2023.08.03
少し前に『建築知識』という雑誌に自分が担当した家具が掲載されました。
その家具は壁一面に納める猫ちゃんの為の大きな家具でした。
僕らが造らせて頂く家具はすべてオーダーですので、それぞれの家具にひとつ以上は見せ場といえるポイントがあります。
ポイントといってもそれはデザインであったり、お客様のこだわりであったり様々です。
例えば、分かれている扉でも木目が全て繋がっていて俯瞰でみると美しい家具であったり、量販店では見られない特殊な収納や加工であったりします。
頂いた図面を読み解いていくと、S様の家具はどこを切り取ってもその家具の主役になれるほどのポイントばかりでした。
写真を見て頂けたらわかると思いますが、色々な仕掛けが詰まっているとても大きな家具でした。
僕たちの会社では図面をもらったらまずある程度目を通してから社長と打合わせをします。(社長が全ての図面を書いています)
打合せでは家具の詳細や設置する場所の様子、細かい収まりを聞いて造り方などを相談します。
打合せが終わると自分の作業台に戻り「木取表」というものを書きます。
僕らの会社でいう「木取表」とは家具図面とは別の分解図のようなものです。
具体的にはパネルや扉、引出しなどをどういう構造や材料で作るかを書いたり、突板ベニヤの切り分け方などを書きます。
製作担当者が家具のパーツを必要な材料・作り方・組立て方法・運搬、搬入方法・設置の仕方などを考えながら書いていきます。
家具をパズルに例えると、そのパズルのピースを考えていく作業です。
ちなみに木取表を書いている他の家具屋さんはあまり多くないようです。
僕らはの会社はオーダーメイドですので基本的には同じ物は造りません。
ですが数年後に家具のメンテナンスで伺う事もありますし、ありがたいことに過去の製作事例を参考に注文して下さる方もいます。
ですので僕らは製作前の準備として、材料のロスを無くすため、製作の詳細をデータとして残しておく為に木取表を書いています。
まず考え方としてこの家具を5ブロックに分けました。
「階段型収納」「小屋ベンチ」「スロープ」「下の段の収納部分」そして「登り棒」という感じです。
色々な要素が詰まっていて大きな家具ですから全部を一気に考えてしまうと難しく思えますが、ジョイント部分だけ決めておいてそれぞれを造るというふうにすると簡単に考えられます。
シンプルに考えられると作業スピードもあがりますしミスをするリスクも減らせます。
難しく思える時こそ視点を変えてシンプルにすることが大切です。
ところで家具の造り方というのは正解がなく、セオリーのやり方や昔ながらの加工方法はもちろんありますが場合によってはそのやり方は不便であったりします。
ましてや僕らが作っている家具は既製品にないオーダー家具ですので、初めて生まれる形もあります。
従来のやり方が合わないこともしばしばあります。
そういった時は今までやってきた方法をバージョンアップさせることもあればやった事のない、見た事のないその時に思いついた加工方法をやる事もよくあります。
ですので「ひらめき」や「アイデア」が家具造りで必要な事のひとつだったりします。
作り手のアイデア次第では難しい加工も簡単に、時間のかかる作業も短く出来たりします。
今回の家具でいうとスロープの坂道と踊り場のジョイント部分がまさにそのパターンでした。
壁から水平に出ている踊り場の板に角度のついた登り坂と下り坂の板がジョイントされています。
もちろん猫ちゃんが通るのでジョイント部分は頑丈でなければなりません。
接着剤を入れて圧着したいところです。
圧着するには固定しながら締めつけるクランプをいう道具を使いますが、直線的にしか締め付けられません。
角度がついているものを締め付けようとするとずれていってしまいます。
そこで当初はクランプを使わずに接着する方法としてジョイント部分を蟻溝加工にしようかと考えていました。
蟻溝加工とはジョイント部分の凹凸を△と▽にする昔からある加工方法で入れてしまえば抜けにくい特徴があります。
ですが加工が難しく時間がかかる為、他に良い方法がないか悩んでいました。
もちろん蟻溝加工がダメな訳ではありませんが、限られた時間の中で他にも特殊な加工が多い家具でしたから少しでも時短を狙いたいところです。
そこでちょうど工場の手伝いに来てもらっていた同期の小林くんに相談してみました。
すると蟻溝加工でなく通し溝にして凹凸の中に材料同士を引っ張る金具を入れたらどうか、という良いアイデアをだしてくれました。
これにすれば蟻溝加工より早く加工出来て、クランプと同じように圧着する力を加えながら接着剤で固定することが出来ます。
先程、家具造りにアイデアは必要とか偉そうに書いてしまいましたが今回のアイデアは人の知恵を借りました(笑)
いいんです。人脈も家具造りに大切なことです!
とにかく他にも色々な仕掛けがありますから、それぞれに工夫を凝らして造った家具です。
あとは猫ちゃんが気に入って遊んでくれるかが心配でしたが、後日にちゃんと遊んでくれていると聞いてとても安心しました。
猫と建築社さんのInstagramで動画がアップされています。
よかったら覗いてみてください。
2023.08.02
今年2回目の梅シロップが出来上がりました。
1キロずつ分けて冷凍してあるので、あと3回くらいは楽しめそうです。
お世話になっているKさんが毎年たくさんくださるのでとてもありがたいのです。
夕方、瓶に移す作業をしていると色合いが美しかったので撮りました。
暑いのは苦手ですが、こんなにきれいな色合いを見せてくれる陽射しは、ありがたいなと思うのです。
2023.08.01
先日納品したKさんの1回の書籍棚。頭よりも上の棚板には、地震の時でも本が不用意に落ちてこないような落下防止の工夫をしてもらえますか、とKさんから言われていたので、小口のナラ無垢材を少し立ち上がりをつけた形で作ったのですが、「少しぼってり見えてしまうことと、もし可能ならその落下防止のものが本の出し入れの時に邪魔にならないように取り外しできるようにできたらうれしいのですが。」と言われて、追加加工して納品した棚板。
オーダーキッチンやオーダー家具というのはその都度初めて作り出す形が多いので、なかなか現物で表せない部分もあるため、その表せない部分をきちんと説明できるようにすることが私の務めでもあるのですが、その表現しきれていなかったようでKさんすみません。
そこで今回は、ステンレスパイプをまげてこの字型のパーツを作り、棚板にそれより大きなパイプの埋め込んでそこに差し込む形にしました。
棚板に開けた穴に差し込むだけでも良いのですが、抜き差ししているうちに堅木でもだんだんと穴のふちが崩れていくかもしれないので、念のための予防です。
こうして、あらためてKさんにとって使いやすい形にすることができました。
2023.07.30
暑い日が続いていますね。旗竿地で日陰の我が家、苔がグランドカバーになっている庭でさえ茶色くなってしまうほどの連日の暑さですから、毎日夕方水撒きしていかないとすべてが枯れてしまいそうで心配になります。
先日、早く帰宅したダイスケさんが水撒きをしてくれました。
以前は17時頃涼しい風が吹き始めていた気がするのですが、今は18時から19時の間にしています。
写真1枚目が東側、2枚目が西側玄関です。
そう、ご覧の通りもじゃもじゃです、笑。でもこの感じ好きなのです。
水撒きしていると、カナヘビの赤ちゃんが走って行ったり、ダンゴムシもクモもタニシもメダカもヤモリもみんな一緒にいる感じ。
そして、水撒きの後は、風がさらに涼やかに感じて気持ちがいいです。
この風を、ここにいる生き物たちと共有できていたらうれしいなと日々思うのです。
2023.07.29
テントラインさんからお声掛け頂き、作らせて頂いたチェリーのペニンシュラキッチンと背面食器棚。
今日はそのリノベーション工事が完了しての検査の日でした。
緑の小道も気持ちは涼やかになりますが、なにしろ暑いですね。現地に到着するころにはシャツの色が半分くらい変わってしまうくらいでしたがとても心地よくキッチンをお引き渡すことができました。
今回は、クライアントのTさんがご自身で用意されていたミーレの食洗機とIHヒーターとオーブンをうまく組み込めるようにというところからやり取りを重ねてこの形が生まれました。
約1か月前に設置工事に伺った時から早くも良い色に変わり始めております。
まずは、最初に使うときの諸注意だけご説明して、あとは徐々にこちらに荷物を運びこむのだということで、こちらでの暮らしが始まったタイミングで、実際に汚れ始めるステンレスのやチェリーの表面のお手入れの方法などをご説明しにお伺いしますね。
良い日でした、ありがとうございました。
2023.07.28
ハル「今日用事ないんだよね。なんか作ろうかな。この桃使っていいの?」という朝の会話。
夕方帰宅すると、「まるごと桃タルト」が出来上がっていました。
「ダマンド食べれないから(ナッツアレルギーなので。)下はチーズタルトにして。
中はカスタードじゃなくて紅茶クリームにしてみた。ゼラチンなかったから寒天でナパージュしたの。種をきれいにくり抜くのって難しいね。」
私はこんなお菓子作ったことないのですが…。味も後味すっきりでおいしい、すごい。
普段からお菓子作りが好きで動画などよく見ているのですが、
cottaのレシピを見ていたら出てきて作りたくなったとのことでした。
「うちセルクルないじゃん。牛乳パック切ってアルミホイル巻いて作ってやってみたらできたよ。」と話していて、私なら道具がそろわない時点でやる気が失せるのですが、作ってまでやるなんて、意欲が素晴らしいなと感心してしまいました。
親バカ投稿失礼しました。
夏休みですね。
2023.07.28
ショールームの下足入れが風通し良い形になりましたが、なにしろ通り抜けるのは熱風ですが、そういえば昨夕はヒグラシが鳴いていましたっけ。
2023.07.27
「風がうたう」のSさんのところに小さなテーブルとチェアを作らせて頂いてから2年半が経っていましたね。
ずっと使えるものを考えていて、とうれしいメールを頂いていて、ようやく形がまとまったので、久しぶりにお邪魔してきました。
このあたり、お客様であり、学校の先生であるKさんからのお声掛けで、10年前にとある小学校で授業をさせてもらったのです。
あの子たちがもう22歳かあ。
よかったらその時のお話を。昔のブログなので、リンク切れなどありますが・・。
前にも読んだよ、イマイさん、という方は読み飛ばしてくださいね(笑)
2013年11月19日「自由な手たち木工教室、現る」
2013年12月7日「図工の授業3回目」
2014年1月22日「ビバ、ものづくり!その3」
2014年2月18日「ビバ、ものづくり!最終章」
「こんにちは、Sさん。ご無沙汰しております。」
皆さんお元気そうです。
Sさんとわが家は家を建てたのがどちらも加賀妻さんで、ちょうど近い時期に建てたものですので家作りのお話でいろいろと意見交換をしていたのは懐かしい思い出です。
今日は会えませんでしたが、お孫さんもだいぶ大きくなったのではないかしら。
テレビボードのお話がまとまったところで、テーブルの写真を撮らせて頂きました。テーブルも椅子もカウンターも5年経って深い飴色になっておりました。
ちょっとざらつくところ、黒く鉄焼けしたところはお手入れの方法をお伝えして、次回納品にお伺いする時にはあわせてメンテナンスもしてみますね。
2023.07.27
既存の窓を生かして収納の内部に光を取り込んだ茅ヶ崎のSさんのリビングボードのお話と、
新しさと古さが入り混じったゆったりした空間、ゆったりした街に暮らし始めたNさんのキッチンのお話を掲載しました。
もしよかったらお読み頂けますとうれしいです。
2023.07.26
最近は湘南地域でのキッチンや家具制作が多いと書きましたが、反対に少し遠い距離に住まわれる皆さんからキッチンや家具のオーダーを頂くことも多くなってきました。
この先も茨城県や静岡県や長野県の軽井沢といったちょっと車だと遠い距離までキッチンを作らせて頂く予定です。
愛知県や滋賀県、もっと遠く大阪府などからお声掛け頂くこともあるのですが、作ることはできても何かあった時に「今から行きます!」というのは遠いよなあと思ってしまうのです。
家具はいつか壊れるものだと思っていますので、そうなった時でもきちんとお付き合いできる形をとりたいなあと思うとなかなか遠方にお住いの皆様の気持ちにお答えすることが難しかったりします。
先日も修理ではないのですが、今度引っ越すので作ってもらった家具を移設したいのです、と藤沢のFさんから相談を受けて、確認に伺ってきました。
さいわい、お引っ越し先は近距離でしたので移動はできるのですが、違う構造のお部屋に置くことになるので、一度お預かりして加工する必要がありそうです。
そういう工夫も遠距離だと難しくなってしまうなあと思いながら、ご相談いただく住所を見ては悩むこの頃です。でも、遠距離近距離関わらず、いつでも皆さん気軽にご応募くださいね。
オーダーキッチンのカタログをいつでもお送りしておりますので。
「キッチンカタログプレゼント」
https://www.freehandimai.com/?page_id=64
2023.07.26
だいぶ前に「イマイさん、すみませんが実現できませんでした・・。」と平成さんに言われてしまったこのキッチン。お料理教室の先生だったかな、実現したらとても楽しそうだったのですが、なかなか予算が厳しくて、こうして紙の中だけでできあがった形でした。
このところ家を建てるコストがたいへん上がってきているので、建てたいという思いのとおりに実現することが難しくなっているようです。私たちのようなところにもその波が来ておりまして悩ましいところです。
先日も、キッチンを作らせて頂く予定のMさんから、「新居の内容を削減してもコスト増は抑えられなくて・・。」と、電話の向こうでとても心苦しそうにお話されて、キッチン制作のお話が無くなってしまいました。
私たちとしては残念ではありますが、Mさんとしてはいろいろな方向を見ることができた結果、自分たちが今望む形というものをしっかり把握することができたことはよかったのだと思います。
何よりも楽しんで家を作ってゆけることが一番ですので、楽しくいきましょう。
2023.07.24
武相荘のレストランの入り口で、錆で膨らんだ姿を目にしてからダイスケさんとふたりして心奪われたしまったこの灯明台。
似ているものがあるのかなとか、作れるのかしら、とかしばらく悩んだのですが、奮発して我が家に迎えることにしました。
真ん中の枠が約6㎝ほどしかないので、使える器が限られるのですが、ひび割れてしまった山本さんの桧垣模様の織部焼の湯飲みの底にダイスケさんに穴あけしてもらい、植木鉢にして朝顔の残月を植えてみました。苗に対して鉢が小さめなのでちゃんと育つかしら。
今度山本さんに合うサイズの植木鉢を相談させてもらおうと思います。
夏の楽しみができました。
2023.07.22
Sさんのキッチンの全体像がようやく見えてきました。
男4人でどうにか組み込んだ天板。2階までうまく運べるかしら。
2023.07.21
ただいま設計士さんのご自宅になる渋谷のとても趣のある古いマンションのリノベーションに関わらせて頂いていて、キッチンの制作を依頼頂いております。
今回はネオリスというセラミック素材を初めて使ってキッチンを作っているのですが、側面もこのセラミックになるので、どのように組み上げていくか試行錯誤ですね。
オーダーで作るということは形に柔軟に対応できることが大きなメリットなのでしょうけれど、実現するまですごくすごく悩むんです。
以前、福原さんのお仕事で制作したYさんのキッチン「影ゆらゆら」の時もビコストーンという初めて使う天板に戸惑いながらの制作でした。表面と小口の取り合いや面取りの具合など図面では分からない部分ってたくさんあって、初めて使う素材は制作に手を動かす以上に思い悩む時間が多かったりします。
ひとまずここまで形になりまして、もう少ししたら取付ですね。
2023.07.20
「イマイさんならこのくらいの大きさがないと足りないのではないですか。」と飯高さんに進められて手に取ったお猪口は、さわやかな風が吹いているような表情で、赤閻魔がよりまろやかに感じてしまう。
ここ最近は、以前武相荘で手に取った中村一也さんのたいへん涼やかなショットグラスでお酒を頂いておりましたが、季節を楽しく呑むという風情も良いのだなあ、とようやく気付き始めたお年頃。
以前キッチンを作らせて頂いた「木々が挨拶してくる」の武蔵小金井のMさんは当時、「よく出かけることが好きで、その土地に着いたら気に入ったお猪口を一つ手に入れてくるのです。」って言っていたけれど、その楽しさがなんとなく分かってきたのでした。Mさんは確か私より若かったのですが、いろいろと教えて頂くことが多かったお客様でした。そんなことを思い出しながらお酒を飲むのです。
2023.07.20
Sさんのキッチンは変形したペニンシュラキッチンなのですが、そのリビング側のかたち。
当初は、空間を設計している福原さんのうちに作ったキッチンカウンターのようにオープンの棚に下に扉をつけるというお話で進めていました。その後、扉は引き出しに形を変えたのですが、「このオープンスペースは下の引き出しのようにかっちり収納として見せるのではなくて、きれいな形の、例えば編みカゴや(あられ組した)木箱のようなものに普段使いのものをしまっておきたいのです。」というお話が出たのです。
カゴは良さそうでしたが、木箱のほうにお話が進んだ時に、おそらくきれいだけれど重くなってしまうことやレールを見せないようする細工を考えていくとなかなか大変になりそうだと思い、カゴのような木箱がそっと置かれているようなイメージ(箱同士が離れて置かれている感じ)で作ることになったのでした。
2023.07.20
先日、日用美さんに出品されている 飯高幸作さんの器を購入してきたのです。
新しく器が増えたということは、
毎日使う器、時々使う器、しまう場所を変えなくてはいけないですね。
今回のテーマは「ご飯茶碗を夏仕様に」でしたので、食器棚の1番上の引き出しのご飯茶碗を今までのものから入れ替えました。
1枚目の写真が変更前、2枚目が変更後です。我が家の食器棚は奥行き深めの65cm引き出し内寸52cmでこの容量です。
夏茶碗と調べてみると、「冷めやすいように口が広く開いて厚みも薄い。」とありましたが、今回は見た目のデザインと色味から選びました。
使ってみて、お米大好きチイに感想を聞いてみると、「前のより厚みと手触りがあるから、ご飯茶碗が熱くなくてずっと持っていられる。」とのことでした。
一般的ではなのかもしれないのですが(笑)、それぞれの感じ方で、その時の気分でお茶碗を変えて使っていくのもよいなと思いました。
今までのお茶碗は、食器棚上部の引き戸の1番下に置きました。ここなら子供たちが変えたい時にやりやすいと思います。
過ごし方も使うものも、暮らしは変わってゆくものですので、それに合わせていける収納が使いやすさに繋がるのかなと思っています。
器が増えて、食卓の時間が楽しくなりそうです。
この家に暮らし始めて5年目の我が家。
当初からここに入る器も変わりました。それに合わせて棚板の高さも変わりました。
結婚当初に実家から分けてもらった器。
今まで買いそろえたきた器。
いただきものの器。
割れてしまったお気に入りのものもあったので、生き残った器というのでしょうか。
どれもそれぞれ思い出のある大切な器。
これからも、季節や気分に合わせて、しまう場所を変えていきながら、暮らしていきます。
2023.07.18
本日は、先日設置工事が終わった三郷のKさんのお引き渡しでした。
三郷までの道のりはなんだかとても混んでいて、とても暑いのでした。車の中はエアコンをつけていても汗がじんわり出てくる陽気で、気持ちは明るく体は湿っぽくです。
現地に到着すると、Kさんも設計のシキナミさんもまたはじめてお目にかかる皆さんもすでにいらっしゃっていて(すみません、私の到着が一番一番遅かったようで・・)。
「では、お時間になりましたので、お引き渡しを始めたいと思います。」とおもむろにとてもお若い方がこうお話しだしました。聞くと、住まい工房ナルシマさんでは息子さんが社長として跡を継がれたそうでその若社長さんなのでした。何とも若くて頼もしい。
ナルシマさんのお引き渡しは、きちんとしたセレモニーになっていて、「では、Kさんこちらに立たれて、テープカットを。」と金色のはさみがきちんと出てきまして、Kさん美術館の館長さんでもありますので、「いやあ、普段はテープカットしてもらう機会のほうがあったのに、自分がカットするなんてね。」と照れ笑い。
無事にカットが終わると、室内で思い出を振り返りながら皆さんでご挨拶。
「では、シキナミさんの前にイマイさんもご参加くださっているのでおひとつご挨拶を頂けますでしょうか。」突然振られてしまってしどろもどろでお話させて頂きまして。
そのあとに、シキナミさんがKさんと出会ったきっかけをお話してくださり、Kさんもこの家の思いやナルシマさんシキナミさんへの思いをお話してくださいました。
そうか、こういう思いがあって建った家なのだなあ、とそう思って見回してみるとよりその思いが分かる空間でした。
でも、今回のこの形はやはりシキナミさんが考えるだけあって、Kさんの好みを汲み取ったとても独特の形になりました。Kさん「そんなに料理はしないけれどねえ。」と言いながらも、きちんと形についてのご意見をくださいましたので、きっとお料理が好きなはず。一升瓶が置けるニッチの様子も次回見てみたいなあ。
今日はちょっと追加の加工の依頼を頂いたので、1階の書斎の棚板を引き取るためにお伺いしたのですが、こういう素敵な時間に立ち会えたのはうれしいことでした。
次回その棚板を持ってくるときは、どのように使っているかが拝見できるので楽しみなのであります。
2023.07.16
以前は、相模川を渡って西側というと出かける機会が少なかったのですが、最近、湘南で暮らすみなさんが増えてきたためか、平塚、大磯、二宮と仕事で訪れる機会が増えてきて、きちんと手が加えられた古さが数多く残されていることを知る機会が増えておりました。
こういう町は素敵だなあと思っていたところに、飯高さんのインスタグラムを見ていたら、この週末に初めて神奈川での個展を開くという話を目にして、三年振りですね、アキコと二人で会いに出かけたのでした。
場所は、二宮の「日用美」さん。
「こんにちは、(だいすきな)飯高さん!」だいすきは言葉にできませんでしたが、いつもの変わらない笑顔で迎えてくださってうれしいです。
どんどん活動が広がっていって遠い人になってしまうのでは、なんて言う思いはどこかに飛んでいきましたね。やはり作品にはその人柄が現れるというのを体現している人なのだなあと、話してみてあらためてその優しさを感じたのでありました。
お人柄といえば、日用美のオーナーの浅川さんご夫妻。初めてお会いするのに、どこか懐かしく感じられて、すべてを快く受け止めてくださるお話の仕草にとても心地よい時間を過ごさせてもらったのでした。
人が人を呼んで素敵な縁が生まれるってこういうことだよね、とあらためて勉強になったとてもうれしい時間だったのです。
ありがとうございました。
2023.07.15
技拓さんからご依頼頂いたKさんのナラとコーリアンを使ったキッチン。
今日がそのお引き渡しでした。
お住いの場所が稲村ケ崎ということと今日が連休の初日ということで、車で出かけるのはちょっと時間が読めなさそうだなと電車で出掛けたわけですが、どうやら賑わいはもう少し後の時間からのようで電車もそこまで込み合っていなかったので、久しぶりの江ノ電に座ることができたのですが、進行方向と頭が反対に向く席に座っちゃったもので、子供のころから車酔いが激しかった私は「大丈夫?」と隣のアキコに心配されながらの顔色が悪いスタートだったのでした。
「お引き渡しの最初はいろいろとご説明があるので、少し間をおいていらしてくださいね。」と技拓さんに言われておりまして、ちょうどスタートから1時間ばかり経ったこのタイミングで到着すると「イマイさん!ちょうど良いところに。」と現地の皆さんから元気を頂いて、さっそくお手入れの方法などをご説明させて頂きました。
ただ、ちょっと心配していたとおり、この時期ですのでやはり現場はなかなかの温度で、説明がひと通り終わるころにはシャツの色が変わるくらいでした。
先ほどの車酔いと急な発汗で何だかぼぅっと体がだるくなってしまい、いかんいかん。
帰りの車内で少し涼んでいくらか体が楽になったところで、お昼ご飯に工房のそばのおいしい和食を提供してくださる南さんで茶そばとマグロ丼を頂いたらやっと元気が戻ってきました。
ふぅ。
さて、気分が良くなったのでご説明です。
Kさんのキッチンはナラの突板を使って作っていますが、今回はKさんのリクエストで縦目使いで仕上げています。縦目にすると木目が短い間隔で並んでいくので、印象がにぎやかになりすぎないようにと、6尺板の長さを半分にして、それを横並びにするように突板を張ってもらうことで、印象を柔らかく仕上げています。
そこに、コーリアンの「シラスホワイト」を組み合わせて仕上げています。最初は無地単色の「カメオホワイト」にする予定だったのですが、打ち合わせを重ねていくうちにKさんがこのカラーをとても気に入ってくださって、とても上品な仕上がりになったのでした。
そして、今回はキッチンカウンターと隣の作業台のカウンターはL型になっていますが、L型では搬入ができないので、現地でシームレス加工を施して継ぎ目なく仕上げています。
ハンドルは真鍮無垢の磨き仕上げの丸棒のハンドルであっという間にくすんでしまうので、気になったらコンパウンドや指輪磨きのクロスで磨くとまた最初の光沢に戻せるのが良いところ。
このような感じで仕上げているのです。
Kさんも使うことをとても楽しみにしてくれていて、とても良いお引き渡しでした。
そして午後には、先日打ち合わせにお邪魔させて頂いた杉並からSさんが家を建てた時に余った材を持ち込みにいらして下さって、次に作る収納の最終確認にいらしてくださいました。
「やはりどの樹種にするかは迷いますね。あの場所はルイス・バラカンが作るような空間にしていきたいのです。」とうれしそうにお話しするSさん。
芸能の世界で活躍されている皆さんの姿を写真に収めるという仕事をされている方からざっくばらんにいろいろな相談を頂けるというのはほめられているようでうれしいのです。
みんな楽しんでいるのですね。
2023.07.15
工房2階の事務室から建物裏側の写真です。手前が倉庫で、奥が駐車場になっております。
フリーハンドイマイは今年で創業37年になります。今の場所に工房を構えてからは21年になります。
工房の裏側に、納品前の家具やキッチンや道具を置いておく倉庫があるのですが、当時中古で用意したものなので、5~6年は老朽化による雨漏りに悩まされていたのです。小さいバケツを水滴が落ちる場所に5~6個置いて、雨が降るたびに倉庫の中が水浸しになっていないか心配していたのです。
屋根を張り替えるか、新しい倉庫に変えるのか、お金が必要なことですから、その年のお金の動きを見ながらどうしようかと悩み続けていました。
屋根の修理ってどなたにお願いすればいいのかわかりづらいですよね。お家ではなく倉庫ですし、塗装屋さんなのかな?倉庫の販売店なのかしら?と。
インターネットで探してみても、仕様が違ったり、金額がわからなかったり、実際どの人が来てくれるのかわからなかったり…。
会長から、湘南平塚コミュニティ放送のDJ仲間で、倉見神社近くの高橋板金店さんが相談に乗ってくれるかもしれないよと紹介を受けまして、連絡して見ていただいたところ、予算の範囲の金額で葺き替えできるとのことで、工事をしていただくことにしました。
周りには住居がありますので、日光が反射しづらい、色も目立たないものにしました。ガルバリウム縦ハゼ葺きというそうです。かっこいいですね。
雨漏りがなくなったのはもちろんなのですが、
夏は倉庫の室内は蒸し風呂状態だったのですが、屋根の修理を終えると、その暑さも和らぎました。
屋根って大事なのだなと実感しています。お世話になりました。
こういうやり取りをしていると、私たちにオーダー家具やキッチンのお話をしているお客様の気持ちがわかりますね。自分の考える予算の中で、自分が望む加工と仕上がりを叶えてくれる人を探すことって簡単なことではないです。
「わかりづらいからあきらめよう。そんな時間かけてられないし。」とは思われないよう、
「こんな感じか。ちょっと話聞いてみようかな。」と感じていただけるように、日々わかりやすく情報を発信していけたらと思っております。
2023.07.14
今回、福原さんが手がけるSさんの空間に入る家具たちはワタナベ君がメインになって制作を進めてくれています。どの家具もなかなか複雑な納まりになるものばかりで、図面では見づらい部分を読み解きながら作り進めていくのです。背面収納たちがまとまったら、次はいよいよキッチンの仕込みです。
2023.07.13
ハルはすっかり勉強にダンスにバイトにと忙しくなってしまって、チィも塾で忙しくなってしまって、以前のようにみんなでご飯を食べる時間が少なくなってきたのは、うれしいことでもあり、淋しいことでもあります。
「たまには早く帰ってきたら。」とアキコに言われて、夕方アイも早々に帰ってきてくれたので、工房のことはみんなに任せて、少し早く帰宅しましょうか。
「ただいま。」
アキコがご飯を炊いてお味噌汁を用意しているそばで、暑いですねと、おなかがへこまない重要な要因であるビールで体を冷まして、お風呂で体をさっぱりして涼んでおりましたら、ハルがめずらしく早く帰宅。チィも間もなく塾から戻るころに合わせて、ハルがだし巻き卵を作ります。アキコはカツオのたたきとあまっていた昆布と筍をうすく煮たものを用意したので、今日は白岳しろで頂きます。
なんだか久しぶり、そういう夜です。
2023.07.13
掃除もひと段落しましたので何か食べましょう。
うちのキッチンはシナとバスウッドを使っていて、あまり長い材が確保できなかった部分は少し赤みのあるバスウッドを使ったのですが、丸4年も経つと印象はなじんできました。
よい感じだねって素直に思える色みになってきましたね。
時々、この使い込んだような印象を最初から表現できますでしょうか、と相談されることがあって意図的に時間の経過を色で表現することもありますが、なかなか難しいものです。
先日、チェリーのL型キッチンとサクラのベッドフレームを作らせてもらったSさんのところに尋ねた時もそれを思い出しました。
ベッドフレームの作るにあたって参考にということでできたての桜の家具の写真を見てもらったのですが、Sさんから写真にあるぺリアンのフレームのような使い込んだ色合いを表現することはできますか、と相談されたのですが、サクラは散孔材ですから変に着色するわけにもいかず不自然になっちゃうだろうなと思ったのでした。
それをSさんに説明すると、「そうですね、おっしゃる通り経年変化を楽しみながら自然な風合いを出していきたいと思います。」とおっしゃってくださって。
時間が与えてくれる豊かさはなかなか手に入りにくいものなのです。
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