不要不急

2020.03.28

今日、工房は仕事の日でした。
この週末神奈川県は「不要不急の外出禁止」となりましたが、私たちにご注文をいただいたお客様のお家作りは進んでいるわけです。スタッフのみんなには気をつけながら予定通りの勤務をお願いしました。
電車通勤しているスタッフもいるので、ご家族や周りの方々には「え⁉︎」と思われた方もいるのかもしれません。この判断が正解か否かはわかりませんが、今の私たちにはこの判断しかできませんでした。
明日はお客様お宅に伺っての打ち合わせの予定が入っていました。
お客様の要望があって初めて成り立つオーダー家具のお仕事です。
不測の事態なので、打ち合わせのタイミングについてもお客様に確認してみようと連絡してみました。
「この週末はやめておきましょう。」とお返事をいただき延期することになりました。
これからこういう機会がしばらくは続くと思います。
情報を得ながら、みんなと話し合い、お客様にも伝えて、その時々で最善と思われる判断をしていくしかないと思っています。

夕方、「ヤモちゃん、帰ってきたよ!」とハルが自宅の壁にいるヤモリを見つけました。昨年夏の間姿が見えていたヤモリがいつの間にかいなくなっていたので、「どこかに無事でいるといいね。」と冬の間に話していたのでした。
小さいヤモリに「僕もここにいるよ。」と言われているようでした。姿を見せてくれてありがとう。今日は暖かかったものね。
でも明日は雪が降るくらい寒いんだって、またどこかに隠れたほうがいいよ。一緒にお家に居よう。

Fさんのキッチン:スタッフ カイ君の制作日記

2020.03.28

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無垢材をふんだんに使用したキッチンです。
今回はクルミ材を使って作りました。
クルミは突板と無垢材とで色の差が大きいことが多くて、お客様はクルミの無垢独特のすこし濁ったような黄褐色を希望される方が多い、と社長から聞いています。
突板は確かに色が明るく、また赤みがあることが多いので、無垢とは表情が違うのですね。
軽いわりには十分な強度もあって、削ると多少毛羽立ったり、また小節がところどころに入ってくるのですが、その表情のよさを皆さん好まれるのだそうです。

ただ、無垢材は突板と違って反りが出やすかったり表面を仕上げるための手間が多かったりと手の掛かる部分もありますが、その表情のよさや独特の重厚感は反りや歪みという木が持つクセを考えても差し引きしても大いなる魅力のある材です。

今回はお客様ご自身でオイル塗装をされるということで、無塗装の状態で設置させて頂くことになりました。
設置当日はあいにくの雨模様。
無垢材にとっては厳しい状況ではありましたが、無事に据え付けたこのキッチンがお客様の塗装によってどのような表情になっていくのかが楽しみだったのです。
後日社長から塗装した後の様子を見させてもらって、浮き出てきた導管の様子や独特な色が良く表れていて、またFさんの暮らしの様子も拝見させてもらうことができてうれしさと安心な気持ちになったのでした。
Fさんブログ2

信じて頂けること

2020.03.27

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こういう形を作ってみたいと思えて、内田さんに相談したら、「それはよいですね。」と言ってくださいました。
その上で、お施主さんのOさんにもお話すると「すてきですね。ぜひお願いします。」と言ってくださいました。
オーダーキッチンやオーダー家具ってできあがるまで見えないことが多くて、私などは常日頃から携わっていることもあってある程度仕上がりの形を想像できても、そこに住むお施主さんにとってはなかなかイメージしづらいことだと思うのです。
だから、そこで独りよがりの形になっちゃいけないわけだし、それでいて一辺倒な形になってもよろしくないわけで、自分なりに試行錯誤するのですが、こうして初めて作ろうと思える形を快く受けてくださる優しさというのでしょうか、とてもうれしく思うのです。
みなさん、今は大変つらい時期でもありますが、自分の思う気持ちをしっかり持って前に進んでいきます。

白い壁面収納

2020.03.25

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昨日は八王子のUさんのお宅に白い壁面収納の納品日でした。
Uさんの収納を作らせていただくのは今回で3回目。
最初に家具を作らせて頂いたのは2005年。ずいぶん昔のことですが、パッと思い出されるほど距離は近く感じます。
車のカタログをたくさん収集されていて、そのカタログたちをしまう棚を作りたい、という少し変わった依頼だなあと思ったのを覚えております。
そして、昨年末に新居に合わせてやはりカタログ棚を作らせて頂いたのでした。
同じようなデザインで膨大な量になりつつあるカタログをきちんと整理できるように作らせて頂き、その量を収納できる書棚となると、かなりのボリュームになるのに、設置工事については安易に考えてしまって、夜中まで作業が掛かってしまったのは大変失礼いたしました。
そうして、その時にあらためてリビングの収納についてご相談頂いていたのでした。
その取付を昨日終えて、これでようやくUさんの暮らしがスタートするのですね。
今回は、カタログではなくて、衣類を主にしまう収納棚です。
今回はご自身で使うカタログ棚とはまた違ってきちんと奥様のご意向を汲み取った良い形になりました。
まるでパズルのように続けて家具のご注文を頂けることにとてもとても感謝しております。

カウンター下収納と家具の修理

2020.03.23

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先日納品した実家のカウンター下収納。
少し扉の加工が必要でしたので、一度持ち帰り昨日納めに行ってきました。
この家具は、30年以上前から使っている(「アキコが中学生のころから使っているものなあ」と父は言っておりました。)クラシカルなダイニングテーブルセットの雰囲気に合わせた収納にしたいということで、ナラ材を使ってこげ茶色の着色オイルで塗装して仕上げ、ポイントとなるつまみにはかなぐやさんのとても表情のすてきな「真鍮白陶器つまみ太円錐」を使ったのでした。
引き戸の部分には筆記用具などすぐ使いたいけど来客時には隠したいものを、奥の扉の部分にはお薬と本などを収納できるようにしています。
結果、とてもいい雰囲気にまとまって喜んでもらえてひと安心。

お話は変わりまして、カウンター下の収納も作るのだから、これを機に「傷んできたダイニングテーブルセットもきれいにしたいな。」ということで、その家具メーカーさんに問い合わせてみたのです。(同業者なのでちょっとドキドキしましたが。)
後日、担当の方からお電話頂き、「籐で編んだ背もたれ部分を張り直して、座面の生地と中のウレタンも新しくして、ひじ掛けのがたつきを調整して、再塗装するしますので1脚あたり8万円ほど掛かります。」というご連絡を頂きました。
椅子を直すのにそのくらい掛かるのは高いかなと思う部分もありますが、張地を変えるとなると一度生地をはがして、そこから塗膜を剥離してがたつきを取って・・って考えると人の成す業ですからね、やはり妥当な金額だと思えたのです。
じゃあ、参考までに、その椅子の新たに購入するとなるといくらかかるのかなあと思い調べてみると1脚12万円で販売されていました。
新品を買うよりも安く済むのならということで、両親は修理をお願いしました。納期には4週間ほどかかるということでした。
修理の判断というと、この「新品を買うよりも安くなるなら」というのが一つの目安になることが多いです。
量販店の家具だったりすると、もともとのその家具の販売価格のほうが安かったりすることもあって、修理の見積金額をお伝えしても「それなら新品の購入を考えます。」となってしまうことも多いのです。
うーん、難しいところです。
思い出とコストを右手と左手に載せて思い悩むところです。
人がそれぞれその物や事に思う価値というか思い入れは千差万別ですから、私たちは自分たちでできることを実直に進めていくこと、それを伝えること、それが仕事です。

「これで椅子もきれいになって帰ってきたらダイニングが整うな。」と楽しみにしている両親の姿を見ていると私までうれしくなります。
家具屋に嫁いでこういう形で暮らしのお手伝いすることができてよかったです。

最近すきな道

2020.03.21

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上郷という川のそばの土地に引っ越してから、工房まで通う道が変わり自分の住む町にはまだまだ知らない通り道があるのだなあと思うのです。
最近のお気に入りの道は、とても漕ぎにくそうな自転車に乗っているすてきな表情をした女性がいるトンネルと、ゆっくりエヌイー。
風が心地よい季節になってきました。
気持ちが揺らぐことなく前をしっかり見ていれば、いつの間にかきちんとそこに辿り着けているはずです。

すてきなてぬぐい

2020.03.20

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もともと手ぬぐいは好きで、行く先々で気に入ったものに出会ったら集めていました。食器を拭くフキンとは別に、洗いカゴに入りきらない時にキッチン天板の上に広げて鍋やグラスを置くのに使っています。
そして、スライドワイヤーシェルフの手前に干しておけばすぐ乾くので使いやすいです。
先月の湘南T-SITEでのイベント「湘南料理道具市」で出会ったkatakataさん。
私「これはホタルの絵ですか?」
カタカタさん「アリ地獄です。」
私「これはクジャクの絵ですか?」
カタカタさん「ヤドカリにイソギンチャクが寄生した絵です。」
全く的外れで失礼だったのだと思いますが、温和にお話ししてくださって、このやり取りですっかりファンになりました(笑)。
色合いがきれいで、柄がかわいらしいのです。
新しいアイテムが増えて、洗い物が多い時でも楽しめそうです。
大切に使います。
いつかアトリエにもお邪魔してみたいな。

いろいろなかたち

2020.03.15

Iさんのキッチンの形を考え中。
皆さんいろんな思いを持っているのだなあとあらためて実感。
自分だったら浮かばないアイデアがもくもく湧いて出てくるのを聞かせて頂けて、やはりキッチンが作業場だよってあらためて思うのです。
きれいな形である居心地良さも大切だけれど、使っている時の心地良さのほうがやっぱり気持ち良い。
その気持ちが叶う形を探していく作業の繰り返しさ。

こんにちは、Oさん。

2020.03.14

古くからお付き合いさせて頂いている設計士のFさん(「おしゃべり」のキッチンのFさん。)から、「友人の家のリノベーションをすることになったので、イマイさんとまた一緒に仕事させてもらえるとうれしいです。」と言ってもらったのが今から1年半前。
今度その「Oさんのところにお邪魔するのでイマイさんもご一緒にいかがですか。」とお声掛け頂いて、お邪魔してきました。
「よかったらお昼ごはんご用意します。」とお声掛け頂いていたのですが、残念・・。
「すみません、これから千葉まで打ち合わせに出かけるので、また今度お邪魔させて頂きますね。」と写真だけ撮らせて頂いたのです。
やはりこうして、キッチンという暮らしの道具(と言ったらいいのかな。)を使ってくれている様子を見られるのが一番良いです。
またお邪魔します。

そのあとは、雨が雪に変わりつつある都内を抜けて都賀まで。
今度Sさんの落ち着いた印象のキッチンを作らせて頂くために設計事務所さんにご挨拶を兼ねて打ち合わせに。
キッチンだけではなくタイルの納まりや室内全体の見え方など、スタッフの皆さんやSさんとお話しするなかでいろいろな方向から新居の様子を伺い知ることができました。
魅力的な場所になりそうで楽しみです。

おや、錦糸町あたりからはすっかり大粒の雪だ。と心配していましたが、海老名はめずらしく静かな雨だけ。
物静かな町を通りぬけてきましたが、やはり晴れ間が顔を出すと良いな。

いわしの梅煮

2020.03.14

「給食食べたいな。」チイがぽつりと言いました。
そうね、今は毎日お弁当だし、食べられるメニューや味は違うもんね。
私「一番好きなメニューは何なの?」」
チイ「いわしの梅煮!」
ということで、作ることにしましたが、作ったことがないのでレシピ検索&お買い物へ。
作ってみて、たぶん給食で出てくるものとは違うのだろうなと薄々感じていましたが、感想を聞いてみると、
チイ「もっと飴っぽいけど、これはこれでおいしいよ。」とのことでした。
毎日何千何万食を作っているプロの人にはかなわない。
学校でお友達と「おいしいね。」と言いながら給食が食べられる時が待ち遠しいね。

おめでとう、ハルカ。

2020.03.11

「私もみんなも先生も泣いちゃったよ。」と晴々した顔をしてハルカが帰宅。
とてもよい3年間だったようで私たちもそばで聞いていてうれしくなります。

「今井会長、先ほどみな無事に送り出すことができました。皆さんにはご参加いただけず、とても心残りはありますが、とても良い式でしたよ。まずは報告させて頂きますね。」
と、彼女が戻ってしばらくしてからわざわざ校長先生からもうれしいお電話を頂きました。
参加できなくて残念ではありますが、彼女の顔を見て、先生の言葉を聞いただけで良い式だったのだなあと思えます。

一応私なりに挨拶を考えていましたが皆さんに伝えられなかったので、ここに書いておこうかな。

皆さん、ご卒業おめでとうございます。
卒業証書を受け取って私たちの前で一礼していく姿を見ていると、その凛々しい姿にとても頼もしさを見ることができました。もう前に進むことを躊躇わない姿が映っていました。
皆さんはこれからこの中学校区を離れて、いろいろな方向へと将来への道を歩んでいきますね。
喜びを感じることもあれば、苦しさを感じることもあると思います。
そういういろいろな思いでいっぱいになった時にちょっと力を与えてくれるかもしれないって思えること、私が若い時に感じたことをひとつお話ししたいと思います。
今から21年前に公開された映画で「マトリックス」という映画がありました。
当時は実写のドラゴンボールのようだ、なんて言って楽しんでみていた映画です。
なかなか面白いテーマの映画でしたので皆さんも機会がありましたら、見てみてくださいね。
その中の登場人物が主人公に自分の進む道を選択することを促すシーンがあるのですが、初めてそれを見た時にわたしは選択なんて当たり前のようにしていることだし、いまさら何を意識しなければいけないのだろう、とふと不思議に思ったのでした。
でもね、こうして年を重ねてみると、「選択する」ということがどういうことかなんとなく分かってきました。
私たちは毎日毎秒自分でも気づかないうちに一つの道を選びながら暮らしています。
朝起きて、トイレに行こうか、顔を洗おうか。
空が曇っているけれど傘を持っていこうか、どうしようか。

例えば、君が家の鍵を忘れたのに気が付いたけれど、その時に鞄を見返してれば、今日提出するプリントを忘れずに済んだかもしれない。忘れたために補講を受けることになったから、家に帰るのが遅くなって雨に打たれて、翌日から3日間風邪で寝込んでしまった。
こんなふうに、ひとつの選択が全く違う形で結果に表れてくることもあります。

例えば、(このお話は先生ごめんなさい。)高校2年の時に授業中にこっそり読んだ「ツルモク独身寮」というマンガがあったから、インテリアデザインという仕事があることを初めて知って、家具を作る道、家具をデザインする道に進むことができたのかもしれない。
ひとつの選択が大きな結果になることを意識していると自分に対して気持ちをしっかり持とうと思えるのです。

例えば、新しい学校に入って、同じ中学からの友人のクラスは、何人か知り合いがいて楽しそうに思えるのに、自分の周りは知らない人ばかりで、全然楽しめない。授業も思っていたよりも楽しくなくて、こんなことならもっと友達が多く行った学校に一緒に進んでいればよかった。この学校に決めたのも両親の勧めで入ったからで自分は特別ここじゃなくてもよかったのに。なんて思ったりするかもしれない。
でも、結果としてこの学校に行くことを選んだのは自分なので、このクラスの分け方になったのも自分がこの学校に入ったらそうなることもありえるのです。そういう場面に直面した時に自分が選択したのだから自分が選んだ結果に悔しがるだけではなく、自分で選んだなりの答えを探していこう、という前向きな気持ち、すなわち自分の中での責任が生まれていく、それが自分で選択することなのではないかなと思えるのです。

私が今ここにこうしていられるのも、そういう自分の気持ちに迷った時に、「でも、こういう考えでこの道を選んだのは自分だし、それならよくなるように考えないとね。」という気持ちを持ってこられたからかなと思っています。

みなさんがこれから進む道では、そういう思いで立ち止まる時が来ると思います。
そうなった時になぜ自分がこの道を進んできたのかを選んだ気持ちをはっきりと思える気持ちを持ちながら、たくましくしなやかに進んでいってほしいと思います。

自分だけすっかり部屋着のままの写真ですみません・・。

いそいそと

2020.03.11

今日はハルカの卒業式。
学校が休校になっていることもあって私たちの町では、保護者が参加しない形で卒業式が行なわれるそうです。
でも、お昼前に帰ってくる彼女を迎えようと、今日は自宅で家具の形を考える時間を作っています。
パン教室の先生のアトリエに作らせて頂く形はどのようにしたらよいか、なかなかイメージが固まらず。
先日、お会いしてお話ししてこの形で考えてみましょうといったもののこうしてスケッチを描いてみると、思い悩むなあ・・。
と、ふと板が手前に出てくるイメージが。
ふむふむなるほど、ふむふむなるほど。
こういうふうにまとめられそうだ、と独り言ちる。
この形でもう一度お話に伺おうかな、そう考えていたら彼女が帰ってきました。

カウンター下収納 「お化粧」

2020.03.10

既存の真っ白なキッチン対面カウンターをダイニングにある少しクラシカルな印象の家具に合わせるにはどうすればまとまるかな、というのが今回の課題。
今回のクライアントさんはアキコのお父さんとお母さんが住む実家で、いつも昼寝をさせてもらったり、ご飯を頂いたり、昨年は家族みんなで居候させてもらったりと、いろいろと慣れ親しんだ場所なのですが、そこでお仕事することになるとはね。
そこで考えたのが、必要な収納は少し意匠を凝らして、質素なカウンターの小口をナラ材で化粧することで、まとまりが出るのではないかと。
一部奥行が必要な収納には白いカウンターも付け足して。開き扉にはかなぐやさんの「白陶器つまみ太円錐」をつけたらとても良くまとまりました。
引き戸の加工がちょっと残ってしまいましたが、次回きれいに納まったところで、家族そろってお邪魔しようかな。

今日のスケッチ

2020.03.09

テレビボードとベンチチェストと本棚が緩やかにつながった形。
ご依頼を頂けるかどうかはまだ分かりませんが、こういう形は素直できれいです。

午前7時の良い日差し

2020.03.09

今朝は北風が強く吹いておりましたが、温かさがあって背中を押されるように自転車をこいできたわけです。
いつもの田んぼの道は昨日の雨がまだ道路の縁のそこかしこに残っておりましたが、雨の匂いはすっかり消えて、気持ちが少し軽やかでした。
「おはよう。」
時計を見ると7時を少し回ってしまって、アイがもう外に出たそうにドアの前で待っていたのでした。
「いやぁすまんね、おじさん(アイの愛称です)。」
ひと通り工房の周りを確認し終わったアイと一緒に2階の事務所に向かうと、目に入ってきたのがこの様子。

昨日アキコと展示室の片づけをしていたのですが、何かがしっくりこなくて。
自宅の床は赤松がとても良い印象で納まったのですが、ここでは少し軽く見えて気がして。
なんだろう、昔塗ってしまった緑色の壁のためかな、なんだろう。

結局昨日はその正体が分からなくて今朝になったのですが、この午前7時の感じを見て(あぁ、こういう感じにしたかったんだなあ。)とふと思い出したのです。
そのしっくりこない正体はいまだ分からないのですが、こういう感じにしたい、って思いがあれば、そこに向かって進めるはず。

私は懐かしい感じにしたいと思っていました。
祖母の家の裏庭にあった水鉢のような少し苔むした流し台のような、湿った木が日に当たって強く香り出すような。でもそれもちょっと違うのかなあ。
この景色を見て、あぁって思ったのは昔の小学校。
私が小学校に通っていた時は木の机でした。隣の女子と一緒に座る二人分の重い木の机。角はガリガリしているし、下敷きしかないと字なんて書けないようなボコッとした天板。
「ちょっと机揺らさないで。」とか
「お前のノートがはみ出てるぞ。」とか
「そっちこそ、この線からこっちに来ないでよ。」とか
何かそういう懐かしい記憶がフワッと思い出されました。
少しずつその正体が見えてきたらこの場所をもっと心地よくできそう。
でも今はこれでひと段落。
今週末からここで打ち合わせができそうです。

間のとりかた

2020.03.05

「チェリーのセパレートタイプの食器棚のオーダー」

日本橋 O様

design:Oさん
planning:daisuke imai
producer:masakane murakami
painting:masakane murakami

アメリカンチェリーの食器カウンターとオープン棚

全体の印象。両側壁に囲まれたスペースというちょっと変わった間取りで、食器棚の印象がよく見えるLDKでした。

「新築マンション(12月完成予定)のキッチン収納についてオーダーを検討しています。
標準仕様のアイランドキッチンが変更不可だったため、そのままにしましたが、
背面収納部分はフリーにさせてもらうよう交渉中です。ゼネコンが指定するシステムキッチンメーカーのものは、ほとんどが鏡面仕上げのピカピカした合板で受け入れ難く、オーダーを検討しています。」

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こちらが最初にOさんから頂いたスケッチ。あー、壁に棚だけがついている形だ。どうしようかなあ。と思ってしまったのでした。

キッチンのカタログを希望される皆さんにお渡ししているのですが、その時にご応募内容に書かれていた文章です。
これは、「この食器棚を作りましょう。」というお話しがまとまる4年前のことだったのです。
キッチンのカタログは皆さんにご自由に読んで頂くために、お渡ししているので、中にはとても丁寧にお返事くださる方もいらっしゃってとてもうれしく思ったり、とてもうれしいことにこのカタログを通じてオーダーキッチンの制作依頼を頂けることもあるのですが、大半の方はお送りしてそのままのメールのやり取りになってしまう方も多いのです。
(試行錯誤して作った手作りのカタログなので、皆さん大事に読んでくださるとうれしいなあ。ただ手作りな分、情報が足りなかったりするかもしれませんが、ご了承くださいませ。)
Oさんもカタログをお送りしてそのまま時間が過ぎていったので、4年後に突然お電話を頂いた時は、うれしかったですね。

アメリカンチェリーの食器カウンターとオープン棚

最終的には小型になった吊棚。私はやはりこのような形が好きです。思い切って、棚板も可動式じゃなくてもいいくらい。だってダボが目立ってしまうでしょう。それなら、差込式のダボは?と考えることもあるのですが、どうもチープな印象に見えてしまって、あまり好みではないのと、稀に抜き差ししていると穴が崩れてくることもあったりして。だからダボを打つならこの金属のものが好きなのですが、オープン棚の場合はなるべく目立たないようにしたいところです。Oさんもそう思っていたようで、ダボの間隔を思い切って100ミリ間隔に。潔く美しい。

いろいろとお話をお伺いすると、ご新居が引き渡されて間もなく、ご主人のお仕事の関係で海外に住むことになり、その間ほかの方に新居を貸すことになったのだそうです。
それで、いつか戻ってきたら食器棚をお願いしようと思い続けて、食器棚のスペースは開けたままにしておいたのだそうです。
うれしいですね。

アメリカンチェリーの食器カウンターとオープン棚

置かれる食器に対してゆとりがありすぎるくらいの空間。きれいだなあ。あとから追加で棚板が入ることになったのですが、それでもこのゆとりを残しつつ使っていってくれるということはもう分かっています。

ということで、さっそく形を考えていきます。
Oさんが考えていた形はとてもシンプルな形。扉などで中のものを隠すのではなく、「さっと取り出せるようにしたいので。」ということで、必要最小限の部分以外はオープン。カウンターの上につく棚も当初は壁に直接棚板がついているようなシンプルな形を希望されていました。

アメリカンチェリーの食器カウンターとオープン棚

こういう感じが好きです。毎日風を感じて過ごしていますよー、って感じが。

この壁に棚がついているという形は、すっきりして置かれるものも良く映えますので、美しい収納方法なのだと思います。
ただ、今回のように後から取り付けるのはなかなか難しく、たとえ壁に合板の下地が入っていても棚だけがついている、というのは私はあまりお勧めしていません。
中にはそういう施工ができるように考慮された金物なども販売されていますが、結局のところ、棚の上から強い力が掛かるとてこの原理で簡単に棚は壁からもぎ取られてしまいます。
少なくとも、棚の出の1/3くらい(例えば、棚が壁から20センチ出ていたら、6~7センチくらい)より長いもので、上方、もしくは下方に向かって伸びる腕のような補強が必要だと思っております。
そうしないと土鍋を載せたり、お皿を重ねたりして使っていると、最初は良くても次第にグラグラしてくると思うのです。

でもそうなると、すっきりとした補強金物があまり見当たらなかったり、木で作ると急にぼてっとした印象になったりするので、私はまずは棚板だけではなく、箱型にしてみませんか。とお話させて頂いております。
これは、単に強度を出す、というだけではなく、以前2、3件のお客様からご相談頂いたことがあったからです。

ロートアイアンの引き出しの取っ手

KUMAさんの角9mm槌目ハンドル。チェリーによく合います。そしてこの引き出しの下に少し隙間を開けたスペース。この下も引き出しになっているのですが、「通気良くしておきたいものをしまうのに開けてほしいのです。」ということで、このような形にしたのです。

ご新居に最初から棚板をつけてもらっていて、下の食器棚だけを私たちが作らせて頂く、という機会が数回ありました。
その時に、下の食器棚を作るのに合わせて、上の棚を工夫したい、というお話を頂いたことがあったのです。
どういうことかというと、「最初は見た目がきれいだから棚板だけにした形が好きで使っていたのですが、やはり毎日暮らしていくと、うっすら油でべたついてきたり、細かい物を置いていると掃除がしづらくてホコリがたまってしまったり、また、毎日の暮らしの中では見せる収納ということだけ念頭に置いてしまっていて、特に取り出しやすくしたい、という気持ちはあまり多く持っていなかったので、毎日暮らしていて「見せたい。」という気持ちがうすれてしまうと、かえっていろいろしまって隠せるような形のほうがリビングから見た時にすっきり見えてよいのかもと思えるようになってきた、ということなのでした。

なるほど、皆さんいろいろな考え方があるのですね。
これは吊戸棚の下に付ける棚下照明についても同じようなお話がありました。
それはまた別の機会に。

アメリカンチェリーの食器カウンターとオープン棚

オーブンとして使う時は、取り外せる棚板、カゴ、フキンと調理作業に必要なものだけがきちんとしまわれているスペース。

でも、私たちが作る家具って、作ってできあがって納品したらそれでおしまいではないわけで、作ったからには何かがあれば対応できるようにずっとお付き合いが続けられるように工夫していかないといけません。
だから、これは使う人のためだけを思っているのではなく、私自身使い続けていくことで不具合が起きにくい形が良いなあという逃げた表現なのかもしれませんが・・。

そのようなわけで、箱型にするのはいかがでしょうか、とOさんにも同じ説明をさせて頂きました。
Oさん、お会いするととても目力の強く、ご自身の意見をはっきりと持っていらっしゃる方で、良い考えはすぐに取り入れて、興味がない考えはスパッと洗い流すようなお話していて気持ちの良い方でした。
そのようなわけでもちろん、箱型にすることに賛成してくださって、吊棚のイメージは当初よりも大きく変わっていったのでした。

アメリカンチェリーの食器カウンターとオープン棚

カゴたち。


アメリカンチェリーの食器カウンターとオープン棚

ブラーバ君。

で、写真を見て頂くとどのような形になったのか分かるのですが、私の最初のイメージはもう少し使い勝手を重視して、あまり食器をたくさん重ねることなく取り出しやすいように棚板の枚数をもう少し多くした形で提案させて頂いたのですが、Oさんはしまうことも大切だけれど、ゆとりも大切にしたい、というお話をしてくださいました。
ひとつひとつのスペースが大きく採られた吊棚の形が決まり、ダイニングから見える姿が楽しみな形になりそうなのでした。
食器棚のほうは、シンプルに必要最小限なところだけ隠すようにして、あとはゆとりをもってオープンな形に。
一カ所は引き出しさえも隙間を大きく採ったりして。
使い勝手と見た目のバランスがとても良い形にまとまっていったのでした。

「Oさんありがとうございました。
昨日の設置工事では大変お世話になりました。
とても素晴らしい出来栄えで、背面キッチンの収納というより、もはや家具を誂えたような雰囲気でとても満足しております!
早速ですが、上部棚の棚板の追加注文をお願いいたします。
5枚追加で製作いただきたいのですが、すでにある棚板より薄い物を作っていただくことは可能でしょうか?
すでにある棚板は棚の中段(真ん中の高さ)を仕切る形で設置していますが、追加の棚は収納スペース(高さ)を確保するために、やや薄いものを希望いたします。」

アメリカンチェリーの食器カウンターとオープン棚

引き出しの様子。


アメリカンチェリーの食器カウンターとオープン棚

引き出しの様子。


アメリカンチェリーの食器カウンターとオープン棚

引き出しの様子。ここが通気良くしている引き出し。


アメリカンチェリーの食器カウンターとオープン棚

引き出しの様子。

完成して、しばらくしてOさんがどんなふうに使っていらっしゃるかを見させて頂きました。
やはりとても美しく使ってくださっていました。
何が美しく思えるのだろうか・・。
きっとOさんが必要としているものだけがきちんと狭く肩身を寄せ合うことなく、当たり前のように座っている姿が美しく見えるのでしょうか。
きちんと各々が帰る場所が決まっているけれど、ずっとそこに居なければならないという窮屈さもなく、自由な佇まいが美しく見えるのでしょうか。
きちんと何もかもが整理整頓されて、外からは普段は全くその様子が見られないくらい物静かな印象も美しいのかもしれませんが、私は暮らしに必要なもの達が場所を与えられて丁寧にそこに座っている様が見られる方が好きかなあ。
それが美しいと感じられる要素なのかなあ。

あれから、メールで書かれていたように棚板を追加で納品させて頂いたのですが、「その棚板は薄いものを希望します。」といったOさんの気持ちは、きっと収納スペースを確保するだけではなく、あの空間にはうすい板が美しく映えることを知らずのうちに分かっていたからそうおっしゃったのだと思います。
きっとまた美しい間のとりかたがなされているのでしょうね。

チェリーのオープン棚とキッチンカウンター

価格:550,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は22,000円から、取付施工費は30,000円から)

彩られていく

2020.03.05

「ナラのセパレートタイプの食器棚のオーダー」

川越 S様

design:Sさん
planning:daisuke imai
producer:yasukazu kanai
painting:yasukazu kanai

「本日お昼にお電話させていただきましたSと申します。
カウンターキッチンの背面カップボードの検討をしております。
カウンターと吊戸棚で、近いイメージとしましては、「つくる喜び、暮らす喜び」の府中のOさんの形が近いと思っております。
詳細に関しましては工房へお伺いしお話しさせていただければと思っております。
今週の日曜日の午後ならば何時でもお伺いできます。
よろしくお願いいたします。」

というメールを頂く少し前に、男性から食器棚についてのご相談でお電話を頂いていたのでした。
男の方で食器棚の相談とはなかなか珍しいのでした。
いらしてくださったSさんご夫婦はまだお若い。
いろいろとお話を聞いていると自分の昔が思い出されるように懐かしくなってきました。

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Sさんとのお話の中でできあたっが最初のスケッチ。

私とアキコは27歳の時に結婚したのですが、暮らし始めた時のアパートは何もかもが新鮮で、私は今と同じく家具を作り続けていて、アキコは看護師として働いていて、なかなか時間がすれ違うことも多かったけれど、これからどんな暮らしが始まるのか、毎日が慌ただしくても週末さがみ野の駅前に買い物に出かけるだけでもワクワクしていたのでした。
そのあと、そういう時代だったのかアパートの家賃を払うくらいのコストで住めますよ、というお話で海老名の駅の近くに越してきたのですが、仕事柄なのかあまり家に対する思い入れはなくて、これから子供が生まれた時に(果たして自分が父親になんてなれるのだろうか‥)近くに学校があったり、駅から少しだけ離れた静かなところだったりと暮らすことの楽しさと、ずっと好きでいられる人とこれからどんな暮らしになるのかと暮らす楽しみにワクワクしていたなあ。
そうして、18年経つと、二人の娘はすっかり大きくなったし、私もおじさんになったし、アキコもおばさんになった。
いろいろとあったのですがうれしく楽しく年を重ねてこれたのだなあ。

お二人が顔を見合わせてはにかむ様子を見ているとそういう何か懐かしい気持ちが思い出されるのでした。

ナラランダム張り突板を使った食器棚

食器棚全体の様子。きっと納品直後だったら分からなかったSさんの好みが良く表れている感じ。お邪魔させて頂いた時にも気に入っていた器が割れてしまって、それをずっと使っていくのにどうしたら修理できるのだろうって相談も頂いたりして。そういう考え方をお持ちだったなんて暮らしている様子を見させて頂くことで初めて知ることができたSさんの顔だったのでした。

食器棚の形はね、おおよそまとまっていたので、なるべく早く新しい暮らしに食器棚を迎えたいということでさっそく川越までお邪魔させて頂きました。
「お邪魔します。」
良いね、キラキラしている。
アクセントカラーの入った壁紙。
少しずつ増えていくという家具たち。
そういう期待の中に私たちの食器棚を置かせてもらえるのはやはりうれしいです。

ナラランダム張り突板を使った食器棚

吊戸棚の扉はナラのランダム張りの突板を使っています。「木目を流す方向はタテ目にしますか、ヨコ目にしますか。」結構みなさん悩むところです。木目がばらついた様子をたくさん見せたいということで、今回はタテ目になりました。そして、少し着色しているので、その表情がよく分かりますね。


ナラランダム張り突板を使った食器棚

吊戸棚内部の様子。「一人暮らしが長かったもので、その頃から使っていた鍋類があってそれをひとまずしまっているのです。」とご主人。


ナラ材を使ったガラスの框引き戸

框組の引き戸。

さっそく採寸をさせて頂いて、細かい部分について打ち合わせをしていきます。
当初は少し濃い色をまとめたいということで、ダイニングテーブルやテレいぼボードと同じくブラックウォールナット材を使って食器棚を作ろうかと考えていたのですが、ダイニングから見渡した時にやっぱり印象が重くなってしまうかな、ということになりまして、ただ、表情が豊かな材で作りたい、という思いもあって、ナラの突板をランダムに張ったもので仕上げることにしたのです。
塗装の色もクリアそのままではなく、少し重みを出すためにわずかに着色しています。
個人的には木が持つそのままの色が一番好きですが、着色することで導管に色が入るので、またクリアな仕上がりとは違った印象になります。
木のおもしろさです。

ナラランダム張り突板を使った食器棚

ゴミ箱はケユカのアロッツ。


ナラランダム張り突板を使った食器棚

引き出しの様子。


ナラランダム張り突板を使った食器棚

引き出しの様子。


ナラランダム張り突板を使った食器棚

引き出しの様子。


ナラランダム張り突板を使った食器棚

引き出しの様子。


ナラランダム張り突板を使った食器棚

引き出しの様子。


ナラランダム張り突板を使った食器棚

引き出しの様子。


ナラランダム張り突板を使った食器棚

炊飯器用のスライドテーブル。


ナラランダム張り突板を使った食器棚

スライドテーブルの下は扉にしています。この部分を扉にする方はなかなか少ないのです。やはり奥まってしまったものの出し入れがしづらくなってしまうからということが大きな理由ですが、Sさんの場合は引き出しだと使い方が限定されてしまう部分もあるので、調理関係の道具だけではなく本など多目的に使えるようにということでこの部分を扉にしておいて、今のところはカゴを工夫して使っていらっしゃいました。

食器棚を納品させて頂いてから1か月ほど経った頃、ご挨拶に伺わせて頂きました。
以前お邪魔させて頂いた時からまた少しだけ部屋の印象が華やかになっていて、お二人で楽しそうに暮らしている様子を話してくださいました。
私たちが作っているのは家具なのかなあ。
自分としては家具を作ることでその人の暮らしを作ってゆけたらうれしいな。
私たちが絵の具や筆となって、暮らしに色をつけてゆくことができたのだなあと実感できる、そんな時間でした。

ナラランダム張り突板を使った食器棚

価格:640,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は30,000円から、取付施工費は35,000円から)

遠くて懐かしい町まで

2020.03.05

「クルミのセパレートタイプの食器棚とリビング収納のオーダー」

勝田 K様

design:Sさん
planning:daisuke imai
producer:kouhei kobayashi
painting:kouhei kobayashi

クルミのセパレートタイプの食器棚

キッチンの様子。奥の物入れも使い勝手を変えて、下の方がパントリー代わりに使えるように深めの引き出しを入れて、胸から上あたりは扉にして、中は既存の可動棚を生かしたり、トレイを新設したりしています。食器棚との印象もまとまって良い空間になりました。

「はじめまして。
4月に中古マンションに引っ越し、これから足りない家具を足していこうと考えています。
ウェブサイトでイマイ様のお仕事にすっかり魅せられてオーダー製作例を拝見するうち、水戸市や東海村の事例もあったので思い切って相談させていただきます。(ひたちなか市は水戸と東海の中間なのです。)

1.食器棚
オーダー製作例の「紙に描いた食器棚」や2017年3月21日の日記の節アリナラの食器棚が好きです。材質はリビングの床が節もあるオークの無垢材なので、違和感ないものがよいです。木の種類に詳しくないのですが、製作例にあったくるみも素敵です。
埃がたまらないように吊戸棚は天井まで。カウンターに置きたい家電はオーブンレンジとコーヒーメーカー。炊飯器は使わないので炊飯器置き場はいらないです。ごみ箱のスペースはオープンでクードのペダル式のものごみ箱を2つ並べられればよいかなと考えています。引出しの取っ手は手掛けのシンプルなものもいいなと思いつつ、KUMA鍛鉄工房さんの取っ手にも惹かれます。(かなぐやさんにも)
それから、食器棚に向かって右側が冷蔵庫置き場なのですが、そちら側に根菜やリサイクルに出すペットボトルなどの袋を引っかけておけるようにS字フックをかけられるバーか最初からフックが3つ4つあるといいなと思います。

2.物入れを引出しに
製作例の『いろいろなものを「再発見」』にあるような物入れがうちにもあります。どうにも使いづらいので、製作例のように引出しにしていただけたらと思います。4か所あり高さはどれも2100mm、①台所 幅410mm/奥行460mm ②リビング 幅460mm/奥行54.5mm ③洗面所 幅610mm/奥行365mmと幅260mm/奥行54.5です。
台所とリビングは食器棚に合わせた材質で洗面所は白っぽいイメージです。上の方の棚も固定の棚板ではなく大きな引き出して上からではなく横から物をとれるようになれば、奥の方も活用できるのではないかと素人考えで考えています。台所には高さ310mm位の調味料の瓶などしまいたいです。リビングの棚には本をしまいたいのですが、引出しだと荷重がかかりすぎますか?雑誌等の深い引出し、単行本等の浅めの引出し、文庫の引出しとあるといいなと思っています。洗面所はタオルや衣類などです。

3.ベッドサイドテーブル
幅350mm/高さ450mm/奥行350mm
材質はナラやくるみ等で、下部に読みかけの雑誌や本を立てて収納できるスペースが欲しいです。

長文になってしまいましたが、図面作成と見積もりをよろしくお願いします。」
とKさんからご相談のメールを頂きました。
茨城県にもオーダーで家具を作ってくださるところはあるようなのですが、なかなか自分の感覚と合わないのだそうで、それで私たちに相談してくださったのだそうです。

クルミのL型のリビングボードデスク

こちらはリビングのL型の家具。デスクと対面カウンターの下の収納がうまくまとまって良かった。もともとついていた収納がどこか分からないように納められたのがとても良かったのでした。

見ると、Kさんがお住まいなのは茨城県の勝田です。
今から10年ほど前はマンションの仕事が多くて、茨城県や福島県によく出かけていたのです。
勝田の駅前なんて何度も通っていて、まだハルカが生まれて数年しか経っていなかったころで自分が父親になった実感があまり持てなくて、アキコはきっと大変だったと思うのですが、自分は仕事で日中家を空けてしまうからどこかままごとの延長のような気持ちがあったりして、そういう自分にいけないなあと思いながらも、どうにか頑張っていた頃を何となく思い出しました。
そうか、あれからもうこんなに時間が経ったのか。
どこかで聞いたのですが、子供たちはできごとをひとつずつ丁寧に包んで記憶するけれど、大人たちは一つのできごとに関連する一連の時間を一つの塊として覚えておくそうで、だから、塊ごとに記憶していると、1年のイベントなんてあっという間に思い返せてしまうようで、時間が経つのが早く感じるのだそうで、たしかに私も勝田に通っていた頃にイメージはもうひとまとめになっちゃってる。
懐かしい空気だけが耳や鼻のまわりで思い出される感じで何だかこそばゆいのです。

クルミのセパレートタイプの食器棚

食器棚の吊戸棚の内部。表はクルミの突板ですが、内部は掃除がしやすいように白いポリエステル化粧板を使っています。


クルミのセパレートタイプの食器棚

吊戸棚の下にはオープン棚。


クルミのセパレートタイプの食器棚

リビングから見た様子。


クルミのセパレートタイプの食器棚

クルミの突板の印象。クルミの無垢材は色が濃く茶色っぽいものが多いのですが、突板は明るくて小節もないものが多いのです。

と、思い出に浸っていると時間が無くなってしまうのでして、さっそく形を考えてゆきます。
食器棚は形を考えてお伝えすることができるのですが、物入の改装は現状を拝見させて頂かないと分からない部分があり、またベッドサイドテーブルのようなその人の好みが大きく出る家具の場合は、私たちにはもともと家具の色がないので、その人の意見を汲み取りながら考えてゆかないといけないので、形が先走りしてしまってはいけません。
ということで、まず食器棚のプランと御見積を作ってKさんにお送りしたのです。
シンプルな形でしたが、材をいろいろ検討したうえでご依頼頂けて、さっそくKさんのご自宅まで採寸と細かい打ち合わせにお伺いしたのでした。

クルミのセパレートタイプの食器棚

引き出しの様子。


クルミのセパレートタイプの食器棚

引き出しの様子。


クルミのセパレートタイプの食器棚

引き出しの様子。


クルミのセパレートタイプの食器棚

引き出しの様子。


クルミのセパレートタイプの食器棚

引き出しの様子。


クルミのセパレートタイプの食器棚

引き出しの様子。


根菜収納バスケット

根菜バスケット。


食器棚にケユカのゴミ箱を組み込む

ケユカのゴミ箱。

そう、先に皆さんにお伝えしようと思うのですが、私たちはなるべくでしたら遠くても車で3時間くらいで行ける距離がお付き合いできるギリギリのところではないかと思っております。
もちろん、それよりも遠くのお客様に家具を納品させて頂いたこともあります。
豊橋、軽井沢、近江八幡、枚方、花巻、ずっと昔には伊豆大島にも。
家具を作って届けることはできるのですが、家具を使い続けていくことを考えると私たちが通える距離じゃないと気持ちが不安なのです。
家具ってやっぱり壊れる時が来ますし、そうなった時に「では、お預かりします。」とか「修理にお伺いしますね。」と言えないといけないなって思っているのです。
木だってあっという間に動きますし、高性能な金物を使うと壊れた時の修理も難しかったりする。そうなった時に責任もって動ける範囲じゃないと怖いのです。
だから、今まで遠方にお住いの皆さんのところに家具を納品する時は、もし不具合があった時はお伺いしますがこのあたりに住むみなさんに比べて交通費などが高くなってしまいます、というお話をさせて頂いて、それでもお願いしたいのです、という強い思いを頂いて作らせて頂きました。
さいわい、皆さんからまだ不具合のご連絡は頂いていないので、丁寧に使ってくださっているのだなあとうれしくなるのです。

パントリーに引き出しをつけるリフォーム

改装した物入の様子。アガチス材でトレイを作りました。


パントリーに引き出しをつけるリフォーム

こちらもパントリーの改装した様子。引き出しを作って乾物を入れられるように。

勝田ならまだどうにか対応しやすい距離かと思いまして、そんなことを考えながら電車に揺られて駅に降りたのでした。
さっそくKさんを訪ねます。
Kさんがお住まいなのはマンション。
マンションでいつも心配になるのが搬入なのですが、ここはエントランスがとても広く取られていて問題なさそうです。エレベーターも普通の大きさがありますので。
今回食器棚だけではなく、ここに来る前にリビングの家具も相談したい、とKさんからうれしいお話を頂いていたのですが、リビングの家具となると長い天板があったりするので、少し心配になるのです。
標準的なサイズのエレベーターだと、最長で2800ミリくらいの長さの板しか入らなくて、リビングボードなどを作る時に3メートルを超えるような天板があると、2つに分けないと入らなかったり、階段で担いで上がらないといけなかったりするのです。
やっぱり長い板がピシッと置かれているほうが美しいですから、そういう時はなるべく1枚で作りたいと思うわけです。
どうにかそれも今回は大丈夫そうで、さっそくKさんにいろいろとお話を伺うことに。

クルミのL型のリビングボードデスク

リビング収納のデスクの左側の様子。

食器棚は図面の通りで大きな変更なく進められそうで安心でしたが、物入の改装が合計3カ所あって、これはなかなか大変そう。
具体的に何をどう改装するのかというと、マンションに備え付けられている物入って、大きな扉がついていて、中にパーチクルボードでできた重たい可動棚が何枚か入っているシンプルな作りが多いのです。
時には奥行が60センチ~70センチもあるのに幅が30センチもないくらいのどう考えても使いづらい物入があったりするのです。
そうすると、やっぱり下の方が引き出しが使いやすかったりするので、引き出しを工房で作って持ってきて、ここでレールをつけて、引き出しの前板をつけてっていう現地での作業量が多くなるのです。
これが文章で書くと簡単なのですが、微妙な角度の調整だったり、幅が狭い場所でのスライドレールの取付だったりがなかなか手こずっちゃうのです。
これが3カ所となるとそれだけで丸1日掛かっちゃうかも。この勝田に来るのに車で数時間掛かって、そこから物入の作業、食器棚の取付、リビングの家具となると数人で来ても1日じゃ難しいかなあ。

クルミのL型のリビングボードデスク

開けると印刷できる設備が整っています。


プリンタ収納スライドレール

プリンタをしまうスライドテーブル。


デスクの配線孔

配線穴にはフタをつけました。

「それで、イマイさん。リビングのほうの家具なのですが・・。」
と、お知らせ頂いたリビングのほうは大変難しい作業になりそうなのでした・・。
何がどう大変なのかというと、リビングにはキッチンとの間に対面カウンターがついていて、そこと外壁沿いの壁にL型に収納とデスクを作りたいというお話だったのですが、その対面カウンターの一部に収納が備え付けられていたのです。それをうまく取り込んで家具を作れると良いなあというお話になったのですが、なかなか難しそう。
寸法を測るとどうにか既存の収納を覆いながら新たな家具でまとめられそうですが、実際に作って設置してみないと分からない部分もあって、距離も距離だしうまく段取りしておかないといけない、と今から気が引き締まるのでした。

クルミのL型のリビングボードデスク

デスクの端部は収納のなかにのみ込まれるようなデザイン。

そのような感じで、納め方に緊張しながらもKさんの思いに応えられるように、さっそく形をまとめてできあがったのでした。
やはり家具の取付は2回に分けないと終わらない、ということで、まず1回目は私とコバヤシ君とカイ君の3人で。

「クルミの家具」
https://www.freehandimai.com/?p=14438

そして、2回目はカナイ君とコバヤシ君で。
「マンションの物入れを使いやすくする」
https://www.freehandimai.com/?p=14479

どうにか終わりました。
Kさんにも使い勝手がとても良くなったこと、クルミの表情の優しさなどをとても喜んで頂けて、ホッとひと安心。

クルミのL型のリビングボードデスク

納まりの様子。


クルミのL型のリビングボードデスク

扉を開けると白い壁が・・。この左側はもともと造り付けられていた戸棚がありました。扉だけ撤去して、外せない白いキャビネットと、白い壁は扉で覆ってしまうことにしたのです。


クルミのL型のリビングボードデスク

扉の割付の都合上、右も狭いスペースになっているので、Kさん工夫して使ってくださっています。

必ずしも良い形が美しい形というわけではなく、使いやすい形が良い形であって、そういう形はおのずと使う人にとって美しく見えてくる。
使う人が心地よく使っているならば、その家具はいろんな人にも美しく見えてくる。
その形を作るのには作者の意図が少なからず入ってしまうものですが、その意図はあくまでもニュアンスなので、多くを占めるのは使う人の思いなのですから、私はいまだに自分らしい家具ってどんな形なのだろうって、悩むのです。
でも、「イマイさんらしいです。」とか「あっ、いいなあ、と思った家具を見ていたら、イマイさんの家具が多かったんですよ。」なんて言ってもらえると、うれしいのだけれどよけい分からなくなっちゃうよね。

クルミのL型のリビングボードデスク

そして、少し目を引く形にしたいと言われていた飾り棚。


クルミのL型のリビングボードデスク

S字状のちょっと変わった形を提案させて頂きました。

クルミの食器棚

価格:490,000円(製作費・塗装費)

クルミのL型デスクと収納

価格:680,000円(製作費・塗装費)

物入の改装3か所

価格:580,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は130,000円から、取付施工費は180,000円から)

Kさんのタモの食器棚

2020.03.04

今回のタモの柄はとても印象的で、まだリフォーム工事中でしたので食器棚の全体像をお見せしづらいところですが、次にお引渡し後にお伺いする時には、その気持ち良い印象をお伝えできると思います。
ワタナベ君が今回は製作を担当してくれました。
シンプルな形ですから余計に木目の心地良さが引き立ちましたね。

新居で初めての雛祭り

2020.03.03

「昨年はばあばのお家だったもんね。ここで初めてだね。」とハルに言われて気付きました。
そうだったね。区域外通学中に雛祭りを迎えたもんね。
今年は休学中だね。
チイにメニューを伝えたら「野菜炒め食べたい!」と熱望されて追加。
「おいしいね。」てみんなで食卓を囲んでお祝いの食事をする時間を持てるだけでありがたいことなんだよね。
おめでとう。今年もこの日を迎えられてよかったね。
おとうさん、何時ごろ帰ってくるかね。

フローリングの塗装

2020.03.02

20200302002
無事に昨日で湘南T-SITEでのイベントが終了しました。期間中はいろいろな方に私たちの家具を見てもらえてとても有意義な時間になりました。
寒川という神奈川の真ん中あたりにあるのに単線が走っている小さな町に家具工房があることなんてみんな知らなくて、ここでコツコツ家具やキッチンを作っていることをもって皆さんに知ってもらえるように心が変えていかないと、という思いも強くなったのであります。
そして、この機会に工房の展示室をもっと心地よい空間にしよう、という思いを実現するために、先日張り終わったとても清々しい香りの赤松にちょっと癖のある香りのワトコオイルをスポンジローラーを使って塗装していきます。
将来はおそらくもっと少なくなってしまうのだろう手仕事というのは、こういう作業のひとつひとつの積み重ねでできあがっているのです。
天然の表情が見たい、体に優しい素材がよい、そういう耳に入りやすい表現方法で、昔からあったけれどかえって目に触れづらくなってしまった素材たちが見直される昨今ですが、その天然素材を使っていくにはヒトクセもフタクセもあってそれを工夫しながら、そして改良しながら今の便利な素材が生まれているわけで、そういう中で生まれた素材たちを否定するのは何となく気持ち悪かったりして、どんなものにも一長一短があって、それをしっかりと使う覚悟を持ってきちんと過ごしていかないといけない、生きていかないといけないって、赤松だけれどずっと膝をついているやっぱり膝頭が痛いなあ、なんて思いながら、そんなことを考えながら床を塗っていくのでした。

「湘南の家づくり」別冊湘南スタイルに掲載されています。

2020.03.01

Sさんから「お家のことを取材していただきました。キッチンが雑誌に載るかもしれません。」とご連絡をいただいていたのです。
見てみると、なんと表紙にSさん宅のすてきなお写真!すごいですね!おめでとうございます!
昨日湘南T-SITEに居た時も、レジの前に「湘南スタイル」のコーナーができていて、「わ~い!わ~い!」とひとり喜びながら通り過ぎておりました。
私達も一昨年経験してわかりましたが、お家づくりはわからないことだらけ。皆さんがキッチンを作られる時に色々なお話を聞いて知っているつもりではいましたが、いざ色々動き出してみると、その場所によって必要なことは異なりますので、「え、そんなことある?」「予算みていなかったよ!」ということもありました。
今回の「湘南の家づくり」号は、その土地の特徴・選び方、各工務店さんの得意な分野がわかる、湘南の地域ならではの家づくりで必要な対策・特徴がまとまって見られるのでこれからお家を建てる予定の方にはとても参考になると思います。
見かけた方はぜひ手に取ってご覧くださいね!
今日は出展していた湘南T-SITE第4回湘南料理道具市の最終日です。
イマイダイスケと2人で店頭に居ります。
Sさんのキッチンがもっと詳しく知りたいという方は→こちら