
囲う
ホワイトオーク板目ランダム張り突板を使った食器棚とキッチンパネル
板橋 T様
design:Tさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:hideaki kawakami
painting:honoka takeishi
「初めまして。Tと申します。
戸建て住宅の設計をただいま進めているところで現在キッチンの選定を進めています。
ショールームやカタログ等を見ているなかで、なかなか好みのものがなく、オーダーキッチンを選択肢に加えたところこちらのサイトにたどりついた次第です。
ただ、ダイニングテーブルとキッチンはつけて配置する予定のため、せっかく木目がきれいなキッチンを設置してももったいないような気もしているのですが、やはり心惹かれるキッチンが見つからなくてどうにも進まないので、予算感だけでも聞ければと思っています。
予算としては潤沢ではないのでお願いするとしても、キッチン側だけを想定しています。(バックカウンターは無し)
と、Tさんからキッチンのご相談のメールを頂きました。

私たちのウェブサイトでは、なるべく皆さんに分かってもらえたらと思いまして、それぞれの制作例の一番下に「載せても良いですよ。」とおっしゃってくださった方々の制作金額を参考までに載せているのですが、それでもやっぱり自分が考える形がどのくらいの金額になるのかは分かりづらい部分はあると思います。
ですので、「予算感だけでも・・。」というご相談でも、Tさんのように気軽にご連絡頂ければと思います。
もちろん、そのままお話が進んでご依頼を頂けることになると一番うれしいのですが、そもそも2000年にウェブサイトを作ったきっかけは、もっとオーダーキッチンやオーダー家具のことを知ってもらえたらという気持ちで始めたので、オーダーキッチンを作らせて頂く形にならなくても、こういうものなのだなあと理解してもらえるだけでも、こういう仕事の世界があることが広まってくれるだけでもうれしいなと思っておりますので。
そして、結局Tさんにはキッチンのご依頼を頂くまでにはならなかったのですが、木の印象を大切にしたLDKを実現したいという思いから、キッチンは大手メーカーのキッチンを導入して、その周りを私たちの家具で整えるというご依頼を頂くことができたのでした。
具体的にはキッチンの背面に木のパネルを取り付けて、側面にはちょっとした収納、そしてその背面には素材を合わせたカップボードと吊戸棚を作らせて頂くことになったのでした。

今までにもシステムキッチンのまわりに収納や飾り棚を作ることで、オーダーキッチンのような印象に仕上げるお仕事は多かったのですが、今回もまた変わった見せ方の家具がこうしてできあがりました。
今までだと、以下のような皆様の形がありました。
「夢見たほんわかしたキッチン」 横須賀 H様
「心地良さのモノサシ」川崎 I様
「学び家」浦和 S様
「印象を整える」横浜 M様
「ロックなあなた」横浜 N様
「おとうさん」茅ヶ崎 W様
「響く声」八王子 Y様
「整えて」大倉山 T様
「あたらしい形」港北 H様
キッチンのまわりを板で囲う形から、収納で囲う形、それに合わせて背面の食器棚を作る方や、システムキッチンの表面材も収納に会わせて交換する方など、様々な見せ方がありました。
そして、Tさんの形はまた今までになかった形となりそうだったのです。

まずはその前に、今回のように新築するにあたってシステムキッチンを囲う前提で家作りを進める場合は、いくつか検討していく点があります。それはキッチンのまわりに大工さんが腰壁を作るかどうかです。
まれに壁がなくても床に据えられるので大丈夫と言うキッチンもありましたが、おおかたの現場は腰壁を作るところが多いと思います。
電気配線や配管を壁内に通す必要があったり、またキッチンを固定するために壁が必要だったりすることが多いためです。
壁が作られる場合は、大工さんの作りかたにもよりますが、一般的には70ミリ前後の壁の厚みだったりします。
ペニンシュラキッチンでガスコンロの奥に壁を設ける場合は、レンジフードを取り付けるために130ミリくらいの壁の厚みになることも多いです。
この壁が厚いとリビングダイニング側の見せ方が変わってきて、もしそちら側に収納を作りたい、という場合は、壁の厚み分だけ収納の奥行が増えることになります。
収納の奥行が増えるということは、キッチンの手前からリビングダイニング側のキッチンの向こうの天板の端までの距離が遠くなってしまうということです。
ここがとても遠くなると、せっかく対面式にしたのに配膳の時に向こうまで手が届かない・・、ということも出てきます。
反対に作業面は奥行きが広く取れるので、対面からの作業は余裕をもって行うことができるようになります。
また、腰壁ができると、リビングダイニング側までフラットなワークトップにすることが難しい、という現場も過去にありました。
リビングまですっきり見渡せるキッチンにしたいけれど、腰壁を作らないといけないので、キッチンの手前にちょっとした壁ができて視界が見通せなくなる、ということ可能性も出てきます。
このあたりも工務店さんの設計や大工さんの造作の仕方によって納まりが変わってきます。
もし、こういう形で家具を作ってみたいと思われている方がいらっしゃいましたら、工務店さんにその納まりを事前に確認されると良いかと思います。
一番シンプルなのは、「おとうさん」茅ヶ崎 W様のようにキッチンだけがシンプルに置かれているだけの形だとまわりに家具をレイアウトしやすいところです。
今回も事前にTさんとそのあたりについて打ち合わせを済ませていまして、Tさんはその話を聞いた後にキッチンのショールームまで出かけて、カウンターがキャビネットからどのくらい出ているのか、実際のキッチンのサイズはどのくらいなのか細かく採寸してきてくれました。
このおかげで事前にある程度の内容を理解することができたので、詳細な設計をしておくことができました。
そうして、ほぼ形がまとまって建築現場の状況もキッチンが設置されたタイミングで現地確認にお伺いしました。
ご新居の建築場所は、板橋なのですが、このあたりでも何度かオーダー家具やオーダーキッチンのご相談を頂いたことがありましたので、少し懐かしさを感じます。
町の様子もちょっとぎゅうぎゅうした感じで、母の実家が文京の白山あたりだったので、町並みも何となく懐かしさを覚えるのでした。
ただ、その分住宅街も少し込み入っていて、Tさんの間取りも近所との距離が近いこともあってその視線が気にならないようにとバルコニーは最小限で、そのバルコニーも壁を高く立てて、周りの景色を見るというよりも採光が確保するためのバルコニーとなっていました。
となると、気になるのが搬入が可能かどうか。
今回Tさんのキッチンは2階になります。
キッチンを囲うパネルは分割可能な作りにしてあるので大丈夫だと思うのですが、一緒に作らせて頂くカップボードの天板は長さ2850ミリ。天井高よりも長いサイズです。
バルコニーからの搬入は難しいけれど、うまくいけば階段の上が吹き抜けているのでそこから入るかも・・、でもやってみないと分からないなあ・・。という感じで、ちょっと汗が出てきました。
どうしても階段が難しい場合は、1か所だけどうにかなりそうかも‥という窓がありました。
ただ、縦長の窓なので天板を立てた状態でその窓に差し込めるのか、手前にある電線は干渉しないのだろうか、と読めない部分があったのですが・・。
当日どうにか階段からあげることができた時には、ほっとひと安心しました。
あと50ミリ大きかったらつっかえていたかもしれない・・、と思うと安心した矢先にやはり汗が出てきましたが。
後日、とてもきれいに使ってくださっている様子を拝見させて頂きました。
1点気を使うところが、システムキッチンの側面に設けたオープン棚。
この天板は木の印象を大切にするために他と同じナラ材のオイル塗装で仕上げたのですが、よく水が掛かるところでもあります。
普段は水分が付着したらなるべく早く拭きとって通気をよくしていれば、染みや黒ずみがつくことは少ないのですが、フキンを置いてしまったり、濡れたものを置きっぱなしにすると、すぐにざらつきや変色が出る可能性があるところ。
この天板だけでもよいのでこまめにオイルやワックスで磨く方法をお伝えして、「このくらいから普段からできそうです。」とおっしゃって頂けてひと安心。
また使い込んできた頃に拝見できるとうれしいです。
システムキッチンでも食器棚と同じ素材で囲うことで、印象が大きく変わることはこのTさんの写真を見るとよく分かりました。
皆さんによくお伝えするのですが、キッチンがペニンシュラ型になるような間取りの場合は、リビングやダイニングから見た時のキッチンの印象を整えると全体がまとまると思うのです。キッチン自体の素材に食器棚を合わせるのではなく、食器棚に合わせてキッチンの背面や側面を同じ素材で囲うように揃えることで、このような温かな空間になるのだなとあらためて実感いたしました。
Tさん、ありがとうございました。
ホワイトオーク板目ランダム張り突板を使った食器棚
価格:750,000円(制作費・塗装費)
ホワイトオーク板目ランダム張り突板を使ったキッチンパネル
価格:300,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は50,000円から、取付施工費は90,000円から)


















