収納計画は柔軟に

2021.10.14

少し前(6~8年前くらい)までは、リビングの壁一面にテレビまできちんと収納できて天井まで戸棚になっている壁面収納を作る機会が多かったのですが、「キッチン屋さん」なんて呼ばれるようになってオーダーキッチンを制作する機会が増えたからか、最近はそういった大きな壁面収納をご依頼頂く機会が少なくなってきたように思えます。

そういう大きな収納のご相談を頂く時は、皆さんけっこうしっかり収納計画を立ててご相談にいらしてくださる方が多かったです。

たしかに、そういう整理収納に関する書籍もたくさん出版されていて、「使いやすい高さやしまいたいものに合わせた収納を作りましょう。」というお話をよく見聞きしました。

しかし私が長年いろいろな家具作りをしてきて思うのは、「使いやすいサイズは、ずっと使いやすいサイズではいられない。」ということです。

<暮らしで必要とするものは時代とともに変わります>

今から10年前を振り返ると、私自身スマートフォンさえ持ち合わせていませんでした。

そのさらに昔には、家具の図面を描くのに平行定規というなんともアナログなものを使っている時代でした。それがパソコンで図面が描けるようになると目に見えないラインまで記録として残せるようになり、スマートフォンを持つことで地図帳も持たず、現場ではトランシーバーを使うこともなくなり、それひとつでプレゼンテーションが行なえるようになるなんて何という時代の移り変わりでしょう。

そう考えると、少し前によく考える機会が多かった「リビングにパソコンを使用するスペース」や「プリンタをしまうスペース」、「FAXをしまうスペース」、「CDをしまう引き出し」や「テレビを置くスペース」がもはや数年でガラッと変わってしまう時代になったのですね。

そういう諸々のものをリビングに置くことも少なくなり、そういう機器自体少なくなってきています。

パソコンは決まった場所で使うことなく、無線LANや軽量化によって家のどこでも使えるものとなったので、使う場所ではなくしまうだけの場所があればよくなり、FAXを持つ家庭も少なくなってきました。

CDやレコードをたくさんお持ちのかたも少なくなり、AV機器もとてもコンパクトで少数台で迫力ある音や映像が楽しめる時代になりました。

以前お客様のなかでも耳にしたのは、プリンタ収納を作ってもプリンタをしまう必要が無くなってしまったり、スピーカーを置けるスペースを確保しておいたけれど、小型で高性能のものを使い始めたらスペースを持て余してしまったということを聞いたことがありました。

<時間とともに家族との距離も変わります。>

お子さんがいらっしゃるご家庭ではまだお子さんが小さなうちに考える収納は、どうしても散らかりやすく増えやすいお子さんのものを主体に考えることが多くなります。玩具、学習文具、本、ゲーム機、などなど。

でも、子供は中学校に入るくらいになると、リビングで過ごすよりも自分の部屋で過ごすことが多くなるご家庭が多いです。

そうなると、「今まで子供部屋を物置のように使っていて、子供が自分の部屋を持つようになったら、その物をリビングにしまわないといけなくなりまして。」というお話をよく聞きます。

お子さんの細々したものをしまうサイズで考えていたところに、場合によってはゴルフバッグやトランクケースなど大きなものをしまう必要が出てくることも。

そうなると、あの時は使いやすかったリビングの大きな収納は、今ではかえって使いにくいものになってしまった、となってしまうこともあります。

このように、その物々がしまえる所定の場所を作ってしまうと、その物を使わなくなった時にその場所が必要なくなってしまって、せっかく作った収納がうまくいかせなくて、物が雑然としまわれることになってしまうこともあるのです。

もちろんオーダーで作ったものですから、そうなった時でも棚板を追加したり、扉だった部分を引き出しに作り替えたりすることも可能ですが、やはり柔軟に使い続けられる収納にしておくといつまでも不自由することが少なく使ってゆけるのではないかと思うのです。

そう考えると、オーダーで大きな収納を作る時に求められるものは、昔と考え方が大きく違ってきています。では、私の思う柔軟な収納は、というと、「必要最小限の要素で組み立てていく収納」と考えています。

具体的には、パントリーだったら、シンプルに扉を開けたら可動棚が入っているだけの形で、場合によっては引き出しを少しだけ。

リビングに作る場合は、お部屋の広さに余裕があるようでしたら、壁面いっぱいにあっても良いかと思いますが、個人的には高さを抑えたシンプルな扉のみの収納が良いのではないかと思っています。

扉を開けて棚が入っていて、そこに市販のケースを使って引き出し代わりに使う。

奥行を深く採る必要があったり、細々した文具やお薬など散らばりそうなものをしまうなら、奥のものが取り出しやすいように、細かなものが探しやすいように、引き出しを設けたりする。

機能を限定しないで、ゆとりのあるサイズや仕様にすることで、家具は使いやすくなるのではないかと思うのです。

家具を作る時には、いかにその物がその場所にしまえるように工夫された形よりも、その家具を使う皆さんの暮らしかたをお伺いして、今どういう暮らしをされたいか、こういう暮らしをしてゆくのならどういう形にすると使いやすい形を考えることが大事なのだと思うのです。

でもいろいろ考えても、行きつくところは結構シンプルな形になることが多いのです。

今度、この形が巡り巡って戻っているお話はまたどこかでお伝えしますね。

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写真撮影とメンテナンスというお付き合い

2021.10.14

オーダーキッチンやオーダー家具というのは、作って納品したらそこでお客様との関係が終わるのではなく、反対にそこから始まるものだと考えております。

オーダーして作ることの大きなメリットとしては、そういうお付き合いを通じて、ずっと使い続けることのできるキッチンや家具を提供できることだと思うのです。

どんなに長く使える良いものでも、キッチンや家具は暮らしていくための道具ですから、使うことで消耗していきます。引き出しや扉が開けづらくなったり、板が反ったり、天板にシミができたり・・。そうなった時にそのお手入れの方法をお伝えすることや修理することでずっと使い続けていくことができるのです。

その人の暮らしの中の場面場面でそういうお手伝いができることがずっと使い続けていくことができるものとの付き合い方なのだと思っております。

ですので、私としては家具を納品してしばらく経ったタイミングでなるべくお客様のところにお伺いできるようにしております。

それは、家具を使っている様子を見せて頂いて写真に納めたいという気持ちが大きいのですが、それだけではなく、家具の使い心地って使い始めてみないと分からないのですね。

特にご新居のお引渡の時にご説明しても、「家全体のお話のボリュームが大きいので、キッチンや家具の使い方まで頭に入ってこないのです。」と後からよく言われることがあります。

たしかに私が自宅を建てた時もそうでしたね。住み始めて取扱説明書を読みなおしたりして・・。

ですので、使い始めてからのほうが実感できるのです。

そこで、写真を撮らせて頂いた後にいろいろとお話をさせて頂きます。

例えば、引き出しの外し方。最近の引き出しはいろいろなスライドレールを使いますので、どのように外すかをお伝えします。良く引き出しの隙間からビニール袋や紙、輪ゴム、そういった細かいものが奥に落っこちてしまうことがあって、それを取る時に引き出しが外せなくて困ることがあるからです。

どのレールもどなたでも外せるようにワンタッチでロックが解除できるのですが、その解除の方法がレールによっていろいろあるのです。

そして、家具表面のお手入れ方法。

私たちの家具はオイル塗装とウレタン塗装で主に仕上げております。

ウレタン塗装の場合は、しっかりした塗膜が表面にできあがっているので、基本的にメンテナンスフリーで、水や洗剤をつけた布巾でしっかり掃除して頂いて大丈夫です。

ただ、ウレタン塗膜も10年くらいの時間が経つと少しは劣化してくるので、熱い湯ノミなどを置いておくとうっすらと白く輪っかが残ってしまうこともありますので、茶托などの熱を防いでくれるものを使ったほうがいつまでもきれいに使うことができます。

また、ウレタン樹脂はあくまで樹脂ですので、引っかき傷などがつくと白く跡が残ることがあるので、気を付けて使いたいです。

特に元々の木の色が濃いもの(チェリー材やウォールナット材など)にウレタンクリアで仕上げるとその引っかき傷が思ったよりも白く目立つのです。

でも、軽くついてしまった場合は蜜蝋などを擦り込んであげると目立たなくなることもあります。

オイル塗装の場合は、ウレタンよりも塗膜が薄い分、天然目そのままの手触りが楽しめるというメリットはあるのですが、その分汚れはつきやすかったりします。

それを味わいと捉えて頂くのも良いのですが、なるべくならお手入れをしながらきれいに使っていくうちに生まれる様子を味わいとしたいところです。

塗膜がうすいからお手入れが大変、というとそのようなことはなく、ごく自然に使って頂ければ、汚れはつきにくかったりします。

まず、汚れが付いたら、水拭きして頂いて大丈夫です。硬く絞った布巾で拭くことが理想ですが、小さなお子さんが納豆や油ものををこぼしてしまったりすると、なかなか撮りづらかったりしますので、多少水気を多くした付近で拭いて頂いても大丈夫です。

さらに落ちにくい食べ物汚れの場合は少し中性洗剤などを含ませて拭いて頂いても大丈夫です。ただ、そのあとはしっかり水拭きして洗剤を取り切ってくださいね。(アルカリ性洗剤が残ると黒ずみの原因になりますので。)

ただ、濡れた状態のまま何かものを置いてしまって通気が滞ると、少し黒ずんだ浸みになったりします。

また、濡れフキンをうっかり置きっぱなしにしてしまうと黒ずんでしまうことが多いのでお気を付けください。

基本は濡らしたら通気良くして乾かすことが木の表面への負担を掛けることなく使って頂けます。

また、ゴム製品を置いておくと、乾燥したオイルと反応するのか黒く痕が残ることがあります。

これはなかなか消えないので、ゴム脚の付いたものなどはなるべくそのまま置かずに何かを敷いたり、ゴムの部分にフェルトを張ったりすると良いです。

あとは一番なりやすい汚れが金属製品による黒ずみです。

缶ジュース、缶ビール、海苔の缶、茶筒、あとはホーローが剥げて金属が露出した器やトレイなど・・。

金属製のものが木の表面に濡れた状態で直接触れていると、木の中のタンニンと反応して、黒く後になってしまうのです。早いと40分くらいでうっすら黒くなることもあります。

そうなった時、私たちはレモンを使ってきれいにすることが多いです。(お酢だとあまり良い効果が見られませんでしたので。)

黒くなった部分にレモン汁を垂らして、そのまま3~4時間放置すると黒ずみが中和されて、色が抜けていきます。

そのあとにレモンのべたつきを水拭きして、その上から軽くペーパーで研磨をして、蜜蝋を塗ってあげるときれいになることがあります。

詳しくはこちらを参考にして頂けると分かりやすいかと思います。

「輪染みを消す方法 テーブルメンテナンス(オイル塗装の木のテーブルの場合)」

それから、先ほどまで水拭きしてください、と書きましたが、水拭きすることでオイルが少しずつ除去されていってしまうので、オイル塗装仕上げの家具は定期的にオイルを塗って頂けると表面が保護されます。水拭きだけではなく、エアコンの風が直接当たるところや直射日光が直接当たるところも木の表面がストレスを受けてざらつくので、やはりオイルをまめに塗ってあげると良いです。

また、その際にはそのままオイルや蜜蝋を塗っても良いのですが、油分をしみこませるだけでざらつきは取れませんので、先ほど書いたペーパーをあてることをお勧めします。400番~600番のサンドペーパーを軽く撫でるようにするだけでざらつきは取れますので、それからオイルや蜜蝋を塗ってあげるとツヤ良く手触り良くずっと使って頂くことができます。

良く言うのは、ウレタン塗装はお化粧品でいうファンデーションのようなしっかり外からのストレスを防ぐもので、オイル塗装は化粧水の様に内部に浸透して保湿するもののようなイメージです、とお伝えしています。

風が強くなったり、寒かったりすると肌は乾燥してヒビ切れしたりするように、木もオイルが摩耗してくると汚れが付きやすかったり、材らつきが出たりと表面が弱くなってきますので、保湿するようにオイルや蜜蝋を塗ってあげることで、木も心地よく使って頂くことができると思うのです。

写真撮影にお伺いした時にはそのようなお話をさせて頂きまして、私たちのキッチンや家具のと本当のお付き合いの始まりとさせて頂いております。

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キッチンをオーダーで考える時の動線と距離について

2021.10.14

キッチンを考える時に「どのようなデザイン・収納にしたいか」を考えることも大切ですが、「部屋のどの位置にキッチンを据えるか」も重要なことです。

【以前の家から学んだこと】

結婚当初に住んだ小さなアパートは、その名の通り小さいものですから、キッチンのすぐ横に庭に出る掃き出し窓があったのです。冬は冷えましたが、この外が近いという感覚はとても素敵で便利で、その次に移り住んだマンションに入る際の大きなポイントとして考えていたのはキッチンからベランダの距離が近いこと、すぐ出られるようになっているかどうかということでした。

勝手口のあるキッチンのレイアウト
以前暮らしていたマンションのキッチン。このバルコニーにすぐ出られる勝手口がとても便利だったのです。

これは今考えても良いところだったな、と思うのです。

玄関からキッチンはすこし遠かったのですが、洗面所に入るのにキッチン側からと、廊下側からのどちらからもアクセスできて、さらにキッチンの突きあたりには勝手口のようなバルコニーへの出入り口があったのでした。

この「回遊できる動線」「外への出入り口との距離」これがのちのち自宅を建てる時の一つの指標になったのです。

【動線】

ですので、今の自宅では玄関という外からすぐにキッチンに入ることができるようにして、そのままキッチンを抜けると洗面所までたどり着けるような間取りにしたのです。

回遊性のあるキッチンのレイアウト
建てた自宅のキッチン周りのレイアウト。ドアを開けるとアイランドキッチンのように使えるレイアウトに。

キッチンはペニンシュラ型でしたが、半ばアイランドのようなレイアウトになっておりましたので、キッチンをぐるりと回遊でき、さらには洗面所からはそのまま縁側に出られるようにすることで、キッチンだけではなく、家自体回遊できるようにしました。

玄関からそのまま洗面所に行ける動線
玄関から真っすぐ洗面所まで。
洗面所から庭に出てそのまま玄関へと回れる動線
洗面所からそのまま庭に出られて、さらに外を回れば玄関にも回り込める動線。

大きくなった子供たちと一緒にキッチンに立つとどうしても通路の行き来が狭くなる。だからと言って通路を広めにすると、主にキッチンを使用する妻にとっては、キッチンとバックカウンターの距離が遠くなりすぎてしまって、後ろの食器棚から器を出し入れする際に一歩踏み出さなくてはいけなくなってしまうので、広すぎるのもかえって良くないと考えていました。

そこで、狭い場合は反対からぐるりと回れるようにし、さらにはキッチンの対面側からも調理作業ができるこのレイアウトが大変使いやすかったのでした。

キッチンのワークスペースと人の距離感
うちは家族みんな体が大きいので、ちょっと広めのワークスペースを採ったのですが、4人が揃うとこれでも狭いのです・・。

また、今の家には勝手口は無いのですが、勝手口があった頃は、調理のゴミがある程度溜まったら、収集日までは勝手口から外に出して溜めておく、という作業が大変便利でした。

そこで今回は、玄関もしくは洗面所から庭に簡単に出られるようになっているので、キッチンから屋外へのゴミ出しも不便ないレイアウトにできました。また、こうすることでキッチンのそばに大きなゴミ箱を置かなくても良くなりましたので、分別が細かい私のまちですが、キッチンには燃えるゴミ(生ゴミ)、プラスチックごみ、紙ごみの3台のゴミ箱だけを置く形にして、ビンや缶はそのまま漱いだら直接玄関に置くようにしました。

さらにはゴミ箱も数が増えるとにぎやかに見えるので、リビングには置いていないため、みんながこのキッチンにごみを捨てに来るのです。そういう時もぐるりと回ることができることの心地良さを感じております。

オーソドックスなキッチンのレイアウトとしては、ペニンシュラ型が多いと思いますが、もし、ご家族皆さんでお料理する機会が多いかな、という場合は、キッチンスペースに行き止まりを作らずに狭くてもいいので通り道があると良い快適な空間になるのではないでしょうか。

さらには近くに土間や勝手口があるとゴミの分別の他に根菜や常温の保存食などを置いておくにも良く、工夫のしやすいキッチンになるのではと思うのです。

【距離】

また、使いやすいと感じるポイントは、使う人それぞれだと思いますが、ひとつはその使う人が感じる目的までの距離が心地よいかどうかだと思うのです。

自分を中心にぐるりとキッチンが囲まれる方が使いやすいと感じる距離や、一緒にだれかと立つ場合の距離感。

キッチン以外でもそうです。

洗濯機から物干し場までが近いほうがストレスなく過ごせると感じる人もいらっしゃれば、物干し場は太陽が良く照り付ける屋上が気持ち良いので洗濯機との距離は気にしないと考える方もいらっしゃいます。

動線にしても、距離にしても、その感じ方は一般的な寸法で測れるものではないので、家作りにおいては、自分や家族皆さんの感覚がどのように近いのか違うのかをコミュニケーションという物差しで測りながら、動線や距離を決めてゆくと居心地良い空間になるのだと思っております。

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香りの引き出し

2021.10.15

家具をいろいろと考える中でよく悩むことの中に引き出しがあります。
この引き出しには何を入れよう、ここはこのくらいの深さがいいなあ、そんな楽しい思いも一緒にしまおうとするくらいみなさん笑顔で悩む家具の中でもすてきな部分でもあります。

私が引き出しで思い出す中の一つにチークの小箱があります。
思い出す限り、私がきちんとした木工工作をした最初の頃のように思えます。
当時の私は小学校4年生で、担任の先生が確か退任されることなったのだと思います。厳しいけれど優しい先生で私たちから見ると、おばあちゃんという感じだったかな。
仲の良かった数人で何か贈りものをしよう、ということになり、じゃあ小物入れを作ろう、ということになったのでした。
当時まだ父は家具作りの仕事をしていたわけではなかったし、図工で木工をしたこともなかったので、何かを見よう見まねでみんなで作ったのだと思います。
今でいうとB5サイズくらいの大きさで高さ10センチくらいの大きさだったかなと記憶しています。
そこに皆で思い思いの絵を描いて、フタと引き出しがついた物入れができあがったのでした。
箱の中に箱がある引き出しを作ることができたということがすごいことをしたんだって気持ちでうれしくて、さっそくプレゼントしようと気持ちが軽やかになったのでした。

よし、では先生にさっそくあげて喜んでもらえればめでたしめでたしとなったのでしょうけれど、ここから何だかあまり覚えがなくて、先生が退任された後も、我が家のサイドボードの中にじっと居座ったままだったのでした。
何故だろうと、今思い起こすと先生は立派すぎて遠慮してもらってくれなかったような記憶がおぼろげに・・。
それでみんなで少ししょんぼりしていたような気持ちがしていたのをなんとなく思い出すのです。
でもね、それからしばらくはサイドボードを開けると、父が綺麗に保管していたレコード針のちょっと金属の香りと、チークの強い香りがふわっと漂ってきて、あの頃住んでいた田の字型の狭い団地の今を思い出すのです。

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パントリーについて

2021.10.14

私が自分の暮らしを見つめてみて、またいろいろなお客様のところに訪ねては、よく思うことが「パントリーと呼べるほどの大きなスペースではなくても、ある程度フレキシブルにいろいろなものがしまえる場所があると良い」ということです。

決まったものを決められた場所にしまう収納も大切なのですが、「とりあえずおいて置ける場所」という感じで、どんなものでも置きやすい場所があるのは大切だと思うのです。

家具を作る前にも作った後にもいろいろなお客様のお宅を訪ねることが多いのですが、ときどきお見かけするのが、収納家具を作ったのに、物がしまいきれていない方がいらっしゃることでした。

具体的には、普段保存しておくもの、ペットボトルのお水だったり、缶ビールだったり、キッチンペーパーだったり、お米だったり。

だいたい、買い置きしておきたいものって、運びやすいように取っ手がついていることが多いのですよね。取っ手がついていると、しばらくの間だけここに置いておこう、と思っていたものが、いつの間にかそこが定位置になってしまって、さらにその上にも細かなものが載ってしまって、下の方のものが取り出しづらくなってしまったりして・・。

物の場所を決めてしまうことも大切ですが、しばらくの間置いて置けるスペースが少しでもあると、たいへん使いやすくまた整理された気持ち良い空間になると思うのです。

それではそのパントリーを考えるとき、どのようなスペースだと使いやすいのでしょうか。

一般的にキッチンの引き出しなどには調理道具、調味料など調理に使用するものがすぐに取り出せるようにしまうことが多いです。そして、食器棚には名前の通りに食器をしまうことが多いです。

パントリーは半畳~2畳くらいの広さの収納スペースになることが多く、調理道具や食器以外の頻繁に出し入れすることの少ない主に貯蔵庫のように使われることが多いです。

乾物や缶詰、お米や水などのストックしておく食料を置いておけるのはもちろんですが、パントリーを設置する場所によっては持った目的に使うことができます。

私が今まで家具を作らせて頂いた皆様のなかで、物がしまいきれていないように見えた方々の室内にはやはりパントリーと呼べるような場所が無かったのでした。

部屋の間取り上、そういったスペースを取りづらい場合でも、パントリーの代わりになるような大きくなくても良いので物入れをひとつ決めておくと、家事をするのに決まった動線で無理なく動けて、部屋の整理整頓も進むと思っております。

我が家にもパントリーと呼べるスペースを設けませんでした。

パントリーという部屋を作ってしまうと居住スペースがかなり狭くなってしまうと思ったからです。

そこで、広めに取っていた玄関とその収納スペースの一部を、そして食器棚の一部にパントリーのように多目的に使える大きな扉の収納を設けて、その2か所をパントリー代わりにしたのです。

日が当たらないであまり暖まらない玄関に根菜や果物やペットボトルや収集日まで貯めて置くにおいの少ないゴミや、あとはキッチンとは関わりないのですが、外から帰ったら上着を掛けておくスペースも設けていてます。食器棚の一部には乾物、お菓子、比較的すぐ補充するお酒(笑)、かさばるタッパー類、お重などの季節の器、お菓子作りの道具、ときどきしか使わないオーブンの天板などがしまわれています。

ですので、個人的に理想的な場所だなと思えるのは玄関からキッチンに辿り着くまでの間で少しキッチン寄りの位置だと良いなと思っています。

一般的に、陽射しがよく入る南側のほうに居室などを持ってくると玄関やキッチンが北側になることも多いので、例えば、買い物から帰ってきて、キッチンで食材を分ける時にすぐ使うものは冷蔵庫やキッチンに、ストックはそのままパントリーに足が向くように、玄関からパントリーのそばを通ってキッチンに辿り着けるような動線で計画できると、「屋外から屋内への動き方」「キッチンでの作業中の動き方」がコンパクトにまとまって使いやすいのではないかと思うのです。

また、これとは別にキッチンの奥にパントリーを設ける場合もよくあります。

このような場合は、食材や普段使わない道具などを置くほかに、レンジやトースターの電化製品、または冷蔵庫を置くスペースを設けることで、キッチン周りは調理に専念できるように広く採る方も多くいらっしゃいます。

お一人でお料理に専念できる場合は、このようなスペースがとても使いやすいと思いますが、もし、ご家族皆さんでお料理される場合などは、キッチンからパントリーを抜けたらダイニングにアクセスできるようになっていたり、パントリーの奥に勝手口があって屋外に出られたら、なお良いかもしれませんね。

そして、玄関寄りも設ける場合でもキッチンの奥に設ける場合でもパントリーの形式は、そのスペースに入ったら、もしくは扉を開けたら見渡せるようになっていることが大切だと思っております。

単純に高さが変えられる棚がたくさん並んでいるだけのシンプルな形が一番フレキシブルにちょっと置く場所を実現できると思っております。

どんなものがしまえたらよいのかあれこれ悩むことなく、「とりあえずどのようなものでも見やすく置いておける場所」が少しでもあると、物の管理、整理がしやすく、また来客時にその都度片づけなくても整ったお部屋でいられますから、こういうスペースを設けておくのは毎日の暮らしにゆとりができて良いなと思うのです。

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吊戸棚について

2021.10.14

最近キッチンのオーダーを頂くなかで思うことに、「吊戸棚はいらない」とお考えの方が多くなっているなということがあります。

昔みたいに、キッチンというスペースが独立した場所ではなく、ダイニングやリビングと一体になって、さらにはそちらを向いて調理をするというレイアウトが好まれるようになったからか、部屋の一体感を出すために吊戸棚のように遮るものを無くしたいという考えの方が増えてきているように思えます。

それでも、引き足にグラスをしまうと倒れてしまうから戸棚に置きたかったり、すぐに取り出したいものは目線の高さにしまいたい場合など、吊戸棚には吊戸棚にしかない魅力もあります。

そこで、私たちが作らせて頂くなかで、吊戸棚がどのような形が多くなってきているかをご紹介したいと思います。

【引戸】

吊戸棚というと、以前は背の高さよりも高い位置につけることが多かったのですが、それだとしまったものを見つけにくかったり、物が取り出しにくかったりと、明らかに使いにくい収納になってしまいます。

そこで最近は目線の高さで物がしまえるように作ることが多いです。その場合、一番シンプルな形は開き扉になるのですが、その高さだと扉を開いた時に頭がぶつかりやすいのです。

そこで最近は引戸を取り入れるほうがメリットがあると考えております。

戸の下に車をつけたり、カーテンのように上から金物でぶら下げる金物があったりと、開け閉めが昔の様に重くなく、軽い動作で動かすことができるので、大きな戸を作ることができるため、以前のように開き扉の方が広く開けられるというデメリットが無くなります。

また、一番大きなメリットとしては、調理作業中は「戸を開けたまま作業ができる」ということです。

開き扉だと、その都度閉めないとぶつかってしまうのですが、引き戸の場合は作業中開けておけるので、使いたい道具や食器が一目で見渡せて、使い終わったら閉めればすっきり片付くのです。

ただ、ひとつデメリットとしては、引き違い戸になるので、扉が重なるため、その分開き扉の収納に比べて奥行が小さくなってしまうという点がありますが、それを差し引いても使い勝手は良いと思っております。

余談ですが、下から上に向かって開くフラップドアでお客様からご意見を頂いたことがありました。

フラップドアは開けるとだいたい背の高さよりも上あたりに扉が開いた状態で作ることが多いです。そうするとことで、開けっ放しのまま作業ができることと、大きな扉で作れるので、開けたら中を一度に見渡せるメリットがあります。

ただ、扉を開けたままにすること、大きな扉がバタンと閉まると危ないのでゆっくり閉まるようにすることの機能を持たせるためにソフトダウンステーという金物をよく使うのですが、ここに入っているバネが少し強くて、女性が開け閉めするのには「少し力が要るのね。」と何度か言われたことがありました。特に年を重ねていくと上に持ち上げる動作が大変になってくるので、それが毎回食事の時の動作となるとかえって不便で・・、と言われて、扉の形を変えたこともありました。

【天井まで作らない】

最近は吊戸棚を天井まで作らない方も増えています。

やはり上まで作っても物の出し入れには不便なので、それならば大きな吊戸棚がリビングから見えるよりは、コンパクトで使いやすい大きさのもの、そしてリビングから見ていて美しいデザインの戸棚にしたい、という考え方が多くなってきています。

だいたい使いやすい高さなので床から1400ミリくらいから1800ミリ、もしくは1900ミリくらいまでの高さ400ミリ~500ミリのコンパクトな形を考える方が多くなってきています。

そこに普段使いのグラス類、毎食事ごとに飲むお茶のセットなどをしまう方が多かったりします。

ただ、収納量はそれほど取れないので、前回お話したパントリー的なスペースが別にあるとこのお湯な吊戸棚の在り方が活きてくると思います。

このめいいっぱい作らないという点で以前にお客様から面白いお話を聞いたことがありました。

それは、「こうして、家具を取り付けた後のほうが家具が無かった時よりもかえって部屋が広く感じました。」と言われたことです。

なるほどおもしろいと思いました。

一般的に白く仕上げることが多い壁ですが、白だけだと空間の距離や広さが一見分かりづらかったりします。

でもそこに、木の色など別の色が壁の手前に入ってくることで実際の部屋の距離感が感覚的につかめて部屋の広さがあらためて分かるのです。

天井まで吊戸棚を作らないことで、壁とのメリハリが出てより部屋の広さを認識しやすく快適に感じるという要素もあるのではないかと思っています。

このように今回は2つのポイントで吊戸棚のことを伝えてみましたが、どのようなものをしまって普段どのように使っていきたいかと御いうご自身の暮らし方や動作、動線を思い描いていくと、少しずつ使いやすい形が見えてくるのではないかと思います。

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お店で売られている家具とオーダー家具の違い。それぞれのいいところ、よくないところ

2021.10.14

お店で売られている量産家具と私たちが作るオーダー家具との違いというと、やはり大きな違いは金額になると思います。

例えば、椅子などで考えてると分かりやすいのですが、インテリアショップなどに行くと、使いやすくてデザインの良いダイニングチェアなどは数万円で販売されています。高くても十万円前後というくらいでしょうか。

一方私たちがダイニングチェアを1脚だけ作ると、倍以上の金額が掛かってしまうことが多かったりします。

実は、ダイニングテーブルなどの大きな脚物家具(椅子、テーブル、ベッドなどの脚のある家具。反対に食器棚や収納家具は箱物家具)に比べて小振りな椅子のほうが制作工程がずっとずっと多いのです。

特に椅子は座る人の背に合わせて、後ろ脚や背もたれがカーブしているものが多く、曲線が出てくると、その型取りと成形を行なって、さらに四角い形状ではなく、丸い形状のものになると小鉋で1本ずつ削り出したりし、さらには座面に布や皮などが使われる場合は木と違った素材になるので作業工程が全く別に発生するため、加工手間がテーブルよりも多くかかることが多いのです。

では、量産の椅子はどうしてコストを抑えられるかというと、やはりその字のとおりに同じ形やサイズのものを大量に生産することでコストを抑えています。

背もたれだけを何十枚も作り、脚のホゾ穴加工を何百本も作ることで、作業工程をまとめられて時間が短縮できるので、コスト削減を実現できているのです。

では、そこまでして高額になるオーダーにするメリットはというと、すごく曖昧な表現ですが、「その人に合わせた形を作ることができること」これに尽きると思います。

「その人にあう」とは、その人の体形に合わせた形だったり、その人の暮らし方に自然に溶け込む形だったり、その人の気持ちが華やいだり、安らいだりするデザインだったりと、その人のその思いに応えて作ることができるということがオーダーの一番のメリットだと思います。

もちろん、量産品は、量産されるまでに試作、試験、いろいろな意見をフィードバックしながらその形を作っていくので、私たちのような小さな工房では知りえない素材や、知識が盛り込まれてできた良い製品が生まれます。

また、量産品でも訴求点が異なるため、便利な機能に特化したもの、デザインに特化したもの、価格に特化したもの、などカテゴライズされたいろいろな表現方法の家具があります。

そのようにある程度分類分けされているので、選ぶ人はその時々にあった形を選びやすいですし、金額も分かりやすい。

オーダーはもっとそういう分類がごちゃ混ぜになっていて、「機能」という引き出しからその人に必要な物を取り出し、「デザイン」という引き出しからその人の好むものを取り出し、それで作り上げていきます。

なので、私個人としてはオーダーで作るということは、家具そのものを作るだけではなく、その使う人の暮らしの一助になるような気配りというか目に見えない部分も一緒に作っていると思っています。

ただ、家具はあくまでも暮らしの道具です。

使って使って使い込むことでくたびれる、そういう使い方が美しいと思っています。

その人がその時に、何を重視して使いたいかという気持ちと、その家具の形がうまく合っていれば、量産品でもオーダーでもその人にとって良いものになると思っております。

例えばね、お客様のお宅に伺って、家具のお話を聞いていた時に、ふと今打ち合わせているテーブルに目が留まる。

「ああ、このテーブルは、私が一人暮らし始めた時に使い始めて、結婚してもこうしてそのまま使い続けているのです。当時は余裕もなかったから、町の家具量販店で買ったのですが、いつの間にかこんなに長く使っていたなって気づいたのです。」

よく見ると傷だらけだし、お子さんがいたずら書きして消した後がうっすら白くなっていたり、角に何かぶつけたらしい凹みがあったりして。でも表面は塗膜こそ薄れて、食器のシミがところどころについているけれど手触りはツルっとしている。

こういう使い方をされている家具に出会うことがあります。

美しいなって思うのです。

こういう使いかたをされたら本望だろうなと。

ですので、自分が必要と感じた時にちょうど良い家具にお店で巡りあえたらそれが一番良いのでしょうけれど、もし巡りあわなければオーダーで考えてみる、という選択肢をもっと気軽にとりいれてもらえるともうれしいなあと思うのです。

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カップのこわい顔

2021.10.15

子供のころ、祖母の家に行くのが怖いことがあったのです。
祖母の家は両方とも都内にあったので、私にとっては野山を駆け巡るじいちゃんばあちゃんちというのがうらやましかったのですが、それでも時々しか訪れることができない祖母の家は子供心にワクワクするのでした。
父方の祖母の家にはだいぶ前から物置になってしまった部屋には縁側を通っていかないといけないし、そこに入ると古い匂いがして、日は入ってくるし、すぐにみんながいる隣の部屋に行けるのですが、なぜかみんなの声が少し遠く聞こえていて別の世界のようでした。
でも、この部屋にたどり着く前にお仏壇がある部屋(ここがいつも私たちが遊びに来ると寝泊まりする部屋なのです)を通るのですが、この部屋に子供心にとても怖いカップがあったのでした。
カップ?と、周りに話すとくすっと笑われてしまうのですが、小学校の自分にはとても恐ろしいカップでした。
普通のマグカップにまつげが長くて真ん丸な目が大きく描かれていて、その下には厚ぼったい唇が描かれているカップ。
この部屋に入ってそのカップが正面を向いていると、もう私は恐ろしくて恐ろしくて、おいおい母にすがって泣いていたものでした。
そんな私の様子を両親は時々いたずらするようにカップを動かしたりするのですが、それがも何だかよく分からないけれどけれど怖い。
弟は全くそんなことなくケロッとしているので、まったく情けない兄でしたが、あのカップはどこに行ったのだろうか。
きっとあの大きなギラギラした目が怖かったのだろうなあ。

私が子供の時分はこうして暗くてよく分からなかったり、自分では理解できないものに漠然と畏怖の感情を持ったりしていたのですが、今ではかなりいろいろなことが分かってしまう世の中になりました。
わが娘たちは、まだ暗い部屋をきちんと怖がってくれるので安心です。

「悪いことをすると、押し入れのお化けが連れに来るよ。」
そういう漠然とした怖さってとても大切な感覚ですので、それを忘れないようにしたいなあとカップを見つめながら思うのです。

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キッチンのレイアウトについて

2021.10.14

私は料理をするとしても週末くらいで、どちらかというと家よりも工房に居る時間が多いので、キッチンのコーディネートやデザインというと差し出がましく思えるのですが、今までいろいろな方々のキッチンを作ってきて感じてきたことがいろいろあります。

こういう直接いろいろな意見を聞かせて頂くことができるオーダーという形は、私たちにとっても大変魅力のある家具作りの在り方だと思っているのです。

その中にひとつに「キッチンのレイアウト」について皆さんからいろいろなお話を聞かせて頂けたことがありました。

レイアウトというと、大まかに分けて、「I型」「セパレートタイプ」「L字型」「コの字型」に分けられることが多いです。

皆さんの好みがあると思いますが、今までお話伺っていて感じたことは、【一人で使いたいか】【みんなで使いたいか】で大きく意見が分かれるのだな、ということでした。

「うちではお料理はもっぱら私が作るだけなので、キッチンも私一人で使いやすい形にしたいのです。」

そういうご家庭でご要望が多かったレイアウトは、一人でガシガシ使えるようなL型やコの字型のレイアウトでした。

なぜL型やコの字型か、というと共通点は囲まれていることでした。

作業動線を少なくしたうえで、シンク、コンロ、調理スペースといろいろな仕事ができる場所にアクセスしやすいように自分の周りをキッチンで囲みたい、というご意見が多かったのです。

そのキッチン内のワークスペースも通常は、900ミリくらい採って、人とのすれ違いがしやすいように考えることが一般的ですが、「一人で作業したい」とおっしゃる方は反対に「水仕事をしていて振り返れば一歩足を踏み出さなくても作業台の上のものが撮れるようにこのスペースを狭くコンパクトにしてほしいのです。」と、800ミリくらいにされる方もいらっしゃいました。

反対に、「週末は家族みんなでキッチンで料理することが多かったりします。」

という皆さんが選ばれるのは、I型やセパレートタイプのレイアウトになることが多いです。

我が家もペニンシュラキッチンと食器棚として使っているバックカウンターがあるレイアウトです。

実際に使っていると娘たちもキッチンで何やらごそごそと作るのが好きですので、多い時は4人でキッチンの周りをガチャガチャとやるわけです。

さてI型の場合は、【壁を向いて作業をする形】と【ペニンシュラタイプのようにリビングダイニングを向いて作業をする形】の2つがあります。

どちらの場合でも、キッチンだけだと足りない収納量を補うためにキッチンの背面にバックカウンターがあると収納量・作業スペースの確保ができるので、とても使いやすいです。

具体的には、壁に向いたキッチンならダイニングとキッチンを仕切るようにアイランドカウンターがある形、ペニンシュラタイプなら私の自宅のようなバックカウンターがある形です。

こういうふうなレイアウトにすると、I型+カウンターとセパレートタイプのキッチンとの違いが曖昧に思えてきます。

では、どう違いがあるかというと、セパレートタイプのキッチンは水仕事と加熱仕事のスペースを分けることをセパレートタイプのキッチンと呼んでいます。

作業スペースを水、加熱と各々で広く採れるので、L型やコの字型よりももう少し料理に複数人で時間をかけて使いたい、という場合はこの形にされることが多かったりします。

また、レイアウトを考える上で大切なことのひとつに、動線があります。

帰宅してから食材を置いて冷蔵庫にしまう、しまった食材の中から使うものを水のそばに置く、水仕事を終えたら加熱スペースへと向かう。といった一連の流れがお部屋の間取りによっては、その食材を置いたり、作業をしたりするスペースの取り方がI型よりもセパレートタイプのほうが効率良く動ける場合が多かったりします。

そして、一人で使う上ではそれほど大きく気にならないかもしれませんが、複数の人たちでキッチンを使う上でとても大切だと思っていることがあります。

これは個人的な思いも強いのですが、複数でキッチンを使う場合は、I型もセパレートタイプもできれば、ワークスペースが通路のようになっていると良いと思っているのです。

ちょっと分かりづらいのですが、【行き止まりになるよりは通り抜けられる形がとても使いやすい】と考えております。

たとえば、一般的に加熱機器が置かれるのは壁際になることが多いです。

その手前で水仕事をしている人が居る時に、加熱仕事が終わって、ダイニングに向かおうとするときに水仕事をしている人の後ろを通るよりも別の通路があれば、そちらを通ってゆくと動線が重ならないので使いやすいと思うのです。さらにはバックカウンターでレンジを使って解凍している人が居たり、配膳の準備をする人が居たりすると、なおのこと別の通路があると便利です。

となると、つまるところは、アイランドタイプが使いやすいのではないかと感じているのです。

ただ、完全なアイランドになると、コンロ際に油や匂いを防ぐ壁がほしかったり、大きな空間がないとかえってアイランドはダイニングやリビングのスペースを圧迫することもあるので、完全なアイランドキッチンでなくても、ペニンシュラキッチンの突きあたりが玄関になってたり、廊下になっていたりして、戸を開けるともう一つの動線がうまれて回遊できるようになっているととても良いと考えているのです。もちろんその戸は片手で開けたままにしておきやすい【引戸】だとなお良いと思うのです。

ですので、私が皆さんのお話を伺いながらレイアウト考える時は、キッチンを使う人数や玄関からキッチンへの動線、勝手口があるか、回遊できるかなどご新居の間取りと皆さんの家族構成などを伺いながら、どの形が良いのかを提案させて頂いております。

あと一つ忘れておりました。パントリーがとても重要だということ。

それはまた今度お話しますね。

そして、もうひとつ面白いこと。私でも読めないのは、「キッチンが新しくなったら、主人が料理を始めるようになっちゃって、私の場所が狭くなってしまいました。(笑)」とうれしそうにお話しされていた方もいらっしゃったので、気持ちの移り変わりまでは、なかなか読めないのです。

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ダイニングテーブルの形、丸と四角で迷ったら

2021.10.14

オーダーキッチンを検討されるお客様が合わせて一緒に考えていらっしゃる家具として、食器棚とダイニングテーブル、という名前が良くあがります。

今日はダイニングテーブルについて思うことをお伝えしたいと思います。

ダイニングテーブルでいつも思うのは、お部屋に置いても邪魔にならないのなら大きいに越したことはない、ということです。

実際、我が家の暮らしぶりですが、子供たち(娘が二人居ります)と一緒に居て感じていたのは、「子供たちはなかなか自分の部屋で勉強しない」ということでした。

長女が小学校4年生の時にそろそろ自分の部屋を用意しよう、ということで次女と一緒に使ってもらうためにひと部屋開けたのですが、ご飯を食べるのはもちろん、お絵かきするのもダイニングテーブル、勉強するのもダイニングテーブルと、テーブルが彼女たちの居場所だったのです。

「せっかく作ったのだから自分たちの部屋にはいかないのかい?」と彼女たちに聞くと、「やっぱりお母さんのそばが良いとのこと。」

欧米のように小さな時からきちんと自分の部屋で過ごす習慣があるわけでもなく、寝食は常に親と一緒で川の字で寝る、という暮らしぶりの我が家にとっては、小さな時分のころは静かな自分の部屋が不要だったのです。

だから私は勉強机も子供が小学生の間は不要と考えていて・・それはまた今度のお話で。

それと、そのテーブルの大きさは、お皿も大きく広げられてご飯をたくさん食べて、ノートや本も一杯広げていろんなものを見聞きして、と、ワークデスクのような印象をテーブルには持っていて、そうなるとやはり大きなテーブルが良い、と思っています。

できれば4人家族くらいでも、ダイニングのスペースに余裕があるようでしたら1800ミリくらいの長さだとそのようにいろいろな形で使いやすいと思っています。

そして、奥行はできれば850ミリ以上は欲しいと考えています。

我が家では以前には奥行800ミリのテーブルで食事を採っていたのですが、自分のスペースと共有して物が置かれるスペース(大皿やお鍋など)を考えると800ミリだとちょっと狭く感じたのです。

奥行き850ミリにできれば、一般的に大皿やお鍋の大きさは24センチ~30センチ大なので、それらの食器が真ん中に置かれると、一人ずつの食事のスペースはちょうどA4サイズを縦にしたくらいの300ミリ弱になると思います。このくらいのサイズがあれば心地よく食事ができて、奥行900ミリだと少しゆとりをもって食事ができる、という印象を持っております。

テーブルのサイズの印象はそのように考えておりまして、さらにそこに椅子を4脚置くと、だいたい約1800ミリ×約1800ミリの正方形に近いスペースがダイニングセットのスペースになるのではないかと思っております。

(500ミリ(椅子のスペース)+800ミリ~850ミリ(テーブルの奥行)+500ミリ(椅子のスペース))

図にするとこのような感じです。

このように考えると、四角いテーブルは用途がはっきりと分かりやすく、また、リビングダイニング(LD)とキッチン(K)がひとつの空間になることが多い最近の間取りですと、その空間が長方形になることが多いため、正方形のダイニングスペースだとそれぞれの部屋の用途を分けやすく、動線も考えやすいのではないかと思っております。

反対に丸テーブルはどうでしょうか。

丸テーブルの良いところはやはり親近感が得られるちょうど良い距離を持てることと、空間を緩やかにつなげて、お部屋の印象が柔らかく感じられることなのではないかと思っております。

先ほどLDKのひとつの空間が長方形になるというお話がありましたが、この空間が上から見た時に正方形に近い間取りになる時には、丸テーブルのほうが緩やかに回遊できるような動線になるのではないかと思えるのです。

ダイニングとリビングの空間が曖昧なひとつの空間になって、メリハリは出さない柔らかな空間が生まれると思えるのです。

また、座る位置が限定されないので視線がぶつかることなく、なんとなくゆったりした気持ちが生まれるように思えます。

また、みんなが中心に向かって座るので、四角いテーブルよりも少し小さなサイズでも多くの人で座りやすい印象があります。

たとえば直径1300ミリの丸テーブルだと6人で座ってもきちんと食事ができますが、1300ミリ角のテーブルだと4人で座って使う形になります。

機能面からも見た目の印象からも柔軟性があるのが丸テーブルだと思えます。

それでは、私はどちらのテーブルの使っているかというと、丸テーブルです。

我が家の間取りはリビングダイニングがほぼ正方形で、さらには2階の床を支える柱がダイニングにそびえたつ形になっているので、四角いテーブルだと置けるスペースが限られて、リビングで過ごすスペースが無くなってしまうくらいに狭くなりそうでしたので、リビングダイニングがもっと曖昧になるように丸テーブルを使っています。

ここでもやはり次女は時々勉強をしていますよ。(長女はもう高校生になりましたので、もっぱら自分の部屋に向かうようになりましたが。)

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ゆきどまりの庭

2021.10.15

ゆきどまりの庭は緑が鮮やかです。
淡い緑から少しずつ深みを増して、向こうのほうではこんもりと茂って遠くが見渡せないくらい。
ここには誰も居りません。
温かな春の午後のような陽射しがあたりにスゥッと広がっていて、目をとじるとふわりと毛布が私を包むようです。
チョウは飛んでおりました。テントウムシも後ろからやってきて向こうへフーッと行き過ぎていきます。
でも他には誰もいない。
ネコも居ないし、友人も来ていない。
そもそも入り口がありませんもの。
でもね、ここでキシキシ音がする少しささくれた椅子に座って黙って目をつむってあたたかな紅茶を飲んでいると、こそこそします。
風の音かしら。
こっそりと気配があります。
まるで、みんなが真夏の午後の気だるい空気から一歩退いて涼しい木陰で休んでおしゃべりしているように、姿はないし声もないのですがこそこそとそこかしこでみんなが生き生きとしている様子が分かります。
みんながみんな楽しそうに暖かそうにおしゃべりしている様子が目をつむると、浮かんできます。
おや、今あちらの片隅ですらっとした人が通り過ぎましたか。

誰も居ないのにみんなが居てくれて温かいから、淋しくないし、気分よく私もここでお茶を飲んでいます。

そういう夢でしょうか。

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適した家具とは

2021.10.14

どんな家具がどのような方にとって使いやすいかというのは、なかなか分からないものであります。

この建築・インテリアの世界においては、ある程度の物差しができています。

「この身長ならこの高さが使いやすい。」

「この色ならこういうテイストでまとめると心地よい空間になる」

「この家族構成ならこういう間取りが良いでしょう。」

なんていろいろな物差しがあったりしますが、私としては結局体感してみないと分からないし、ある程度身体的な誤差は慣れてしまうものだと思っているのです。

実際に、現在私が暮らしている住まいでは、キッチンの高さは90センチにしています。私が身長182センチ、妻が身長172センチ、娘たちもすくすく大きな大柄の家族の暮らしにとっては、この高さは使いやすい高さだなと感じておりますが、この住まいに移るまでは高さ85センチのキッチンで暮らしておりました。

それは多少洗い物をする時は、すこし腰が痛いなあなどと思っておりましたが、それ以外に具材を準備したり、火を使う作業においてはそれほど低いと感じておりませんでしたし、そこはそこで快適な空間と思っておりました。

ですので、家具を作る立場、使う立場の両方から考えてみても、その家具を使ってくださる方をよく知らずに一概に使いやすさを提案することは何となく不安がありまして。

それでは、どうすると良のだろうと思い悩みまして、結果としてやはりその人の声を聞いて提案することが、その人、その家族にとっての最善に至る一歩なのではないかと思っております。

例えば、使いやすさを考えていて過去にはこんなこともありました・・。

出っ張りの少ないキッチンを実現させるために引き出しにはハンドルをつけないで、引き出しの一端に手をかけて開けるようにしたいという要望を頂いたことありました。

もちろん、出っ張らないでスッキリとした印象にできることは大きなメリットですが、料理をしている時は手が汚れていることが多かったりします。その時に直接木に触れることがその人にとって良いかどうか、また手をかけて開けるには指を引っ掛けて開けることになるのですが、年を重ねていくと力が弱くなってきます。ましてやキッチンをよく使うのは女性が多かったりしますので、「開け閉めするのにより力が要るのね。」感じる時が来ると思われます。

さらには、最近の引き出しは、手を途中で放してもゆっくり自然と閉まるソフトクローズレールというのが主流です。しまっていく動作も美しいですし、閉め忘れもなく、中にしまわれているものも大きな振動することなくしまっていく使いやすい機能金物です。

ただ、閉まる時にゆっくり閉まるバネが入っているので開ける時には普通の引き出しよりも少しだけ力が要るのですね。

そうなると指で開けるのにより力が必要に感じる場合があります。

せっかく使いやすい金物を使って、出っ張りのない形を実現しても使っていると指が疲れる・・。

それを回避するように私たちもあれこれ工夫するのですが、それでもその手を掛ける形を長年使っていたらやっぱり疲れてしまって、突き詰めていくと握って開けやすいハンドルをつけましょう、となってしまう事もあります。

それならば最初からハンドルをつけておけば、ハンドルをつけることで実現する形の美しさも表表現できたかもしれませんが、手掛けのデザインを残したままハンドルをつけると、少しばかり中途半端に見えてしまう事もあります。

似たような事例でプッシュ式扉というものもありました。

名前の通りに押すと開く扉で、よく昔のテレビ台に使われていた構造です。

押せば開くので、ツマミをつけることもなく、とてもすっきりとしたデザインにできます。

小さなお子さんがいらっしゃるご家庭では、ハンドルやツマミだとちょうどお子さんの目の上の高さになって頭をぶつけやすいので、採用したいというお話も頂きます。

このプッシュ式扉ですが、昔から言われていたことが「プッシュしてもそれほど出てこないから開けづらい。」ということがありました。

「押してもちょっとしか開かないから結局もう一度扉を引っ張り出す動作があるから意外と二度手間に感じるのです。」そういう声を反映してできたのが、プッシュ扉専用の蝶番で、通常のスライド蝶番とは逆にばねが入っているので、プッシュすると45度近く軽く開いてくれるのです。これが大変軽く開くので、「これは使いやすい。」と当時は私も膝を打ったのですが、その後、とあるお客様からご意見を頂いたことがありました。

「イマイさん、あのプッシュ式扉はとても使いやすいのですが、開きすぎちゃうんです・・。」

なになによく聞きますと、そのお客様のご家族みなさんは、この扉が「プッシュ式」と理解して使っているから不便はないのですが、お客様を招いてみんなでお料理を作る時には、来られた皆さんはそのことに気づかないものですから、この扉に腰やひざが軽く触れただけでフワーっと扉が開いてしまって、それが開いていることに気がつかなくて扉にぶつかっちゃうんです。とのこと。

なるほど、そういうこともあるのだなあ、と大変勉強になりました。

このお客様の扉はそのあと普通の蝶番に変えさせて頂いて、それから不便なく使って頂けているそうですが、いずれの形も、「これが使いやすい、これは便利だ。」と、よい方向になると思って考えた形の結果がかえって不便を感じる原因になってしまったりして、一概にこれは良いと思えるものをいろいろな方に進めるのは難しいものなのだ、とあれから私はより強く考えるようになったのでした。

ですので、家具をオーダーして作ろうと考える時は、何もかもを実物で確認できることも少ないですから、その形にするときのメリット、デメリットをきちんと伝えてもらえることが一番大切なことなのだと考えております。

とりとめのない話になってしまいました。

「ここを見るとあなたに適した家具が分かります。」というようなお話にできなくて、すみません。

いろんなことを体感して、見聞きすることが、自身にとっての良い形を見つけるための一足だと思っておりますので、皆様の暮らしにとって良い形が見つかることを願っております。

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市原まで

2021.10.11

最近は千葉に出かけることが多いのです。

先日の柏のYさんや少し前にキッチンを作らせて頂いた我孫子のNさんのところにも来月お邪魔させて頂く予定があって、そして今日は市原のKさんの現場確認でした。

できれば現場確認の時は、設計士さんや現場監督さんとお客様と私とで設置場所やその納まりなどを確認したいと思っておりまして、Kさんのお仕事の時間を割いてまでこの日に調整してくださいました。ありがとうございます。

というわけで、現場に9時に行かなければならず、場所を調べると、最寄りの電車の駅からは3キロちょっと。歩くのにはちょうど良い距離ですね。

ということで、4時半に起きて、まだ暗いうちに家を出て、市原の高校生たちが自転車で疾走する横を汗をかきながら歩いてやってきたのでした。

「イマイさん、歩いてきたの!この場所を歩いている人がいて珍しなって思っていたのですよ。」とKさん。

家で子供たちとも話すのですが、「バスって電車と違ってどこに行くか分からないんだよねー。」なんて思いがあるので、帰りの駅に向かう便ならともかく、他の場所に行く時に何だかためらってしまうのでして、こうしてのんびり不思議な小道やゆったりした川底を眺めながら歩くのです。

現場でタイルが張られる壁とキッチンの納まりを確認して、給排水の位置とレンジフードのダクトの位置を確認して、無事に進められそうです。

このところ、皆さんの新築の工事が少しずつ後ろにずれてきていて、年末が慌ただしくなりそうな感じですので、こうして早めに取り掛かっておかないと、昨年の12月のようにまたノガミ君に「正直しんどいです。」って言われちゃうので。

頑張りましょう。

ナラとステンレスバイブレーションのセパレートキッチン

2021.10.10

「引き出しがずれちゃったのです。」とNさんに言われて、お引渡し後にオイル塗装の指導でお伺いした時以来、まだ使っている様子を拝見できていなかったものですので、どんな様子かとても楽しみだったのでした。
「どうも、イマイさん、お久しぶりです。」とにこやかにNさんが迎えてくださって、まずは引き出しの調整を。
引き出しの後ろにクッションをつける場合とつけない場合があるのですが、(最近はソフトクローズレールを使うので、つけないことが多くなってきました。)そのクッションがつっかかっているとなぜか徐々にずれちゃうことがあって、終いにポロって取れちゃうことがあるのです。
それでやっぱりNさんの引き出しもクッションがついているところと取れちゃったところがあって、それを直して無事戻りました。
そのあとはNさんのちびっ子3人に時々囲まれながらお茶を頂いてきました。
(どうやらネイルアートが流行っているようで、お兄ちゃんまで爪がキラキラしておりました。)
楽しく使ってくださっているようで、その様子がNさんファミリー皆さんから伝わってきて、よい気持ちを頂いてきました。
ありがとうございました。

しずかに変わる日

2021.10.09

今朝は朝から茅ケ崎のKさんのところに納品に出かけました。

先日、キッチンを作らせて頂いたKさんですね。

あのキッチンとソファに合わせて、ダイニングテーブルとテレビボードとソファテーブルを追加で作らせて頂いたのでした。そして、本日はその納品で、納品後にご主人と奥様とでオイル塗装を行なうのでした。ということで、その写真はないのですが、お二人の意気込みを見ているととても良い仕上がりになりそうで、また月末その完成した様子を拝見しにお邪魔してきます。

午後からは、いろいろ相談を重ねてきたウェブサイトのリニューアルの最終打ち合わせです。

HANA Shonanの石川さんからとても丁寧に仕事をしてくださる上地さんを紹介して頂いて、細かい点を見やすくしたウェブサイトに変えるためにいろいろと手を尽くしてくださっていたのでした。その成果が間もなくみられるというので、最終打ち合わせです。

今度は今までよりもさらにオーダーキッチンやオーダー家具のことが分かりやすくなると良いなという思いを込めて静かにリニューアルいたします。

そうそう、昨晩からのリクエストでハルカがチョコレートケーキを作ってくれました。いよいよ47歳で、私も静かに変わったのでした。

ウェブサイト更新

2021.10.08

ステンレスバイブレーションとオーク板目のセパレートキッチン
内田雄介さん設計のリノベーションのお仕事で、少し古い集合住宅の最上階にステンレスをナラ材を使ったセパレートキッチンを作らせて頂きました。

もし、よろしければご覧になってくださいね。

安静にしている日

2021.10.06

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お昼から2回目のワクチンの接種がありましたので、半休頂いておりました。
アイさん、どこに出かけたら分からないけれどさようなら。
明日元気だったら会いましょう。

接種後、体調が崩れるのかドキドキしながら過ごしていると、メダカの居る鉢に緑色の虫が。
なんだ・・。
時間を追うごとにどんどん体が延びて、ハエか・・、カゲロウか・・、と思っている間にトンボになりました。羽化する時に立ち会えたなんてすてきな時間だ。
庭はモジャモジャ。
ご相談頂いていた家具の絵を描いたりして、具合が悪くならないようにぐびぐび水を飲むのです。
「アニキ、水をたくさん飲むといいよ。オレなんて外での仕事だからさ(塗装屋なのです。)、毎日2リットルは飲んじゃうからねえ。」というアドバイスをもらって、先日2回目受けたアキコはそれで無事に不調になることなく過ごしていましたので、私もそれに倣って頑張るのです。

Yさんのナラ柾目の食器棚

2021.10.02

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「イマイさんにとってはそれほどめずらしい形ではないかもしれないけれど、設えてもらうというのは本当に心地良いです。」
相変わらずさばさばしたYさんの笑顔。
まるで親戚の姉さんのうちに遊びに来たような感じですが、ここは柏です。

Yさんには、ナラの柾目材とステンレスを使った食器棚と下駄箱を作らせて頂きました。
たしかに珍しい素材の使い方ではなく、作り方も複雑というわけではありません。
でも、いつかどこかで見ていたような形で、家具の形もYさんご夫婦の佇まいもとても身近に感じさせてくださる何かがあるのでしょうね。
そういうふうに気の合う家具にすることができたというのは本当にうれしいことです。

あとでYさんが、こういう言葉をプレゼントしてくださいました。
柳宗悦さんの言葉です。

「工藝は伴侶であり、兄弟や姉妹である。共に一家で朝な夕なを送るのである。そうして吾々の労を助け、用を悦び、生活を温めてくれる。それらの者に取り囲まれて、この世の1日が暮れる。」

うれしいですね。
「工藝」とまで言われるととても恐縮してしまいますが、日用使いの家具を常日頃から作りたいと考えているものですから、とてもうれしい言葉です。
良い形は使いやすい形です。
使いやすい形は、いかにその人の暮らしに馴染んでいるかです。
いかにその人の暮らしに馴染んでいるかを知ろうとするには、その人とよくお話をして、その人のことを知ることです。
言葉にすると簡単なことですけれど、なかなか難しかったりします。

こうして、家具を使っている様子を拝見させて頂くこともその人を知るとても大切なこと。
そして、こういう気持ちも頂けてうれしいのです。

Yさんありがとうございました。

円卓と椅子

2021.10.01

Nさんの椅子が組み終わりました。
今回はヒロセ君と、ここから独立して一人で頑張っているコバヤシ君が来てくれて、二人で作業を進めてくれました。
コバヤシ君を始め、ムラカミ君やイトウ君やタツヤ君や、時にはずっと西に居るテライ君やカワグチ君やら、ついこの間出て行ったカナイ君やカイ君まで。
みんな出て行っちゃうけれど、以外と近い関係でいられるのは良いよね。

この後、オリジナルの5本脚の円卓とこちらもやはりオリジナルというかNさんと一緒に考えたハイスツールの制作に取り掛かります。
オヌマさんがなかなか忙しそうで、今回アイアンの5本脚とスツールのリングを制作して頂くのですが、少し時間が掛かりそうで、Nさんは「急いでいないからいいのですよ。」とおっしゃってくれて。
前回納品したキッチンたちと印象を合わせて作る今回の家具。
また良い形になりそうで楽しみです。

くらいあさだね

2021.10.01

天気予報で、「明日は雨が強いよ。」って言われる日は、雨戸を閉めるんです。
雨音がバチバチうるさいのだそうで、アキコにとっては。
私のいびきのほうがよほど大変だと思うのですが。
この雨戸が私は嫌いでして、パッと目が覚めても目を閉じているくらい真っ暗ですから、起きた気持ちがしないのですね。
はっ、朝かな。って目を開いて、おやっ目を開けたのかなって寝ぼけた気持ちで考えて、まだかなって再び目を閉じても、おやっ目を閉じたのかなって、何だか一人で楽しくなってパチパチやるのですが、そういうわけでもなかなか嫌なのです。
もっとぼんやり朝日が差し込んできて、ああ、朝だなって思えると気持ちがパリッとくるじゃないですか。
雨も好きなのですけれどね、雨戸は苦手です。

コンフィな結婚記念日

2021.09.30

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昨日は結婚20年目の日でした。いつの間という感じですね、こども達の年齢を考えると「そうか~。」と思います。
記念日として特別にお祝いをされる方もいらっしゃると思いますが、平日でしたし、お仕事でしたし、私達は普通に過ごしました。お互い物欲もないのでプレゼントもなしです(笑)。
ただ、何もないのは自分がつまらなかったので、小さい鰯が安く売られているのを帰りのスーパーで見つけて、前から気になっていた「鰯のコンフィ」を作ってみました。(この他のメニューは、チイのリクエストのオムライス+野菜スープ+サラダでしたが)ガスで低温をキープし続けるのは難しく、レシピの写真のように皮がきれいなままにはなりませんでしたが、味はおいしく家族にも好評でした。今日のお昼は残りを使ってパスタにしました。いつもお魚は焼くか煮るかという感じでしたので、新しいレパートリーが増えてうれしいです。
「コンフィ」の意味を調べてみると、フランス語で保存するという意味だそうで、美味しい状態で上手に保存して無駄なく食材を使うための方法ということで、これからの理想の生活を象徴しているかのようだなと感じました。これからも変わらず健康に気をつけて一緒に過ごしていけたらと思っております。

働き方 椅子の制作

2021.09.29

最初の写真で左側に立って磨きの作業をしながら見守ってくれているのがコバヤシ君。手しか映っていませんが。

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私達の会社に就職目的で見学に来る人たちにはいつも伝えていることがあります。「私達の会社は一人一台の家具担当制で製作していくので、将来独立したいと考えている人には向いていると思います。」と。
そう説明して来てくれる人たちなので、5~6年すると辞めて独立していく人たちがほとんどです。では熟練の職人さんはいない工房なのね、と思われてしまうかもしれません。それが家具工房にとってどう思われるのかもわかりませんが、同じ形をずっと作り続けるなら生かせるのかもしれませんが、毎回新しい図面で仕様の異なるものを作り続ける私達の工房だと、柔軟に対応し続けられる力が必要なのかなと思っております。やり方は技術は3年ほどで確立されていくような気がしています。
さて、なぜこの話になったのかというと、数年前に独立したコバヤシ君がうちの工房で作業しているからです。
スタッフが3人だと製作のペースが厳しい場合が多く、助っ人としてお手伝いに来てもらっています。
ちょうど今は椅子の制作をしていまして、初めて担当するヒロセ君にアドバイスしながら進めていかなくてはいけないのですが、主任のノガミ君が大事な用事があってお休みしなくてはいけないこともあって、ノガミ君と同級生だったコバヤシ君がサポートについてくれたおかげでスムーズに製作が進んでいるのです。今までなかったことなので、ありがたく、ちょっと不思議な状況だなと思ってみているのです。
世間でいう、働き方改革とは異なると思いますが、お互いの利害が一致して納得しているのであれば、これからも色々な働き方に対応していくべきなのかなとも思っています。

無垢材の作業台 ダイニングテーブル 餃子ナイト

2021.09.28

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写真を撮ってからいつも気づくタンクトップ姿のダイスケさん。日常ということで…。
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コンコンっと音をさせながら「皮作るように短いめん棒ないのかなぁ。」とダイスケさん。調べたらちゃんと売っているのですね。さあ、買うのでしょうか、作るのでしょうか。
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ダイスケさんばかりに作業させてという意見もあるかもしれないので、私は具を包みましたよ。重ねた皮の部分が厚くなりがちなので気をつけました。
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作業用のシリコンマットを外してもこんなに散らかってますね。栗のテーブルの木目は大きいので、粉が入り込んで残らないようにすすいだ布巾で2~3回拭き取りました。
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鉄鍋で焼きます。焼き肉屋さんでアルバイト経験のあるダイスケさんなので、鉄鍋の焦げの扱いなどが上手なのです。
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週末はやっと予約を取ることができた娘二人のワクチン接種でした。それぞれご褒美に食べたいものリクエストしていいよと伝えるとハルはプラッタータチーズ、チイは焼き餃子(なんてリーズナブルなリクエスト!現実がよく見えていますね。笑)ということで作ることにしました。
我が家にキッチンは高さが90cmあるので、立ち作業でこねたりするのは肘の高さが上がり疲れてしまいます。また、時間がかかる作業の時はダイニングテーブルに座ってしています。(普段している作業と言えば、もやしのひげを取ることくらいでしょうか。)無垢材オイル塗装の天板だと、粉だらけになったり、具がこぼれて油の染みになったり、アルコールスプレーで塗装が取れてしまうと気にされる方もいらっしゃると思いますが、使い込んで馴染んでいく革製品と同じように風合いが増した表情も好きなのでガシガシ使っています。
ただ、我が家は家族全員でテーブルを囲むよりも二人ずつで使っている機会の方が多く、そうすると、キッチン側の半分のテーブル天板の方がよく使うので汚れている気がします。まだ2年目なのでそれほど目立ちませんが、1年毎とかに向きを変えてまんべんなく色味が統一できるようにしていこうかなと考えています。年末の大掃除の時にダイニングテーブルのメンテナンスはしていますよ。
36個出来上がった餃子はあっという間にみんなの胃袋に収まりました。やっぱり手づくりの皮はおいしい。毎回皮から作れたらよいのですが、我が家では難しいので特別なごちそうさまなのです。

日刊Sumaiに記事が掲載されています。

2021.09.23

イマイダイスケのライター活動15回目の記事は学習机についてです。記事にも書いてありますが、お子さんが進級するタイミングで学習机の相談にいらしたお客様とお話ししてみて、「まだうちには学習机はいらないね。」と帰られた方もいらっしゃいます。(笑)家具屋の営業としてはダメなのでしょうけど、その方にとって本当に必要な形を一緒に見つけてお作りするのがオーダーだと思っているのでよいのでしょうか。
私たちの記事は「こういう場合にはこういう形がお勧めですよ。」というものではなく、お客様を通してだったり、自分たちの生活で経験した体験談が多いので、「そういうこともあるのだね。」という感じで読んでいただいて、より自分たちにあった形を見つけるきっかけにしていただければうれしいです。よろしくお願い致します。

日刊Sumai → インテリア・雑貨 → 「学習机、子どもが長く使えるものを選ぶには?家具の専門家が娘の成長で感じたこと」

写真は、引き出しの前板の塗装をしているハルチイ。懐かしいです。ローラーをへんな持ち方しているところがかわいいですね。