お似合い

「ホワイト塗装とホワイトオークの食器棚のオーダー」

松戸 T様

design:Tさん
planning:daisuke imai
producer:kouhei kobayashi
painting:haraki tosou

ホワイト塗装とナラ材を使ったキッチンカップボード

リビングから見た全体の様子。奥の食器棚はもともと備え付けられていたもので、白い吊戸棚はそのままにして、下の収納部分を使いやすく改装して今回のカップボードと印象を揃えています。


ホワイト塗装とナラ材を使ったキッチンカップボード

今回の主役の家具。写真のずっと奥にどっしり構えている家具がヒュルスタのキャビネット。青の白い塗装仕上げとホワイトオークの印象に寄せたいということお似合いの形になりました。


ホワイト塗装とナラ材を使ったキッチンカップボード

この吊戸棚はタイルの凹凸をうまくバランスを取ってタイル目地から壁に向かってネジで固定して、下のカップボードはいつでも動かせるように置くだけにしています。

instagramなどで私たちの家具を見てくださっていたTさん。いよいよ食器が増えてきてしまったということで、食器棚の制作について相談したいというメールをくださったのでした。
それでメールのやり取りをさせて頂きまして、そのなかで出てきたご要望が今お持ちの家具に合わせた印象で制作したい、というお話が出てきました。
今までにも、せっかくオーダーですので持っている家具に合わせたい、というお話を頂くことは多かったのですが、ここ最近はそのようなお話が少なかったのでした。
最近はどちらかというと、それぞれの木の表情そのままを楽しみたい、と考えの方々が多くて、どちらかというと、他の家具に樹種や色を合わせることもなく、その時の巡り会わせを楽しむというような考え方が多かったのでした。
ただ、ある需要が減って別の需要が増えてきた、というわけではなく、とある需要が印象良くて他方が良くない、というわけでもなく、私たちの周りだけで起きている流れがたまたま最近は木の表情を楽しみたい、という方が多かったということなのだと思うのですが。
私としては、いろいろな形を在り方を知りたいので、いまだに自分の思う家具はこれっ!ていうスタイルが確立していないまま、皆さんの望む形を作らせて頂くことで私自身の糧とさせてもらっているのです。
なので、こういう形のご相談は、ああ久しぶりだなあ、久しぶりにドキドキしちゃうなあ、と思ったわけです。

合わせて作るのいうのは、なかなか緊張するもので、それはただの家具ではなくて今までその人が使ってきた時間が入っているわけで、色や風合いが見ているそのものとイメージしているものが合致しづらい時もあるのです。
木で作る家具は、同じ樹種を選べば必ず同じ色柄のものが揃うというわけではありませんので、あれこれ頭を悩ませながら表情を選んで、色もよく合うように何度も試し塗りして・・、と「上質なオーク材を熟練の職人の技術で生まれる・・」というようなきれいな言葉のようにできあがっていくものではなくて、汗水垂らしてドキドキしながら作るわけですので、やっぱり同じ印象のものに仕上げるって難しいなあ、といつも思うわけです。

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こちらが家具の形を考える時の手掛かりに描いたスケッチです。

今回、その合わせたいと言われた家具はドイツのヒュルスタ社のリビングボードで、使い始めて数年が経っているものでした。天板や側板といったフレームがホワイトオークの無垢材と突板でできていて、素地に近い印象のクリア塗装仕上げ。ただ、使い込まれてすこし色褪せて鵜路が抜けた印象になっています。引き出しや引き戸はツヤを落として白く塗装された仕上がり。
この印象に近づけたい、ということでした。

ホワイト塗装とナラ材を使ったキッチンカップボード

吊戸棚の引き戸は化粧板ではなく、白く塗りつぶした塗装仕上げです。角の丸みが塗り包むことができるので、とても柔らかく、優しい印象にできるのです。


ホワイト塗装とナラ材を使ったキッチンカップボード

小さな吊戸棚なのですが、Tさん、市販の高さを調整するアイテムなどを使ってとても機能的にきれいに収納されています。もっと大きな吊戸棚にすればたくさん入るのでしょうけれど、使いにくい高さになるよりは、使いやすい高さにだけしまえる方が無駄なく使いやすいという考えです。

ナラ材というよりは大柄のホワイトオークで、ランダムに配されて接ぎ合わされています。このオークの感じは合わせられそうです。
色も近い印象に仕上げられそうですが、無理に経年変化の印象を無理に色を作って合わせるのは良くないので、このままクリア塗装で仕上げることにします。
もちろん、最初から古色仕上げにすることもできるのできますが、やはりどこか人工的な印象は生まれてしまいます。
ここだけはその作り出す印象にしたくなくて、経年変化で生まれるのを待って頂きたいというお話をさせて頂いて、Tさんもその考え方を快く受け入れてくださって、いよいよ素材はまとまったのでした。

ホワイト塗装とナラ材を使ったキッチンカップボード

こちらの下のキャビネットも引き戸を組込んで、リビング寄りに物が取り出しやすいように引き出しを設けるレイアウトにしています。

それでデザインをどうするかというと、イメージしている形を雑誌に載っている家具の写真などで見せて頂いたのですが、どこか和風な印象。
ヒュルスタの欧風なモダンな印象にどう取り込んでいきましょう。
それをTさんとあれこれ相談しながら、印象をまとめていきます。
そして、和風になりすぎない印象の形にまとまったのでした。

ホワイト塗装とナラ材を使ったキッチンカップボード

引き出しの様子。Tさん、いろいろなところで集めてきた箸置きをたくさんお持ちです。「それをね、うまくしまえるような小箱を作って頂けますか。」ということで、シナの無垢材でトレイのような箱を作りました。


ホワイト塗装とナラ材を使ったキッチンカップボード

小箱を外すと、もちろん下にも箸置き。


ホワイト塗装とナラ材を使ったキッチンカップボード

引き出しの様子。深めの引き出しはお皿を立てて収納。


ホワイト塗装とナラ材を使ったキッチンカップボード

引き出しの様子。


ホワイト塗装とナラ材を使ったキッチンカップボード

引き出しの様子。

そして、この時にお話が出たのがキッチンの奥にある作り付けの食器棚。
このマンションに入った時に販売会社さんに作ってもらったものなのだそうですが、おそらく今回作らせて頂くカップボードを置くと、その作り付けの食器棚の印象が浮いて見えてしまいそうなことが気になったのです。
また、昔ながらの食器棚だったので、引き出しがあまりついていない扉ばかりの食器棚でしたので、下の奥のものが取り出しにくい形でした。

そこでお話を煮詰めていく中で、この食器棚も使いやすいものにしましょう、ということになり、表面材をカップボードと揃えて、扉を引き出しに作り替え、さらにはゴミ箱スペースの上も使いやすいように引き出しを追加することにして、キッチン周りを使いやすくきれいに整えることができたのでした。

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突きあたりの食器棚は、もともと扉になっていたのですが、下の方のものが取り出しにくくてきちんと使いきれていないままだったのを、扉を取り外して、引き出しを新設し、正面材をカップボードと揃えてナラ材で作ったのです。

こうして、ちょうど良い間隔で離れた食器棚とカップボードと、リビングに置かれたヒュルスタのボードというそれぞれの点が似合う色と素材でまとまったおかげで、点が遷都してつながり、線と線が結ばれて、ひとつの温かみのある空間にまとまりました。

「食器棚と吊戸棚の設置、そして既存の食器棚の引き出しの取り換えと、大変お世話になりました。
食器棚は、イメージ通りの仕上がりで、使い勝手もよい感じです!
既存の食器棚の引き出しの取り換えで、リビングからのキッチンの風景に統一感ができました。
ありがとうございました。
新しい食器棚と吊戸棚を眺めながら、家族と楽しく食事ができそうです!
頑張って!(笑)収納出来ずに箱に入ったままの食器等をキレイに片付けたら ご連絡しますので、今少しお待ちください。」

Tさん、ありがとうございました。

そう、あの時、こういうお話も出ていたのです。

「ところで、Tさん。あと私が気になっているのは、ヒュルスタの隣にある少し大きな白いキャビネットなのです。」
「そうですね、私もなんとなくそこの印象をまとめたいなって思っているんですよ‥。」

そのお話はまた今度です。

ホワイト塗装とホワイトオークの食器棚

価格:710,000円(制作費・塗装費)

既存の食器棚の表面材交換など

価格:250,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は50,000円から、取付施工費は70,000円から)

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