか出ていない希少な形でございます。

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素材を選んだ指標として、床材と同じ節のあるナラ材を天板に使うことと、キッチンの真っ白な印象に合わせたいということで、テーブルとイアスのそれぞれに白を取り入れています。

ただ、今までにほとんどお話に出なかったのが、この円卓と一緒に椅子も作らせてもらうことでした。唯一作ったのは私の自宅のテーブルと椅子くらい。
今回Kさんから頂いたご要望の中には椅子とテーブルの一体感が気に入っているのです。というお話があったのでした。
私の自宅までテーブルと椅子の様子を見にいらしてくださったKさんは、椅子の背もたれを眺めながらそう言ってくださったのでしたね。
実はKさん、私たちと近いところでお仕事をされているかたで、自宅にいらしてくださった時は、お一人でフラッとした感じでいらしてくださって、(もちろん事前にご連絡は頂いておりましたが)作業着に近いカジュアルな格好で、サンダル履いておられて、おや、どこの設備屋さんだろうかと思うような印象でした。
(何となく、設備屋さんか電気屋さんのように思えたのです。笑)
そして、滑舌よろしくお話も端的で上手で、何だか私の方がお客のような気分になってしまって、「へい、そうなんでございます。」みたいな感じになってしまって。

「いやあ、テーブルに椅子をピッタリ添わせると、背もたれがきちんと合うのはすてきです。」
とKさんが嬉しそうに言ってくださったのですが、そう見えるのですが実はピッタリではなくて・・。
テーブルは標準のサイズだと直径1300ミリで、椅子の背もたれは半径600ミリの弧を描いています。
だから、完全にピッタリとはいかないのですが、それでもその吸い付くように沿っている様子をKさんがとても気に入ってくださって、今回は椅子と一緒に作らせて頂けることになりました。

ナラ節アリ材とアイアン脚の円卓とタモのダイニングチェア

黒と違って白はまた美しい。交差する鋼線の印影が良く浮かんで、立体感がいっそう増して映ります。

そして、今回魅力的だったのは脚の部分をキッチンに合わせて白くしたこと、そしてその脚に合わせて座面も白くしたことでした。
もともと黒という色を想定して考えたこのテーブル。
最初に作らせて頂いたMさんには、黒ではなくてダークブラウンでしたね。
私の自宅はシルバー。
そして今回はホワイト。
スタンダードなブラックはとてもフィットしていて美しいのですが、このホワイトもとてもすてきだったのでした。
なるほど、こういうふうに見えるのか。何というかもう少し北のヨーロッパであるような印象というかなんというか。
たいへん軽快で明るい印象でまだちびっ子二人がいる家庭にはとてもよく合うすてきな形に仕上がりました。

ナラ節アリ材とアイアン脚の円卓とタモのダイニングチェア

天板は節のあるナラ材ですが、椅子も共材で作るのはなかなか難しかったことと、ナラ材だと重くなってしまうと考えて、強度的にしっかりと作れて、印象が近いタモ材で作っています。座面の張り方は私の自宅と同じく、左右はマチを取って角のしっかり出た印象にして、前後は丸張りにして膝裏のあたりを良くしています。生地はお子さんが汚しても掃除がしやすいようにレザーを使いました。

納品の時はテーブルと椅子くらいなら問題なく搬入できるでしょう、安易に考えてお伺いしてしまったのですが、到着してそれが大変なことに気づきました・・。
戸建の2階がリビングのKさんの間取り。2階に上がる階段は標準的なお宅にあるようなぐるりと回って上がっていく階段。
いやあ、ここにこの1300ミリの天板と脚を上げることができるのだろうか・・。
ちょっと冷や汗が出てしまいましたが、Kさんにお手伝い頂いてどうにか無事に搬入完了。
汗だくになりながらきれいに納品することができたのでした。

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錆、土、岩、水などいろいろなテクスチャーを平面で表現していて、それぞれがテーブルトップに使っても大丈夫なくらい強靭な塗膜になっていて、色で質感をこれだけ表現できることにただ驚くばかりでした。

そのあと、今まで使っていたテーブルをKさんのアトリエに持っていくというのでお手伝いさせて頂くことに。

そう、Kさんやっぱり職人さんでして、家具屋ではないものの、塗装で家具の表現したり、室内のリペアのお仕事をされているのでした。

株式会社リペアバンク
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https://www.repairbank.net/

なるほど、だから近い空気があったのですね。
そのアトリエはまた魅力的で、シンプルな倉庫なのですが、その壁一面にはいろいろなカラー、テクスチャーの塗装サンプルが掛かっていてワクワクします。
「ふだんはリペアの仕事がメインなのですが、塗装ってね奥が深いんですよね。こうしていろいろな質感を塗装で表現できるおもしろさはとても魅力的で。こういう形でこの先一緒にお仕事ができたらすばらしいですよね。」
はい、私もそう思います!
どこかで実現できたらよいなとアキコと二人で思いを馳せながら帰ってきたのでした。
家具を通じてこういうご縁が頂けるというのはうれしいなあ。

ナラ節アリ材とアイアンレッグの円卓

価格:407,000円(制作費・塗装費)

タモのダイニングチェア(1脚)

価格:95,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は16,000円から)

コンフィな結婚記念日

2021.09.30

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昨日は結婚20年目の日でした。いつの間という感じですね、こども達の年齢を考えると「そうか~。」と思います。
記念日として特別にお祝いをされる方もいらっしゃると思いますが、平日でしたし、お仕事でしたし、私達は普通に過ごしました。お互い物欲もないのでプレゼントもなしです(笑)。
ただ、何もないのは自分がつまらなかったので、小さい鰯が安く売られているのを帰りのスーパーで見つけて、前から気になっていた「鰯のコンフィ」を作ってみました。(この他のメニューは、チイのリクエストのオムライス+野菜スープ+サラダでしたが)ガスで低温をキープし続けるのは難しく、レシピの写真のように皮がきれいなままにはなりませんでしたが、味はおいしく家族にも好評でした。今日のお昼は残りを使ってパスタにしました。いつもお魚は焼くか煮るかという感じでしたので、新しいレパートリーが増えてうれしいです。
「コンフィ」の意味を調べてみると、フランス語で保存するという意味だそうで、美味しい状態で上手に保存して無駄なく食材を使うための方法ということで、これからの理想の生活を象徴しているかのようだなと感じました。これからも変わらず健康に気をつけて一緒に過ごしていけたらと思っております。

働き方 椅子の制作

2021.09.29

最初の写真で左側に立って磨きの作業をしながら見守ってくれているのがコバヤシ君。手しか映っていませんが。

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私達の会社に就職目的で見学に来る人たちにはいつも伝えていることがあります。「私達の会社は一人一台の家具担当制で製作していくので、将来独立したいと考えている人には向いていると思います。」と。
そう説明して来てくれる人たちなので、5~6年すると辞めて独立していく人たちがほとんどです。では熟練の職人さんはいない工房なのね、と思われてしまうかもしれません。それが家具工房にとってどう思われるのかもわかりませんが、同じ形をずっと作り続けるなら生かせるのかもしれませんが、毎回新しい図面で仕様の異なるものを作り続ける私達の工房だと、柔軟に対応し続けられる力が必要なのかなと思っております。やり方は技術は3年ほどで確立されていくような気がしています。
さて、なぜこの話になったのかというと、数年前に独立したコバヤシ君がうちの工房で作業しているからです。
スタッフが3人だと製作のペースが厳しい場合が多く、助っ人としてお手伝いに来てもらっています。
ちょうど今は椅子の制作をしていまして、初めて担当するヒロセ君にアドバイスしながら進めていかなくてはいけないのですが、主任のノガミ君が大事な用事があってお休みしなくてはいけないこともあって、ノガミ君と同級生だったコバヤシ君がサポートについてくれたおかげでスムーズに製作が進んでいるのです。今までなかったことなので、ありがたく、ちょっと不思議な状況だなと思ってみているのです。
世間でいう、働き方改革とは異なると思いますが、お互いの利害が一致して納得しているのであれば、これからも色々な働き方に対応していくべきなのかなとも思っています。

無垢材の作業台 ダイニングテーブル 餃子ナイト

2021.09.28

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写真を撮ってからいつも気づくタンクトップ姿のダイスケさん。日常ということで…。
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コンコンっと音をさせながら「皮作るように短いめん棒ないのかなぁ。」とダイスケさん。調べたらちゃんと売っているのですね。さあ、買うのでしょうか、作るのでしょうか。
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ダイスケさんばかりに作業させてという意見もあるかもしれないので、私は具を包みましたよ。重ねた皮の部分が厚くなりがちなので気をつけました。
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作業用のシリコンマットを外してもこんなに散らかってますね。栗のテーブルの木目は大きいので、粉が入り込んで残らないようにすすいだ布巾で2~3回拭き取りました。
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鉄鍋で焼きます。焼き肉屋さんでアルバイト経験のあるダイスケさんなので、鉄鍋の焦げの扱いなどが上手なのです。
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週末はやっと予約を取ることができた娘二人のワクチン接種でした。それぞれご褒美に食べたいものリクエストしていいよと伝えるとハルはプラッタータチーズ、チイは焼き餃子(なんてリーズナブルなリクエスト!現実がよく見えていますね。笑)ということで作ることにしました。
我が家にキッチンは高さが90cmあるので、立ち作業でこねたりするのは肘の高さが上がり疲れてしまいます。また、時間がかかる作業の時はダイニングテーブルに座ってしています。(普段している作業と言えば、もやしのひげを取ることくらいでしょうか。)無垢材オイル塗装の天板だと、粉だらけになったり、具がこぼれて油の染みになったり、アルコールスプレーで塗装が取れてしまうと気にされる方もいらっしゃると思いますが、使い込んで馴染んでいく革製品と同じように風合いが増した表情も好きなのでガシガシ使っています。
ただ、我が家は家族全員でテーブルを囲むよりも二人ずつで使っている機会の方が多く、そうすると、キッチン側の半分のテーブル天板の方がよく使うので汚れている気がします。まだ2年目なのでそれほど目立ちませんが、1年毎とかに向きを変えてまんべんなく色味が統一できるようにしていこうかなと考えています。年末の大掃除の時にダイニングテーブルのメンテナンスはしていますよ。
36個出来上がった餃子はあっという間にみんなの胃袋に収まりました。やっぱり手づくりの皮はおいしい。毎回皮から作れたらよいのですが、我が家では難しいので特別なごちそうさまなのです。

日刊Sumaiに記事が掲載されています。

2021.09.23

イマイダイスケのライター活動15回目の記事は学習机についてです。記事にも書いてありますが、お子さんが進級するタイミングで学習机の相談にいらしたお客様とお話ししてみて、「まだうちには学習机はいらないね。」と帰られた方もいらっしゃいます。(笑)家具屋の営業としてはダメなのでしょうけど、その方にとって本当に必要な形を一緒に見つけてお作りするのがオーダーだと思っているのでよいのでしょうか。
私たちの記事は「こういう場合にはこういう形がお勧めですよ。」というものではなく、お客様を通してだったり、自分たちの生活で経験した体験談が多いので、「そういうこともあるのだね。」という感じで読んでいただいて、より自分たちにあった形を見つけるきっかけにしていただければうれしいです。よろしくお願い致します。

日刊Sumai → インテリア・雑貨 → 「学習机、子どもが長く使えるものを選ぶには?家具の専門家が娘の成長で感じたこと」

写真は、引き出しの前板の塗装をしているハルチイ。懐かしいです。ローラーをへんな持ち方しているところがかわいいですね。

お月見日記

2021.09.23

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玄関
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我が家のお月見記録です。娘二人ともお団子があまり好きではないので、毎年必ず作っていたわけではないのですが、おうち時間の時間が長いせいか、今年はちゃんと用意しようという気持ちになりました。
お団子は好きじゃないけど作業は好きということで、ハルが手際よく作ってくれました。お皿によそうとプルプル過ぎて段に重ねっれないということで、竹串で数個ずつ刺してみましたが、それでもずれてしまいましたね。
なぜ飾りが二ヵ所なのかというと、リビングに飾ってしばらくするとハルにくしゃみや鼻水のアレルギー症状が出てきてしまったのです。イネ科のススキ、以前の検査ではイネは大丈夫なはずなのですが、気をつけなくてはいけませんね。
ですので玄関に移動したのでした。ススキを飾るのは難しいでね。来年はもっと背が高いまま床に置いて飾る感じにしたいなと思います。
お団子は翌日に磯辺焼き・あんこ・きな粉にして楽しみました。固くなってしまっていましたが、グリルで数分焼けば中までふっくら柔らかくなりました。白玉粉と絹豆腐同量を混ぜるレシピは胃もたれせず(笑)おいしかったです。

さて、お団子を載せている台ですが、これは【木のご飯台 Cone 】という名前で販売していますよ。
ペット用のご飯台として作りましたが、我が家では「木製の和風なコンポート皿」として使っています。お正月の鏡餅の台としても使えます。洋風過ぎずにいつもと違う雰囲気を演出できるので気に入っています。鉄染をしたコーン型の脚と天板の縁の加工がアクセントなのです。

Website →木工小物と雑貨→ tableware →【cone 】

手作り通販サイト【Creema 】でも販売させていただいてます。興味のある方は見てみてくださいね。

木のキッチン シンク下のゴミ箱置き場の掃除

2021.09.20

Dsc_9628壁にピタリとつけてフットペダルを踏んで開閉する勢いで傷付けてしまっていたようです。気になる方は少し離して使うようにした方がよいかもしれませんね。
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Dsc_9629サイドパネルの外側までカビが染み出てはいませんね。
Dsc_9639ご自身でオイル塗装をされたお客様にはその時に「紙やすりと蜜蝋とウエス(綿の着古したTシャツなどの布で大丈夫です。)が常備しておくよいですよ。」お伝えしているのですが、こういう時にあらためて手元にあると良いなと思ったのでした。気付いた時にすぐケアできますからね。

先日のオープンハウスでキッチンのお話をしている時に、「あ、ここ掃除し忘れてた。」と気づいたところがありました。
シンク下のゴミ箱置きスペースです。
うちは家の中で日陰の場所にあるキッチンで洗面所・お風呂と続いているので湿気がたまるかなとは思っていたのです。
梅雨時期に生ごみの臭いが気になりゴミ箱を出して拭き掃除をした時には気付かなかったので、その時まではなかったと思うのですが、キッチンの内側の部分の生ごみを入れるゴミ箱の側にカビのような点状の汚れとゴミ箱の蓋が動いて当たるところにこすれた傷がついていました。
汚れを見つけたらすぐ落とそう!ということで、4倍に薄めた酢水で拭き取り→乾いたら320番と400番の紙やすりがけ→蜜蝋ワックスを塗り込む、という作業をしてみました。触ったら凸凹はわからないくらいに汚れは落とせたのですが、シミのような跡は残ってしまいました。
なぜこうなったのかと考えてみました。洗いかごをキッチンの端に置いていて洗い物が山積みになるくらい多い時にはサイドパネルに水がしたたり落ちて濡れてしまう時があるのです。その都度乾いたタオルで拭いていたのですが、湿気は残っていたのでしょう。そして、生ごみの湿気があるのでカビやすくなってしまったのだと思います・・。
同じような状況で使用している方は、もしかしたらこうなるかもしれませんので、ちょっと確認してみてくださいね。

今年も栗のテーブルで栗仕事

2021.09.20

海老名産の大きな栗をいただいたので、連休中に大好きな渋皮煮を作ることにしました。
毎年参考にさせていただいているのは大原千鶴さんの今日のお料理のレシピです。参考写真のような美しい渋皮煮をいつか一粒でも作れたらいいなと憧れているのですが、私にはなかなか難しいことなのです。
昨年は大きな栗は中心が生のように固く残ったものがあったので、今年はしっかりゆでようと思ったら今度は崩れたものが多くなってしまい残念でした。本当はもっと煮汁が澄んだ状態になるのだと思いますが、そうすると全部に崩れてしまいそうでしたのでやめました。火加減なのですね。プロの方は本当に素晴らしいです。
でも、テーブルで鬼皮むきをしていたらハルが何も言わずに手伝い始めてくれて一緒に作業ができたのはうれしかったです。
毎年「たくさん作ってお正月まで取っておけばお節料理に使える。」と考えるのですが、間違いなくそれまでになくなってしまうのでした。今年はどうしようかな、もう一度作るかな、と7割答えが出ていますが、残りの3割で、これから買い物に行くたびにきっと出会う栗の姿を見て悩もうと思います。

チェリーの引き戸のある食器棚

2021.09.19

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昨日の雨は大変心配でしたね。
私たちのところでは大きな被害を受けることなく朝を迎えることができました。
おかげさまで、本日Hさんのところに無事家具を届けることができました。
そういえば、先日ようやく1度目のワクチンを受けることができました。
体には大きな異変が起きることはなかったですが、翌日中は熱はなくてもひどい倦怠感があって、不思議な感覚でした。
体に取り込まれた小さな力や自分ではどうにもできない大きな力がそこかしこにあふれていて、自分たちはその中で節度を持って暮らしていかなければいけないのだなとあらためて感じたのです。
今日もこうしてきちんと過ごせることに感謝します。

本日は大変良いお天気に恵まれてHさんのところにお伺いすることができました。
コーポラティブハウスということでエントランスからHさんの住戸までは少し変わった導入部になっていたので、長いテレビの上の棚はきっと通らないだろうなと思っていたのですが、実際に運んでみると難なく通過。
予定ではエントランスとは反対のバルコニーから、その階下にお住いのご家族にご了承頂いていたので、荷揚げをするつもりだったのですが、大掛かりにならずに済んでよかった。

もともと、Hさんには、食器棚の相談を頂いていたのです。
そのお話の中できれいな形のテレビボードに目が留まり、その上も飾り棚を作りましょう、というお話になったのはうれしくもありましたが、搬入の心配もあったところでした。
しかしこうして、先ほどのように良いことがいろいろと起こりまして、無事に2台の家具が設置できたのでした。
食器棚は奥様の家具、飾り棚はご主人の家具、ということでとても気に入って頂けまして、またあらためて使っている様子を見させて頂きにお邪魔させてください。
ありがとうございました、Hさん。

コーリアン「セージブラッシュ」とブラックウォールナットのキッチン

2021.09.11

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最初に平成建設の設計のTさんから頂いた写真を見て、何というかすごく柔らかいぬくもりというのでしょうか、(良い言葉なのかどうなのか分かりませんが)使い古された温かさというかなんというか、とにかくルドルフ・シンドラー邸のような木の匂いがして、石がひんやり冷たくて、それでお香の匂いと漬物に匂いがしたら最高だなって思っていたのです。そこからもう少し話を進めていくともうっちょっとモダンなイメージをお持ちだった施主のWさんの意見を汲み取りまして、このような形にまとまりました。
ベルタゾーニのガスオープンは初導入でございます。
あとは平成さんが仕上げてくださった頃にまたお伺い致します。

引き続きどうぞよろしくお願い致します。

今日は「趣味どきっ!」

2021.09.08

7月に発行された本なのですが、お世話になったkonasalonさんも、以前からお名前は伺っていてInstagaramを通じてメッセージを交換するようになったkitobitoさんも取り上げられていたので、「お盆休みになって時間ができたらゆっくり読もう。」とダイスケさんとお話していたのですが、なぜか忘れてしまっていて、TVの予告を見て思い出し慌てて購入して放送には間に合ったのでした。昨年でしたでしょうか、前回の有元葉子さんや中村好文さんのキッチンもとてもすてきにご紹介されていたので、今回もとても楽しみにしているのです。雑誌があるならTVは見なくても…という方もいらっしゃるかもしれませんが、やはり紙面と動画では入ってくる情報が違い、どちらかだけでは気づかなかった点に気づくことができるのでおもしろいです。
前回放送の野村友里さんと紘子さんの放送回では、今まで冷や汁は自ら食べたいとは思わなかった献立なのですが、初めて作ってみたいと思えました。また、人の座高ほどの高さのある大きなアジアンタムが中庭にあり、それほど大きなものを見たことはなかったので「自分の家のものもここまで大きくなるのかしら。」と目を奪われました。
全く自分の暮らしとかけ離れていると「違う世界のことだ。」とあきらめてしまいますが、共通する点を見つけられると、憧れられます。こういう暮らしをしていきたいと。
そのためには、毎日バタバタ時間に追われて夕食の支度をしている状況をどうにかして、料理の腕をあげていかなきゃと毎回反省するばかりなのですが…。
なんとなく、私達にキッチンをご依頼いただく方々もこういう暮らしの雰囲気が好きな方が多いのではないかと思っております。興味がある方はご覧になってみてくださいね。→ NHK 趣味どきっ!

Tさんのところへ

2021.09.07

先日設置工事を終えたTさんのところに再びお伺いして細かい部分のメンテナンスをしてきました。
最初に作らせて頂いたのは食器棚でしたね。
あの時は、
ナチュラルな色で仕上げたわけですが、今回リビングダイニングのリフォームを機に色をがらッと変えたのでした。
今回作らせて頂いたカウンター収納は、塗料にリボスのカルテッドのホワイトを使い、擦り込んで拭き取る仕上げにすることで、導管がより白く仕上がる印象に。
そして、それに合わせてTさんご自身で前回作らせて頂いた食器棚もホワイトふき取り仕上げにするというのです。
今日伺ったタイミングでちょうど2回目の塗装を半ば終えた状態で、もうすぐで完了するというところ。
この写真だとね、ちょっと色淋しく見えちゃいますが、実際は全体的に静かな印象に仕上がっていってます。

食器棚の塗装が終わったらまたお邪魔させて頂いて、全体の様子を拝見させて頂こうと思っております。
楽しみにしております、Tさん。

ナラ柾目の食器棚

2021.09.06

「わたし、給食のおばさんなんですよ。」と歯切れのよい物言いで、現場からの打ち合わせの帰り道の途中まで送ってくださったYさん。
お土産に持たせてくださった枝豆がおいしそうで、食べ物のお話から器の話になって、柳宗悦さんのお話になった時に、「イマイさん、民藝館にぜひ行くと良いですよ。」とお勧めしてくださったのをきっかけに先日アキコと出掛けたんだっけなあ。
私たちの家具も「民藝」とまではいかなくても、「普段使いの美しい道具」とみんなに思ってもらえるように頑張らないとね、なんて思うのです。
そのYさんのところに土曜日にご依頼頂いていた食器棚の取付に出かけていました。
食器棚と玄関収納ということでかなりボリュームはありましたが、どうにかその日に終わるだろう、とみんなと相談していたら、うっかり、背の高い部材をいろいろと積み込み忘れてしまっていて・・。
その部材がないと家具の固定ができないよという部分もあったりして、「すみませんがYさんもう1日お時間を頂けますでしょうか。」ということで昨日もお邪魔させて頂いていたのでした。
作業は無事にきれいに終わりましたが、貴重な休日の2日間を頂いてしまいまして、申し訳ございません・・。

いつも納品の前日に、図面を見ながら打ち合わせをしているのですが、いけませんね・・。
再発しないように気持ちを引き締めないと。

Yさん、またあらためてご挨拶に伺わせて頂きます。
その時にはまた民藝のお話お聞かせ頂けたらうれしく思います。
よろしくお願い致します。

箱を干す

2021.09.03

細々ですが、希望される方には自宅をお見せしております。
キッチンや家具が使い込まれた様子を見てもらうためだったり、私たちの室内の印象を気に入って見て頂くためだったり、といろいろな希望をいただけてこうしていらしてくださるのはとてもありがたいことです。
感染対策はもちろんのことですが、少しはきれいに見て頂けるように掃除をしないとね。
すみません、ですので本日お休みを頂いておりました。
このところ雨降り続きですので、引き出しの中を掃除したら、少し風通しを良くしましょう。
写真は、張っていて少し余分が出てしまったというアカマツの床材と工房に余っていたスギ材を使って作ったカトラリーケース。
こうして床と並べると床が日焼けした様子がよく分かるのですが、写真だと、うーん、よく分かりませんね。

Nさん、明日お待ちしております。

森のキッチン

2021.09.13

「チェリーとステンレスのオーダーキッチン」

大磯 I様

design:Iさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:hideaki kawakami
painting:iku nogami

「先日はカタログの発送ありがとうございました
Instagram、ウェブサイトも拝見し、理想のキッチンに出会えた気がします!
予算が可能であれば、ぜひ制作を依頼したいと考えております。
暮らしの理想としまして、近い将来子供が独立し、夫婦2人の生活になるかと思います。
暮らしを小さくしコンパクトな住まいを計画しております。
持ち物を見直し、ミニマムな生活をしたいと考えております。
なにか収納などのアドバイスをいただけると助かります。

イメージしているキッチンのサイズは、【幅】シンク側、コンロ側ともに1800ミリ、【奥行】シンク側900ミリ、コンロ側600~650ミリ
形はⅡ型キッチンで、素材はチェリー材とステンレストップのバイブレーション仕上げ
コンロは、ハーマン「プラスドゥ」とコンビネーションガスオーブン
食洗機は、ミーレの60センチのもの
リビング側には収納を設けたいです
シンク下はオープン
コンロ側には吊り棚をつけたいです
シンク側には包丁、カトラリー、ボール類をしまいたいです
リビング側背面は食器をしまいたいです
コンロ側には鍋、大皿、トースターをしまいたいです
吊り棚にはコップ、食器をおきたいです

以上になります。
お見積もりよろしくお願い致します。
楽しみにしております。」

ステンレスバイブレーションとアメリカンチェリ―のセパレートキッチン
森の入り口のように緑あふれるキッチン。まだお引渡から2ヵ月も経っていない頃ですが、チェリーの色がほんのり濃くなっているように見えますね。
ステンレスバイブレーションとアメリカンチェリ―のセパレートキッチン
勝手口があって、回遊できるプランは良いです。Iさんのところにはお嬢さんがお一人いらっしゃるので、一緒にキッチンに立っても使いやすそうです。でも、Iさんが言うには、「娘はもうすぐ出て行っちゃうから、娘の部屋も特に決めていないんですよ。」そして、お嬢さんもそのようなお母さんの言葉にあっけらかんとした表情で、楽しそうなファミリーだ。
ステンレスバイブレーションとアメリカンチェリ―のセパレートキッチン
ちなみにシンクとコンロの間のワークスペースは900ミリ。一人で使うには十分な広さで、反対にお料理の先生からはもっと狭くしてほしいと言われたこともありました。「一歩踏み出すことなく、いろいろなワークトップにアクセスできるほうが便利なのよ。」って。また反対にご家族みんなでキッチンに立つという場合は、もっと広くしてくださいって言われますね。皆さんいろいろな暮らしかたがあっておもしろいのです。

たしか、Iさんの最初の問い合わせは電話だったような気がしますね。
そもそも私は電話が苦手なのです。
電話だと気軽に相談できてその場で答えてもらえるので、質問してくださる皆さんにとっては分かりやすいのだと思うのですが、私としてはその場でおおよその内容を伝えたり、費用をお伝えしたりするので、その場でパッと浮かぶものでもないので、いつもひやひやしてしまうのです。
あまり当てずっぽうな答えを伝えてしまっては元も子もないわけですし、かえって難しい作り方を伝えてしまったり余裕のないコストを伝えてしまって自分の首を絞めてしまうことになってはいけませんので、やっぱり電話は苦手なのでした。
ただ、Iさんの電話はそういう感じではなくて、キッチンをオーダーで作るとどんなことができるか、どんなことに気を付けると良いのか、というような内容だったように思えます。
そういうことでしたら、比較的落ち着いてお伝えすることができますね。

こういう形にすることができます、
こうするとこの部分はこうなってきます、
こういう形にするとこういう良い部分がありますが、こういう良くない部分も出てきちゃいます、

そういうキッチンの形の考え方をいろいろとお話して、Iさんも「なるほど。」といろいろな形を考えていく手がかりをつかんでくださって、「では、大まかなご要望がまとまりましたらメールをくださいね。」とお伝えしたのでした。
でも、「メールくださいね。」とお伝えしているのですが、その通りにメールくださる方はなかなか少なかったりしまして・・。
やはり、いろいろとお伝えすると考えることがたくさんあることが分かってくるので、そうなると戸惑いや迷いが出てきて、決して安い買い物ではないわけですし、家作りってそれだけじゃなくていろんなことを考えなくっちゃいけないわけで、キッチンってそこを使う方々にとっては家全体を考えることと同じくらいいろんな思いがあるので、といろいろな思いが交錯して思いとどまってしまう皆さんもいらっしゃっるのです。
だから、メールが届いたらうれしいなあ、と言うくらいのささやかな気持ちでおりましたら、Iさん、メールをお送りくださいました。
うれしいなあ。
そうして送ってきてくださったのが、最初の文章のようなメールです。
そのメールと一緒に「ものの後ろにある目に見えない温度」「ただいまが届く家」の写真も送ってくださったので、おおよそイメージは理解できました。

ステンレスバイブレーションとアメリカンチェリ―のセパレートキッチン
Iさんのご要望をまとめてスケッチにしたもの。これを基にお話を進めていけそうかどうかを検討していきます。

それでは、まず原案を考えてみましょう、ということでスケッチを描いてお送りしました。
かならず皆さんにお送りできるわけではないのですが、文章だと分かりづらい部分があったり、お時間を頂ける場合などの描いたほうがよさそうな場合に描いてお送りしてるのです。
図面よりも分かりやすくて短時間出掛けるので良いプレゼンテーションになりますね。

そのスケッチや御見積の内容を見て頂いて、少し細かい部分を検討してくださることに。
もし、おおよそこの内容でご依頼を頂ける場合はお話を進めるために図面を描くのですが、そのあとしばらくご連絡が止まってしまったこともあって、どうなったのかな‥と思っていたのでした。

ステンレスバイブレーションとアメリカンチェリ―のセパレートキッチン
シンクには洗剤ポケットを備えています。
ステンレスバイブレーションとアメリカンチェリ―のセパレートキッチン
今回のプランでは、いつものようにシンク下をオープンにするのではなく、2段の引き出しにしています。上段の引き出しは奥に排水口のトラップがあることと給排水管があるため、高さを低めにして奥行の小さい引き出しにしています。
ステンレスバイブレーションとアメリカンチェリ―のセパレートキッチン
下段は深めの引き出しです。まだ暮らし始めてそれほど経っていないので、しまわれているものもまばらですが、容量が大きいので調理道具もかなりの量がしまえます。

お話が変わりますが、ちょうどその年の初春に大きなイベントに出させて頂くことになっていたのです。
湘南T-SITEさんからお声掛け頂いて、「料理道具市」というイベントを開くにあたって、地元でキッチンを制作しているメーカーを探していたということで、私たちに相談をしてくださったのでした。
このような機会はなかなかないと思いましたので、さっそくお返事を送らせて頂いて、せっかく出るのならキッチンをそのまま持ち込もうと意気込んでいたのでした。
そして、キッチンを持ち込むなら以前から温めてきたショールーム改装計画をこの機会に実行しよう、とだんだんと気持ちが大きくなってきて、キッチン自体を新しく作ってしまおう、と企んでいたのでした・・。
それでせっかく作るなら、皆さんにとって分かりやすいキッチンとなるようによく使う素材で・・、とはならずに、私自身が作ってみたかった天然石を使った昔懐かしいおばあちゃんの家の流し台を思い起こすようなキッチンを作ろう、ということになったのでした。(祖父母の家は決して石造りのキッチンではなかったのですが、裏庭に向かう途中にある手洗いの小さな流し石でできていて、子供の時分には外で遊んではそこで良く手を洗っていたのでそのイメージなのかな‥。)
そうして、新たなキッチンが会場に運び込まれていよいよイベント当日。

ステンレスバイブレーションとアメリカンチェリ―のセパレートキッチン
シンク右の引き出し、1段目。シンクのサイズと、食洗機のサイズを考えると、残ったスペースはそれほど大きくないのですが、コンパクトな4段の引き出しにして使い勝手を良くしています。細長くて奥行きが深いと引き出して使う収納以外だと、物の出し入れが不便になりますので。
ステンレスバイブレーションとアメリカンチェリ―のセパレートキッチン
シンク右の引き出し、2段目。
ステンレスバイブレーションとアメリカンチェリ―のセパレートキッチン
シンク右の引き出し、3段目。
ステンレスバイブレーションとアメリカンチェリ―のセパレートキッチン
シンク右の引き出し、4段目。

いろんな人が見に来てくれると良いなとアキコと二人で会場に居りましたら、しばらくしてスラっとした女性がキッチンを見ていってくださって。 何となくキッチンが気になってくれたのかな、なんて思っておりましたら、けっこうじっくり見ていってくださってますね。
私はこう見えても体が大きいだけで人見知りですので、本当はこういう場は苦手だったりするもので、アキコが代わりに「こんにちは、私たちフリーハンドイマイと申します。このキッチンを作っているメーカーなのです。」って挨拶に行ってくれて。
頼りなくてすまないねえ・・。
しばらくするとアキコが戻ってきました。「ダイちゃん、今ね、私たちのところキッチンを検討しているIさんだって。」
あらまあ、Iさん。
そんな突然初日にいらしてくださるなんて思っていなかったものですから、うれしいやら照れくさいやら。
さっそくその場でいろいろとお話をさせて頂きます。
あの時のスケッチはもちろん工房に置きっぱなしですから、おぼろげな部分はありますが、いろいろと覚えている内容でお話していき、今度は具体的な打ち合わせも兼ねて工房にあるキッチンも見に来て下さることになりました。
そうして、より具体的な打ち合わせをさせて頂いて、ご依頼頂けることに決まりました。

ステンレスバイブレーションとアメリカンチェリ―のセパレートキッチン
シンク側のアイランドカウンターをダイニングから見た様子。上部をオープンの棚にしています。棚の高さはダイニングテーブルの高さに近い高さにしています。
ステンレスバイブレーションとアメリカンチェリ―のセパレートキッチン
カウンターの下がオープンになる場合、天板のすぐ下の板の納まりをどうしようか迷うのです。今回は、扉の厚み分下の板を引っ込める形にして印象鵜薄くすることにしました。よく天板を浮かせて見せる仕上げの場合は、下の板は扉面と揃えるようにするのですが、そういう納まりってなかなか難しくていつも悩むのです。
ステンレスバイブレーションとアメリカンチェリ―のセパレートキッチン
下は奥行内寸で、約19センチの戸棚になっています。扉は上面に掘り込みを入れてそこに手を掛けて開けるような形にしました。
ステンレスバイブレーションとアメリカンチェリ―のセパレートキッチン
こちら側に書類をしまいたい、というお話もよく聞きます。書類となるとA4サイズが一般的ですので、それがしまえるようにするとなると、カウンター自体の奥行が97センチくらい必要になります。今回Iさんの場合は写真のようにかごをうまく活用することで、食器以外に細かいものをしまう戸棚にしています。

そこで、さっそく図面を作成して具体的な内容の検討に入ります。
何をしまいたいか、しまうために必要なサイズはどのくらいか、キッチンは何人でどんな感じで使っていきたいか、そのために必要なスペースはどのくらいか、さらには組み込む機器をどれにするか、どこで購入するかなどなど具体的なお話を進めていきます。

そうそう、キッチンに組み込む機器ですが、私たちが用意することもできますが、機種によってはかなり割高になってしまうものもあるのです。
特に国産メーカーの機器はインターネット通販で購入する形が一番安く手に入ります。
なので、私たちとしては、そのルートによって機種の性能が変わるわけではありませんのでどのようなルートで用意して頂いても良いと考えております。
ただ、工務店さんとしてはそれがNGとおっしゃるところもあったりします。
やはり機器の故障などがあったりしたときにまず連絡をするのが工務店さんだったりするので、そういう諸々の管理を引き受ける代わりに機器自体も工務店さんが用意する、というところも多かったりします。
今回の工務店さんではどのような形でも大丈夫とおっしゃってくださったので、機器はIさんが直接手配することになりました。 直接って何をどう購入すればよいのか分からないという方も多いと思いますが、そのあたりのサポートは私たちが行ないますのでご安心くださいね。 ただ、品物によっては私達でもわからないものがあったりしますので、そういう時は購入前に打ち合わせしながら進めております。(特に輸入家電になると、アダプターが必要だったり、電気の容量が違ったりするものも多いので。)

ステンレスバイブレーションとアメリカンチェリ―のセパレートキッチン
コンロ側の様子。何というか木立のよう。細かい部分についてのお話ですが、一番左のサイドパネルはカウンターよりも高さを上げています。なぜそうしたかというと、冷蔵庫が置かれるので、何か物を落としてしまうと取り出しにくいので、転落防止で立ち上げているのです。

そのようにしてひと通り決まりましたら制作に取り掛かるのですが、キッチンは他の建築工事部分との関わりもあったりするので、現地で一度状況を確認して、現場監督さんに挨拶させて頂いてから制作に取り掛かっています。
その現場の確認は、あまり早い時期にお邪魔しても設置場所の状況が見えないので、いつもは新居が上棟してそれから大工さんが断熱材を入れて床を張っている頃にお邪魔させて頂くことが多いです。本当はもっと後の壁や天井のボードが張られている頃のほうがきちんと採寸もできて良いのですが、そのタイミングで確認に来て、それから制作となると間に合わないことが多いので、いつもは床を張っている最中のタイミングで伺っております。
そのタイミングがやってきましたので、さっそく伺わせて頂きました。
小田原厚木道路を西へ向かって大磯で降りて間もなくの場所がIさんのご新居の立つ場所。
大磯というと海のイメージが強いですが、このあたりは山の風が心地よくとてものんびりした空気が流れる気持ちのよい場所でした。
そのような立地に平屋を建てるなんてうらやましい。

ステンレスバイブレーションとアメリカンチェリ―のセパレートキッチン
メーカーさんはお勧めしていないのですが、こういうふうにフードの上に軽いものを置くことも。あまり重いものは危ないですから軽いものですよ。

さて、現場に着きましたが、今回は他の工事との関わりも少なく大工さんの壁絡みの部分もほとんどなかったので、現地で挨拶をさせて頂いてキッチンの設置時期の打ち合わせをしただけで大丈夫で、これで制作に取り掛かれますね。室内は平屋ということで少し天井の高い明るく気持ちのよい空間になっていて、仕上がりが今から楽しみな室内の印象でしたね。
平日でしたので、Iさんは同席頂けなかったのは残念ですが、現場監督さんと一緒に設計担当の方もいらしてくださったので、特に問題なく進められそうなことを確認して、いよいよ作り始めます。

ステンレスバイブレーションとアメリカンチェリ―のセパレートキッチン
おもしろいなあ、と思ったのが、調味料をしまう田王と思っていた引き出しは調味料が入れられていなくて、この上にいろいろとスパイス類が並んでいたこと。「その方がすぐに使いやすいですから。」とIさん。
ステンレスバイブレーションとアメリカンチェリ―のセパレートキッチン
その代わりに引き出しにはいろいろなものがきちんとしまわれていました。だからいつもよりも幅の広い引き出しにしていたのですね。
ステンレスバイブレーションとアメリカンチェリ―のセパレートキッチン
ここやスキレットやフライパン類がしまわれています。今回ガスオーブンを組込んでいるので、調理道具をしまうスペースが少なかったので、ここがうまく使われています。
ステンレスバイブレーションとアメリカンチェリ―のセパレートキッチン
一般的なベアリングタイプのスライドレールでも動きは十分滑らかなのですが、中にしまっているものが重いものだと地震の時に不意に開いちゃうこともあります。ソフトクローズレールの場合は閉まる側にバネが入っているのでそういう時も開きにくくなっています。また、その代わりに引き出すときに重くなってhしまうのかと品パイになる方もいらっしゃいますが、そのあたりも初動作が軽いレールを選定していますので、ストレスなく使うことができます。

今回はチェリー材を使います。
チェリーは色の変化が激しい材なので、家具として使い始めるとその変化が楽しめる樹種でもありますが、作っている時も気を付けないといけません。
板同士をちょっとずらして数日放置しておいただけでもくっきりと日焼けの境目が出てしまうくらい焼けるのが早い樹種ですので。
そのような色の淡いチェリー材を表面に使って製作していきます。
内部はいつものように掃除がしやすいポリエステル化粧板を使って作ります。 本当は内部もチェリー材を使って作れると一番良いのですが、板を作っていくコストとまた内部をこれから塗装していくと匂いがなかなか取れないことがあって、オイルの甘い香りが夏場だと結構強く出てきてしまうこともあるので、最近はもっぱら化粧板を使って作ることが多いです。

ステンレスバイブレーションとアメリカンチェリ―のセパレートキッチン
ガスコンロはノーリツのプラスドゥ「N3WF2KJTKST」。オーブンは、同じくノーリツのコンビネーションレンジ「NDR420EK」。私たちがキッチンを作る場合は、いろいろなメーカーの機器を組込むことができるのですが、よく分かりづらいのがコンロ周り。コンロとオーブンは同一メーカーのものじゃないと排熱口が合致しないので、組込むことができませんのでご注意くださいね。
ステンレスバイブレーションとアメリカンチェリ―のセパレートキッチン
ガスオーブン下部の納まり。家具の台輪部分とオーブンの台輪部分は特に高さを揃えないことが多いです。もちろん揃えることもできますが、オーブンのほうが高さ10センチほどになるので、それなら引き出しの容量が大きいほうが良い、とお考えの方が今のところは多いですね。
ステンレスバイブレーションとアメリカンチェリ―のセパレートキッチン
今回は、この台輪部分が引き出し収納になっているタイプ。

余談ですが、我が家はキッチンの外側をシナ材で作りまして、引き出しも合わせてシナ材で作っています。(ただ、調味料を置く部分だけはどうしても汚れるので化粧板を使っています。)
その下の引き出しを時々掃除するのですが、やはり無塗装ですので、細かいゴミやホコリが引っかかったり、濡れ布巾が滑りにくいので、多少掃除のしづらさは感じました。
ただ、液体をしまったり、鉄sのお鍋などを直接しまうのでなければ、無塗装の木の引き出しもそれほど汚れは付きにくいかな、というのが印象です。
この先はそういう化粧板以外の内部素材も仕上げのひとつとしてお話してみようかな。
形に関しては、コンパクトなセパレートキッチンでしたので、比較的順調に進みました。
少し手間がかかったのは、ダイニング側がオープンになっている部分。
扉や引き出しがついている場合と違って、内部はすっきり見えるので、できれば、見える板が少なくシンプルに見えるほうが美しいです。
ただ、このシンク側のアイランドキッチンをひとかたまりで作ってしまっては搬入が難しいので、シンク側、ダイニング側と分けて制作して、現地でつなぐような作りで考えるのですが、オープン部分に見える板を少なくするということは、つなぎ方を工夫しないとつなぎ目が変に見えてしまうのです。
そこでつなぐと隠れてしまう金物を仕込んだり、ひとかたまりにできそうな部分も板材のままばらしておいたりとひと手間かけてようやく完成。 あとは現場の準備が整ったという連絡を待つばかり。

ステンレスバイブレーションとアメリカンチェリ―のセパレートキッチン
コンロ横の引き出し、1段目左側。
ステンレスバイブレーションとアメリカンチェリ―のセパレートキッチン
コンロ横の引き出し、1段目右側。
ステンレスバイブレーションとアメリカンチェリ―のセパレートキッチン
コンロ横の引き出し、2段目。
ステンレスバイブレーションとアメリカンチェリ―のセパレートキッチン
コンロ側キッチン、3段目。
ステンレスバイブレーションとアメリカンチェリ―のセパレートキッチン
コンロ側キッチン、4段目。

しばらくして、大工さんの木工事が終わり間際になる頃に連絡を頂いていよいよ取付ですね。
今回は、コロナの影響でコンロ側の壁に張るタイルが引渡しまでに届かないようして、どんなタイルになるか分からなかったのですが、そのタイルの厚み分キッチンを壁から離して設置します。
レンジフードやオープンの吊り棚も同じような納まりで設置します。
シンク側はあらかじめ打ち合わせしていた位置に配管や電気配線も届いていたので、どうにかその日1日で機器類の据付まで完了。

次に現場に来るのは、Iさんが塗装をする時です。
そう、今回はコストダウンのため、そして将来的にオイル塗装のメンテナンスをしていくのに最初から自分たちで行なっておいた方がやりやすいから、ということでIさんご家族で塗装をするのです。
無事にご新居のお引渡が終わって、それからお引越しまでの数日間を利用して塗装します。
(塗装する時は扉や引き出しを外して、並べて塗装するので、リビングなどの広いスペースが必要になるので、工事期間中だとなかなか難しいのです。)
この時に初めてお会いするご主人にも一緒に塗装方法を説明させて頂いて、「このような感じで塗っていきます。」と実際に最初の1枚だけを塗ってみて、あとは慣れないと手間取る引き出しや扉の外し方がスムーズに行なえるように何度か試して頂いて、お二人でもスムーズにできそうな感じになってきましたので、はい、あとはIさん頑張ってくださいね!

それから、数日後。
「イマイ様、お世話になっております。
先日はありがとうございました。おかげさまで、無事塗装が終わりました。
我が家の顔となるキッチンが、素敵に完成しました。
今からお料理をするのがとても楽しみです!
本当にありがとうございました。」

そうして、お引越しも無事に終わって、2ヵ月ほどたった頃にあらためてキッチンの様子を拝見させて頂くためにお伺いしてきました。
本当はもう少し早く伺えればよかったのですが、コロナの影響でコンロの奥のタイルの入荷が遅れているということで、せっかく見に来て頂くのならタイルの施工も全て終わってから来てくださいね、と言われておりまして、このタイミングで伺わせて頂きました。
お邪魔します。
うん、とても良い感じです。
キッチンのそこかしこに緑があふれています。
そして、Iさんのところには2匹だったかな、猫が居りましてこの広々したLDKでゆったりと過ごしているようで、吊棚から冷蔵庫の上へと楽しそうに行き渡ってゆくのだそうです。
その様子が何とも森のなかを歩いているように思えまして。
窓の外もぐるっと緑に囲まれて心地良い空気で、部屋の中までその空気が漂っている気持ちのよい場所だったのです。

天板ステンレスバイブレーション
扉・前板チェリー板目突板
本体外側チェリー板目突板
本体内側ポリエステル化粧板
塗装オイル塗装仕上げ
キッチン仕上げ

チェリーとステンレスバイブレーションのセパレートキッチンと吊棚

価格:1,300,000円(制作費・塗装は施主様施工、設備機器費用は別)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は30,000円から、取付施工費は120,000円から)

ゆらり

2021.09.02

「アメリカンチェリーの食器棚のオーダー」

つきみ野 N様

design:Nさん
planning:daisuke imai
producer:masakane murakami
painting:hiroyuki kai

アメリカンチェリーの食器棚

キッチン越しにダイニングから見た食器棚の様子。吊戸棚の上の空間があることで軽やかな印象になっているように思えませんか。特にアメリカンチェリーは赤く色濃くなっていくので、重々しくないように見えるのはすてきです。


アメリカンチェリーの食器棚

全体の様子。冷蔵庫の上まで作り込みましたので、吊戸棚のボリュームが大きいのです。タイルの印象もとても良い具合です。

「初めまして。大和市のNと申します。
入居してちょうど10年になる我が家ですが、この度キッチンの収納棚を作りたいと考えていまして、以前よりホームページを拝見していたイマイさんにお願いしたいと思い連絡させて頂きました。「彩られていく」「すきになる」「身近なものから良い色を」「新しいおようふくでとてもうれしい」等がイメージに近く、ごちゃごちゃしていますが図も描いてみました。
ダイニングテーブルに合わせて、チェリー材を考えています。
また、オーブンレンジ等のすぐ上の棚は、アンティーク調の波のガラスを入れたいです。この懐かしい感じのガラスがとても好きなので、こだわりたいところなんです。
根菜バスケットや、お皿を置ける可動式トレーなども検討したいです。
よろしくお願い致します。」

ynk024

Nさんから頂いたスケッチ。とても良く描きこまれていて分かりやすいです。こういうふうにお送り頂けると、これは問題なくできること、これは工夫すればできること、これは難しいかもと判断しながら見積できるので大助かりです。

Nさんからメールを頂きました。
いろいろと書き込んでくださっていて思いが伝わってきますね。
家具のご相談を頂ける時に、「スケッチは苦手で・・。」と言われてしまうことがあるのですが、もし可能でしたら、どんな形でも良いのでNさんのようにいろいろと希望を描いて頂けるととても助かります。
例えば数字を足していくと寸法が合わなかったり、とても大きな引き出しを描いちゃっていたり、シンクが大きすぎてキッチンに納まらなかったり、と細かい部分が合っていなくても全然良いのです。
どんな形を思っているのかが文章よりも絵で書いてもらった方がとてもよく伝わります。
その上で私のほうからいろいろと質問させて頂きながら形や費用を考えていきますので、まずはその取っ掛かりとして、このようなスケッチが頂けるととてもありがたいのです。

アメリカンチェリーの食器棚

それをもとに私のほうでもスケッチを描きました。家具を使いたい人と家具を作る人がイメージを共有させることが大切です。

さっそくスケッチを拝見させて頂いて、確認したい部分をメールで質問させて頂き、おおよそ内容が把握できたところでまずは制作するために掛かる費用を概算でお伝えします。

アメリカンチェリーの食器棚

吊戸棚の様子。今回は、戸棚の内寸の奥行を400ミリにするということで、外寸法で441ミリで作っています。冷蔵の上の戸棚もそれに合わせて同じ奥行で。


アメリカンチェリーの食器棚

中は白いポリエステル化粧板です。できれば内部も同じチェリーの突板で作れると良いのでしょうけれど、コストが高くなってしまうことと、オイル塗装にしてもウレタン塗装にしても、なかなか塗料の匂いがこもってしまうことがありますので、化粧板で仕上げることが多いのです。

余談ですが・・・。
よく「どこまでを無料で行なって頂けるのでしょうか。」というご質問を頂くのですが、この概算の金額をお知らせするところまでを無料で行なっております。
このあとにその金額をご覧頂いて、何回かメールをやり取りするところももちろん無料ですが、具体的に図面を描いて形を考えていくところからは、家具制作のご依頼をきちんと頂いてから進めることにしております。
と言いますのも、以前にも書いたことがあるのですが、一生懸命考えた図面をそのままほかの家具屋さんで制作されていたことがありまして・・、たまたま知っている家具屋さんでそのウェブサイトを見ていたら、あの時に書いた図面の通りの形の家具の写真が出ていて、ちょっと淋しくなったのです。
もちろんその家具屋さんは私たちが考えた形というのは知らないまま制作をされたのだと思うのですが、そういうことってやっぱり淋しいのです。
反対に私たちのところにも他の家具屋さんが描いてくださった図面を持って相談に来られる方もいらっしゃいます。
こういう建築の世界は分かりにくい部分も多くありますので、もちろんその人自身も他の家具屋さんが描いてくださった図面を持ち込むこと自体が良いことなのか良くないことなのかの判断は難しいと思います。
ただ言えることはその家具屋さんがその人のことを思って描いた図面でしょうから、それをそのまま使わせて頂くのは、あまり良くないことだと思いますので、そのような場合は「その形を参考に」ということで図面を拝見させて頂いてその人自身の形を考えていくためのきっかけとして参考にさせて頂いております。
そこから私たちで実現できる形に変えていくことでその人自身、また私たち自分のオリジナルの形を作るようにしております。
今回、Nさんはそのようなことなく、今まで胸に秘めていた思いをすべてスケッチで知らせてくださいました。

アメリカンチェリーの食器棚

こちらがNさん念願の格子扉。ガラスはウォーターテクスチャーという水が流れるようなラインが特長のガラスを使っています。


アメリカンチェリーの食器棚

格子扉は上に向かって開く扉です。ちょっと面白いのはステーが付くので、上段の可動棚の奥行を狭くしている部分。高さの違う収納のしかたができるのは、かえって使い勝手が良いかも。ステーはどこでも止まるフリーストップステーを使っています。ソフトダウンステーのようにゆっくり閉まるものではないのですが、初動作の軽さが大変好評で、特に女性が毎日開け閉めすることが多い食器棚ですので、「疲れなくて良いです。」という声を皆さんから頂いております。


アメリカンチェリーの食器棚

高さの異なる食器をしまう様子。見せ方がとても丁寧に見えて美しいのです。

お話を戻しまして、Nさんに概算の費用を見て頂いて、そこから何度かメールでやり取りして、おおよその予算の感じをNさんにご理解頂きまして、制作のご依頼を頂けることになりました。
そのタイミングでNさんが工房までいらしてくださいました。
以前から私たちのウェブサイトをご覧くださっていたということで、いろいろな形ができることをあらためてご説明しますが、イメージにぶれがありません。
すばらしい。
こういうお話合いって、お話しながら思い描いていた形が実は自分の暮らしかたと合っていないと気づくことも多くあったりするのですが、さすがNさん。
ただ、ひとつ迷っていたのは、ガラスを入れる戸を開き扉にするか、引き戸にするか・。
最初は使い勝手を考えて開けっぱなしにできる引き戸にしようと考えていたのです。ただ、ガラスもユラユラとした昔よく見たようなガラスをイメージしていたので、和の印象に近づきすぎてしまうのではないかという思いもあり・・。
イメージとしてはフレンチカントリー(というのでしょうか。)のイメージがあって、細い枠の印象とガラスがそのイメージを大きく担うことになりそうです。
ひとまずその場は引き戸でお話を進めることになりまして、続いて頂いた細かなご要望に合わせて図面を作成してきます。
寸法が分かるとしまいたいものがしまえるかどうかも分かってくるので、よりイメージが具体化されてきますね。
そうして図面を見て頂きまして、さらに詳細な部分について打ち合わせするために今度はNさんのお宅にお伺いします。

アメリカンチェリーの食器棚

カウンターより下の様子。まず一番左はゴミ箱スペースで、両開き式のフタになっているケユカのアロッツを使っています。その上は引き出しなのですが、最上段はスライドテーブルになっているのです。

Nさんのお住まいはつきみ野。まだアキコと結婚する前はここから少し行ったところが彼女の実家でしたので、このあたりはよく通りました。美味しいケーキ屋さんがあったり、焼肉屋さんがあったりしてね、懐かしいのですよ。そんなことを考えながら、Nさんのところに到着。

アメリカンチェリーの食器棚

2段とも引き出すとこのような感じ。最上段のスライドテーブルはちょっとした調理作業に使えるようにというNさんのご要望。


アメリカンチェリーの食器棚

下段はカトラリー用の引き出しになっています。こうやってスライドテーブルと並べてみると、スライドテーブルはチェリー材で仕上げて、引き出しは白いポリエステル化粧板で仕上げている、という違いがあります。本当は引き出しも全てチェリー材で作れると良いのですが、板作りからしなければならないことと、塗装もし投げればならないことを考えると、けっこうコストが上がってしまうので、基本的にしまっていることが前提の引き出しはコストを抑えて白い素材で、引き出して使われることが多いという前提のスライドテーブルは外と同じチェリー材で、という分け方をしています。

キッチンは1階ということで搬入は特に問題なく行なえそうなことが分かりまして、さっそくそれから設置場所を拝見させて頂き、さらにNさんの暮らしかたにこの形が良いかどうかをいろいろと打ち合わせしていきます。冷蔵庫のスペースの割付(コンセントの位置がちょっとネックでした)やタイルを張る部分の印象、システムキッチンとこれから作る食器棚との距離など、思いつく限りの細かい部分について打ち合わせしていきます。
この「家具設置場所が1階」という状況が意外に私たちにとっての作業のしやすさを分ける要因でもあったります。
一般的に2階建て以上が多くなっている戸建住宅ですが、明るい場所で過ごしたい、ということで2階にリビングダイニングキッチンを持ってくるご家庭は比較的多かったりします。また、2階に上がる階段はぐるりと回っている階段のお宅も多かったりします。
そうなると、階段を使って2階に大きな家具を運び入れるのはなかなか難しいのです。
そこで、その場合はバルコニーから荷揚げするのですが、そうなるといつもよりも1人以上人員を増やす費用があったり、お天気が悪いと荷揚げができなかったり、お天気が良くて人手も十分あるのに重すぎて上がらない、なんていう場合もあったりします。
先日はちょっと大きめの食器棚を荷揚げしようと思ったら、最近のソフトクローズするスライドレールって結構重くて、それが引き出し10杯分くらいについていると、ロープで引き揚げることが想定以上に大変だったのでした。それで、急きょその場でレールをすべて外して無事に揚げたりしたことがありました。
それから、キッチンで時々あるのが、クォーツストーンなどの重い石の天板やステンレスでも5ミリくらいの分厚い天板。作ることはできてもその場所に届けられない状況も時々あるのです。
でも、2階のほうが温かくて気持ち良いですからね、そういう間取りになるのはとても自然なことなのですが。
そういうわけで今回はすんなり進めることができそうでう。

すんなり、と思っているなかでも、ちょっと手間取りそうに思えたのは、すでにNさんご家族がここにお住まいなので、冷蔵庫の上の戸棚をつける時に冷蔵庫を大きく動かしづらいとくらいかな。
今回のような形の場合、右も左も壁にまできっちり作り込むわけですから、その間口ピッタリで家具を作るというわけにはいきません。
むかし壁~壁ピッタリで作ったら(と言っても3ミリほどは小さくしておきますが)、壁の奥のほうが狭くなっていて、途中でつっかえてしまって、寸法を詰めないといけないこともあったりしましたので。
ですので、最近はだいたい間口の10ミリ~15ミリくらいは小さく家具を作っておきます。
(時には、ピタピタに近い寸法で作ることもありますが、それは自分自身できちんと採寸して、問題ないと思えた場合だけにしています。)
そして、家具設置後にその隙間が空いた部分を同じ仕上げ材で埋めていくのです。
今回の場合は、左にその隙間を作ってしまうとダイニングから丸見えだし、食器棚の天板が壁と大きく離れてしまうとみっともなくなっちゃいます。
そうなると、必然的に冷蔵庫の上の戸棚のあたりに隙間を持ってきて埋めることになるのですが、今回のNさんの形はまだよかったのですが、「冷蔵庫の上だと奥行きが深い戸棚にしないと使いにくい」という考え方もあったりするので、そういう場合に奥行き600ミリくらいの戸棚を作ることもあります。(吊戸棚は奥行がありすぎるとよけいに手が届かなくなるので、かえって使いにくくなるということもあり、最近はあまり奥行を深くしないことが多くなりました。)
で、奥行きが深い戸棚の隙間を埋める場合、冷蔵庫があると奥の方が手が届かないのです。
そこで冷蔵庫を手前に出したりしながら作業していくのですが、すでに食器棚が設置された後でこの作業をしていくので、冷蔵庫の奥に入っていくスペース的な余裕がなかったりしてなかなか大変なのです。
でも、今回は冷蔵庫上の戸棚の奥行は狭く作るので、それほど苦労せずに作業できそうです。

アメリカンチェリーの食器棚

中央列の1段目の引き出しの様子。


アメリカンチェリーの食器棚

中央列の2段目の引き出しの様子。


アメリカンチェリーの食器棚

中央列の3段目の引き出しの様子。


アメリカンチェリーの食器棚

中央列の4段目の引き出しの様子。引き出しは使い勝手を優先させる形でなければ、上から下に向かって深くなっている形が美しいと思っておりまして、一番下はこのように20センチくらいの深さにすることが多いです。

それから、忘れてはいけないのがタイルです。
今回吊戸棚とカウンターの間の壁にタイルを張りたい、というものNさんの強いご要望。
少しグレーでツヤのあまりないもの、もしくは揺らいで光っている様子が分散してキラキラしすぎないものなどといろいろと考えていて、さらに貼り方も最初はヘリンボーン柄に張っていこうと考えておりました。
ただ、お話を進めていくうちにタイルのカットする面とそのまま使用する面の木口の見え方が気になってしまうことや、普通の貼りかたよりも手間が増えることなどを考えて、今回は馬貼りで仕上げることにしました。
色もとても良い色が見つかりましたので、シンプルな貼りかたでとても良く映えると思うのです。
そして、格子扉の部分。
引き戸のプランから、今度は素材をチェリー材ではなく、アイアンで作る引き戸にする方向に話が広がっていって、最終的に見た目をシンプルにしてガラスが引き立つようにすることと、コストを抑えることを考えて、上に開く形になったのでした。

アメリカンチェリーの食器棚

こちらは右列の1段目の引き出しの様子。


アメリカンチェリーの食器棚

こちらは右列の2段目の引き出しの様子。


アメリカンチェリーの食器棚

こちらは右列の3段目の引き出しの様子。


アメリカンチェリーの食器棚

右列位置b何下は根菜をしまうためのステンレスバスケットを備えました。もちろんバスケットガイドは同じチェリー材で制作して、スライドして使えるようにしています。このアトムのバスケットはすでに廃番になっているので、私たちが持っているあと5個で在庫が無くなっちゃうのですが、そのあとはオリジナルサイズで作って頂ける予定ですのでご安心ください。

そういう諸々のことなども確認しまして、いよいよ制作ですね。
今回は作りはそれほど複雑なものではないのですが、(と、言いましても格子扉のような複雑な作りはあるのですが、)最近あまりやらなかった加工を取り入れることにしました。
それは、冷蔵庫のコンセントを戸棚で内包するという形です。
こういうイレギュラーな形にすると、何かあったら対応しづらくなるといけないと思って、最近はなるべくシンプルな構造を心がけているのですが、今回ばかりは家具全体の印象を優先させてこの方法を採ることに。
というものコンセントを隠さないようにすると吊戸棚全体を上にずらさないといけなくなるので、せっかく吊戸棚の上と天井の間を開けて軽い印象を出したのが薄れてしまうのです。
また、吊戸棚を上にあげることに伴って、格子扉も上にあげる、もしくは高さを延ばすと野暮ったくなっちゃう。
コンセント自体は半ば隠れても、何かあったら器具が交換できるようにしておけば大丈夫なので、内包するようなデザインにすることにしたのです。

アメリカンチェリーの食器棚

吊戸棚の背板と冷蔵庫のコンセントの関わり部分。このようにすることで、吊戸棚のサイズを変えることなく、コンセントの抜き差しに支障が出ないような形にできました。

こうして、すべてうまく作ることができ、設置工事も無事に終わりました。
さて、ここからはいつも内装工事でお世話になっているkotiの伊藤さんと交代してタイルを施工してもらいまして、無事に施工完了。

アメリカンチェリーの食器棚

最近はこの真鍮磨き仕上げのハンドルを使うことが多いです。子のハンドルはお客様から教えてもらってメーカーさんのものでサイズは直径8ミリという絶妙なサイズです。10ミリだと少し太く感じて、6ミリや7ミリという細くてとても美しいサイズ感のものもあるのですが、よほど堅い木じゃないと使っているうちにがたつくのです。基本的に木は家具として完成した後も調湿するので、ハンドルはわずかに緩むことが多いのです。これは無垢材も合板も同じです。そうした場合はネジを増し締めすればよいのですが、ナラのように硬い木なら大丈夫かもしれませんが、合板やそれほど硬くない無垢材の場合は増し締めしすぎると、ハンドルの直径が細いから木のほうにハンドルがめり込んでしまうことがあるのです。めり込んじゃうと、もういくら締めてもだめになってしまうので、あまり細いハンドルはそのあたりのリスクを考慮頂いて使っています。また、千沙尚子さんがいるご家庭の場合、ハンドルを引く時に使うだけではなくて、なぜか上からグッと体重を掛けちゃうこともあったりします。そうなると、同様に木の中にめり込んじゃうので、もうガタついちゃうのです。8ミリだと幾分太いからそういった心配が少ないので、今はこの8ミリを主に使っているのです。

そのあと、うっかり工事の時に床に敷いていた毛布を置き忘れてしまいまして、それを引き取りにお伺いするタイミングでキッチンの使っている様子を拝見させて頂きました。
チェリーの木目の印象も、ガラスとタイルのゆらりとした具合も全てがとても心地よく整っていました。
また、1年も経つと色の淡いチェリーが少しずつ色濃く、ツヤも出てきます。
その時からがまた楽しみですね。

「イマイ様
すてきな食器棚を作って頂き、本当にありがとうございました。
想像していた以上に綺麗な仕上がりで、家族全員とても喜んでいます。
格子のガラス戸も大大大満足です!
写真、掲載してくださるんですね〜
食器も揃ってなくて恥ずかしいですが楽しみにしております(笑)
では今後ともよろしくお願いします。」

ステンドグラスを使ったアメリカンチェリーの食器棚

価格:830,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は13,000円から、取付施工費は50,000円から)