かわる暮らし

2020.01.18

「ナラとコーリアンのデスクと一体になった食器収納のオーダー」

横浜 W様

design:Wさん
planning:daisuke imai
producer:hiroyuki kai
painting:hiroyuki kai

「初めまして、横浜在住のWと申します。
6月に家を購入予定で、カップボード等の家具を揃える予定なのですが、一度アトリエにお伺いして相談にのっていただくことは可能でしょうか?」
とWさんからメールを頂きました。

いらしてくださったWさんはまだ小さな赤ちゃんを連れた若いご夫婦で、このたび家を購入されたのですが、自分の思いの叶った暮らしにするためにまずは食器棚をいろいろと考えていたのだそうです。
それでお話をお伺いすると、キッチンはシステムキッチンが設けられていて、そのキッチンには標準設備として吊戸棚がついていたのだそうです。

コーリアンとナラ板目材を使ったキッチンバックカウンター

全体の印象。冷蔵庫スペースを残して長いカウンターにしたのです。コーリアンはなかなか重いので、搬入は大変なのでした。今回使用したコーリアンは「カメオホワイト」という真っ白というよりもオフホワイトな色味で温かみがあります。

製品をパッケージで売ることは、コストを抑えられることで広く皆さんに供給できる良い方法なのかもしれませんが、最近は吊戸棚を不要という声も多く聞くようになりました。
オーダーキッチンという場合なら、必要な要素を組み込んだ形で作り上げていくことができますが、システムキッチンだとなかなか細かい部分までは対応が難しいようで、そういう時に無駄になってしまう家具があるのかと思うと少し淋しい気持ちも生まれます。
そういう声を生かしてなのか、吊戸棚が不要な間取りになった時に食器棚をつけるスペースの上部についているのを見ることがよくあるのです。
でも、吊戸棚が不要な間取りっていうと、キッチンからリビングがよく見える間取りになるのですよね。
反対にリビングからもキッチンがよく見える間取りになるのですよね。

コーリアンとナラ板目材を使ったキッチンバックカウンター

冷蔵庫側から見た印象。最初デスクを設けたのは家事の合間に使うちょっとした書き物のスペース化と思っていたのですが、ウェブデザインのお仕事をされている奥様はここで仕事をするのだそう。お子さんもまだまだ赤ちゃんですので、キッチンに居る時間が一番落ち着くのかもしれません。

私は今まで食器棚のご相談を頂く時にお伝えしていることがあります。
吊戸棚のないペニンシュラタイプのキッチンだったり、アイランドキッチンだったりする時に食器棚の素材はキッチンに合わせるべきかどうかって。
私たちのところにご相談にいらしてくださる多くの方はやはり木の表情や手触りが好き、というお客様が多かったりします。
そうなった時にシステムキッチンの表面材はいろんな柄がありますが、基本的に樹脂素材が多いです。
「キッチンに立った時にそのキッチンと同じ樹脂素材にしないと食器棚はちぐはぐになってしまうのでしょうか。」

コーリアンとナラ板目材を使ったキッチンバックカウンター

この白い吊戸棚がもともとついていた吊戸棚。扉を開けないと分からないようにきれいに設置できました。


食器吊戸棚内部

実際に使っている様子。ちょっとおもしろいのは、扉のデザインとオープン棚の高さのバランスを考慮して、一番下に高さのない収納スペースを設けているところです。


コーリアンとナラ板目材を使ったキッチンバックカウンター

扉を閉めるとこのような感じ。

私はどちらかというと、リビングからキッチンを見た時の印象を揃えると全体が整うのではないかとお話しています。
キッチンに立っている時って、キッチンの表面材をよく眺めながら作業する、というよりは、使いやすさのほうに気持ちが向いていると思うし、キッチンの素材に合わせてもキッチンに立った時にだけ色柄があっていると感じるよりはリビングダイニングからふっと肩の力を抜いて部屋を見渡した時に印象が整っているように見えることで気持ちがより落ち着くのではないかと思うのです。

コーリアン カメオホワイト

今回のコーリアンは25ミリの厚みに見せて仕上げています。実際の厚みは12ミリなので、残りの13ミリ分は合板を接着して強度を出しています。木口の面取りは3アールくらい。このくらいのシャープな印象がWさんの好みにちょうど良かったのです。これ以上とがらせると痛いですからね。


炊飯器用スライドテーブル

一番左は炊飯器を収納するスライドテーブル。


引き出し 米びつ収納

その下は深めの引き出しですので、米びつやストックのペットボトルが入れられています。

そのようなわけで、Wさんの食器棚を設置するスペースにもシステムキッチンで使われなかった吊戸棚がついておりました。
でもせっかくついているもので使い勝手も悪いわけではないので、新たに作っても同じような形になるのなら生かして作れないものかな、というお話になっていったのでした。
今ついている吊戸棚は扉も白でキャビネットも白い仕上げのもので、白いものでも塗装で仕上げてあって質感がまろやかだったりするなら壁になじんで見えるのですが、化粧板の印象がはっきりしているのでリビングから見るとどうにも印象が軽く見えてしまうのでした。

引き出しの手掛け

収納の形態は主に引き出しです。使う人の好みによっては一部だけ扉にされる方もいらっしゃいますが、Wさんの場合は引き出しにして、奥まで使いやすく、を念頭に考えています。そして、引き出しの手掛けはいつもの掘り込み手掛け。

この形を生かしながら食器棚として使う安い形を考えましょう、とWさんといろいろと悩みます。
間取りから考えると、幅の広いカウンターを作ることができそうで、奥様が家事をしながら使うデスクを併設した食器棚にしましょうということに。そして吊戸棚は囲ってしまって白い印象を消してしまいましょうと。

コーリアンとナラ板目材を使ったキッチンバックカウンター

幅の広い引き出しの様子。


コーリアンとナラ板目材を使ったキッチンバックカウンター

幅の広い引き出しの様子。


コーリアンとナラ板目材を使ったキッチンバックカウンター

幅の広い引き出しの様子。

大まかな形がまとまって、ではこの形で納まるかどうか現地を確認しましょうということで、内覧会のタイミングに合わせてご新居にお伺いすることに。
設置するのには特に問題はなかったのですが、キッチンがあるのは2階で会談にはもう手すりがついてしまっているので、搬入がなかなか大変そうなのでした。

コーリアンとナラ板目材を使ったキッチンバックカウンター

幅の狭い引き出しの様子。


コーリアンとナラ板目材を使ったキッチンバックカウンター

幅の狭い引き出しの様子。


コーリアンとナラ板目材を使ったキッチンバックカウンター

幅の狭い引き出しの様子。


コーリアンとナラ板目材を使ったキッチンバックカウンター

幅の狭い引き出しの様子。

工房に戻って、細かい寸法を修正していよいよ制作に取り掛かります。
今回左側は冷蔵庫があって、寸法に余裕があるので、カウンターの制作は問題なかったのですが、吊戸棚はすでに壁につられていると戸棚にぴったりと被せるようにして作らないといけません。
特に吊戸棚の下にオープン棚があるので、両側のパネルはピッタリ作らないと変な隙間ができちゃう。
そこで、1ミリだけ戸棚よりも大きく作って、あとはうまくいきますように。
実際1ミリの逃げだけではかなりきつくて押し込んでどうにか設置できたのですが、まずは治まったのでひと安心。

コーリアンとナラ板目材を使ったキッチンバックカウンター

ゴミ箱の上の引き出しの様子。奥に見える赤い器、実は奥様のお父様の根来塗の作品で、朱色のなかに黒みが現れている美しい器です。


ゴミ箱収納 ケユカ アロッツ

引き出しの下のゴミ箱はすでに多くの皆さんが使われているケユカのアロッツ。両開きになっているので、高さ600ミリあれば全開する高さを抑えた形状がやはり人気なのです。ただ、私が使っていて1点気になったのは手で開けられる隙間が無いこと。必ずペダルを踏まないと開かないので、慣れるまでにちょっと間がありました。

それよりも大変なのはやはり搬入でした。
当時は夏真っ盛りの8月の初め。Wさん、気を使ってくださってエアコンを強く掛けてくださっていたのですが、階段の狭くクランクするところなんて、我慢大会のように同じ姿勢を保持していないといけないので、動いていないのに汗は噴き出るし、最後の最後でつっかえちゃって入らなかったりで、結局窓から揚げることになったりして、午前中で体力を使い果たしてしまうくらいなかなかハードな搬入でした。
そのあと一息入れて、取付作業のほうは一度工房で仮組していることもあって、順調に進み無事に完了したのでした。

キーボード用スライドテーブル

一番右は奥様のワークスペースであるデスク。気ボードが収納できるスライドテーブルも設けました。

で、これで終わりではなく、Wさんの思いが続いての形へ。
リビングから見える印象が温かみがあって、且つシャープな印象に変わってきたのに、キッチンを囲う対面カウンターが今ついているものがメラミン化粧板でできたポストフォームカウンターで、きっと暮らし始めてからの動線を考えてぶつかっても居たくないように角の部分を大きく丸くなっていて、さらには角の上下面も半円のように丸くなっているのだと思うのですが、それがキッチンの印象を引き締めるのに役立っていなかったのでした。さらにはジョイント部分があまりきれいではなかったので、この丸みとつなぎ目が、やはりデザインのお仕事をされているからか奥様としてはとても気になってしまうのでした。
ただ、素材として食器棚と同じくコーリアンにするほうが良いか、ナラにするほうが良いかを迷っていたのです。私自身もどちら良いかはなかなかイメージしづらい部分だったので食器棚を据えてから考えましょうということで、続いてはカウンターの細工です。

キッチン対面カウンターを無垢材で作る

お化粧直ししたキッチンの対面カウンター。


キッチン対面カウンターを無垢材で作る

キッチン側から見るとこのような感じ。上からかぶせてある印象にはなかなか分かりづらいでしょう。


キッチン対面カウンターを無垢材で作る

作りとしては、ナラ無垢材でトップを作り、木端面だけ厚みを持たせています。木口部分も厚みを持たせていますが、どうしても木口に接着すると厚みを持たせた材と小口の収縮で差異が生じるので、材が動いても剥離しないような仕上げにしています。


キッチン対面カウンターを無垢材で作る

コンロ前の壁に合わせて、カウンターも変形させていますので、とても自然な印象で仕上がりました。

結局、コーリアンの白いものだとモダンになりすぎて味気なくなってしまう、ということでナラでカウンターを作ることにしたのです。
ただ、壁を壊して、既存のカウンターを外して、となると大掛かりなので、既存のカウンターの上にすっぽり被せるように設置しました。
ちょうどナラでできたダイニングテーブルもこの頃に届きまして、途端にこの場所が優しく温かみのある場所に変わったのでした。
良い感じにまとめることができて良かったのでした。

ワークデスクとつながったナラと食器棚

価格:760,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は15,000円から、取付施工費は35,000円から)

家族でつくる家

2020.01.18

「チェリー板目材とステンレスバイブレーションのオーダーキッチン」

逗子 S様

design:Sさん
planning:daisuke imai
producer:hiroyuki kai
painting:hiroyuki kai

「まず、3月31日土曜日の午前中に見学に伺うことは可能でしょうか?
急なお願いで申し訳ありませんがお返事お待ちしております。
オーダーキッチングランプリのお写真からこちらのウェブサイトにたどり着きました。
現在新居の間取りを検討を始めたばかりで、11月中に引っ越しまでしたいと考えています。キッチンが中心になりそうなので、広いリビング側に向けてのアイランドキッチンにしたいと考えています。

キッチンの要望は以下のとおりです。

・料理教室がしたい(準備中)
・玄米味噌汁、地産地消の教室
・外国人向け和食家庭料理教室
・アイランドキッチン、Ⅱ型キッチン
・食洗機を導入したい
・ダイニング側から取り出せるようにしたい(カトラリー、ランチョンマット、コップ、湯のみ、ワイングラス)
・まな板、ふきんがダイニング側から見えないように、干したい
・天板はステンレスにしたい

よろしくお願いします。」

Sさんからメールを頂きました。

ステンレスヘアラインとアメリカンチェリー材を使ったアイランドキッチン

キッチン全体の印象。そして、奥にスラっと立つ奥様。

ステンレスヘアラインとアメリカンチェリー材を使ったアイランドキッチン

こちらがリビングダイニング側からの印象。框扉にしてよかった。とても美しい表情になりました。この床の濃茶のオイルも壁の漆喰も全部ご主人と奥様で仕上げたのだそう。素晴らしく温かいのでした。

ステンレスヘアラインとアメリカンチェリー材を使ったアイランドキッチン

キッチン側の収納の印象。サイズは2700ミリあるのですが、600ミリ幅のミーレの食洗機にいつもよりも大きな900ミリ幅のスライドワイヤ―シェルフを使っているので、引き出しがコンパクト。

まずはこちらにいらしてくださるということで、その時にいろいろとお話をお聞きしながら形を考えてみましょう。
ということで、約束の日に奥様がお一人でいらしてくださいました。
あれっ、ご主人も一緒にいらしてくださるのかと思っておりました。
と、「主人は後から来るそうなので、さきに私のほうでお話を進めておこうと思いまして。」ということでさっそくいろいろとお話させて頂きました。
私たちの工房ではどのような感じでキッチンを作っているか、どういう素材を使うことが多いか、どんな機器を組み込めるのか、そういった選択肢というか可能性のようなものをいろいろとお伝えして、その中からその人が何を望んでいるのかを教えて頂く、そういう形で打ち合わせを進めていきます。

シンク一体型ステンレスヘアラインカウンター

当初つける予定で考えていた洗剤ポケットは無くしてシンプルなシンクに。水栓はクリンスイの「F914ZC」。混合栓、浄水栓一体型のやはりシンプルな形です。そして、ワークトップはヘアライン仕上げ。

で、Sさんのイメージをおおよそお伺いしたところで、ご主人登場。
頭にサングラスをかけて、レーパンを履いていて、自転車でお出掛けされていたとのこと。
わぁ、すてきなだあ。私も今は通勤以外で自転車に乗ることがめっきり少なくなってしまいましたが、10年くらい前は気持ちがどこかに飛んでしまったのかと思われるくらいに、所沢や練馬、上野、小田原あたりまではしょっちゅう自転車で打ち合わせに出かけていました。
お客様の家でシャツを着替えさせてもらったこともあるくらい、変わった人に映っていたことと思います。

ミーレの食器洗浄機60cm G6620SCi

食洗機は、ミーレの「G6620SCi」。

ミーレの食器洗浄機60cm G6620SCi

フロントパネルオープン。

ですので、どんなところに出かけられていたのかなどいろいろとお話をお聞きしたかったのですが、その時のご主人とてもストイックなのか、ご機嫌斜めなのか、なかなか近寄りづらい印象でございまして・・(笑)
ご主人がいらっしゃってからも引き続き奥様と打ち合わせを続けたのですが、「それは今伝えなくても良いことじゃないか。」とか「それは君に任せる。」というような感じで、少し奥様の思いが伝わってきづらくなってしまったのでした。
うーん、ちょっと困ったなあ。と思っていたところで、ご主人が先に戻られるということで先にここを出ることに。
うーん、静かな嵐のような方だ・・。
「すみません、お話がはかどらなくて。」と奥様。この頃にはおおよその方向はまとまっていたので、大丈夫ですよ、良い形を考えてみますね。

sak019

最初のキッチンのスケッチ。

さっそく頂いたご要望に合わせてスケッチをまとめてどのくらいの制作費用が掛かるかを考えてみて、お伝えしました。
どうにかお願いできそうということで、さっそく図面を描いてみて細かい部分について打ち合わせを重ねていきます。

引き出し 包丁収納

引き出しの様子。たしか上の4本がご主人用で、下3本が奥様用だったかな。やはり二人とも作ることが好きなんだ。

引き出し おたま フライ返し おろし金

引き出しの様子。最近、自宅を建てたおかげが皆さんの調理道具が気になってしまいまして。

引き出し 調味料ボトル収納

引き出しの様子。ボトル類を収納しています。

その中でひとつ興味深いお話がありました。
お料理をするにあたって、パン生地をこねたりするのにこね台を使わないで、ワークトップを消毒してそのままそこでこねることができるようにもしたい、という考えがあるそうで、そうする時にパン生地にステンレス粉が混じりあってしまうのだそうです。
なるほど、そういうことも考えられますね。
ということでさっそく板金屋さんに相談です。
聴いてみるとバイブレーション仕上げに限っては研磨粉が板の内部に残ってしまうことがあるそうで、その場合に特殊洗浄して納品することもできますよ、というお返事。
なるほど良い勉強になります。
でも、ヘアラインだと研磨ラインが単純なので、複雑な洗浄をしなくても除去できるということで今回は普通の仕上がりで進めることに。

リンナイ リッセ

ガスコンロはリンナイのリッセのナイトブラック。

リンナイ リッセ

今回ちょっと独特のレイアウトにしたコンロ周り。ガスコンロの左は大きめの引き出しを設けて、下は鍋類をどんどん置けるようにしたのです。

スライドワイヤーシェルフ 90cm

幅900ミリのスライドワイヤーシェルフの上段。

スライドワイヤーシェルフ 90cm

幅900ミリのスライドワイヤーシェルフの下段。

その後、金額を調整しながら手間を省ける部分と手間をかける部分のバランスを考えながら形を決めていきまして、ようやくご新居の着工上棟です。
そして、いよいよ現地での打ち合わせ。
場所を調べていくと、Sさんのご新居が経つ現場から車で10分くらいの距離には10年近く前からつい最近まで数えると5件ほど以前に家具を作らせて頂いたお客様が多いことが分かりました。
みんながどこかでつながったらおもしろいなあ。

細い道を通り抜けると、大きな敷地を4つに分けた分譲地に辿り着きました。その一つがSさんの家です。
「こんにちは、お久しぶりです。」
とSさんと、その後ろからご主人が。
あれっ、ご主人の印象が前回と違う・・。
「よろしくお願い致します。」
とても物静かで優しそうな印象だったのでした。
人があらわす印象も人が受け取る印象もはかなく移ろいやすいものです。(笑)
とても温かな家になりそうな予感を抱いて打ち合わせに現地へと向かいます。

チェリーのアイランドキッチンの框組の引き戸

そして、リビングダイニング側。框はチェリーの無垢材を使い、鏡板には突板を使っています。

現地に辿り着くと、だいぶ現場の作業が進んでいます。キッチン設置日が早まったかな・・。
聞くと予定通りの日程で大丈夫ということでしたが、今回は無垢材を多く使うし、この冬の乾燥した時期でもあり、年を越して間もなくの納品というスケジュールでした、早めに材の段取りをしておきたい。
現場で打ち合わせを終えた翌日から、さっそく段取りを始めさせて頂きました。

そうして、無事に年を越すことができまして、予定通りにキッチンの設置が完了。
あとは内装の仕上げ、機器の配管工事が終われば引渡しで、引き渡し当日に立ち会わせて頂きましたが、私たちのキッチンってそれほど複雑な形をしていないものですから、あまり説明することがなくて、その時もメインは家の引渡しでしたので、あまりお邪魔になってはいけないと思いまして、ひと通り簡単なご説明をしましてお暇させて頂きまして、後日お伺いすることにしたのでした。

アイランドキッチン引き戸収納

こちらの内部の仕上げは白いポリエステル化粧板ではなく、シナ合板。また引き戸にはアルミのレールを使うとちょっと印象が変わってしまうので、敷居は掘り込みを入れて、そこに戸車を滑らせるシンプルな作りにしています。

引き出しの手掛け 引き戸の引手

引き戸の引手。角丸。

引き出しの手掛け 引き戸の引手

この引き戸収納部は搬入を考えて、2枚扉1セットでキャビネットが中央で分かれるようにしています。でも、帆立は二重に見せるのはおもしろくないので、一枚でもきれいに納まるような作りにしています。

そう、キッチンや家具って使い始めてからのほうが分かるんです。だんだんと自分の手になじんでくる、というか。
だから、暮らし始めてからお話をお聞きするほうがよいのです。
というわけで、お引渡しから3か月後にあらためてお邪魔させて頂いたのでした。
へぇ、これは。
Sさんのイメージってもっと違う印象を持っておりました。
外人さん向けのお料理教室となると海外のインテリアを参考にされた空間になっているのではないかと。
とても心地よい濃茶でした。
その中にチェリーのまだ色若いキッチンが。
ずっと使い続けてきたという円卓ともとても良い印象です。
「こういうインテリアになるとは・・。」
「ふふっ、ありがとうございます。」とうれしそうにお話しされる奥様。

きくと、このキッチン背面やリビング入り口に設けられた建具はご主人が作ったのだそう。
おぉ、すばらしい。
「これがね、間にアクリル(だったかな?ガラスだったかな?)を挟む形にしたから釘打ちにとても苦労していたんです。」とうれしそう。
どうやら自転車も自分で組むような道具類も整っていたし、ご主人も奥様もクラフトマンなんだ。
そう知ることができた途端に、やっぱりもっとご主人とお話がしたいなあ、そう思ったのでした。

お料理教室開かれたら、ぜひ遊びに行きますね。

キッチン仕上
天板 ステンレスバイブレーション
扉・前板 チェリー無垢材
本体外側 チェリー板目突板練り付け
本体内側 ポリエステル化粧板「ホワイト」
塗装 オイル塗装仕上げ/ウレタンクリア塗装仕上げ

チェリーとステンレスバイブレーションのアイランドキッチン

価格:1,220,000円(制作費・塗装費、設備機器費用は別)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は30,000円から、取付施工費は130,000円から)

湘南T-SITE「第4回 湘南 料理道具市」に出展します。

2020.01.18

2020年最初のイベントでございます。
2月8日土曜日~3月1日日曜日まで湘南T-SITEさんで開催される「第四回 湘南料理道具市」に私たちのキッチンを出展させて頂けることになりました。
このような魅力的な機会に合わせて私たちのキッチンを見て頂けるということ、とてもうれしく思っております。
そこで、このイベントに合わせて以前から考えていた「工房のキッチンの装いを新たにしたい」という思いを行動に移すことに。
新たな私たちの形をここでご覧頂くことができます。
期間内はいろいろと魅力的な作品が並ぶのも楽しみのひとつで、キッチンがそこにあることが主なのではなく、そのキッチンを使って暮らしていく姿が思い描けるような形を目指して良い形作りにただいま励んでおります。
石、木、金属といった素材に触れること、素材の表情が変わること、佇まいがその人の暮らしにきちんと当てはまるような良い形作りにただいま励んでおります。

今日はそのスペースで打ち合わせでした。
私たちの形をとてもよく思って下さっていて、「どうぞ好きな表現をしてくださいね。」そうお声掛け頂きました。
うれしいなあ。うれしいけれど難しいですよね。
でも、いろいろな作品の中に溶け込んでまじり合ってひとつの調子を奏でることができるように良い形にしていきます。
楽しみにしていてください。

今日はカレーです。

2020.01.17

「今日はカレーが食べたいな。」
「今日はカレーがいいな。」
と、ことあるごとのアピールがおとうさんからあったので今日はカレーです。
すみません、&mando さんのメニューは明日に続きます。

作り置きレシピ2日目をいただきました。

2020.01.17

&mandoさんの出張料理教室で作って頂いた作り置きレシピ2日めはポークグリルとカボチャのレモンサラダ、じゃことごまのジャンとトマトのジャン、もやしのナムル、ナスのナムル、白菜のピクルスです。
ポークグリルは魚焼きグリルで少し焼いてから肉汁と醤油を煮込んだタレをかけて食べました。
柔らかくて美味しい。かぼちゃのサラダもレモンですっきりしてあまり甘くないので、甘いのが苦手なダイスケさんもパクパク食べていました。私とハルは先生からお好みでと渡されていたレーズンを加えて食べました。
 じゃこのジャンとトマトのジャンはレタスにかけたり、ご飯にかけたり思い思いに食べましたが、とても美味しくて、「何が入ってんの?」とみんなでレシピを見返しましたが、特別なものは入っていないのですよね。「え~、すご~い!やっぱりプロだわ!」と家族で感嘆しながらいただきました。自分で作るときに再現できるようにしっかりとこの味を覚えておかないといけませんね。
 ナムルも今日の方が味が馴染んでいておいしく感じました。白菜のピクルスがリンゴみたいで箸休めにパクパク食べてしまいます、びっくりです。今まで作ってすぐ食べきってしまっていたので、作り置くべきものなのだと再認識しました。
美味しくいただきました。ごちそうさまでした。

&mando出張料理教室の日でした!

2020.01.16

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2015年にキッチンを作らせて頂いたご縁で知り合った&mandoさん。「いつか、いつか。」と思いながらなかなかレッスンを受けれずに今まで来てしまいました。
「ご自宅に伺うこともできますよ。」と自宅が完成し見にいらしてくださったときに教えてくださったので、この機会に出張料理教室を受けることにしたのです。
出張レッスンの前に準備しておくものがありました。加熱可能な保存容器か袋の大きめのものをいくつか用意しておいてくださいということで、その準備とそれを保管する冷蔵庫のスペースを作っておきました。
出張レッスンの前日に先生から連絡が来ました。家にある調味料と材料の確認です。足りない分は先生が購入してきてくださるので冷蔵庫の中の使えそうなものを全部出して写真を撮って送りました。
当日、プラスチックケース2つを抱えて先生が来てくださいました。13時スタートで約3時間。テキパキと説明をしながら調理を進めていきながらも、お野菜の保存方法・もっと簡単でおいしい調理の仕方、おすすめの調理器具なども教えてくださいました。毎日料理をしているはずなのに、知らないことはたくさんあるのだなと勉強になりました。
普段から「今日のお料理」など料理番組を見るのが好きなのですが、目の前で先生が調理をしてくださって、味見をされる時の「おいしっ!」というリアクションがとってもキュートで、お料理するのが本当に好きなのが伝わってきて、なんだか楽しい幸せな時間でした。
さて、出張ということはお高いのでは?と思いますよね。出張料理の基本料金は1万円(これに交通費が含まれています。)、それに家にあるものでは足りず買ってきてもらった分の材料費が加わります。先生が今回作ってくださった品目は15品(内メインが5品)。料理教室は一回4品くらい作るところがほとんどで3000円~4000円の範囲だと思うので、そう考えると高いわけではないのではないかと私は思いました。(うちはエンゲル係数高めだと思われます...。)
また「作り置き」「ミールキット」を今まで興味があったのですが実践したことはなかったのです。今日のレッスンを受けて、「私にもできるかも。」と思えました。このレシピを自分でやってみることで練習していこうと思います。
今日の晩ごはんは、アジフライ・もやしのナムル・なすのナムル・白菜のピクルス・炊き込みご飯・ひき肉とお豆のチーズオーブン焼きです。家族としてはお家ごはんで器も同じなのに私が作る味とは違うことに違和感があったようですが(笑)、「美味しい!」と食べていました。しょっぱいものはしょっぱく、甘いものは甘く、濃いわけじゃなく味がはっきりしていてとても美味しいのです。
&mandoさんはご自宅でも様々なメニューでお料理教室をされています。コーリアンの天板に節ありナラ材を合わせたかっこいいアイランドキッチンをお使いです。→ オーダーキッチン制作例「カジュアル」
&mandoさん、ありがとうございました!これから数日先生の味を堪能させていただきます!今日の夕ご飯はどれにしようかな。

「SANDO BY WEMON PROJECTS」さんの椅子:スタッフ ノガミ君の制作日記

2020.01.13

_dsc3159_dsc3163_DSC2003DSCN2960物を作られる皆さんもきっとそうだと思うのですが、私も同様に、図面をもらうとまずどう作るか考えます。頭の中でパーツごとに分解して、そのパーツの作り方や組み方などをイメージしていくのです。
この場合はこういう材料取りをして、こういう組み方をして強度を出して、ここにはこういう部材を足した方が良いかもしれない‥というふうに。

そして製作方法を考えながら、工程をひとつずつ書き出してみましたら、21工程もあったのです。
さらには、と考えを膨らませていくと、ひとつの工程に中にも細かく分けてみるといくつもの作業があって、そういう諸々のことをすべて合計すると、今回製作するイスの完成までには、もしかすると100以上の作業があるかもしれない。
目の前にある図面に書かれている椅子の姿はとてもシンプルに思えてしまうのに。

そういうふうに段取りや準備をしっかりして作業に臨むのですが、実際に作業を進めていくと、なかなかうまく進まない部分もあったりして(特に曲線と直線の交わる部分や各々の接合部についてなど)、調整や修整をしながら作業をすることも多く出てきたりします。つねに頭を回転させながら、次の作業に支障がないようにすることをどこか俯瞰しながら目の前のことをクリアするために手を動かし、それを繰り返して椅子を作り上げていきます。

「椅子は大変だよ。」社長もみんなも私もそう言います。
女性や子供でも持てるくらい軽々していて、姿もコンパクトな形が多いものですから、物のボリュームから浮かぶイメージとコストのイメージがなかなか合致してもらえないことが多かったりして。
特に町のなかで販売されている椅子たちを見ていると、形と金額のバランスがとても微妙に映ります。
どのようなものでも作り出せることも物作りの魅力ですが、作るだけでは伝わりづらい大事な部分もみんなで伝えてゆけたらいいなと思っているのです。

でも、まずは無事完成を迎えることができてとホッとしております。

「キッチンの制作途中の様子を見させて頂けますか。」

2020.01.12

現場での打ち合わせに伺った時にFさんからそう言われておりまして、本日、工房まで見学に来てくださったのでした。

「おぉ~!」「きれい!」「すてき!」
ぐるりぐるりとキッチンのまわりを何度も回って、引き出しを出したり引いたり出したり引いたり・・。
とてもうれしそうなご様子に私達ももちろん笑顔になります。
物作りの魅力の一つに自分で作り上げる喜びと、その人に依頼する喜びとがあります。
家作りの時は、自分の希望が叶う、というよりも福原さんの形を見てみたい、という部分が大きかったから、いろいろお任せしていました。
そういうスタンスで仕事をすることが得意な人も不得意な人もいて、福原さんは柔軟だったかな。
私は自分だけで何かを作りだすって言うのがなかなか苦手で、その人から頂く要望という決まりごとの中で丸めたり延ばしたりしてきちんと要望に当てはめていく方法があっているかなあと思うのです。
依頼してくださる皆さんにとって自分で作り上げているという気持ちを強く感じてもらえるといいな、そういう思いもありますし。
だから、ここはもうイマイさんにお任せします、とかこれはイマイさんらしくてすてきです、って言われると、どこか俯瞰してへぇって思っちゃう。
って思っちゃうところがイマイさんらしいんですよ、とか言われたりすることもあって、そうなるともう何もかも一緒くたって思うけれど、そういう思い全てが自分を作っていて、その後ろ姿や横顔を見ていいって言ってくれるのですから、嘘のない思いや形を見せることがやっぱり大事なんだと、よく分からないまま、なるほどと一人相槌を打ちながらいつも気持ちが落ち着くのです。

今回、ワタナベ君が制作を担当するFさんのキッチンはなかなか珍しい形をしたアイランドキッチン。
実直な気持ちで取り組む彼が作る気持ちがそのまま形になったような四角いキッチン。
築何年だったかな。とても雰囲気のよい集合住宅をリノベーションしてできあがるご新居の真ん中あたりにこのキッチンは据えられる予定です。
みんなで囲んで料理ができるようにと考えた形は来月現場に届く予定です。

タモのダイニングテーブルとダイニングキャビネットを見に

2020.01.11

20200111002やっぱり目をキラキラさせてお話してくださるのはうれしいですよ。
昨年11月の終わりに納品させて頂いたHさんのところにご挨拶に伺ってきました。
「まだきちんと使えていないのですけれどね、これからここはこういうふうに使っていきたいのです。」って、置きたいもののメモを見せてくださって。
家具がはいって空間がにぎやかになって、でもそれはとても慎ましい姿で、そこにくらすHさんご家族皆さんでにこやかになるってやっぱりとてもうれしいですよ。

軌跡

2020.01.10

先月退職したカナイ君が使っていた制作ファイル。どっしり重く5冊分。
8年9か月でこんなにたくさんの家具やキッチンをここで作ってきたんだね、ありがとう!としみじみしてしまいますが。
スタッフの異動があってもご安心くださいね。どこで分割してる、どう収めたなど、もしこれから先に不具合があった時、お引越しで家具を移動される際など対応できるようにしています。ファイルを見てもわからない時には電話をしたりして。
離れてはいますが、実は見えない線で繋がっているのですよ。

iPhoneスタンドの加工

2020.01.08

iPhone4Sを持っていた頃、最初の「tetra」を作り始めたのがもう8年前で、今はいろいろな作家さんがいろいろな形で作られているので、今さらという感じではありますが、以前iPhone6ように作った「sofa」をiPhone11までが置けるような形に置ける部分をあらためて加工しました。
来月からのイベントに持ってゆけたらと考えております。
ただ、開口部を大きくしても美しくないので、丸みの余韻は残しつつ大きなサイズまで置けるような感じに。
コンセプトである、木のかたまりをくりぬく、音が全方向に広がる、という部分はそのまま残せましたので、もしよかったら聴きにいらしてくださいね。
イベントの詳細はもう少ししたらお知らせ致しますね。

仕事始め

2020.01.06

今日から仕事始め。
スタッフが一人減ってみんな木取り表の作成や塗装などの作業なので、静かな工房です。
できるかどうかはわからないけど、やってみたいこと・やらなきゃいけないことはいっぱいある。
今年のうちにやりきれるのかはわからないけど昨年よりは前進めるようにがんばっていきたいと思います。
みなさまよろしくお願いいたします。

書初め

2020.01.03

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チイの今年の書初めの宿題の言葉は「進む勇気」。
いい言葉。難しいよね。
でも集中して練習してその気持ちがあればうまくできるようになるよね。

初詣へ

2020.01.03

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人が多い時間だとご利益が薄れる気がしてしまうので、早めに支度をして寒川さんへ初詣へ。
少し目先を変えてお重から器に替えてのお節料理。

バックヤード

2020.04.28

「オーダーシューズ用作業台、皮切り台のオーダー」

横浜 ハドソンズ様

design:プラスマイズミアーキテクトさん/Mさん/daisuke imai
planning:プラスマイズミアーキテクトさん/daisuke imai
producer:yasukazu kanai/iku nogami
painting:yasukazu kanai/iku nogami

オーダーシューズショップのチェリーとアイアンで作ったワークデスク

作業スペースの全景。写真で見ると広く見えますが、人が2人はいるともうギュウギュウな感じで、うーん、すてきな作業場って感じです。

オーダーシューズショップのチェリーとアイアンで作ったワークデスク

突きあたりの本棚側から見るとこのような感じ。作らせて頂いたのは、右側にあるデスクが革をカットするためのデスクで、その奥が革をストックしておく棚。そして、左側にあるカットした革を加工するためのデスク。そして、写真には写っていないのですが、背面にある本棚と作業前の革を別の場所にストックして置くシナ材で作った棚とオークのオーディオラックと様々な形を作らせて頂きました。

オーダーシューズショップのチェリーとアイアンで作ったワークデスク

作業スペースの入り口から見たところ、長い革が左手の棚に収納されています。

横浜に「ハドソン靴店」さんという路面から眺めるその店の様子がとてもすてきな靴屋さんがあります。
ガラス越しに見える靴の材料や道具に圧倒されそうなくらい魅力的なお店ですが、そのお店以上に不思議な魅力の店主であるMさん。
ご縁があって、以前大磯のKさんの「姉妹で作る家」のキッチンを任せて頂いた時、そのKさんの妹さんがKさんの家を設計して、その妹さんの一緒に設計事務所を営んでいるご主人であるマイズミさんとそこで知り合うことができまして、そのKさんのキッチンの印象をとても良く思ってくださっていたマイズミさんがハドソンさんのサロンを作られまして、そこに置く家具たちのプロデュースも行なうことになったのだそうです。
その時に、私たちのことを思い出してくださって声を掛けて頂いたのでした。
「イマイさんが作られたあのキッチンの表情がね、とても素敵だなってずっと思っていたのです。」

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そのデスクを作るのに素材のありのままの印象を見せたい、というご要望で採用したのが鋼材にまだ黒皮がついたままの状態でそのまま使う、という仕上げです。塗装もせず、切断面は鈍いシルバーのまま、点付けした溶接ビードもそのまま見せたい、ということでした。そこでいつも鋼材の加工をお願いしているオヌマさんにサンプルを作って頂いて、曲げの角度や補強材が溶接されている様子を確認してもらいました。

オーダーシューズショップのチェリーとアイアンで作ったワークデスク

お二人にはこの仕上がりはとても好評で、荒々しいけれど表情豊かな様子を気に入ってくれました。けれどもオヌマさんには、(時々黒皮でっていう相談を受けるたびに)いつも「黒皮そのままは錆がでてくるから止めたほうが良いですよ。」と言われていたのです。それほど気になるのかなあと思っておりましたら、このサンプル、2年くらい経過した今は表面が赤みを増してきました。なるほど、やはりワックスくらいは塗り込んでおかないといけないようですね。ちなみにこの写真はデスク下の引き出しがつく部分のフレーム。引き出しは吊桟で作ることにしたのですが、桟もスチールだと絶対に動きが悪くなるから、ということでこの部分はステンレスで作っています。

オーダーシューズショップのチェリーとアイアンで作ったワークデスク

その引き出し部分のフレームと引き出しが入った様子はこのような感じ。チェリーがもっと赤みを増してくるともっと鉄の印象と馴染んでくると思います。それが楽しみです。

オーダーシューズショップのチェリーとアイアンで作ったワークデスク

これが革カット用のデスクとストック棚の全体です。デスクの後ろにも板が立っているのですが、革をカットする際に革をグルグル回したり、材が長いので床まで垂れさがったりするわけですが、その時に窓に掛かるブラインドに当たって傷にならないようにガードするための板で、ストック棚の印象とデザインを揃えてマイズミさんが考えてくれています。ストック棚も全て閉じた形ではなく、素通しの状態にして通気ができることと、サイズが小さくなった革も取り出しやすいように、ということでこのようなデザインになっています。

「イマイさん、ちょっと変わったお仕事なのですが、ぜひイマイさんにお手伝い頂きたくて。実は靴屋さんのワークデスクを考えているんですよ。」
靴屋さん?
聞くとオーダーでシューズを作っていらっしゃったり、難しい靴の修理をお仕事にされている工房に机などを作りたいのだということでした。
興味深い依頼ですが、その職の専用の道具となると、自分たちの力で実現できるのかな、ちょっと不安もありました。

オーダーシューズショップのチェリーとアイアンで作ったワークデスク

こちらは乾き利用のデスクのトップ。厚み6mmの鉄板を敷いています。この後にMさんが硬質なゴム板を敷いて完成。

オーダーシューズショップのチェリーとアイアンで作ったワークデスク

先ほどのサンプルが実際にどのようになったかということ、このような感じです。

オーダーシューズショップのチェリーとアイアンで作ったワークデスク

引き出しに付けたハンドルはKUMA鍛鉄工房さんの「角9mm槌目」を使っています。

まずはマイズミさんにお話をお伺いして、そのサロンを拝見させて頂きました。
「こんにちは、はじめまして。イマイと申します。」
まずは路面店に立ち寄らせて頂きます。
それが冒頭の印象。靴の存在感に圧倒されるような店構えで、お店というよりはもう工房ですね。店先に入ってもあまり寛げる場所がなくって、革の匂いが漂う作業場です。
「はじめまして。」
と、笑顔で迎えてくれた店主のMさん。細身でとても物腰の穏やかで、おそらく私よりもお若い。イメージしていた手がごつごつしていて、髭を三つ編みしているような思い描いていた靴職人さんとは違うのでした。
「じゃあ、サロンのほうへご案内します。」
と支度が残っているMさんよりも先にマイズミさんと私とでそちらに向かうことに。
工房から5分くらいと見えてくる車どおりの少ない場所に立つ古い集合住宅。
この一室をリノベーションしたというサロンは、「お邪魔します。」「ちょっと待ってくださいね、今電気付けますので。」と言ってブレーカーを上げて照明をつけても部屋の奥まで見渡せないようなとても雰囲気のある照度の室内。
躯体がむき出しの壁や床に素材をのそのまま見せたような間仕切壁が立ち、モールテックスを塗ったのです、と言っていた白いステージが応接スペースになっている独特の空間でMさんとマイズミさんの個性全開な感じです。

チェリーの本棚

こちらはチェリーの突板で作った本棚。

「ここにいくつか作りたいものを考えているのです。」
「どちらかというとお客様に見せる家具ではなく、バックヤードで使う家具なのですが、それをとても印象強く作りたいのです。」
なるほど。
マイズミさんのイメージは、こうでした。
空間と同じく素材そのままを見せられるような家具にしたくて、さらにはワークデスクとしての耐久性もきちんと考えられた形。そのほかにステージで使う音響機器をディスプレイしながらも家具自身がきれいに見える形になるようなオーディオラックも作りたい、ということでした。
うーん、とても抽象的だ。
Mさんの要望はどうなのかな、と思って、あとからいらっしゃったMさんにお話を聞くと、「素材の良さがきちんと表現されている形がすてきですよね。」ともっと抽象的だ。
私は作家ではないので掴みどころが難しいと形を考えるのにとても困ってしまうものでして、どちらかというとご要望という名前のいろいろな条件をクリアしながら形を作っていくことに慣れているので、頭を悩ませておりますと、「大まかなイメージは思い描いているものがありますので、それをMさんと詰めていってイマイさんに提示できるようにしますので。まずはこの場所を見てどんな感じがをつかんで頂けたらと思っておりまして。」とマイズミさんがフォロー。
そうですね、とひと安心。
ここから、マイズミさんの思い描く大まかなイメージをメインに肉付けを重ねて具体的に実現できる形へと考えていったのでした。

オーク節アリ材を使ったオーディオラック

オーディオラックはオークを使って製作しています。ステージの上にトラックファニチャーさんのソファとローテーブルがあるのですが、その印象に合わせて作ってもらえますか、ということで馴染むような形を考えさせて頂きました。このオーディオラックのトップは皮切り台と同じように下地のままでこれからMさんが靴に使っている革を張り込んで完成。

オーク節アリ材を使ったオーディオラック

側板や天板の面取りの具合。

素材をそのまま表現することはただシンプルになることではなく、形として成り立つ質素さで素材の良い表情もうまく出せたらよいなという話になりました。また、古いビルのような集合住宅でエレベーターもなく、半ば閉じられた階段しかなく、古いてっいを開けると少し入り組んだ設計の空間ですので、搬入がかなり難しいため、そのこじんまりした空間に搬入できる方法と現地で組み立てられる方法を模索しながら、どこまで装飾をそぎ落とすことが良いのか、3人で悩みながら形はできあがったのでした。

シナとスチールのシェルフ

こちらがバックヤードに置かれたもう一つのストック棚。シナの無垢材とスチームむき出しのフレームでできています。

シナとスチールのシェルフ

黒皮もついておらず、地金の鈍い色とシナの淡い色がとても良い感じで、ここに置いておいたらもったいないってマイズミさんもおっしゃっていましたね。たしかにとても良い表情なのです。

こうして、なかなか知ることのない世界を見聞きできてとても貴重なお仕事をさせて頂くことができたのでした。実はまだこれでサロンが完成したわけではないようでして、また存在感のある形が必要になったらお声掛けしますね、とお二人にそう言われてしまったのでした。
大変ありがたいお声掛けで、頭を悩ませながら頑張りたいと思います。
「今まで修理をメインに行なってきた部分があるのですが、ここでは自分の表現できる靴を作り上げていきたいと考えているのです。今考えているのは、ロード・・。」
面白い仕事が広がっていきそうで、私の楽しみにしています。
お二方、このたびはありがとうございました。

オーダーシューズ用作業台、皮切り台

費用につきましては、お問い合わせくださいませ。

go-in02 [kurogane_iron]

2020.01.31

go-in02 [kurogane_iron]

ゆらゆらとさくらの導管はまるで川床
鉄で染めた黒い川床に鉄碑が凛と立つ姿は
いつ見てもよいものです。
心が落ち着きますでしょう。

チェリー材を使った香立てです。灰が落ちるところは、鉄分と木が反応して黒く変色することをいかして一段削りこんだ部分は黒く染めています。
お香を立てる中心部分は、鍛鉄でできていて、1点ずつ槌目をつけておりますので、表情やサイズが異なり、独特の味わいがあります。
鉄染めの部分に落ちた灰を捨てる時は、なるべく拭き取らずにそのまま香立てを傾けて捨ててください。
こするように拭き取ると、だんだんと灰が染み込んで別の色に変色することがあります。

素材

  • チェリー
    チェリー
    適度な弾力と硬さを持つ肌色?赤茶色をした木で使い始めてまもなく赤みを増していき、赤黒い重厚感のある仕上がりになっていきます。木目がとても細く繊細な表情で、時折、黒いスジが入る豊かな表情をしています。

サイズ

W105mm/H30mm/D105mm

No.go-in02[kurogane_iron]
鍛鉄の香炉のあるチェリーの香立てです。

価格:6,600円(本体価格 6,000円)
送料:880円(800円)

※神奈川県、東京都、千葉県、埼玉県内の送料です。その他の地域は別途お見積致します。

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