ダイニングで使う椅子のあれこれ
2022.03.08
ダイニングを考える時に迷うものに椅子があります。
一般的にはダイニングチェアという背もたれやひじ掛けのある椅子に座って食事をすることが多いですね。
そして、きちんとした姿勢で食事できる椅子がダイニングチェアだと考えております。
テーブルに肘を置いた時に背筋が丸まらないくらいのテーブルトップから座面までの距離感があって、座面は水平で、それほど沈み込みはないクッション性があって、かつ適度にリクライニングできるように、背もたれは座面から95度~100度くらいの角度が付いた椅子が座りやすいのではないかと考えております。
また、基本的に長時間座ることを想定しないので、その背もたれは頭や肩までカバーする高さは必要なく、肩甲骨の下あたりから腰にフィットするくらいの高さの背もたれがあれば十分と考えております。
脚は地面にぴったりつく方が望ましいですが、赤ちゃんや幼い子供たち、そしてハイカウンターに座って食事をする時などは足をぶらつかせることもあるので、以外と脚はピタッとついていなくても食事は楽しめるのかもしれませんね。
ただ、これは定義ではなくて、あくまでも私が今まで作ってきた中から感じた思いであります。
良く私の工房に訪れる皆さんが椅子に座った時に、「イマイさん、椅子がとても軽いのですね。」と言われるのです。
椅子を考える時になるべく最小限の部材でシンプルに作りたいと思うといつの間にかそのような形になっているのですが、昔のダイニングチェアを見ると、どっしり頑丈な材(硬い材は重いのです。)を使って何があってもびくともしないような作りの椅子はやはり重くて、座る際に椅子を引くのにも両手で引かないと動かしづらいものもありました。
ダイニングまわりは食事以外でも勉強したり、作業をしたりとテーブルがワークスペースに変わることが多いので、汚れやすい場所だったりもします。
そういう時に気軽に(できれば女性が片手で)持てるくらいの重量のものじゃないと掃除がしづらいのではないかと考えております。
我が家ではテーブルの周りを掃除する時は椅子をひっくり返してテーブルに上げてしまうような習慣があるので、重いチェアだとそう言う使い方ができなくて不便に感じてしまいそうです。
また、ひじ掛けが付いたチェアも時々作らせて頂きますが、最近は住空間の広さも関係しているかもしれませんが、もっぱらひじ掛け無しのものが多いです。
椅子はテーブルにきちんとしまえるものが好まれて、場合によっては前述のように背もたれも腰の高さくらいまで低くして、背もたれまできちんとテーブルに下にしまいたい、という方もいらっしゃいます。
さらにはひじ掛けがあると、大きく椅子を引かないと座れないため、その座る時の動作が大きくなることも、ひじ掛けが遠慮される要因の一つかもしれません。
では、もっと簡易的な椅子を使う方が気軽に食事が採れるのでしょうか。
そういう思いの中で時々お話を頂くのはベンチです。
ベンチに座って食事が採れるほうが大きさはあっても形がシンプルだから掃除もしやすそう、というお話も頂きます。
以前は我が家も2脚はダイニングチェアで、反対面は2人掛けのベンチを使っていたこともありました。
そういう生活をしていて何を思うかというと、子供たちが小さいうちはベンチも良いかな、と思えたことでした。
ベンチは基本的には背もたれを持たない前からも後ろからも、そして横からも座ることができる長椅子だと思っています。
その分、チェア2脚を並べるよりもシンプルに作れるので、軽く作れば動かすのも不便はなく掃除もしやすいと思えるのですが、使っていて気になったのは、同じ時間を共有できないと使いにくいかな、ということでした。
私の子どもたちは4歳の年の差はありましたが、小さな時の時間の過ごしかたは似たような感じです。
また二人が一緒に過ごす時間も多い。
ですので、同じタイミングでご飯を食べて、遊んで、勉強して、とサイクルが近いので、ベンチに不便はありませんでした。
そんな子供たちもだんだんと成長していくと、お互いの時間が大切になってきます。おのずと食事のタイミング外れなくても食事に掛ける時間が変わってきたり、そのあとテーブルで過ごす時間も変わってきます。食事自体もお替わりしたい場合もあれば、食事を控えたい場合もあってその椅子に座っている時間自体、その人によって大きく変わってきます。
そうなってくると、どちらかがそのベンチから動きたい時にはもう一方も動かないとテーブルから離れにくい、ということがありました。
もっと自由に出入りできて座りやすいようにベンチのレイアウトを変えればよかったのかもしれませんが、その時に思ったのは同じ時間を共有できるもの同士が座るのにはベンチは適しているけれど、各々が自立してくると不便があるのだなあと思えたのでした。
それならもっともっとシンプルに食事自体は短時間で良いので、簡素なスツールで良いです、というお話を頂くこともあります。
はたしてスツールは使いやすいのでしょうか。
スツールというと、背もたれのない木製の座面の小椅子を想像します。しっかり座るというよりはちょっと腰を掛ける場合に使用するものという印象があるので、どの方向からでも座れるようにシンメトリーな形になっていることが多く、円形のものをよく見かけます。
どこからでも座れるようにということで、座面もそれほど大きくなく、お尻から腿までをきちんとフィットさせるというよりはお尻を座面に載せるようなイメージです。
ですので、座り心地よりも作業負担を軽減させるための椅子、と感じております。
以前に、もう少し座りやすくできないものだろうかと思いお尻をしっかり支えられるくらいの座面の大きさで、さらにはフィットするようにと四角い座面を緩やかにくぼませて作ったことがあったのですが、広い座面は転びやすくなり、さらには四角い座面の場合は座れる方向が4方向に限られてしまってかえってスツールとしては座りにくくなってしまったことがありました。
では、スツールは必ずしも不便な形になってしまうのだろうかと思うと、そうとは限らないこともあります。
軽量なものも多いので「簡易的に座る」という行為にはとても活躍しますし、サイズもコンパクトなものが多いので場所を取らずに置いておけることも多いです。また、座面の作り方でも座り心地が大きく変わります。
前述の座面を大きくするのとは反対に、座面を小さめにして、形状を円形に、さらにはキノコのように中央がこんもりと膨らんだ形で少し硬めのファブリックを張った座面などにすると、お尻の角度も変えやすくフィットする形になるので、どっしりと座るというよりも足とお尻の3点を使って腰掛けるのにとても心地よく座れるスツールになったりします。
食事の時以外でも背を高くして、キッチンでの作業中に少し腰掛けたいという時にも大変便利な使い方ができます。
基本的に椅子を使うシーンは、そこに座る人の時間の捉え方によると思います。
ですので、私の思う使い分けとしては、きちんとした姿勢で食事を採るならやはり越あたりをサポートして正しい姿勢で座ることのできる軽量のダイニングチェアが理想で、同じ時間を楽しむならベンチが心地よく、短時間で手軽に座るのならスツールでも十分良いのではないかと思えます。
その場所でどのように過ごしたいかを考えていくと、ダイニングチェアが良いのか、ベンチが良いのか、スツールで良いのかが見えてくるのではないかと思います。