朝が来ました。

2019.10.13

結局自分では何もできないって少し諦めながら、日が沈んでから強くなった雨風が次第に弱まるなか、展示室のガラス越しに外の様子を眺めていたのです。

15時から始まって21時頃まで頑張れば大丈夫って言い聞かせて、一人工房におりました。
心の拠りどころって、家族だったり、家だったりするのでしょうけれど、私の中には長年通い続けたこの工房も拠りどころのひとつで、アイも居るし心配なのでした。
アキコや子供たちには心配をかけるけれど、「工房を見てくるね。」と言って、まだ降り方の弱いうちから家を出たのでした。
その時間になるまでは、「ちょっと雨風が強いなあ。」と思える程度で、時間を迎えても前回の台風を見ていたからか、それほど危なさを感じては居りませんでした。
アイもさすがに外に出ようとは思わないらしく、ただ風の音が怖かったようで、いつも怖い時に逃げ込んでしまうスピーカーの下で居眠りをしていたのでした。
危ぶんでいた倉庫の屋根もしっかりしていて、飛ぶ気配もなかったし、倉庫の雨漏りも大きなものになっていなくて、人も車のも通らない裏通りを眺めては工房の周りを見回しながら、ただただ時間が過ぎていくのを待っておりました。
その少し前にアキコたちは「念のためにここを出るね。」と女子3人で相模原のバアバの家に向かっていたので、何となく私とアイと男子2人きりの世界でポツンとした気持ちだったのです。
夜21時ごろの雨風が一番強い時にふとアイが居ないことに気がついて、ぐるりと展示室を見て回っていたら、玄関で足を組んで座り込んでいました。
「ねえねえ、ここから水が入ってきているよ。」と不思議そうにこちらを見ます。
展示室の玄関はちょうど外が吹きさらしになっているので、強い南風が雨粒を連れてサッシの隙間から入り込んでくるのでした。
ビュウビュウ風が戸を叩くたびにサッシの隙間の水がピシャピシャと踊るように水滴が跳ねあがってはレッドシダーの玄関の床に水たまりを作っていきます。
「ああ、いけないね。」と言いながら、バケツと水を持ってきて、吹いては入り込んでくる雨粒と格闘しているうちにふと風がやみました。
本当にふと思ったらピタッと風がやんでいたのでした。
雨は小降りでもうそこに怖さはなくって、アイも水たまりを見飽きたのか、嵐が過ぎていったのが分かったのか、おなかが減ったようでニャアと鳴きました。
ああ、良かったと思った先に、放流を行なうという通知が携帯電話に流れたのでした。
屋根が飛ぶのが心配だったわけですが、川の水位も心配だった私は、見回りする間にパソコンに移る水位をずっと見つめていました。
嵐が過ぎたら家に帰ろうと思っていたのですが、この放流の知らせが来て、ああ、もうダメかなって気持になってしまったのでした。
予想水位を見ると、自宅の北では堤防をあっという間に越えてしまい、自宅の南でも堤防ギリギリというところでした。
予想では真夜中に水がやってくるという。
水が来ちゃったらどうしようもないのですが、すでに家具は作業台の上にみんなで載せておいたので、床上40センチくらいまでなら大丈夫。でも、材料全てを上に上げるのは困難だったから、使えなくなっちゃうかな・・。
自宅は来月みんなに見てもらおうと思っていたのだけれど、ちょっと無理かな・・。
でも、きっと川は持ってくれるはず。
なんて気持ちがオロオロしながら、その時間を迎えたのでした。
そして大変ありがたいことに、川は持ってくれて、日付が変わる少し前から少しずつ予想水位が下がっていったのでした。
良かった。
夜中に無事帰宅し、女子3人とは会えないまま、朝を迎えてまたこうしてここに居るわけですが、アイがここに無事座っていられることに大変感謝しております。