
くじら
2025.06.29
先日稲城のS様のところにご挨拶に伺わせて頂いたことはアキコがすでに書いておりますが、そのSさんのお話でうれしかったことがありました。
Sさんは打ち合わせ当初からどこか雰囲気のあるご夫婦でしたので、何か独特なお仕事をされているのだろうと思っておりました。
先日お伺いした時に、お仕事の話になってSさんが「絵を描く仕事をしているのです。」と教えてくださいました。絵を描く仕事と聞いてどのような絵を描いていらっしゃるのか聞く間もなく、絵を描く仕事で暮らしていくのはたいへんなことではないのだろうか・・、なんてふと思ってしまったのでした。
(あとからSさんのSNSを見てみましたら、応援してくださる方の数だけで判断するわけではないのですが、私たちの7倍近くも応援してくださっている方が居るくらい名前の通った作家さんだったと知ったのですが・・)
するとSさん、
「たしかに大変ですけれど、続けることができているから今があると思っています。私のまわりにもさくさんの作家として頑張っていこうとするみなさんが居たのですが、いざ仕事として取り組んでみると、思っていたような絵が描けないことのもどかしさや残念さのほうが強く出てきてしまって続けることを断念した人がたくさんいました。」
「さいわいなのか、私も最初の頃は日本画を勉強していたものですから、その道を進んでいきたいと考えていましたが、いろんな過程を経てみると、そこだけにとどまることなく絵を描くこと自体が楽しいと思えたから今があると思うのです。いろいろな変化やストレスがあっても柔軟に続けたいという気持ちはずっとここにあるから続けられているのだと思うのです。」
そうですね。より一歩Sさんに近づくことができたように思えました。
「私にも何となくそういう思いはあります。明確なフリーハンドイマイという色やスタイルがないってことは分かっているのになぜ自分もずっと続けることができるのか、なぜきちんと声を掛けてくださる人が居てくれるのか、自分でもよく分からないまま続けている気がしていて。それでも続けることができているから続けられているという感じが何となくしっくりきました。」
「例えば、それは与えられた素材の中でうまく自分を表現することは得意だけれど、素材からアイデアからすべてイマイさんにお任せしますって言われると困っちゃいますもの。」
するとSさん、
「そうです、そうです。私もそんなふうに言われたら、ずっと天井眺めちゃいますから。」
なるほどー。
「お嬢さんがまだ高校2年生なら遅くはないですよ。」とチィが絵を描くことが好きで好きでという話をした時のことでした。
「妻も高校から絵を描き始めましたし、私も高校2年生でしたね、始まりは。とにかく描くことが好きでいられるなら全然遅くないのです。」
楽しいことも楽しくないこともあるかもしれませんが、絵を描くことが好きならそれでよいって言っていたSさんの言葉は力強く私の中に残ったのでした。
そう、Sさんのキッチンにはクジラが居ります。