
タモ板目ランダム張りのペニンシュラキッチン
2025.06.21

マドリヤアーキテクツさんからご相談頂いておりました武蔵野市のFさんのキッチンの設置が昨日でひとまず完了。今回はレンジフードの取付も私たちが行なうためレンジフードが入荷したらあらためて伺わせて頂きます。
最近は収納の扉に引き戸を採用することが多くなってきました。
開き扉は、隙間を限りなく小さくしたい、取っ手も分からないようしたい、など、本来シンプルに開け閉めできる構造のはずが、どこかミニマルでストイックなほうに傾いてしまうこともあって、使いやすさが置いていかれているように感じることもあるのですが、こういう引き違い戸は、開閉の動作が心地よいことのほかに表情が豊かになるように思えます。(もっとミニマルな形もあるのでしょうけれど私が好きな引き戸はこういう感じ)
使い方がひとめで分かるというか、そういう感じが好きなのです。
今回のFさんのダイニング側の収納はその引き戸を開けると床が続いているかのような地板のとても低い収納が現れます。(本当は、地板さえも取り払って床が地続きになっている収納にできたらよかったのですが、構造上、ちょっと強度が心配だったので、低い地板を入れさせてもらいました)
戸を開けると、家具やキッチンとはまた違った表情になるのです。
・・・しばらく前に小田原のSさんの打ち合わせに出かけた時にふと近くを歩いていたら、「旧松本剛吉別邸」と看板が出ているすてきな建物を見かけました。そして先日、そのSさんの現調に再び出かけた時に予定が早く済んだもので、少しそこに立ち寄ったのでした。
いろいろな工夫がされた引戸があって、見た目の心地よさもそうですが、なによりも機能的に分かりやすく美しくできているものは見ていてとても愉快だったのです。網戸や、雪見障子や、はめ込まれたガラスの表情や、引手の細工や、雨戸の構造やら。
そのように子細を眺めているなかで、ふと私の気持ちが、いまさらですが、にわかに童心に帰ってしまったことがありました。
それは、今まで部屋だと思っていたところが実は障子を開けると廊下だったことが分かったり、そもそも部屋なんてなかったかのような空間の移り変わりがまるで路地に迷い込んでしまったかのようなワクワク感を覚えたためでした。
戸を一枚開けるだけで質が変わるっておもしろい。Fさんの形を見て、さらには別邸の引き戸の様子を見て、そう思ったのでした。