ベルダのしごと

Category : 木工小物と雑貨, Goods

2020年11月20日

ベルダのしごと 古知屋恵子

茅ヶ崎在住の木版画家古知屋恵子さんが描いた絵本の世界で何が起こるかな。
私たちがベルダと共に暮らすことができるかどうか、考えさせられますし、とても気持ちの深いところが温かくなります。
少しでもベルダのそばに近づけるようにと気持ちは馳せるのですが、自分にはまだそこは遠すぎて、読むたびに頂く気持ちだけは忘れずにいつかベルダのそばに立っていられたらよいなと願って。

古知屋恵子
茅ヶ崎市出身・在住で多摩美術大学油画科卒業の木版画家さん。2色刷りの木版画から多色刷りの温かい版画、手作りの絵本など幅広く作品を作り続けている作家さんです。また、いろいろな作家さんの挿絵も描かれているのでご存知の方も多いのではないでしょうか。

ベルダのしごと 作 古知屋恵子

価格:1,980円(本体価格 1,800円)
送料:約370円(ライトパック、3冊以上のご注文で送料無料です。)

※ご注文頂きましたら私たちから古知屋さんにお伝えして、ご本人から直接お電話が掛かってきます。もしお留守の場合はFAXが届きます。(すてきですね。)
そののち、古知屋さんから直接お送り頂く形をとっております。お手元に届きましたら、同封されている納品書に振込先が記載されておりますのでご確認後に代金をお支払いください。
どうぞ楽しみにしていてください。

※サインやイラストのご希望がありましたら、メッセージと一緒に描いてお送りしますよ。(古知屋さんから)。
※カレンダー代金のお支払いは、銀行振込のみになります。お振込み手数料のご負担をお願い致します。

ご注文はこちらから

各作品のご注文を希望される方は、こちらのオーダーフォームを開いてください

シンクのあるタモのアイランドカウンター

Category : 日記「自由な手たち」

2021年10月29日

以前、「静かな午後」のOさんの時にお世話になった、自由が丘にアトリエのあるオノ・デザインさんにお声掛け頂きまして、前回のさんの時と同じようにシンク側のキッチンを阿佐ヶ谷にご新居を建てるHさんのおうちに作らせて頂いたのです。

今回はタモを使って、天板はステンレスバイブレーション。ダイニング側は半分は座って食事ができるように奥行を深く採ったので、ちょっと変わった形です。

今回はヒロセ君が制作を担当してくれたのですが、難しかったのはやはりこのカクカクした意匠を留で納めていく部分。そして、カウンターの奥行きが深い部分は天板だけだと手前に垂れてしまうので、このタモのパネルの内側に太い特注のLアングルを入れているのですが、その納め方ですね。

それと、今回は側面もヨコ目でつながってくるので、側面キッチン側の手前は端嵌めで納める形にして、なるべく木の歪みが出ないように製作を進めたのでした。

でもできあがってから、昨日の納品まで少し時間が開いてしまったこともあって、やはり木が動きます。ただ、設置工事や使用するに際しての問題になるほどの動きではありませんので、そういう良さも美しさのひとつと見て、楽しんでHさんに使って頂けたらうれしく思います。

次回使っている様子を拝見できるのが楽しみです。

ガラス天板のあるチェリーのキッチン背面収納

Category : 日記「自由な手たち」

2021年10月26日

Hさんの奥様の発案で実現することになったガラスの天板。

まだ無塗装でこれからHさんが塗装してくださるので、はっきりとした色のコントラストは出ていないのですが、ガラスの下もチェリーの突板を張っているので、仕上がると大変メリハリのある家具になるのです。

最近は地震などのことを考えると、割れると危ないガラスよりもアクリルを使うことが多くなったのですが、増の揺らぎが無いガラスはやはりスッとした表情が美しいですね。破損防止にフィルムも施工してあるのですが、とても美しくガラスを仕上げてくださったので、素のままの印象です。

ただ私の勉強不足で、ガラスの入隅の加工は大変困難なことだと知らなくて、いろいろと行きつ戻りつしてしまいましたが、このようにきれいな納まりになりました。

次回は塗装の時に現場にお邪魔させて頂く予定です。

楽しみですね。

チェリーのアイランドキッチン

Category : 日記「自由な手たち」

2021年10月23日

Hさんのキッチンの設置を終えて、ヒロセ君とワタナベ君が戻ってきました。昨日の寒天とは打って変わって心地よい陽射しが西に降りる頃に戻ってきました。

中野なのですが泊りがけで出かけていたのです。コロナの状況が落ち着いてきたからなのか、道路がどこも車車でぎっしりで昨日現地に辿り着くまで2時間半も掛かってしまい、工房から2時間を越えるところになると往復するほうがデメリットが多いのです。

近くに宿が取れれば、みんなの体も楽ですからね。

ということで、本日無事に戻ってきました。

あとは来週背面収納を設置すれば完了なのですが、そのボリュームもなかなかありますので、段取りよく進めてきれいに納めましょう。

整理整頓

Category : 日記「自由な手たち」

私達の工房2階のショールームにいらしてくださったことのある方々はご存知だと思いますが、ショールームの1箇所がスタジオになっています。会長の趣味がカントリーバンドのギター&ボーカルということで以前は月に一度ここで演奏会が開かれていたのでした。音楽好きからオリジナルスピーカーの製作に繋がったのです。
会長やバンド仲間も高齢になり、その頻度が3ヶ月に一度、一年に一度と減ってきてしまいました。あまり使われなくなったその場所はずっとそのままになっていました。
使われなくなった場所には使わないものが置かれて溜まりやすくなって見栄えがよくなくなっていきました。気になってはいたのですが、私はその物たちが持つ思い出を知らないので、すぐ片付けられますが、持ち主にとっては簡単なことではなかったのでしょう。先日ダイスケさんと私で整理させてもらいました。
整理収納アドバイザー野中幸子さんに教わった通り、まず全部出す→仕分け→戻すものが決まったら収納の形と場所を決め表記する→お別れするものの行き先を決め仕分けておく。もちろん時々仕事に戻りながらですか、この全行程に3日間かかりました。捨てるものを分別ゴミに出すまでがお片づけですから、近所迷惑にならないくらい小出しにしていくとあと1ヶ月はかかると思います。
この作業、70代の方にはもうできないことだと思いました。重いアンプやスピーカーを運んだりは腰や膝に負担が大きいです。
お手伝いできてよかったのは、今まで知らなかったその物たちが持つお話をダイスケさんの思い出話と共に知ることができたことでした。それを知ったからには尚更もっとかっこよく他の方にも見てもらえるように飾りたいとも思えました。
もしまた、この先またライブをすることになってもすぐ配置を変えて使えるようになりましたよ。
ショールームにはオーダー家具、オーダーキッチンのほかにオリジナルスピーカーもありますので、そちらもぜひご覧になってくださいね。

肝心の会長に確認してもらいましたら「これ、ここにあったんだ!」と言ってもらえました。(笑)よかったです。

コーリアンとチェリーのL型キッチン

Category : 日記「自由な手たち」

2021年10月22日

Mさんのチェリーのキッチンもコーリアンが届いてようやく仮組完了。

この形状を1枚で制作するのは難しいということで、現場にてつなぎ目をシームレス加工して仕上げる予定。

最近なかなか納まりが難しいキッチンや、形状の少し変わった家具の相談を多く頂いていてたいへん悩むところです。

どれも初めて試みるところがあって、手探りで良い納まりを探していくことの難しさをあらためて感じながら、少しずつ前に進んでいくのです。

今日は、朝から中野までHさんのキッチン設置に出かけていました。古い集合住宅のリノベーションでして、アイランドキッチンのステンレスカウンターがおそらくエレベーターからも階段からも難しいだろうと思って、長いロープを用意して臨みましたら、どうにか階段からぐるぐる回すことができてひと安心。ヒロセ君とワタナベ君はそのまま施工を続けてもらっていて順調に進んでいるかな。

来週には背面の大きな食器棚を設置するとHさんの空間がよりキリッと引き締まってきますね。

あらためて少しずつ前に進んでいくのです。

クレミル2021のお知らせ

Category : 日記「自由な手たち」

2021年10月17日

年末のイベント「クレミル」ですが、このコロナの状況を考えまして、今年も開催しないことに決めておりました。

お知らせがたいへん遅くなってしまい、楽しみにしてくださっていた方々には申し訳ございません。

次回こそ笑顔で皆様にお会いできることを願っております。

その時まで皆さんで物作りを楽しんでもらえるようなあれこれを考えておきますね。

また、お世話になっているフリーペーパー「HANASHONAN」さんのイベントにはお誘いいただいたので参加します。

西湘・小田原住宅公園で開催される「住まいの応援フェスタ」で行われる「湘南フェスタ」11月23日10時~17時まで出店します。家具の展示と木工雑貨の販売を行う予定です。興味のある方・お近くの方はぜひ遊びにいらしてくださいね。

ホワイトオークの円卓

Category : 日記「自由な手たち」

2021年10月16日

Sさんから依頼されていたホワイトオークの円卓が完成しました。

ホワイトオークはナラに比べて導管の描く表情が大きいためダイナミックな仕上がりの家具になります。

ナラ材の単価が上がっている最近、このホワイトオークを使う機会もだんだんと増えております。

今回のSさんは「和む場所、にぎわう音」のSさん。あの時はホワイトオークの突板を主に使ってのキッチン制作でしたが、今回はそのリビング似合うようにということで同材の無垢を使っての制作です。

で、表情の良いホワイトオークですが、板の動きが出やすかったりするので、大きく板の反ったり歪んだりすることはないのですが、(無垢材ですから、少なからず板は動くのですが)割れがよく表れるのです。

今回も作っている過程で、天板の裏面に1ヶ所割れが出てきてしまって、そのまま使って頂くべきか、契りなどで割れが大きくなるのを予防すべきか、接ぎ直すべきか迷ったのですが、端部に近い場所でしたので接ぎ直すことに。

ただ、材にも限りがありますので、無駄に使うことなく、その木自身の個性を生かすような仕上げかたの工夫もこの先考えていくともっと良い表情がうまれるのかなあ、なんて思ったりするのです。

床を拭く

Category : エッセイ

2021年10月15日

私は決して掃除が大好きというわけではないのですが、アキコに言わせると「よく掃除をするほう」なのだそうです。
この家に越してきてからは以前の住まいよりも強く思うのが、床の足触りなのですね。
以前の住まいはマンションで、床材はウレタン塗装仕上げのフローリングでした。
ふだんは裸足で過ごしていることが多いので、ウレタン塗装の床だとペタペタという感触になるのです。
(揚げ物なんかしちゃうと、ペッタンペッタンって感じです。)
そんな床でしたが、時々床を拭き掃除すると、さらっとした感触がとても気持ちよかったものです。

こちらの家では床にアカマツを使ってオイルを塗って仕上げているので、特にその感触が心地よいのです。
でも普段サラッとした感じでいられるので、何かを踏むと結構気になっちゃうのですね。
例えば、米びつから落っこちた米粒、玄関から舞い上がった細かい砂、ポテトチップスのかけら(これは私の仕業です)、そして髪の毛。
我が家は娘二人なので女子3人なわけですが、もうそこらに髪の毛ちらほら落ちてしまって、仕方ないのでしょうけれど気になっちゃうんですね。
なんか気持ちわるい・・。
それで、家に居る時はもう朝ご飯食べてすぐに掃除機かけちゃって、気になったら汗ボタボタ垂らしながら床も拭いちゃう。(もちろん汗も拭きます)
僧居ているうちに木分もすっきりしてくるわけで、掃除をすることで自分の気持ちも整理しているのだなあと思えるのですが、娘たちは神妙な顔つきで、「またお父さん掃除しているなあ。」って感じで見ているのです。

ちなみに床は自分で雑巾絞って拭くことがやはり気持ち良いです。
児童で拭き掃除してくれる便利な道具も最近出ているようですが、私もアキコもそれは苦手で、食器も床も自分たちで洗うことが、自分たちが暮らしていることを実感できるようで好きなんです。
先日も床を拭いていたら、むかし自分で作った家具をよいッと動かしたら裏がこっそりカビていたりして、床と一緒に拭いてあげたり、遠い昔の米粒がひっそり隙間から現れたり、油が跳ねた後がうっすら黒くなっていて顔の模様のようになっていたり、真鍮のレールが黒ずんでいてホコリがついているのが分かりにくくなっていてそれでとの動きが重かったことが分かったり・・。

だから、お休みの日に掃除してひと風呂浴びてお酒飲んでご飯食べてという一連の作業は周りから見ると地味で大変に見えるのかもしれませんが、自分にとっては気持ちをきれいにする流れだったりします。

むかし、誰かの小説でこういう話を読んだことがありました。
とある大学生の青年が、自主学習の最中にふと室の窓から向こうに同級生の女性が住んでいることが分かったら、その女性の暮らしを眺めることが日課になってしまったのです。
それは覗きですから良くない行為なのですが、その日課にどうにも抗えなくしまった青年は、約1ヶ月間、学校にも行かず、身なりも整えず、風呂にも入らず、食事と睡眠の時以外はそのの望遠鏡越しに見える彼女の姿しか追うことができなくなってしまったのだそうです。
しかしふとある日何のきっかけか忘れましたが、眺める行為に全く興味が無くなり、きれいに身なりと部屋を整えて、普通の暮らしに戻っていく、というお話でした。

この時に思ったのは、人ってどうにでも変われるのだなあとあらためて思ったものでした。
私にも時々あります。
床にごみが落ちていても、洗い物がどっさりたまっていても、靴が乱雑に脱ぎ散らかされていても、まあいいやって思ってごろごろと映画を見続けていたりすることが。
気にしないと気にならなくなっちゃうんですよね。
さっきまで気になっていた髪の毛なんてどうでもよくなっちゃう。
怖いなあとも思うし、すごいなあとも思う。
この「気にならなくなっちゃう。」さまに陥らないように気を付けないといけないなあ。

でもそうならないのはなんでなんだろうって考えると、やっぱり自分が一人じゃないからなんだろうなあと思うのです。
自分ができるはずなのにそれをやらないと、自分に関わっている人たちが代わりにやらなくちゃいけない。
それって、淋しいのですね。
自分がその時に動いていれば、相手にはもっとゆとりが生まれて、お互いが一緒に過ごす時間が増えるのですから、それをしないでおくことは淋しいことです。

そういうふうに相手や周りを思う気持ちがあることできっと自分の気持ちもきれいになっていくのかなあと、日曜日の午後に床を拭きながら思うのでした。

エッセイ一覧に戻る

ただしい声の鳥

Category : エッセイ

ある夜、淋しい夢を見たような気がして流れた涙を伝う感触と、その淋しさで大きく肩をふるわせながら目を覚ましたタルベルの佇む窓辺に、深い夜でもはっきりとした青い羽根をもった低くただしい声をした鳥がやってきてこういうのでした。
「タルベル、私も淋しい夢を見ました。一人になってしまって、風と一緒に飛んでいくみんなの後を追いかけて、夜のなかを飛んでいたのです。
やがて空が白んでくるころ、ふと気が付くと私のほうがずっと先を飛んでいました。
強い思いは自分の目をくらましてしまうこともありますが、自分を大きく前に向かわせてくれます。私はあの夜、危うく大きな空の向こうに落ちてしまうところでしたが、お日様が私の目を覚ましてくれて、皆のもとに戻ることができました。あなたが見た淋しさは、きっとあなたを強くしてくれますよ。」

青い羽根が朝日を浴びてまるで銅色に輝き始めた正しい声の鳥のさえずりを心地よく聞いていたタルベルは見つめていた西の空からただしい声をした鳥のほうに顔を向けるとこう言いました。
「ありがとうございます。気持ちが正しくなりました。ごきげんよう、さようなら。」

ただしい声をした鳥は、この冬が終わりを告げて春がやってくることを教えてくれたのでした。
タルベルはもう居ません。

エッセイ一覧に戻る

床材の選び方。素材ごとの感じ方の違い

Category : エッセイ

もともと父が創業した当時の私たちの家具作りというのは、一般家庭向けの家具よりもお店に置く家具(というか什器)を作ることのほうが多く、またできあがった家具は工房まで運送屋さんが引き取りに来てくれて設置工事は大工さんが行なう、そういう昔ながらの木工屋の家具作りだったので、実際に使っている声を聞く機会がとても少なかったのです。
でも、こうしてインターネットが普及したおかげで、いろいろなところから直接家具のご相談を頂けるようになり、そのたびに私もいろいろなことを皆さんから聞くことができるようになった今日があるのです。そういう日々ですので、以前に比べると家具の形を考えるだけではなく、室内空間全体のことを相談されることも増えてきました。
さらにはオーダー家具だけではなく、オーダーキッチンを作らせて頂く機会が増えると、より家具やキッチン単体ではなく、暮らしの動線や時間の過ごしかたなどより生活に踏み込んだお話をすることが多くなってきました。

その時によくお話が出るのは、キッチンの床材をどうしたらよいか、というお話です。
リビングの床は、今のところほぼフローリングにされるお客様が多いですね。やはり木の床というのは気持ちが良いものです。
ただ、「リビングは汚れなさそうで良いのですが、キッチンに木を使うのはどうなのでしょうか。」とよく皆さんに聞かれるのです。
「お料理をしていると汚れたり、濡れたりすることが心配で・・。」と。

私も以前の住まいは、一般的なマンションでしたので、なかなかその感想を伝えることができず、こうしてようやく自宅を無垢のフローリングにしてみるまでは、いろいろなイメージばかりが先行してしまって、キッチンにフローリングということに私もすこし心配があったのです。でも暮らしてみるとそれほど気にならないかな、というところが正直な気持ちです。
もちろん、揚げ物などをすると油は跳ねるので、細かなシミはできたりします。それは日常的なお手入れで軽減できたり、徐々についてゆく暮らしのあとは私は良いものと思って受け入れることができます。それほど木の床は気持ち良いものだと思えています。

そもそも無垢の木を使うということは、材が動いて歪んだり、割れが起きたり、染みがついたりはしやすいものです。それよりもその表情自体、感触自体を楽しむために自然素材を使うのですから、無理に抑えつけたり、塗膜で覆ったりするのは材料にとってもストレスになるのではないかという思いがあります。
なので、無垢の木を使う場合にリビングダイニングなどはオイルなどの自然塗料で仕上げて、キッチンだけは木の内部に染みこまないようにウレタン塗装にするというのは少しもったいないかなと感じてしまうことがあります。

ただ、それぞれの暮らしの中で何を重視されるかはその人それぞれですので、木の表情が好きでも汚れが付くことが気になるという場合は、キッチンだけではなくリビングダイニングも掃除がしやすいようなウレタン塗装などのコーティングで仕上げるほうがまとまりが出て、美しく仕上がるのではないかと思っています。
以前に汚れやすいキッチンだけウレタン塗装で、他はオイル塗装で、と床を塗り分けて仕上げているところを拝見させてもらったことがありましたが、やはり仕上がりの印象に大きく違和感があって、明らかに表情が違ってしまうのです、ですので、キッチンとリビングダイニングとで見切り材などを入れない限りは、塗装を切り替えるのはかえって不自然に見えるのではないかと思っております。

むしろ、塗装で切り替えるのでしたら、別の素材にするほうが潔くきれいに見えると思うのです。
ただ、その素材によっては、個人的に良いものもあればよくないものもあると感じています。
私が良いと思えるものは、見た目の印象よりも手触り、足触りなどの感触が優しいものが良いと思えております。
こんなお話がありました。
よくフローリング以外にタイルにされる方も多くいらっしゃいます。
フローリングもタイルもその家に住む皆さんの好みですので、自分の中で最善と思える素材を選ばれることが良いかと思いますが、私はキッチンにタイルを張ることは少し躊躇してしまいます。
なぜなら冷たいからです。
私は毎日スリッパを履くという習慣がなく、どちらかというと冬でも裸足で過ごしていることが多いくらいでして、妻や娘たちはさすがに冬は寒いから靴下を履いてもやはり普段からスリッパを履く暮らしにはなりませんでした。
そうなると、タイルは冷たいのです。自宅の洗面所は掃除しやすさを優先してタイル張りにしたのでよく分かります。
風呂上りなどは、洗面所を移動するのにバスマットの上を飛び跳ねるように移動していたりしますので(笑)
特にキッチンは洗面所よりも長い時間を過ごすことが多い場所で、さらにはそこに立つ女性は冷え性になりやすかったりしますので、タイルの床は体が冷えてしまうこともあるそうで、やはりどのような素材でもメリット・デメリットがあるのだなあと実感するのです。
では、木が最善なのかというと、ほかにも良い素材をお客様から教えて頂いたことがありました。
コルクです。昔ながらの表情のコルクだけではなく、今はモダンな柄に仕上げられたコルクも出ていてタイルのようなシックな印象なのに、掃除もしやすく、さらに冷たくないものもあったりします。
いろいろな素材があるのだなあと日々勉強の毎日ですね。

さらに木のフローリングのなかでも樹種によっては見た目も違えば感じる印象も大きく違うものがあります。
先日、自宅のオープンハウスを行なった時に、以前にキッチンを作らせて頂いたお客様が遊びにいらしてくださったことがあったのです。
その時に、自宅に上がって開口一番「あ―、足が疲れないです。」そうおっしゃったのでした。
詳しくお話を聞くと、仕事で海外生活が長く、海外では、絨毯敷きでさらには靴を履く暮らしだったので感じなかったのだそうですが、いざ日本に戻ってくると自分の家の床は硬くて丈夫なナラ材。さらには海に近い場所に暮らしていることもあり、家では裸足で過ごすことが多くなると、なぜかかかとから脚が疲れて怠く感じる、なんだろうなって思っていたのだそうです。
その時に私の家に来て思ったのが先ほどの言葉でした。
私の自宅の床はアカマツ、そのお客様の床はナラ。
ナラは広葉樹の中でも傷がつきにくくて丈夫に使えるのですが、傷が付きにくい分堅いのです。硬いと踵からくる反動で脚やひざに感じますし、さらには硬い材は冷たいので、体が冷えやすかったりします。
アカマツは針葉樹ですので、木の中に空洞が多いので、柔らかくて傷つきやすいのですが、そのかわりに空洞に空気が含まれていて断熱効果もあるのです。
柔らかいため足が疲れにくく、冬でも床が冷たくなりすぎないので、歩いていて優しかったりします。
でも家の床はもう凹みだらけですけれどね。

選ぶ素材の違いで感じ方の違いもありますし、木を選んでも選ぶ木によっては感じ方が大きく変わるのです。
家を建てる、リノベーションをするというのは暮らしが大きく変わる場合もあります。
見た目が美しくなる、新しくなるということもとても気持ちが華やぐことですが、新しい暮らしがどのように変わるかが体験できるように素手や素足など自分の中できちんと感じ取ったうえで形や素材を決めてゆけると心地よい空間ができあがるのではないかと思うのです。

エッセイ一覧に戻る

カムカとシミル

Category : エッセイ

カムカは青く透明な玻璃でできたような空を見ていました。
「おーい、おーい。」
高くて空も凍るようなところを鳥が渡ります。
「はっはっはっ、やめろ、やめろ。お前の声なんて届くわけがないだろう。そんな奇態な真似はやめておくれ。」
シミルはそう言ってカムカの頭をポカポカと叩きながら笑います。

カムカは青く透明な瑠璃のような海の向こうを見つめていました。
「おーい、おーい。」
海の向こうの霜降りのような森のまた向こうの灯がかすかにチラチラとしています。
「はっはっはっ、やめろ、やめろ。お前の声なんて届くわけがないだろう。お前のつまらない声は私の耳をつぶしてしまうよ。」
シミルはそう言ってカムカの耳を叩きました。

シミルはその夜も帰ってこう思うのです。
「あのおかしなカムカと居ると、陽気で居られることこの上ない。毎日が愉快だ。ああ、明日は何をしてくれるだろうかな。」

カムカは、毎夜毎夜、空と海を交互に見つめて過ごします。
そして、ある日珍しくカムカの戸を叩くものが現れました。シミルは戸を叩いたりなんてしませんから。
「カムカさん、こんばんわ。あの時は通り過ぎてしまってすみませんでしたね。先に行ってしまった皆のためにもあそこで、私一人が列から外れるなどと言うことはできませんでしたので。
無事皆向こうにたどり着きました。
私は渡る鳥です。今日はあなたをお迎えにあがりました。」
「ああ、鳥さん。ずっと待っておりました。一緒に行きましょう。」
そういうと、鳥の背中にまたがったカムカは海の向こうの灯の先へと飛び立ちました。

次の日から現れないカムカのせいで、シミルは毎日しゃべる相手も見つからず、笑う相手も見つからず、口をつぐんでつまらないことばかり考えているうちに、次第に真っ暗になって、とうとう動かなくなってしまいました。

エッセイ一覧に戻る

Category : エッセイ

「おや、ようやくお目覚めだね。」

「うん、おかあさん、おとうさん。お早うございます。きゅうにぱちんと真っ暗になったと思いましたら、ゆっくりとここにおりてくる夢を見ました。でも、目が覚めたのに真っ暗なのはなぜなのですか。」

「ぼうや、もうすぐはっきりと見えるようになりますよ。もうすぐ春の風が吹いてきます。それにのってお出掛けしましょう。ですから、しばらくお待ちなさい。」

「ぼくたちはこれからどこに行くのですか。」

「ぼうや、それはね、私たちも知らないけれど、本当はみんなが知っている場所です。」

「それはどこでしょう、ふしぎな場所ですね。風がつれていってくれる場所で私たちはお休みするのですか。」

「ぼうや、私たちは風に乗って誰も知らない場所へ行き、いろいろなことをいろいろな場所で感じるのです。休むことなく、心地良くいろんなことをたくさん感じるためにどこまでも行くのです。」

「じゃあ、おかあさんとおとうさんと離れてしまうのでしょうか。ぼくはおとうさんやおかあさんとはなれるのはいやだなあ。さみしいなあ。」

「大丈夫です、ぼうや。私たちは、何と言うか、そう、とてもとても小さなつぶつぶになって、いろんなことを感じるのです。」

「つぶつぶですか。」

「そう、とてもとても小さくなって、今話しているお母さんやお父さんの気持ちもわかるし、昨日食べた小さな魚たちや雨上がりの朝に殺めてしまったミミズや眠る前に匂いを嗅いだ草花たちの気持ちも分かるようになるのですよ。
昨日寝ころんだふかふかした葉っぱにもなるし、キラキラしたお日様や虹色に輝く朝露にもなるのです。
そして、みんなでみんなの気持ちが分かるようになって、みんなでひとつの大きな風に乗ってどこまでもどこまでも行くのです。」

「うん。」

「ありがとう、ぼうや。では行きましょう。」

音もなく、軽やかに大きな風が不意にやってきて、みんなを乗せて何処かへ流れてゆきました。

春がやってきました。

エッセイ一覧に戻る

文字盤のない時計

Category : エッセイ

キッチンを作らせて頂くことになったNさんから、時計を作ってほしいと相談を頂いたことがありました。
「時計ですか・・。」
仕事で時計なんて作ることがなかったし、街中すてきな時計やもちろん木でできた時計もある。
いまさら私たちが作ることでNさんにとってどういった魅力があるのか、ということがなかなか当時は分からなかったのです。

「時計といっても、あの時間の数字、文字盤が普通は入っているじゃないですか。それは要らないのです。」
「なるほど・・。」
当時キッチンのほかに円卓、丸い座面のキッチンスツールの製作を依頼頂いていたので、その素材や形状に合わせた時計が欲しかったことと、何よりも文字盤は要らないということが大切なことだったのでした。
「キッチンに立っていて、ふと顔を上げた時に長針と短針がどのあたりを指しているのかがなんとなく分かればいいんです。かえってきちんとした時間が分からなくてよいくらい。」
文字盤のない時計か・・。
当時はなんでだろうって思いながら、同じタモ材を用意してムーブメントを用意して、せめて何となく時間が分かるようにと、目の詰んだ柾目材で作らせて頂きました。(写真の時計は板目ですが・・。)

でも、今になって何となく分かってきました。
全部がひとめではっきり見えてしまうと、全部がはっきりわかるまで物事を進めないといけないという気持ちになったりします。
でも、あいまいなで見えにくい部分があると私たちは自分でイメージして考えるのですよね。
本を読んでいる時に思い描いた風景と、映画で見た時に現れた風景の違いのように。
そういうゆったりした時間の移ろいが、「ああ、そろそろ子どもたちが帰ってくる時間だな。」とか「そろそろ洗濯物取り込もうかしら」とか次を考えるための余裕が生まれるというか。
何というか言葉が足りなくてすみません。
そろそろって思える気持ちに、余裕があるのだなってあらためて思うのです。

日も暮れて鳥たちもだんだん森へ帰ってしまって虫たちが鳴き始めたから、そろそろ寝ないといけないよ。とか、そういう時間の見つめ方っていいなって。時間を見て過ごすのではなく、自分の時間を知って過ごすって。

そういう感じが大切だって思えるようになってきたのです。

エッセイ一覧に戻る

オーダー家具の形は選択肢を広げて

Category : エッセイ

2021年10月14日

キッチンや家具をオーダーして作ってもらう機会ってなかなかないことだと思います。

私が中学生だった頃に父がこの仕事を始めたものですから、私にとって家具というのは「買うというよりは作るもの」ということが何となく日常ではあったのですが、普通は購入するものですものね。

今から26年ほど前、私がインテリアと建築の専門学校に通っていた頃でしょうか。

目黒通りが慌ただしくなっていろいろすてきな家具屋さんやインテリアや建築という言葉が日常でよく聞かれるようになり、あのころを境に建築家という言葉や家具をオーダーするということが少しずつ身近になってきたように思うのです。

ちょうど、「インターネットでホームページを作りましょう。」というような番組が教育テレビでちらほら放映されていた頃だと思います。

知らない情報が身近に手に入るという時代の幕開けの頃だったのかもしれません。

私もちょうどその頃にホームページを立ち上げて、少しずつですがオーダー家具というものを身近に知って頂けるようになってきました。

と、話がそれてしまいましたが、今日はキッチンや家具のご相談を頂く時に私が皆さんにお伝えしようと心掛けていることをお話したいと思います。

まずは、オーダーで作ってもらうってなかなか無い機会だと思いますので、ご相談を頂いた時には、皆さんから言われたことを「できます」「できません」とお伝えするだけではなく、なるべく私たちにどんなことができるか、家具にはどんな形があるか、どんな暮らしができるのかというお話をさせて頂いております。

・・・ちなみにまたお話それますが、「できません」とは言わない、という考えってあると思うのですが、私はできないことはきちんとできない、と伝えることも必要だと思っております。このお話もまた今度。・・・

具体的には、「引き出しを作りたいのです。」と言われた時には、使いやすいゆっくり閉まるスライドレールがあるとお話したり、押せば開く引き出しがあるというお話をしたり、コスト重視でシンプルなスライドレールをつけたり、もしくは細工を見せるためにレールを使わない昔ながらの引き出しの作り方をお知らせしたり。そして、それを選ぶことでどんな良いことがあって、どんな悪いこともあってというお話をさせて頂きます。

さらには、それを使うとこういう時間の過ごしかたができて、こういう空間の見せ方ができて、とお話は枝分かれに広がっていきます。

その話を聞いたお客様からも、さらに枝分かれにお話が広がっていって、かえって私自身知らなかったことを教わることもあったりします。

こうして、私たちでできることの広がりというか方法・可能性をすべてお伝えして、その中から家具を使う皆さんにとって、自身の暮らしにとって何か必要なのかをひとつずつ選んでもらうのです。

その選んでいく過程の中で、いつの間にかモヤモヤしていたイメージが整理されて、自分が望んでいるキッチンや家具の形が見えてきたり、暮らしかたが整っていったりするのです。

できます、できません、この中からセレクトしてください、だけでは思い描けなかったことが生まれるのです。

ですので、自分の望むキッチンや家具のかたちを考えていく作業って、いいかえると自分の暮らしを見つめ直す作業だって常々思っているのです。

いろいろな選択肢を示されて、自分はどんなふうにこのキッチンを、家具を使っていきたいのだろう、どう暮らしたいのだろう、自分には何か必要なのだろうって、皆さん時間をかけて悩まれるのですね。

「リビングボードにパソコンデスクを作ろうと思ったけれど、お話を聞いていたら、家でパソコンするよりもスマートフォンを使う時間のほうが多いと気づいて、それならときどきしか使わないデスクになりそうだから、ダイニングテーブルを広げてそこでパソコンやそれ以外の作業もできるように考えたほうがよいかな。」とか、

「小学校に上がる子供のためのデスクを作ろうと思ったけれど、お話を聞いていたら、子供はもっと親のそばに居たいことがよく分かりましたので、みんなで一緒に勉強や作業ができるようにダイニングテーブルを大きくします。」とか、

「イマイさんの家のキッチンの様に子供たちがもう少し大きくなったら、一緒にキッチンに立てるようにみんなで動きやすいキッチンにします。」とか。

そう。お話をしながらみなさん暮らしを見つめ直しているのです。

そして、その作業はとても大切です。

もちろん、見つめ直すと全てがうまくいくというわけではなく、できあがって暮らし始めてから、「ああ、こうする方法でも良かったかな。」と思い返すこともあるのですが、その過程を経てきたことで、自分の今の暮らしがあることのうれしさや大切さを感じられるっておっしゃってくださいます。

それから、打ち合わせが終わってひとつの家具の形が決まると、「あー、おもしろかった。自分の好みを思い描くことで自分の考えがどんどん研ぎ澄まされていくような感じ。」っておっしゃってくださった方もいらっしゃいました。

素晴らしい感覚です。

だから、私が皆さんにお話しする時には、まずどんなことができるかという「手の内を明かす」というのでしょうか。いろいろな道を見せてさしあげることがとても大事なことだと思っているのです。

でもね、いろいろな選択肢をお伝えしてお話がいろいろと広がっていても、結局最初の形に戻るってことが多かったりするのですけどね。

でも、それも見つめ直した結果です。

その結論に至るまでの過程がすべてその人のキッチンや家具の形の現れですから、要望が最初のシンプルな形に戻ったとしても、それはきちんと考えが巡ってたどり着いた先のことですので、最初の思いとは大きく違っています。

目に見えない思いが込められた形はこうして生まれるのです。

エッセイ一覧に戻る

収納計画は柔軟に

Category : エッセイ

少し前(6~8年前くらい)までは、リビングの壁一面にテレビまできちんと収納できて天井まで戸棚になっている壁面収納を作る機会が多かったのですが、「キッチン屋さん」なんて呼ばれるようになってオーダーキッチンを制作する機会が増えたからか、最近はそういった大きな壁面収納をご依頼頂く機会が少なくなってきたように思えます。

そういう大きな収納のご相談を頂く時は、皆さんけっこうしっかり収納計画を立ててご相談にいらしてくださる方が多かったです。

たしかに、そういう整理収納に関する書籍もたくさん出版されていて、「使いやすい高さやしまいたいものに合わせた収納を作りましょう。」というお話をよく見聞きしました。

しかし私が長年いろいろな家具作りをしてきて思うのは、「使いやすいサイズは、ずっと使いやすいサイズではいられない。」ということです。

<暮らしで必要とするものは時代とともに変わります>

今から10年前を振り返ると、私自身スマートフォンさえ持ち合わせていませんでした。

そのさらに昔には、家具の図面を描くのに平行定規というなんともアナログなものを使っている時代でした。それがパソコンで図面が描けるようになると目に見えないラインまで記録として残せるようになり、スマートフォンを持つことで地図帳も持たず、現場ではトランシーバーを使うこともなくなり、それひとつでプレゼンテーションが行なえるようになるなんて何という時代の移り変わりでしょう。

そう考えると、少し前によく考える機会が多かった「リビングにパソコンを使用するスペース」や「プリンタをしまうスペース」、「FAXをしまうスペース」、「CDをしまう引き出し」や「テレビを置くスペース」がもはや数年でガラッと変わってしまう時代になったのですね。

そういう諸々のものをリビングに置くことも少なくなり、そういう機器自体少なくなってきています。

パソコンは決まった場所で使うことなく、無線LANや軽量化によって家のどこでも使えるものとなったので、使う場所ではなくしまうだけの場所があればよくなり、FAXを持つ家庭も少なくなってきました。

CDやレコードをたくさんお持ちのかたも少なくなり、AV機器もとてもコンパクトで少数台で迫力ある音や映像が楽しめる時代になりました。

以前お客様のなかでも耳にしたのは、プリンタ収納を作ってもプリンタをしまう必要が無くなってしまったり、スピーカーを置けるスペースを確保しておいたけれど、小型で高性能のものを使い始めたらスペースを持て余してしまったということを聞いたことがありました。

<時間とともに家族との距離も変わります。>

お子さんがいらっしゃるご家庭ではまだお子さんが小さなうちに考える収納は、どうしても散らかりやすく増えやすいお子さんのものを主体に考えることが多くなります。玩具、学習文具、本、ゲーム機、などなど。

でも、子供は中学校に入るくらいになると、リビングで過ごすよりも自分の部屋で過ごすことが多くなるご家庭が多いです。

そうなると、「今まで子供部屋を物置のように使っていて、子供が自分の部屋を持つようになったら、その物をリビングにしまわないといけなくなりまして。」というお話をよく聞きます。

お子さんの細々したものをしまうサイズで考えていたところに、場合によってはゴルフバッグやトランクケースなど大きなものをしまう必要が出てくることも。

そうなると、あの時は使いやすかったリビングの大きな収納は、今ではかえって使いにくいものになってしまった、となってしまうこともあります。

このように、その物々がしまえる所定の場所を作ってしまうと、その物を使わなくなった時にその場所が必要なくなってしまって、せっかく作った収納がうまくいかせなくて、物が雑然としまわれることになってしまうこともあるのです。

もちろんオーダーで作ったものですから、そうなった時でも棚板を追加したり、扉だった部分を引き出しに作り替えたりすることも可能ですが、やはり柔軟に使い続けられる収納にしておくといつまでも不自由することが少なく使ってゆけるのではないかと思うのです。

そう考えると、オーダーで大きな収納を作る時に求められるものは、昔と考え方が大きく違ってきています。では、私の思う柔軟な収納は、というと、「必要最小限の要素で組み立てていく収納」と考えています。

具体的には、パントリーだったら、シンプルに扉を開けたら可動棚が入っているだけの形で、場合によっては引き出しを少しだけ。

リビングに作る場合は、お部屋の広さに余裕があるようでしたら、壁面いっぱいにあっても良いかと思いますが、個人的には高さを抑えたシンプルな扉のみの収納が良いのではないかと思っています。

扉を開けて棚が入っていて、そこに市販のケースを使って引き出し代わりに使う。

奥行を深く採る必要があったり、細々した文具やお薬など散らばりそうなものをしまうなら、奥のものが取り出しやすいように、細かなものが探しやすいように、引き出しを設けたりする。

機能を限定しないで、ゆとりのあるサイズや仕様にすることで、家具は使いやすくなるのではないかと思うのです。

家具を作る時には、いかにその物がその場所にしまえるように工夫された形よりも、その家具を使う皆さんの暮らしかたをお伺いして、今どういう暮らしをされたいか、こういう暮らしをしてゆくのならどういう形にすると使いやすい形を考えることが大事なのだと思うのです。

でもいろいろ考えても、行きつくところは結構シンプルな形になることが多いのです。

今度、この形が巡り巡って戻っているお話はまたどこかでお伝えしますね。

エッセイ一覧に戻る

写真撮影とメンテナンスというお付き合い

Category : エッセイ

オーダーキッチンやオーダー家具というのは、作って納品したらそこでお客様との関係が終わるのではなく、反対にそこから始まるものだと考えております。

オーダーして作ることの大きなメリットとしては、そういうお付き合いを通じて、ずっと使い続けることのできるキッチンや家具を提供できることだと思うのです。

どんなに長く使える良いものでも、キッチンや家具は暮らしていくための道具ですから、使うことで消耗していきます。引き出しや扉が開けづらくなったり、板が反ったり、天板にシミができたり・・。そうなった時にそのお手入れの方法をお伝えすることや修理することでずっと使い続けていくことができるのです。

その人の暮らしの中の場面場面でそういうお手伝いができることがずっと使い続けていくことができるものとの付き合い方なのだと思っております。

ですので、私としては家具を納品してしばらく経ったタイミングでなるべくお客様のところにお伺いできるようにしております。

それは、家具を使っている様子を見せて頂いて写真に納めたいという気持ちが大きいのですが、それだけではなく、家具の使い心地って使い始めてみないと分からないのですね。

特にご新居のお引渡の時にご説明しても、「家全体のお話のボリュームが大きいので、キッチンや家具の使い方まで頭に入ってこないのです。」と後からよく言われることがあります。

たしかに私が自宅を建てた時もそうでしたね。住み始めて取扱説明書を読みなおしたりして・・。

ですので、使い始めてからのほうが実感できるのです。

そこで、写真を撮らせて頂いた後にいろいろとお話をさせて頂きます。

例えば、引き出しの外し方。最近の引き出しはいろいろなスライドレールを使いますので、どのように外すかをお伝えします。良く引き出しの隙間からビニール袋や紙、輪ゴム、そういった細かいものが奥に落っこちてしまうことがあって、それを取る時に引き出しが外せなくて困ることがあるからです。

どのレールもどなたでも外せるようにワンタッチでロックが解除できるのですが、その解除の方法がレールによっていろいろあるのです。

そして、家具表面のお手入れ方法。

私たちの家具はオイル塗装とウレタン塗装で主に仕上げております。

ウレタン塗装の場合は、しっかりした塗膜が表面にできあがっているので、基本的にメンテナンスフリーで、水や洗剤をつけた布巾でしっかり掃除して頂いて大丈夫です。

ただ、ウレタン塗膜も10年くらいの時間が経つと少しは劣化してくるので、熱い湯ノミなどを置いておくとうっすらと白く輪っかが残ってしまうこともありますので、茶托などの熱を防いでくれるものを使ったほうがいつまでもきれいに使うことができます。

また、ウレタン樹脂はあくまで樹脂ですので、引っかき傷などがつくと白く跡が残ることがあるので、気を付けて使いたいです。

特に元々の木の色が濃いもの(チェリー材やウォールナット材など)にウレタンクリアで仕上げるとその引っかき傷が思ったよりも白く目立つのです。

でも、軽くついてしまった場合は蜜蝋などを擦り込んであげると目立たなくなることもあります。

オイル塗装の場合は、ウレタンよりも塗膜が薄い分、天然目そのままの手触りが楽しめるというメリットはあるのですが、その分汚れはつきやすかったりします。

それを味わいと捉えて頂くのも良いのですが、なるべくならお手入れをしながらきれいに使っていくうちに生まれる様子を味わいとしたいところです。

塗膜がうすいからお手入れが大変、というとそのようなことはなく、ごく自然に使って頂ければ、汚れはつきにくかったりします。

まず、汚れが付いたら、水拭きして頂いて大丈夫です。硬く絞った布巾で拭くことが理想ですが、小さなお子さんが納豆や油ものををこぼしてしまったりすると、なかなか撮りづらかったりしますので、多少水気を多くした付近で拭いて頂いても大丈夫です。

さらに落ちにくい食べ物汚れの場合は少し中性洗剤などを含ませて拭いて頂いても大丈夫です。ただ、そのあとはしっかり水拭きして洗剤を取り切ってくださいね。(アルカリ性洗剤が残ると黒ずみの原因になりますので。)

ただ、濡れた状態のまま何かものを置いてしまって通気が滞ると、少し黒ずんだ浸みになったりします。

また、濡れフキンをうっかり置きっぱなしにしてしまうと黒ずんでしまうことが多いのでお気を付けください。

基本は濡らしたら通気良くして乾かすことが木の表面への負担を掛けることなく使って頂けます。

また、ゴム製品を置いておくと、乾燥したオイルと反応するのか黒く痕が残ることがあります。

これはなかなか消えないので、ゴム脚の付いたものなどはなるべくそのまま置かずに何かを敷いたり、ゴムの部分にフェルトを張ったりすると良いです。

あとは一番なりやすい汚れが金属製品による黒ずみです。

缶ジュース、缶ビール、海苔の缶、茶筒、あとはホーローが剥げて金属が露出した器やトレイなど・・。

金属製のものが木の表面に濡れた状態で直接触れていると、木の中のタンニンと反応して、黒く後になってしまうのです。早いと40分くらいでうっすら黒くなることもあります。

そうなった時、私たちはレモンを使ってきれいにすることが多いです。(お酢だとあまり良い効果が見られませんでしたので。)

黒くなった部分にレモン汁を垂らして、そのまま3~4時間放置すると黒ずみが中和されて、色が抜けていきます。

そのあとにレモンのべたつきを水拭きして、その上から軽くペーパーで研磨をして、蜜蝋を塗ってあげるときれいになることがあります。

詳しくはこちらを参考にして頂けると分かりやすいかと思います。

「輪染みを消す方法 テーブルメンテナンス(オイル塗装の木のテーブルの場合)」

それから、先ほどまで水拭きしてください、と書きましたが、水拭きすることでオイルが少しずつ除去されていってしまうので、オイル塗装仕上げの家具は定期的にオイルを塗って頂けると表面が保護されます。水拭きだけではなく、エアコンの風が直接当たるところや直射日光が直接当たるところも木の表面がストレスを受けてざらつくので、やはりオイルをまめに塗ってあげると良いです。

また、その際にはそのままオイルや蜜蝋を塗っても良いのですが、油分をしみこませるだけでざらつきは取れませんので、先ほど書いたペーパーをあてることをお勧めします。400番~600番のサンドペーパーを軽く撫でるようにするだけでざらつきは取れますので、それからオイルや蜜蝋を塗ってあげるとツヤ良く手触り良くずっと使って頂くことができます。

良く言うのは、ウレタン塗装はお化粧品でいうファンデーションのようなしっかり外からのストレスを防ぐもので、オイル塗装は化粧水の様に内部に浸透して保湿するもののようなイメージです、とお伝えしています。

風が強くなったり、寒かったりすると肌は乾燥してヒビ切れしたりするように、木もオイルが摩耗してくると汚れが付きやすかったり、材らつきが出たりと表面が弱くなってきますので、保湿するようにオイルや蜜蝋を塗ってあげることで、木も心地よく使って頂くことができると思うのです。

写真撮影にお伺いした時にはそのようなお話をさせて頂きまして、私たちのキッチンや家具のと本当のお付き合いの始まりとさせて頂いております。

エッセイ一覧に戻る

キッチンをオーダーで考える時の動線と距離について

Category : エッセイ

キッチンを考える時に「どのようなデザイン・収納にしたいか」を考えることも大切ですが、「部屋のどの位置にキッチンを据えるか」も重要なことです。

【以前の家から学んだこと】

結婚当初に住んだ小さなアパートは、その名の通り小さいものですから、キッチンのすぐ横に庭に出る掃き出し窓があったのです。冬は冷えましたが、この外が近いという感覚はとても素敵で便利で、その次に移り住んだマンションに入る際の大きなポイントとして考えていたのはキッチンからベランダの距離が近いこと、すぐ出られるようになっているかどうかということでした。

勝手口のあるキッチンのレイアウト
以前暮らしていたマンションのキッチン。このバルコニーにすぐ出られる勝手口がとても便利だったのです。

これは今考えても良いところだったな、と思うのです。

玄関からキッチンはすこし遠かったのですが、洗面所に入るのにキッチン側からと、廊下側からのどちらからもアクセスできて、さらにキッチンの突きあたりには勝手口のようなバルコニーへの出入り口があったのでした。

この「回遊できる動線」「外への出入り口との距離」これがのちのち自宅を建てる時の一つの指標になったのです。

【動線】

ですので、今の自宅では玄関という外からすぐにキッチンに入ることができるようにして、そのままキッチンを抜けると洗面所までたどり着けるような間取りにしたのです。

回遊性のあるキッチンのレイアウト
建てた自宅のキッチン周りのレイアウト。ドアを開けるとアイランドキッチンのように使えるレイアウトに。

キッチンはペニンシュラ型でしたが、半ばアイランドのようなレイアウトになっておりましたので、キッチンをぐるりと回遊でき、さらには洗面所からはそのまま縁側に出られるようにすることで、キッチンだけではなく、家自体回遊できるようにしました。

玄関からそのまま洗面所に行ける動線
玄関から真っすぐ洗面所まで。
洗面所から庭に出てそのまま玄関へと回れる動線
洗面所からそのまま庭に出られて、さらに外を回れば玄関にも回り込める動線。

大きくなった子供たちと一緒にキッチンに立つとどうしても通路の行き来が狭くなる。だからと言って通路を広めにすると、主にキッチンを使用する妻にとっては、キッチンとバックカウンターの距離が遠くなりすぎてしまって、後ろの食器棚から器を出し入れする際に一歩踏み出さなくてはいけなくなってしまうので、広すぎるのもかえって良くないと考えていました。

そこで、狭い場合は反対からぐるりと回れるようにし、さらにはキッチンの対面側からも調理作業ができるこのレイアウトが大変使いやすかったのでした。

キッチンのワークスペースと人の距離感
うちは家族みんな体が大きいので、ちょっと広めのワークスペースを採ったのですが、4人が揃うとこれでも狭いのです・・。

また、今の家には勝手口は無いのですが、勝手口があった頃は、調理のゴミがある程度溜まったら、収集日までは勝手口から外に出して溜めておく、という作業が大変便利でした。

そこで今回は、玄関もしくは洗面所から庭に簡単に出られるようになっているので、キッチンから屋外へのゴミ出しも不便ないレイアウトにできました。また、こうすることでキッチンのそばに大きなゴミ箱を置かなくても良くなりましたので、分別が細かい私のまちですが、キッチンには燃えるゴミ(生ゴミ)、プラスチックごみ、紙ごみの3台のゴミ箱だけを置く形にして、ビンや缶はそのまま漱いだら直接玄関に置くようにしました。

さらにはゴミ箱も数が増えるとにぎやかに見えるので、リビングには置いていないため、みんながこのキッチンにごみを捨てに来るのです。そういう時もぐるりと回ることができることの心地良さを感じております。

オーソドックスなキッチンのレイアウトとしては、ペニンシュラ型が多いと思いますが、もし、ご家族皆さんでお料理する機会が多いかな、という場合は、キッチンスペースに行き止まりを作らずに狭くてもいいので通り道があると良い快適な空間になるのではないでしょうか。

さらには近くに土間や勝手口があるとゴミの分別の他に根菜や常温の保存食などを置いておくにも良く、工夫のしやすいキッチンになるのではと思うのです。

【距離】

また、使いやすいと感じるポイントは、使う人それぞれだと思いますが、ひとつはその使う人が感じる目的までの距離が心地よいかどうかだと思うのです。

自分を中心にぐるりとキッチンが囲まれる方が使いやすいと感じる距離や、一緒にだれかと立つ場合の距離感。

キッチン以外でもそうです。

洗濯機から物干し場までが近いほうがストレスなく過ごせると感じる人もいらっしゃれば、物干し場は太陽が良く照り付ける屋上が気持ち良いので洗濯機との距離は気にしないと考える方もいらっしゃいます。

動線にしても、距離にしても、その感じ方は一般的な寸法で測れるものではないので、家作りにおいては、自分や家族皆さんの感覚がどのように近いのか違うのかをコミュニケーションという物差しで測りながら、動線や距離を決めてゆくと居心地良い空間になるのだと思っております。

エッセイ一覧に戻る

香りの引き出し

Category : エッセイ

2021年10月15日

家具をいろいろと考える中でよく悩むことの中に引き出しがあります。
この引き出しには何を入れよう、ここはこのくらいの深さがいいなあ、そんな楽しい思いも一緒にしまおうとするくらいみなさん笑顔で悩む家具の中でもすてきな部分でもあります。

私が引き出しで思い出す中の一つにチークの小箱があります。
思い出す限り、私がきちんとした木工工作をした最初の頃のように思えます。
当時の私は小学校4年生で、担任の先生が確か退任されることなったのだと思います。厳しいけれど優しい先生で私たちから見ると、おばあちゃんという感じだったかな。
仲の良かった数人で何か贈りものをしよう、ということになり、じゃあ小物入れを作ろう、ということになったのでした。
当時まだ父は家具作りの仕事をしていたわけではなかったし、図工で木工をしたこともなかったので、何かを見よう見まねでみんなで作ったのだと思います。
今でいうとB5サイズくらいの大きさで高さ10センチくらいの大きさだったかなと記憶しています。
そこに皆で思い思いの絵を描いて、フタと引き出しがついた物入れができあがったのでした。
箱の中に箱がある引き出しを作ることができたということがすごいことをしたんだって気持ちでうれしくて、さっそくプレゼントしようと気持ちが軽やかになったのでした。

よし、では先生にさっそくあげて喜んでもらえればめでたしめでたしとなったのでしょうけれど、ここから何だかあまり覚えがなくて、先生が退任された後も、我が家のサイドボードの中にじっと居座ったままだったのでした。
何故だろうと、今思い起こすと先生は立派すぎて遠慮してもらってくれなかったような記憶がおぼろげに・・。
それでみんなで少ししょんぼりしていたような気持ちがしていたのをなんとなく思い出すのです。
でもね、それからしばらくはサイドボードを開けると、父が綺麗に保管していたレコード針のちょっと金属の香りと、チークの強い香りがふわっと漂ってきて、あの頃住んでいた田の字型の狭い団地の今を思い出すのです。

エッセイ一覧に戻る

パントリーについて

Category : エッセイ

2021年10月14日

私が自分の暮らしを見つめてみて、またいろいろなお客様のところに訪ねては、よく思うことが「パントリーと呼べるほどの大きなスペースではなくても、ある程度フレキシブルにいろいろなものがしまえる場所があると良い」ということです。

決まったものを決められた場所にしまう収納も大切なのですが、「とりあえずおいて置ける場所」という感じで、どんなものでも置きやすい場所があるのは大切だと思うのです。

家具を作る前にも作った後にもいろいろなお客様のお宅を訪ねることが多いのですが、ときどきお見かけするのが、収納家具を作ったのに、物がしまいきれていない方がいらっしゃることでした。

具体的には、普段保存しておくもの、ペットボトルのお水だったり、缶ビールだったり、キッチンペーパーだったり、お米だったり。

だいたい、買い置きしておきたいものって、運びやすいように取っ手がついていることが多いのですよね。取っ手がついていると、しばらくの間だけここに置いておこう、と思っていたものが、いつの間にかそこが定位置になってしまって、さらにその上にも細かなものが載ってしまって、下の方のものが取り出しづらくなってしまったりして・・。

物の場所を決めてしまうことも大切ですが、しばらくの間置いて置けるスペースが少しでもあると、たいへん使いやすくまた整理された気持ち良い空間になると思うのです。

それではそのパントリーを考えるとき、どのようなスペースだと使いやすいのでしょうか。

一般的にキッチンの引き出しなどには調理道具、調味料など調理に使用するものがすぐに取り出せるようにしまうことが多いです。そして、食器棚には名前の通りに食器をしまうことが多いです。

パントリーは半畳~2畳くらいの広さの収納スペースになることが多く、調理道具や食器以外の頻繁に出し入れすることの少ない主に貯蔵庫のように使われることが多いです。

乾物や缶詰、お米や水などのストックしておく食料を置いておけるのはもちろんですが、パントリーを設置する場所によっては持った目的に使うことができます。

私が今まで家具を作らせて頂いた皆様のなかで、物がしまいきれていないように見えた方々の室内にはやはりパントリーと呼べるような場所が無かったのでした。

部屋の間取り上、そういったスペースを取りづらい場合でも、パントリーの代わりになるような大きくなくても良いので物入れをひとつ決めておくと、家事をするのに決まった動線で無理なく動けて、部屋の整理整頓も進むと思っております。

我が家にもパントリーと呼べるスペースを設けませんでした。

パントリーという部屋を作ってしまうと居住スペースがかなり狭くなってしまうと思ったからです。

そこで、広めに取っていた玄関とその収納スペースの一部を、そして食器棚の一部にパントリーのように多目的に使える大きな扉の収納を設けて、その2か所をパントリー代わりにしたのです。

日が当たらないであまり暖まらない玄関に根菜や果物やペットボトルや収集日まで貯めて置くにおいの少ないゴミや、あとはキッチンとは関わりないのですが、外から帰ったら上着を掛けておくスペースも設けていてます。食器棚の一部には乾物、お菓子、比較的すぐ補充するお酒(笑)、かさばるタッパー類、お重などの季節の器、お菓子作りの道具、ときどきしか使わないオーブンの天板などがしまわれています。

ですので、個人的に理想的な場所だなと思えるのは玄関からキッチンに辿り着くまでの間で少しキッチン寄りの位置だと良いなと思っています。

一般的に、陽射しがよく入る南側のほうに居室などを持ってくると玄関やキッチンが北側になることも多いので、例えば、買い物から帰ってきて、キッチンで食材を分ける時にすぐ使うものは冷蔵庫やキッチンに、ストックはそのままパントリーに足が向くように、玄関からパントリーのそばを通ってキッチンに辿り着けるような動線で計画できると、「屋外から屋内への動き方」「キッチンでの作業中の動き方」がコンパクトにまとまって使いやすいのではないかと思うのです。

また、これとは別にキッチンの奥にパントリーを設ける場合もよくあります。

このような場合は、食材や普段使わない道具などを置くほかに、レンジやトースターの電化製品、または冷蔵庫を置くスペースを設けることで、キッチン周りは調理に専念できるように広く採る方も多くいらっしゃいます。

お一人でお料理に専念できる場合は、このようなスペースがとても使いやすいと思いますが、もし、ご家族皆さんでお料理される場合などは、キッチンからパントリーを抜けたらダイニングにアクセスできるようになっていたり、パントリーの奥に勝手口があって屋外に出られたら、なお良いかもしれませんね。

そして、玄関寄りも設ける場合でもキッチンの奥に設ける場合でもパントリーの形式は、そのスペースに入ったら、もしくは扉を開けたら見渡せるようになっていることが大切だと思っております。

単純に高さが変えられる棚がたくさん並んでいるだけのシンプルな形が一番フレキシブルにちょっと置く場所を実現できると思っております。

どんなものがしまえたらよいのかあれこれ悩むことなく、「とりあえずどのようなものでも見やすく置いておける場所」が少しでもあると、物の管理、整理がしやすく、また来客時にその都度片づけなくても整ったお部屋でいられますから、こういうスペースを設けておくのは毎日の暮らしにゆとりができて良いなと思うのです。

エッセイ一覧に戻る

吊戸棚について

Category : エッセイ

最近キッチンのオーダーを頂くなかで思うことに、「吊戸棚はいらない」とお考えの方が多くなっているなということがあります。

昔みたいに、キッチンというスペースが独立した場所ではなく、ダイニングやリビングと一体になって、さらにはそちらを向いて調理をするというレイアウトが好まれるようになったからか、部屋の一体感を出すために吊戸棚のように遮るものを無くしたいという考えの方が増えてきているように思えます。

それでも、引き足にグラスをしまうと倒れてしまうから戸棚に置きたかったり、すぐに取り出したいものは目線の高さにしまいたい場合など、吊戸棚には吊戸棚にしかない魅力もあります。

そこで、私たちが作らせて頂くなかで、吊戸棚がどのような形が多くなってきているかをご紹介したいと思います。

【引戸】

吊戸棚というと、以前は背の高さよりも高い位置につけることが多かったのですが、それだとしまったものを見つけにくかったり、物が取り出しにくかったりと、明らかに使いにくい収納になってしまいます。

そこで最近は目線の高さで物がしまえるように作ることが多いです。その場合、一番シンプルな形は開き扉になるのですが、その高さだと扉を開いた時に頭がぶつかりやすいのです。

そこで最近は引戸を取り入れるほうがメリットがあると考えております。

戸の下に車をつけたり、カーテンのように上から金物でぶら下げる金物があったりと、開け閉めが昔の様に重くなく、軽い動作で動かすことができるので、大きな戸を作ることができるため、以前のように開き扉の方が広く開けられるというデメリットが無くなります。

また、一番大きなメリットとしては、調理作業中は「戸を開けたまま作業ができる」ということです。

開き扉だと、その都度閉めないとぶつかってしまうのですが、引き戸の場合は作業中開けておけるので、使いたい道具や食器が一目で見渡せて、使い終わったら閉めればすっきり片付くのです。

ただ、ひとつデメリットとしては、引き違い戸になるので、扉が重なるため、その分開き扉の収納に比べて奥行が小さくなってしまうという点がありますが、それを差し引いても使い勝手は良いと思っております。

余談ですが、下から上に向かって開くフラップドアでお客様からご意見を頂いたことがありました。

フラップドアは開けるとだいたい背の高さよりも上あたりに扉が開いた状態で作ることが多いです。そうするとことで、開けっ放しのまま作業ができることと、大きな扉で作れるので、開けたら中を一度に見渡せるメリットがあります。

ただ、扉を開けたままにすること、大きな扉がバタンと閉まると危ないのでゆっくり閉まるようにすることの機能を持たせるためにソフトダウンステーという金物をよく使うのですが、ここに入っているバネが少し強くて、女性が開け閉めするのには「少し力が要るのね。」と何度か言われたことがありました。特に年を重ねていくと上に持ち上げる動作が大変になってくるので、それが毎回食事の時の動作となるとかえって不便で・・、と言われて、扉の形を変えたこともありました。

【天井まで作らない】

最近は吊戸棚を天井まで作らない方も増えています。

やはり上まで作っても物の出し入れには不便なので、それならば大きな吊戸棚がリビングから見えるよりは、コンパクトで使いやすい大きさのもの、そしてリビングから見ていて美しいデザインの戸棚にしたい、という考え方が多くなってきています。

だいたい使いやすい高さなので床から1400ミリくらいから1800ミリ、もしくは1900ミリくらいまでの高さ400ミリ~500ミリのコンパクトな形を考える方が多くなってきています。

そこに普段使いのグラス類、毎食事ごとに飲むお茶のセットなどをしまう方が多かったりします。

ただ、収納量はそれほど取れないので、前回お話したパントリー的なスペースが別にあるとこのお湯な吊戸棚の在り方が活きてくると思います。

このめいいっぱい作らないという点で以前にお客様から面白いお話を聞いたことがありました。

それは、「こうして、家具を取り付けた後のほうが家具が無かった時よりもかえって部屋が広く感じました。」と言われたことです。

なるほどおもしろいと思いました。

一般的に白く仕上げることが多い壁ですが、白だけだと空間の距離や広さが一見分かりづらかったりします。

でもそこに、木の色など別の色が壁の手前に入ってくることで実際の部屋の距離感が感覚的につかめて部屋の広さがあらためて分かるのです。

天井まで吊戸棚を作らないことで、壁とのメリハリが出てより部屋の広さを認識しやすく快適に感じるという要素もあるのではないかと思っています。

このように今回は2つのポイントで吊戸棚のことを伝えてみましたが、どのようなものをしまって普段どのように使っていきたいかと御いうご自身の暮らし方や動作、動線を思い描いていくと、少しずつ使いやすい形が見えてくるのではないかと思います。

エッセイ一覧に戻る

お店で売られている家具とオーダー家具の違い。それぞれのいいところ、よくないところ

Category : エッセイ

お店で売られている量産家具と私たちが作るオーダー家具との違いというと、やはり大きな違いは金額になると思います。

例えば、椅子などで考えてると分かりやすいのですが、インテリアショップなどに行くと、使いやすくてデザインの良いダイニングチェアなどは数万円で販売されています。高くても十万円前後というくらいでしょうか。

一方私たちがダイニングチェアを1脚だけ作ると、倍以上の金額が掛かってしまうことが多かったりします。

実は、ダイニングテーブルなどの大きな脚物家具(椅子、テーブル、ベッドなどの脚のある家具。反対に食器棚や収納家具は箱物家具)に比べて小振りな椅子のほうが制作工程がずっとずっと多いのです。

特に椅子は座る人の背に合わせて、後ろ脚や背もたれがカーブしているものが多く、曲線が出てくると、その型取りと成形を行なって、さらに四角い形状ではなく、丸い形状のものになると小鉋で1本ずつ削り出したりし、さらには座面に布や皮などが使われる場合は木と違った素材になるので作業工程が全く別に発生するため、加工手間がテーブルよりも多くかかることが多いのです。

では、量産の椅子はどうしてコストを抑えられるかというと、やはりその字のとおりに同じ形やサイズのものを大量に生産することでコストを抑えています。

背もたれだけを何十枚も作り、脚のホゾ穴加工を何百本も作ることで、作業工程をまとめられて時間が短縮できるので、コスト削減を実現できているのです。

では、そこまでして高額になるオーダーにするメリットはというと、すごく曖昧な表現ですが、「その人に合わせた形を作ることができること」これに尽きると思います。

「その人にあう」とは、その人の体形に合わせた形だったり、その人の暮らし方に自然に溶け込む形だったり、その人の気持ちが華やいだり、安らいだりするデザインだったりと、その人のその思いに応えて作ることができるということがオーダーの一番のメリットだと思います。

もちろん、量産品は、量産されるまでに試作、試験、いろいろな意見をフィードバックしながらその形を作っていくので、私たちのような小さな工房では知りえない素材や、知識が盛り込まれてできた良い製品が生まれます。

また、量産品でも訴求点が異なるため、便利な機能に特化したもの、デザインに特化したもの、価格に特化したもの、などカテゴライズされたいろいろな表現方法の家具があります。

そのようにある程度分類分けされているので、選ぶ人はその時々にあった形を選びやすいですし、金額も分かりやすい。

オーダーはもっとそういう分類がごちゃ混ぜになっていて、「機能」という引き出しからその人に必要な物を取り出し、「デザイン」という引き出しからその人の好むものを取り出し、それで作り上げていきます。

なので、私個人としてはオーダーで作るということは、家具そのものを作るだけではなく、その使う人の暮らしの一助になるような気配りというか目に見えない部分も一緒に作っていると思っています。

ただ、家具はあくまでも暮らしの道具です。

使って使って使い込むことでくたびれる、そういう使い方が美しいと思っています。

その人がその時に、何を重視して使いたいかという気持ちと、その家具の形がうまく合っていれば、量産品でもオーダーでもその人にとって良いものになると思っております。

例えばね、お客様のお宅に伺って、家具のお話を聞いていた時に、ふと今打ち合わせているテーブルに目が留まる。

「ああ、このテーブルは、私が一人暮らし始めた時に使い始めて、結婚してもこうしてそのまま使い続けているのです。当時は余裕もなかったから、町の家具量販店で買ったのですが、いつの間にかこんなに長く使っていたなって気づいたのです。」

よく見ると傷だらけだし、お子さんがいたずら書きして消した後がうっすら白くなっていたり、角に何かぶつけたらしい凹みがあったりして。でも表面は塗膜こそ薄れて、食器のシミがところどころについているけれど手触りはツルっとしている。

こういう使い方をされている家具に出会うことがあります。

美しいなって思うのです。

こういう使いかたをされたら本望だろうなと。

ですので、自分が必要と感じた時にちょうど良い家具にお店で巡りあえたらそれが一番良いのでしょうけれど、もし巡りあわなければオーダーで考えてみる、という選択肢をもっと気軽にとりいれてもらえるともうれしいなあと思うのです。

エッセイ一覧に戻る

カップのこわい顔

Category : エッセイ

2021年10月15日

子供のころ、祖母の家に行くのが怖いことがあったのです。
祖母の家は両方とも都内にあったので、私にとっては野山を駆け巡るじいちゃんばあちゃんちというのがうらやましかったのですが、それでも時々しか訪れることができない祖母の家は子供心にワクワクするのでした。
父方の祖母の家にはだいぶ前から物置になってしまった部屋には縁側を通っていかないといけないし、そこに入ると古い匂いがして、日は入ってくるし、すぐにみんながいる隣の部屋に行けるのですが、なぜかみんなの声が少し遠く聞こえていて別の世界のようでした。
でも、この部屋にたどり着く前にお仏壇がある部屋(ここがいつも私たちが遊びに来ると寝泊まりする部屋なのです)を通るのですが、この部屋に子供心にとても怖いカップがあったのでした。
カップ?と、周りに話すとくすっと笑われてしまうのですが、小学校の自分にはとても恐ろしいカップでした。
普通のマグカップにまつげが長くて真ん丸な目が大きく描かれていて、その下には厚ぼったい唇が描かれているカップ。
この部屋に入ってそのカップが正面を向いていると、もう私は恐ろしくて恐ろしくて、おいおい母にすがって泣いていたものでした。
そんな私の様子を両親は時々いたずらするようにカップを動かしたりするのですが、それがも何だかよく分からないけれどけれど怖い。
弟は全くそんなことなくケロッとしているので、まったく情けない兄でしたが、あのカップはどこに行ったのだろうか。
きっとあの大きなギラギラした目が怖かったのだろうなあ。

私が子供の時分はこうして暗くてよく分からなかったり、自分では理解できないものに漠然と畏怖の感情を持ったりしていたのですが、今ではかなりいろいろなことが分かってしまう世の中になりました。
わが娘たちは、まだ暗い部屋をきちんと怖がってくれるので安心です。

「悪いことをすると、押し入れのお化けが連れに来るよ。」
そういう漠然とした怖さってとても大切な感覚ですので、それを忘れないようにしたいなあとカップを見つめながら思うのです。

エッセイ一覧に戻る

キッチンのレイアウトについて

Category : エッセイ

2021年10月14日

私は料理をするとしても週末くらいで、どちらかというと家よりも工房に居る時間が多いので、キッチンのコーディネートやデザインというと差し出がましく思えるのですが、今までいろいろな方々のキッチンを作ってきて感じてきたことがいろいろあります。

こういう直接いろいろな意見を聞かせて頂くことができるオーダーという形は、私たちにとっても大変魅力のある家具作りの在り方だと思っているのです。

その中にひとつに「キッチンのレイアウト」について皆さんからいろいろなお話を聞かせて頂けたことがありました。

レイアウトというと、大まかに分けて、「I型」「セパレートタイプ」「L字型」「コの字型」に分けられることが多いです。

皆さんの好みがあると思いますが、今までお話伺っていて感じたことは、【一人で使いたいか】【みんなで使いたいか】で大きく意見が分かれるのだな、ということでした。

「うちではお料理はもっぱら私が作るだけなので、キッチンも私一人で使いやすい形にしたいのです。」

そういうご家庭でご要望が多かったレイアウトは、一人でガシガシ使えるようなL型やコの字型のレイアウトでした。

なぜL型やコの字型か、というと共通点は囲まれていることでした。

作業動線を少なくしたうえで、シンク、コンロ、調理スペースといろいろな仕事ができる場所にアクセスしやすいように自分の周りをキッチンで囲みたい、というご意見が多かったのです。

そのキッチン内のワークスペースも通常は、900ミリくらい採って、人とのすれ違いがしやすいように考えることが一般的ですが、「一人で作業したい」とおっしゃる方は反対に「水仕事をしていて振り返れば一歩足を踏み出さなくても作業台の上のものが撮れるようにこのスペースを狭くコンパクトにしてほしいのです。」と、800ミリくらいにされる方もいらっしゃいました。

反対に、「週末は家族みんなでキッチンで料理することが多かったりします。」

という皆さんが選ばれるのは、I型やセパレートタイプのレイアウトになることが多いです。

我が家もペニンシュラキッチンと食器棚として使っているバックカウンターがあるレイアウトです。

実際に使っていると娘たちもキッチンで何やらごそごそと作るのが好きですので、多い時は4人でキッチンの周りをガチャガチャとやるわけです。

さてI型の場合は、【壁を向いて作業をする形】と【ペニンシュラタイプのようにリビングダイニングを向いて作業をする形】の2つがあります。

どちらの場合でも、キッチンだけだと足りない収納量を補うためにキッチンの背面にバックカウンターがあると収納量・作業スペースの確保ができるので、とても使いやすいです。

具体的には、壁に向いたキッチンならダイニングとキッチンを仕切るようにアイランドカウンターがある形、ペニンシュラタイプなら私の自宅のようなバックカウンターがある形です。

こういうふうなレイアウトにすると、I型+カウンターとセパレートタイプのキッチンとの違いが曖昧に思えてきます。

では、どう違いがあるかというと、セパレートタイプのキッチンは水仕事と加熱仕事のスペースを分けることをセパレートタイプのキッチンと呼んでいます。

作業スペースを水、加熱と各々で広く採れるので、L型やコの字型よりももう少し料理に複数人で時間をかけて使いたい、という場合はこの形にされることが多かったりします。

また、レイアウトを考える上で大切なことのひとつに、動線があります。

帰宅してから食材を置いて冷蔵庫にしまう、しまった食材の中から使うものを水のそばに置く、水仕事を終えたら加熱スペースへと向かう。といった一連の流れがお部屋の間取りによっては、その食材を置いたり、作業をしたりするスペースの取り方がI型よりもセパレートタイプのほうが効率良く動ける場合が多かったりします。

そして、一人で使う上ではそれほど大きく気にならないかもしれませんが、複数の人たちでキッチンを使う上でとても大切だと思っていることがあります。

これは個人的な思いも強いのですが、複数でキッチンを使う場合は、I型もセパレートタイプもできれば、ワークスペースが通路のようになっていると良いと思っているのです。

ちょっと分かりづらいのですが、【行き止まりになるよりは通り抜けられる形がとても使いやすい】と考えております。

たとえば、一般的に加熱機器が置かれるのは壁際になることが多いです。

その手前で水仕事をしている人が居る時に、加熱仕事が終わって、ダイニングに向かおうとするときに水仕事をしている人の後ろを通るよりも別の通路があれば、そちらを通ってゆくと動線が重ならないので使いやすいと思うのです。さらにはバックカウンターでレンジを使って解凍している人が居たり、配膳の準備をする人が居たりすると、なおのこと別の通路があると便利です。

となると、つまるところは、アイランドタイプが使いやすいのではないかと感じているのです。

ただ、完全なアイランドになると、コンロ際に油や匂いを防ぐ壁がほしかったり、大きな空間がないとかえってアイランドはダイニングやリビングのスペースを圧迫することもあるので、完全なアイランドキッチンでなくても、ペニンシュラキッチンの突きあたりが玄関になってたり、廊下になっていたりして、戸を開けるともう一つの動線がうまれて回遊できるようになっているととても良いと考えているのです。もちろんその戸は片手で開けたままにしておきやすい【引戸】だとなお良いと思うのです。

ですので、私が皆さんのお話を伺いながらレイアウト考える時は、キッチンを使う人数や玄関からキッチンへの動線、勝手口があるか、回遊できるかなどご新居の間取りと皆さんの家族構成などを伺いながら、どの形が良いのかを提案させて頂いております。

あと一つ忘れておりました。パントリーがとても重要だということ。

それはまた今度お話しますね。

そして、もうひとつ面白いこと。私でも読めないのは、「キッチンが新しくなったら、主人が料理を始めるようになっちゃって、私の場所が狭くなってしまいました。(笑)」とうれしそうにお話しされていた方もいらっしゃったので、気持ちの移り変わりまでは、なかなか読めないのです。

エッセイ一覧に戻る