母の日

2020.05.11

「母の日」と聞くとお母さんにプレゼント持って会いに行きたいなとは思いますが、
娘達からプレゼントをもらえると、自分もそうだったんだと今更ながら気づかせてもらえるイベントです。
小さい時はいつも一緒に行動していて「育てている」感じがありましたが、大きくなった今はそれぞれの時間を過ごして、寝食は共にしているという感じで、「母」というよりは「友達」みたいな感覚で日々一緒に過ごしています。それがいいのか悪いのかはわかりませんが。
チイは「買い物に行けなかったから。」と家にあるものでちぎり絵とお手紙をくれました。「小6なのだから、もっと精度上げられるでしょう。」とも思いますが、こどものうちしか作れないこのラフな感じも好きなのでよいのです。
お手紙になんだかすてきなことが書いてあって、成長が感じられてうれしかったです。
ハルは「YouTubeででてきた美脚マッサージしてあげる~。」ということで、小さい時に彼女からもらっていたマッサージ券を使う時がきました。私と同じくらいの体の大きさに成長した彼女のマッサージは上手で気持ちがよかったです。
お小遣いもなくお願いして気兼ねなくやってもらえる唯一の日ですからね。(笑)
昨日の我が家はそんな母の日を過ごさせてもらいました。
ありがとう。

母の煮物

2020.05.11

母の料理で一番好きなものはと聞かれると小さい時から「煮物」と答えていたのですが、母はあまりうれしくなかったらしく、そう答えているたびに「煮物なの?」と聞き返されていたのを覚えています。
結婚した時に作り方を知りたくて教えてもらうと調味料は全部「適当よ。味見ながらね。」という返事。
同じように作っているつもりでも何かが違う。
ダイスケさんのお母さんのお料理もおいしくて、作り方を教えてもらうのですが、
調味料の分量はやっぱり「適当よ。計量スプーンなんて使ってないわ。」という返事。
きっと細かい分量がわかって同じように作っても「お母さんが作ってくれた。」というスパイスが足りないと同じ味にはならないのでしょうね。
いつかまた家族みんなで賑やかに食卓を囲める日が楽しみです。

にぎやかになるので分けたのです

2020.05.09

「ナラ板目のリビング壁面収納のオーダー」

都筑 S様

design:Sさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:kouhei kobayashi
painting:kouhei kobayashi

大きな引き戸のあるリビングボード

玄関からリビングに入ってくるとこの印象。とても気持ちの良い空間なのですが、うまく区切っていかないとただの大広間に見えちゃう。そこで前回は食器棚を吹き抜けの少し手前の見切りになっている部分に合わせることで空間的に区切ったのでした。

Sさんのところに最初に作らせて頂いたのは、食器棚でしたね。
朗々と
あの時は、Sさんご夫婦といろいろ悩みながら食器棚の形を模索していましたね。
最終的にとてもシンプルな形でナラの表情がよく分かる美しい食器棚になったのですが、あのあとお話に出ていたのはアイランドキッチンの印象をあの食器棚に合わせられたら良いなということでした。
そして、食器棚の納品から1年後に再びメールを頂いたのでした。
「お世話になっております。昨年キッチンの背面収納を作成いただいたSです。
背面収納については引き続き快適に使えておりますが、この度リビングに収納をつけたいと思っております。」

大きな引き戸のあるリビングボード

奥様が気にしていたことのひとつに奥行がありました。奥行きが深ければ、いろいろなケースごとしまえるのですが、ソファを置いた時に反対側に余計に出っ張るようではいけない。ということで、A4サイズのものをケースにしまった状態で無理なく収納できる奥行に決めたのでした。

リビングでしたかー。
キッチンだと思ったのですが、たしかにあの時もリビングのお話もしていましたね。
食器棚の様子も見ておきたいところでしたので、さっそくお邪魔させて頂きました。
「こんにちは、Sさん。」
「こんにちは、イマイさん。今度はリビングの家具を考えて頂きたいと思いまして。実は子供が生まれて家族も増えたものですから。」
そういえば、食器棚を作らせて頂いていた時は奥様のおなかが大きかったですね。
そこで、これを機会に部屋を整え直そうというお話になったということでした。
で、ご主人の希望としては、壁一面にオープンの棚を作る感じ。
その中に部分的に扉をつけたところを設けて、そこを収納として、他の部分は物を飾れるようにしたいということだったのです。
こちらのYさんのような飾り棚の印象が近かったかな。
せんせいの部屋」南林間 Y様

大きな引き戸のあるリビングボード

使い勝手を考えて採用したのが、ソフトオープンとソフトクローズの機能。引き戸を開けて全開になる手前で戸がゆっくりと開き切り、閉める時も閉まる直前でゆっくりと閉まる。便利な金物があるのです。ひとつになるのが、その上吊レール。結構しっかりとアルミの印象が出てくるので、好みが分かれるところです。ただ上吊式でした車が不要なので、地板はフラットに仕上がりとてもすっきりした印象になります。

でも、この場所は気持ちの良い吹き抜けになっていて、天井まで作るとかなり大掛かりになるのと圧迫感が出てしまいそうなので、最初はオープンの棚を宙に浮かせて、高さも抑えた形で隣り合う食器棚の吊戸棚と高さを揃えると良い雰囲気でまとまりそうと考えておりました。
そのあとに奥様にお話を詳しく伺っていくと、奥様としては、どちらかというと飾るよりもこれから家族が増えて物も増えてくるだろうからやはり部屋をスッキリさせたくて、できればすべてしまって隠したい、というお話になったのです。堅実的です。

smy009

それからすっきり見せる要素の一つとなったのが、この天板。前回ご主人の意見で食器棚の天板を50ミリと厚く作ったのですが、これが今回リビングボードをうまく納めるのに大変役立ったのでした。今回のこの家具ですが、もちろんこの長さを1台で作って持ち運んでくることはできません。中央で2分割にして作っているのですが、そのつないだ部分は隠したい。そして、天板を1枚で作っても家具本体が2台に分かれていると、天板も2重に見える形になってしまう。そうすると、この空間ではちょっと野暮ったく見えちゃう。そこで、家具本体の天板にこの長い天板が覆いかぶさるようにしてつないだ部分を隠しているのです。そのためにもこの厚みがあって大正解でした。


大きな引き戸のあるリビングボード

続いてスッキリ見せる要素、その2。中央部分の引き戸を開けると縦の板が2枚重なっているのが分かりますね。左側の板は戸を閉めても隠れない板なのですが、右側の板は戸を閉めると隠れるのです。こうすることで戸を閉めた時の印象がかなりすっきりします。

なるほど、意見が分かれましたが、ここはご主人一歩引いて考えてくださって、やはり奥様が家で過ごす時間が長いですから奥様が快適に過ごせるように、ということで、全てを隠す収納にするという話で進んでいったのでした。
では、すべて隠すとしたらどんな形にしましょうか、ということになりました。
できればすっきり見せたいけれど、しまうものの出し入れに不便があってはせっかく作っても良いないわけです。
もともと食器棚ができる前までは玄関からこのリビングに入ってくると、まずこの吹き抜けのあるリビング、そしてその奥にアイランドキッチンがあって、という広い一間だったものですので、部屋としての印象が曖昧で少しバラバラとした印象があったのでした。
そこにメリハリをつけたいと思って食器棚のレイアウトをあのように考えて、キッチンという空間がまとまってきました。

大きな引き戸のあるリビングボード

当初、このリビングのお話を頂いた時にテレビボードも一緒に作ってL型の家具にしましょう、ということになっていました。というのもリビングボードで隠れちゃう位置にマルチメディアコンセントがあったので、テレビの位置を動かさないならきれいにL型に作ったほうがまとまるかなっていう思いがありましたので。ただそうすると、もしかしてテレビの位置を変える必要が出てきた時に良くないかもしれないということになりまして(今テレビを置いている位置の後ろが廊下からリビングに入る引き戸の引き込み部分だったので)テレビボードまでは作らないことになりました。そこで配線だけをスッキリとこの今使っているテレビボードまで回せるように工夫したのがこの部分です。この一番端の板は取り外せるようになっていて、外すとコンセントなどの抜き差しができます。


大きな引き戸のあるリビングボード

コンセント類が収納ですべて隠れて、内部からしか使えなくなってしまうので、天板の上でも使えるようにコンセントを設けました。

ではまだ間延びして見えるリビングをどのようにするかとなった時に、Sさんとしては大きめのソファを置くことで、何となく部屋の境にしたい、と考えておりました。
テレビの位置もおそらく今の位置から変えないだろうからソファの位置も今使っているコンパクトなソファが置かれた位置のままサイズをボリュームアップする形にしたいという思いがあったのです。
そうなるとソファで収納の扉が開かなくなる、もしくは開けづらくなりそうです。
では、どうしようかな、と3人で悩みまして、出た結論が大きな引き戸にして、引き戸の木目の印象が良く映えて部屋を引き立たせてくれたらよいな、ということになったのです。
そこで長さ3600ミリある収納の扉は4枚の引き戸にして、1枚の幅が約900ミリある大きな戸の収納となったのです。
「引き出しのような細かいものをしまう場所は必要でしょうか。」とあれこれ考えましたが、「引き戸を開けた中にバスケットなどを用意して、それにしまうようにするので表のデザインはなるべくシンプルに見せたいです。」というお二人の意見がまとまって、この形が完成しました。

大きな引き戸のあるリビングボード

リビングボードの高さを食器棚と揃えたことで、つながりがありつつもキッチンとリビングがきれいに分かれたと思います。よい印象になりました。

こういうことを書いちゃうと失礼かもしれませんが、まだ食器棚を作る前の最初の打ち合わせでお邪魔させて頂いた時は、いろいろなものがキッチンからリビングに並べられていて、うまくまとまるかな、ってちょっと心配だったのでした。
これほどすっきりした空間になるなんて、私もとてもうれしいです。
次こそはアイランドキッチンの周りでしょうか。
楽しみにしております、Sさん。

引き違い戸のオークリビングボード

価格:630,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は20,000円から、取付施工費は35,000円から)

雪融け、うれしいところ

2020.05.09

「ナラ板目のリビング壁面収納のオーダー」

鎌倉 N様

design:Nさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:kouhei kobayashi/iku nogami
painting:kouhei kobayashi/iku nogami

オーク材を使ったプチリノベーション

Nさんが描いて送ってくださったスケッチ。分かりやすいです。この形を見てシンプルできれいな形になりそうだと思ったのですが、実際はなかなか大変でした。(笑)


プチリノベーション、オークのリビング壁面収納

ダイニングの元々の様子。シンプルな扉のつ下収納と一番左は食器棚を想定していると思われて、家電が置けるスライドテーブルになっていました。


プチリノベーション、オークのリビング壁面収納

こちらはリビングの元々の様子。天板と扉の間の部材がどう止まっているのか、天板がどのように固定されているのか、他の人が作った家具ってやはり分からないものですね。

Nさんは実は古くから私たちのことを知っていてくださったとお聞きしたのは、何度か打ち合わせが進んだ頃でした。
たしかにNさんご夫婦とお話をしていると昔感じたような空気に触れる時がありました。
Nさんのご自宅の様子もそう思わせるところがありました。
少し築年数の経った家を手に入れて住まわれていて、懐かしく感じられることと丁寧に暮らしているのだなあという様子が空気となって表れている家でした。
「実は、私イマイさんのことを以前から知っているんですよ。」
「あらっ、そうなのですか。」
「以前にイマイさんのところでキッチンを作ってもらったNさんが高校の同級生で。」
「えっ、そうなのですか。それはうれしいです。」
そのNさんとは同じく鎌倉にお住まいで「私のキッチン」のNさん。
なるほど、何となく雰囲気が近いような気がしておりました。
鎌倉のNさんのキッチンは今から10年前の2010年に作らせて頂いたのでした。長谷の大仏様から歩いて10分ほどのところに立つ可愛らしい家にキッチンを作らせて頂いたあの時の空気を思い出したのでした。
「それで、Nさんから話をずっと聞いていていつか依頼するチャンスが来たらいいなってずっと思っていて、ようやく今がその時です。」

プチリノベーション、オークのリビング壁面収納

【ダイニング】こちらが家具を入れ替えた後のダイニングの様子。明るくなりました。窓を生かす、食器棚というよりはきちんとした収納として使う、凹凸感をなるべくなくしてスッキリと。ということが今回のNさんの希望。とても良い印象にまとめられたと思っております。


プチリノベーション、オークのリビング壁面収納

【リビング】こちらはリビング。最初の印象では、背の低いテレビボードとオープンの飾り棚というイメージでしたが、しまいたいものが多くあるため、上も扉をつけることに。スケッチの形もきれいなのですが、個人的に両端にオープン棚があると、壁面収納のようにリビング全体が塊のように見えて重くなってしまうと思えて、可能ならば、吊戸棚とテレビボードだけのセパレートな形にしたいなと思っていたのですが、壁がスタイロパネルということで強度がないため、宙吊にすることができないので、飾り棚と補強を兼ねた板を組み込む形にしたのです。その板ははなるべく存在感なくしたくて、会えて、左右の壁にピタリと寄せずに離したのです。


プチリノベーション、オークのダイニング収納

【ダイニング】まずはダイニング。いつもなら上部の戸棚の奥行は引っ込めていたかもしれません。その方が圧迫感がなくなると思っておりましたので。でも今回はNさんの提案通りに収納全ての奥行を揃えたのです。これが正解でした。いろんなバランスがあるのだなあと家具を作るたびに考えさせられます。

それはとてもうれしいつながりです。
私たちが作る家具はどこかのお店に置かれているわけでもないので、こうして皆さんが伝えてくれる言葉を通じて知ってもらえることはとてもありがたいことです。
そのようなわけで、どこか懐かしい空気を感じながら話は進んでいくのでした。
お話としてはこのような感じでした。
もともとついている白い造作家具が傷んできたこと。また、扉だけの収納は使い勝手が悪いこと。お子さんも大きくなってきたので暮らし方が徐々に変わってきて家具の使い方も変わり始めていること。このあたりを改善するために思いきってダイニングとリビングの家具を新しくしようと思ったのだそうです。
おもしろそうなお話です。
今ある状況をいろいろな制約があるなかで使いやすい形にしていくという作業は、私は好きなのです。
仕事の上でもこういったクセがあるようで、これが良いのか悪いのか分からないのですが、しなければいけないことをいくつか並べておいて、あちらをメインにやりながら、合間をみてこちらを取り掛かって、みたいな進め方が好きだったりして、何だか住寸d根いるのかどうかよく分からないけれど、時間や段取りの制約があるなかであれこれ進めていて、終盤になってくると一気に今まで散らばっていたものが片付くっていう感じが何だか好きなのです。(効率は良くないかもしれませんが・・。)

プチリノベーション、オークのダイニング収納

【ダイニング】Nさんのスケッチにもあった棚板を支える角材。最初はこの棚板を左の壁まで延ばすのも良いかと思いましたが、炊飯器が置かれること、印象が重くなるかもしれないこと、そのあたりをNさんと話し合って、角材を生かすことにしました。


プチリノベーション、オークのダイニング収納

【ダイニング】でもなるべく存在感を無くしたいと思っていまして。そこで角材はシナ材で作り壁に近い色で塗りつぶしたのです。まっさらな表情にしたくてウレタン塗装で仕上げています。そして、正面から見た時に棚の印象がはっきり見えるように棚の見付を角材のほうまで被せました。


プチリノベーション、オークのダイニング収納

【ダイニング】角材の脚元は木ダボ(ドミノ)で固定。また窓枠と同じ位置に立ててあまり目立たないようにしています。


プチリノベーション、オークのダイニング収納

【ダイニング】そして天板も窓枠のラインと上面を合わせるように高さを揃えました。


プチリノベーション、オークのダイニング収納

【ダイニング】扉はすべて手を掛けて開けるようにしたのですが、この大きな扉だけ他の扉に合わせると手掛けのバランスが悪くなるので、扉の木端面に掘り込む形にしました。


プチリノベーション、オークのダイニング収納

【ダイニング】収納の様子。


プチリノベーション、オークのダイニング収納

【ダイニング】収納の様子。


プチリノベーション、オークのダイニング収納

【ダイニング】右上の戸棚の様子。よく見ると分かるのですが、壁際の側板には点検口があります。もともとここには通気口があって、それを塞いで良いということになったのですが、何かあった時に確認できないのは良くないので、ここから目視できるようにしているのです。


プチリノベーション、オークのダイニング収納

元々外から引き込まれていたガス管はそのまま使えるように。毎年ガス暖房を使っているということで扉を閉めた状態でもガス管をつないで置けるように収納の地板を一部欠き取り加工しています。

そこで、今回のNさんからの要望を聞かせて頂いて、現状の様子を探ってみました。
なるほど。
家自体の構造はとてもしっかりしているのですが、内壁の作りがちょっと変わっていてスタイロパネル張りというのでしょうか。コンクリート造の躯体に直接ベニヤが張られたスタイロフォームを貼っているので、壁に家具を固定する強度がなく、押すとふんわり壁が動く構造です。
しかも現在設置されている白い家具、どうやって固定されているのだろう・・。扉を開けてみる限りはよく分からず、背板を軽く叩くと堅い音がする。壁に貼っちゃってるのか‥。

私たちの工房は、私の父が創業して今年で34年目になります。私も19歳の時からこの仕事に関わっているので今年で27年目。時間が経つのは早い。
その間にお店の家具や集合住宅向けの量産家具などいろいろな仕事をしてきましたが、ずっと変わらず造り付け家具という形を主に作ってきました。今でこそオーダーキッチンを作ることができる状況になりましたが、今から15年前くらいまではもっぱら造り付け家具を作っておりました。
その昔から思っていたことは、「なるべく家具は取り外せるように作りたい。」ということでした。
もちろん、お店の家具ばかり作っていた入社当初の頃って、そのように作れることはほとんどなくって、現場に行って接着剤で現場でくっつけて、磨いてってやっていたわけですが、そうなると何か不具合あった時に対応しづらいことと、時々みなさんから言われることにお引越しする必要が出た時に家具を持っていきたいっていうお話があって、それに対応できるようにしたいっていう思うとやはり外せるように作ることが最善なのではないかと考えております。
もちろん、オーダーキッチン等の場合は現場の都合上、一部壁を解体しないと外せない作りだったりします。
ただそれでも、家具をガッチリ壁に接着しちゃったり、どこからネジ止めしているか分からないような作りにはしたくないなあ、と思っております。

それから、今回は既存家具の解体から新しい家具の設置までを内装屋さん等に入ってもらうことなく私達だけで完了させる予定でした。そこで、内装工事が入らなくても大丈夫なように、壁や床に不用意に傷を増やすことないように進めていったのでした。
まずはダイニングのほうから始めることに。
1日間で両方の家具の交換設置は難しいので、ダイニングは1日間、リビングは可能なら1日間という工程で合計2日間で進める予定です。
その間にNさんもダイニング側に収納されていたものをリビング側に仮置きして、ダイニング設置後に今度はリビング側のものをダイニングに仮置きしてという感じで進めていく予定なのです。
で、その白い家具。
やっぱりどうやってついているのか分かりません。
施工の初日はどうにかお天気に恵まれましたが、気持ちがもやもや、ちょっとまごついてしまいます。
その時にコバヤシ君。お父さんがクロス屋さんで子供時分に手伝っていただけのことはあって、躊躇なく、手際よく、こう思うっていう方向に作業を進めていきます。
なるほど、頼もしい。
もうね、ビスはさびて途中で頭が折れたりもするし、どこから固定されているか皆目見当もつかない部分もあるので、バールとカッターで剥がしては刻んでいくのです。
すると、なるほど、ここでビス留めしたあとに化粧したのだな、と思えるところがいろいろ出てきたりして、どうにか壁と床に傷を作ることなく外せたのでした。
外せたは良いけれど、壁に下地がないので、必要な個所のスタイロフォームをはがして、下地を入れていきます。
天井も左右の端でだいぶ下がり方が違ってきているので(これはなぜなのか分かりませんでした。)水平だけはしっかり取ってようやく家具を取り付けるための下準備が整いました。
この下準備だけで半日近くが掛かりました。
あとは、工房で組んだとおりに組み上げていくだけですので、順調に進みそうです。
このダイニングの家具はノガミ君の制作なので、ノガミ君の声掛けのもとに作業が進んでいきます。
床と壁に悩まされながらもどうにかその日のうちにほぼ作業は完了。
残った部分は、次回リビングの作業の時に行なうことに。

その夜、Nさんからお便りが届きました。
「こんにちは!Nです。
昨日は素晴らしいリビングボードを設置していただき、ありがとうございました。
うちの床や壁が古いために思った以上に歪みがあったなか、ノガミさんはじめスタッフのみなさんが頭を悩ませながらも本当に丁寧に作業いただいて、申し訳ないやら有り難いやらで。
寒い中、早朝から夜遅くまで本当にありがとうございました。
昨夜から主人とあまりの美しさにうっとりしながら過ごしました。「もったいなくて食器を入れたくないね〜、、」とすぐには入れずに今朝からゆっくり入れはじめ、ようやく落ち着いたところです。
おかげさまで以前よりも多くの食器たちが、ゆったりとすっきりと収納されました。
正直、家具でここまで部屋の印象が変わるとは思っておらず、驚きました。
コーヒーを飲みながらゆっくり眺めていると、時間を忘れてしまいます。
流れるような木の表情もとても素敵です。
が、まだ半分。いまの我が家のリビングは東側と西側が同じ部屋とは思えない感じになっています(笑)。
来週のリビングボードも楽しみにしております。また大変な作業になってしまいそうですが、引き続きどうぞよろしくお願いします!」

そして、約1週間後にリビングの大きな家具設置の日。
その日はあいにく雨模様でとても寒い日でしたね。雪でも降りそうなくらい。
でも、鎌倉にしては北のほうにあたるこのあたり。Nさんのお宅は山の中腹に建つような立地なのですが、このあたりはめったに雪が降らないということで、路面の心配はしておりませんでしたが、屋外での切削加工も必要な部分があったので、雨模様はなかなか難儀でしたが、カーポートを使わせて頂いたりしてどうにかしのげそうです。
今回は前回の教訓もあり、コバヤシ君が解体に適した道具を用意していてくれて、ボリュームはこちらの方が大きかったのに解体はあっという間に完了。
こちらの家具はコバヤシ君が担当したので、彼の声掛けで作業が進みます。
ただ、こちらも壁と床の納まりに悩んだり、通気孔やガス栓など家具と干渉する部分をうまくよけながらの作業で、やはり1日間では終わりませんでしたが、翌日も作業に入らせて頂き無事に取付は完了。

そして、翌日再びNさん(今度はご主人)からお便りを戴きました。
「おはようございます。Nです。
昨日はありがとうございました。
ダイニングに続いてリビングボードも入り、我が家が見違えるほど素敵な空間になりました!
お陰様で、心が本当に明るくなる、空間となりました。
昨日はテレビなどの配線を行いましたが、おかげさまでとてもスムーズに設置できました。
妻も息子純之介も嬉しそうで、一層にぎやかなリビングダイニングになりました。
息子のおもちゃも下の引き戸にたくさん収納でき、自分で開け閉めして楽しんでお片付けしています。
あらためて、デザイン、機能が充実した家具のパワーと影響力は偉大だなと、つくづく感じています。
またお会いできるのを楽しみにしています。」

こういう言葉、気持ちが雪融けのように軽やかになっていきます。
特にね、今回のように家具を作らせて頂く前の状況と、設置した後の様子でこれほど印象が変わると、私も本当にうれしくワクワクするのです。
それから、何度かNさんのお宅にお邪魔させて頂きましたが、伺うたびに私の気持ちが落ち着くうれしい場所になっていました。

プチリノベーション、オークのリビング壁面収納

【リビング】こちらがリビング。最初にお知らせしたように軽快に見せるために少し不思議な形をしておりますね。


プチリノベーション、オークのリビング壁面収納

【リビング】この壁についている衝立のようなパネル。もともとはつけるつもりはなかったのですが、打ち合わせの時に元々ついていた家具を見たら、その家具がクロスを張られる前に取り付けられていることが分かり、その家具を取り外すと、石膏ボードが丸見えになってしまう、ということでクロスを張り替えないでも良い方法と言ことでこのような形にしています。


プチリノベーション、オークのリビング壁面収納

【リビング】でも、ただパネルをつけるだけでは印象がちぐはぐになってしまう。ちょうど寸法を考えていくと、補強となるオープン棚の高さの割付がNさんの想定している高さとよく合いそうなので、棚の高さとパネルの高さを揃えることにしたのです。


プチリノベーション、オークのリビング壁面収納

【リビング】そして、ちょうどパネルがつくこのあたりの壁にコンセントがついています。コンセントの位置も元々あった収納の天板の上にくるような位置についていたので、今回のテレビボードに変えたことでかなり高い位置にあることになってしまいました。そこでパネルで隠すことでコンセントからテレビへつなぐ配線がスッキリ隠せるようになったのです。ただ、コンセントが普段見えなくなってしまうのは、「ちょっと怖いので万が一の漏電、焼けが起こる場合に「煙等」がわかるように、スリットを入れてもらえますでしょうか。」ということでパネルの上部にスリットが入っております。おもしろい形です。


プチリノベーション、オークのリビング壁面収納

【リビング】そして、いろいろなところにすっきりと配線ができるようになっています。


プチリノベーション、オークのリビング壁面収納

【リビング】上の扉は上開きの扉です。ここはフリーストップステーを使っています。


プチリノベーション、オークのリビング壁面収納

【リビング】下の収納部は開けても邪魔にならないような引戸。戸の下に車を仕込んで、敷居はナラの無垢材をそのまま掘り込んでいます。


プチリノベーション、オークのリビング壁面収納

【リビング】中央部で仕切るいつものデザイン。引き違い戸2枚で1つのキャビネットになっていて、このマン華夏でジョイントしているのですが、天板も2分割にすると野暮ったいので、天板は1枚で作ってキャビネットの上からかぶせて1台の家具のように見せています。


プチリノベーション、オークのリビング壁面収納

【リビング】AV機器収納部の様子。

そして、その年の秋。
「ご無沙汰しています。元気ですか。
我が家も皆、元気です。
クスッと笑顔になる面白いことがあったので、メールしました。
年中組の息子と今年の夏は、「アゲハチョウ」を何匹も育てました。(卵→幼虫(イモムシ)→サナギ→チョウ)
庭の鉢でタネから育てている「レモン」に蝶々がちいちゃな卵を産んでいるのを知って、「育ててみようか」ということで始めたのです。
一見グロテスクなのですが、卵からイモムシになり大好物のレモンの葉をムシャムシャ食べる姿は知れば知るほど可愛いものです。
そして、ある時期が来ると大人しいイモムシ達がかなりの速度で這い回り、サナギになる場所を探し、その本人(イモムシ)達が気に入った場所で時間をかけサナギになります。
人工的な場所でもサナギになるのですが、見ていると「致し方なくその場所を選んだ」雰囲気が伝わってきます。
やはり、自然な枝、葉など、自然の恵みの場所の方が落ち着いてサナギになれるようなのです。
9月に入り、秋に息子ともう一回アゲハチョウを育ててみようかと、何匹もの卵からかえりたての小さなイモムシを探し、部屋で飼い始めました。
小さいイモムシは体調2、3ミリなので、うちの中で行方不明にもなりました。
そして今朝、9月からの第1匹目がチョウになりました。「ありがと、頑張って卵産んでね、サヨナラ!」と息子も満足げ。
そしてふと、お気に入りのイマイさんのダイニング棚の扉の下を見ると…
なんと行方不明になっていたイモムシと思われるサナギが付いているのです。
開閉される扉に丁度挟まれない「法面(のり面)」に「うまーく自らを固定して」チョウになる準備をしているのです。
そしてここは行方不明になった場所から2メートルも離れたところ。しかも、人間の眼につかなくて天敵も来そうにない物理的にも潰されない場所。
イモムシの能力と自然の力に息子とびっくりしました。
そして何より、自然のイモムシが安全安心と判断したフリーハンドイマイの家具。(笑)
我が家の人間以外に、自然に生きるチョウにも安心を与えているのですよね。
我が家の棚でチョウになる準備をしているサナギ、多分あと数日でチョウになると思います。
それまでこの家具のそばで安心して準備してくれたらな、と息子と見守っています。」

プチリノベーション、オークのリビング壁面収納

Nさんに教えてもらったタグチさんの「LITTLE BEL」。無指向性スピーカーということで自然な音の広がりに魅了されて、私も自宅で使わせて頂いております。

いろんな形で皆さんの暮らしを支えることができていることをとてもうれしく思っております。
Nさんありがとうございました。
いろいろなご縁がつながって、またここからNさんのユニークな表現力が私たちをつないでくれるのを楽しみにしております。

プチリノベーション、オークのリビング壁面収納

光が差し込んだ。春がやってきましたか。

オークダイニングサイドボード

価格:570,000円(制作費・塗装費)

オークリビングテレビボード

価格:750,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は40,000円から、取付施工費は80,000円から)

柱の松脂をきれいにしました

2020.05.09

この家に暮らし始めてもうすぐ1年になります。
我が家のダイニングには構造上必要な米松の丸柱があります。無塗装のものです。
そこから松脂が染み出ていて見た目もよろしくないので掃除をすることにしました。
松脂を落とす方法を検索すると、字の通り脂なので、アルコールを使うときれいになるという事でしたが、今のご時世、残り少ない消毒用アルコールを掃除に使うなんてことはできないので、台所用洗剤で洗うことにしました。DSC_5879
泡を乗せて手で洗うとすぐに取れていきました。
後は泡が出てこなくなるまで何回も雑巾をゆすいで拭き取るだけきれいになりました。
シミは残ってしまいましたが。自分もシミだらけなんで気にしません。(笑)
DSC_5890
きれいになったら「きれい~!」「ブツブツべたべたしてな~い。」とハルチイがべたべた触ってくれるので、その手垢でいいつやが出てきますかね。また汚れたら洗ってしまうのですが。
家の経年変化と付き合っていく方法がわかると何だか安心ですよね。これからも色々勉強していきたいと思います。

オーダーキッチンのことを特集したページを作りました。

2020.05.08

オーダーキッチンについて皆様からよく質問されることなどをひとまとめにしておけたらよいなと思いまして、分かりやすく1ページにまとめたものを作ってみました。
fhikit001

私たちの作るオーダーキッチンについて

オーダーキッチンで使う樹種や天板の素材、無垢材と突板の違いや、またどんな収納の作り方ができるか、いつごろまでにプランを決めておけば良いか、どのくらいの距離まで施工に対応できるか、そういうちょっと知りたかったことをまとめております。
もっとこんなことが知りたいって思うことがあれば追加で情報を載せていこうと思いますので、何かあれば皆さまおっしゃってくださいね。

またこれに合わせて、「キッチンカタログVol.1」の内容が古くなっている部分がありましたので刷新することにしました。
振り返ってみると9年前に作ったのですね。Wordで作ってA3用紙に印刷してホチキス留めして端っこをカッターでカットして、と本当に手作りだったのが懐かしいです。
今は印刷はお願いしてしていますが、相変わらずWordで作っております・・。
時期を見て制作例も増えてきたので、Vol.3も作りたいなと思っておりますが、いつになるでしょう・・。

ホワイトオークとホワイトペイント仕上げのリビングボード

2020.05.07

久しぶりに家具の納品です。
こういう時期ですので、お邪魔させて頂くことも注意深くなります。
今日は幸いにも気候も暖かで大変良いお天気でしたので、Tさんも段取りよく準備してくださっておりまして、終始風通し良く作業をさせて頂くことができました。
どうにも階段から入らないサイズの天板で設計したわけですが、これを小さくしてしまうとこの家具、この空間の印象がだいぶ小さくなってしまうと思いまして、階段から搬入する覚悟でこの形に至ったのです。
「そうか、エレベーターに入らないのか。ご苦労様。」と管理人さんに気持ちの後押しされながら、5階までどうにか無事に運び込めてひと安心。
この搬入さえ終われば、あとは工房で仮組したとおりにカイ君が組み上げていくのみ。
私は時間を見計らって、夏から初秋にかけて工事に入らせて頂く予定の四街道のSさんの現場を見に行くことに。
「まだ基礎工事中かもしれません。」
と言われておりましたが、なかなかこちらのほうまで出掛ける機会はないので、せっかくなので立地を見ておけたらと思いまして立ち寄らせて頂くことに。
小学校が近くにあって、公園が豊富なとても良い場所でした。
本来でしたらもっと子供たちの活気ある声が響いているでしょうけれど、そういう日がやってくるのを待ち望むのです。

今回も以前に作らせて頂いたカップボードから引き続きカイ君が制作を担当したリビングボードを納品させて頂きました。
今まで使っていたヒュルスタのガラスのキャビネットの印象も残せるようにということで、細いアルムフレームを使った扉のある吊戸棚も合わせて作らせて頂き、これで、ダイニング、リビングへの印象が整ったと思います。

Tさん、とても素敵な器をたくさんお持ちでしたので、ここがこの先どのような印象になっていくのか、また少し落ち着いた頃にお邪魔させて頂こうと思います。

おとうさんの朝ごはん

2020.05.07

DSC_5846DSC_5844DSC_5858みなさん同じだと思いますが、外出自粛のおうち時間暮らしとなって、両親や兄弟・友人とも会えなくなり、電話や写真・メールのやりとりがメインになりました。
今までも会社のSNSを見てくれてはいましたが、最近はコメントをくれるようになりました。
今までは「ブログ見てるわよ。いつ書いてるの?大変ね。でもいいわよね。」という感じでしたが、
一昨日は「ダイスケさん、今日は何も作らなかったの?こどもの日。」と連絡がありました。チェックが厳しいですね(笑)
作ってくれましたよ、しかも朝昼晩3食とも。
ということで、昨日の朝の我が家のキッチンの様子です。
冷凍しておいたミートソースでホットサンドの朝食でした。昼と夜は撮ってないのですが、お昼は半端な胸肉の残りで親子丼、夜はハルチイのリクエストで焼き肉でした。
私たちのことを知らない人に観てもらえたらなと思って投稿しているSNSですが、今は知っている方々への発信している気持ちが強いような気がします。
続けられるように頑張っていきたいと思います。

学習机をきれいにしましょう。

2020.05.05

20200505003
今日はこどもの日でしたが、外出自粛中でお出かけもできないので、毎日過ごすお家の大掃除をすることにしました。
子どもたちのメインの居場所となる学習机をきれいにしましょう。
女子だからか性格なのか、机の上はいつも物だらけなので全部どかすだけでも整理整頓する機会になりました。
20200505004チアキの天板はセン。うーむ、きたない。

20200505001ハルカの天板はナラ。うーむ、きたない。

20200505005チィの天板は結構きれいになりました。

20200505002ハルの天板もどうにか。この黒いのは何だろう・・。

鉛筆の汚れが多いので、セスキ炭酸ソーダ水を使い、水拭きだけではきれいにならない汚れもきれいに落ちました。油性マジックの汚れは除光液で落ちますが、そこまでやる場合にはやすりがけとオイル塗装までした方がいいのですが、用意できていなかったので次回にしようと思います。
家具屋なのに準備が悪くてごめんね。他の場所も掃除したかったので。(言い訳です。笑)
その様子はまた次回お伝えしようと思います。

机を制作した時の記事も良かったらご覧くださいね。
4年前の出来事ですね。
マンション住まいの時に横並びで使っていたものを、今は分割して背中合わせで配置しています。
2016年4月10日 自分の机を自分で作る
2016年4月18日 子ども部屋が完成

おうち時間:おとうさんの台所 

2020.05.03

今週末は土曜日の方が都合がよいということで、昨晩の夕ご飯が「おとうさんの台所」の時間となりました。
おとうさん自らのリクエストでお寿司です。日が長くなりましたね。20200502001
お寿司の日には具沢山味噌汁が我が家の定番なのです。20200502003
「お寿司のおいしさはご飯の温度とほぐれ方なんじゃないかなぁ~。」と探りながら握ってくれたお寿司。
食器棚の背板はグレー色のものにしてみました。最初は紺色にしてみたかったのです。リサ・ラーソンさんのキッチンの紺色の雰囲気がとてもすてきで。でもダイスケさんに「多分中が暗くなるし派手な感じになってシナ材とは合わない雰囲気になると思うよ。」ということでグレー色になりました。グレー色は黄色が映える気がするので、この先買い足す場合に黄色いキッチンアイテムが増えていくと思います。2020050200220200502004
「海苔の幅ってどのくらいだったっけ?」と言いながら作った軍艦巻きはいびつな形にはなってしまいましたが、どれもとても美味しかったのでした。20200502007
お寿司の時の器は山本芳子さんの織部焼と決めています。丸い器は飯高幸作さんのものです。
すてきな器のおかげでおうちごはんのごちそう感が増しますね。大切に使わせて頂いております。20200502006
出来上がったらすぐ食べられるようにハルチイはテーブルセットしてスタンバイ。20200502008
外出自粛がゴールデンウィークに終わると見込んで始まった「おとうさんの台所」シリーズ。
残念ながら長引いてしまいそうですね。
でも自分たちは家にいるだけでこういう穏やかな時間が持ててるのも最前線で感染者の治療にたずさわってくださっている医療従事者の方々のおかげだということを忘れずに大切に過ごしていきたいと思います。
本当にありがとうございます。

西日の檸檬

2020.05.01

東側には3階建てのお家が建つ住宅街の旗竿地の我が家。その小さなお庭に檸檬の木を植えたのです。
家を建てる前から、もし庭があるお家を持つ日が来たら檸檬の木を植えてそこで実ったら料理やお菓子に使えたらうれしいな、と漠然とした夢を持っていました。
でも家を建てた場所の庭は短い日照時間しか得られない場所。
そこに檸檬の木を植えても実らないのならただかわいそうなことをしているだけなのではないか?
他の常緑の樹種を選んだ方がよいのではないか?悩みました。
植栽をお願いした松光園さんに伺った時も、「日がどれだけ当たったかで、花が咲いて、それが実になりますからね。ここの場所が年間通してどれだけの日照があるのかわかりませんし…。でも土はいい土ですよここは。」とおっしゃられていました。
はい、そうですよね。地鎮祭前の草刈りはそれはもう大変でしたから。
結局夢を諦められず、檸檬の木を選びました。
昨年の5月中旬に引っ越してきて、植栽をしてもらったのは9月でした。やっと年間を通してその場所の日照を見ることができました。
Dsc_4504 ブログ不思議な写真ですよね。南側の家の影なのに檸檬の木だけ明るいのです。秋冬は日が低くなり沈む場所もずれるのでほとんど日が当たらないと思っていたのですが、2階の窓から反射した日光が檸檬の木を照らしていたのです。
春になってくると午後から西日がずっと照らすようになりました。
IMG_3680思っていたよりも日が当たっている、もしかしたら花が咲くのかもと期待していると、
先日たくさんつぼみがついているのを見つけることができました。
次は実がなるようにちゃんと調べて育てていけたらいいなと思っています。
Dsc_5749お庭の日の当たり方なんて住み始めて1年暮らしてみないとわからないことでした。
お家づくりは面白いですね。人・場所・家の形・暮らし方など本当に人それぞれで全く同じことなんてありませんから。
だからずーっと興味が尽きないことなのでしょうね。
我が家の檸檬の木、大切に見守っていこうと思います。

作品を作るための道具であって

2020.05.22

「漫画家さんのワークデスクのオーダー」

都内 N様

design:Nさん
planning:daisuke imai
producer:iku nogami
painting:iku nogami

タモとシナで作った漫画家さんの机

デスク全体の様子。主にタモ材を使って製作し、小物をクリップする部分にシナ材の有効ボードを使っています。天板は無垢材にするか突板にするかをNさんと相談して、無垢だとどうしても使っていると動きが出てしまうため、絵を描くのに天板がフラットじゃないと使いにくくなるということで突板をメインに使う形で制作しました。これは私たちの工房で撮った写真なのですが、実際は写真の印象よりもかなり迫力があります。


タモとシナで作った漫画家さんの机

引いてみた全体の様子。傾斜台や用紙を収納する棚、トレース台を収納するスペースなど、Nさんが生み出すアイデアをどのように実現させたらよいか大いに悩みながらこの形に辿り着きました。

2004年に漫画家さんから使いやすいデスクを作ってほしいという相談を頂いて、少し変わった形の机を作らせて頂いたことがあります。
desk to live
その時に漫画を描くためには傾斜している台がある方が描きやすいことや、紙を収納するうすい棚が必要なことなど、今まで知ることがなかった種類の机のことを教えて頂いたのでした。
また、漫画を描く時は一人で描くことよりもチームで作り上げていくのだという興味深いお話も聞かせて頂いたっけ。
「作家名は私だけの名前ではなくって、このひとつの作品を作り上げていくためのプロジェクト名みたいな感じです。」って。

今回Nさんにご相談頂けたのはこのYさんの机の様子を気に入ってくださったことがきっかけです。
「そちらのサイトで漫画家用デスクを拝見致しました。
特にキャビネットのアイディアは素晴らしく、私も欲しいと思いました次第です。
そしてこの度仕事場を新調しましたので、机も新しいものに使用と思い立ち、せっかくだからオーダー出来ないかと思いメール致しました。
まずは見積もりだけでもお願い出来ますでしょうか。
引っ越しは来月の半ば以降ですが、間に合うかどうかも含めご相談に乗って頂ければ幸いです。
よろしくお願い致します。」

そのNさんのイメージはYさんの机をもう少し作り込んだ印象になりそうでした。
やはり作家さんのオーダーで考える机だったり、家具だったりというのはその使い方にあった、その人にしっくりくる形になるので、どの形も独特ですよ。
その人にとっては家具が自分にとっての大きな道具ですから。
例えば、特徴的な形をオーダー頂いたみなさんを上げてみますと・・。
オーダーで作るキッチンなんてもうその家に住む人の道具ですから全てが独創的な形です。
ええと、何となく思い浮かぶだけでこれほど素敵な形がありました。

・音楽プロデューサーの蔦谷さんのスタジオに作らせて頂いた機材が設置されたナラ節アリ材を使ったサイドボード「音がうまれる部屋

・海外の映画やドラマの翻訳を手掛けるKさんのウォールナットとマットホワイト化粧板で作った独特の形の本棚とデスク「猫との暮らしはこれから

・国際的な琵琶演奏家である中村さんにオーダー頂いた独特の形状をした折り畳み椅子「べん べん べん

・伝統的な技術で靴の修理、オーダーでの制作を行なっているハドソン靴店の村上さんが使う作業場のワークデスクたち「バックヤード

・酵母から作り出すパンが魅力のKonasalonの熊崎さんのブラックウォールナット材を使った最初のスタジオのキッチン「Kona Salon、教室作り

・体に優しい素材を使った料理を提供したり、教室を開催されている料理研究家KISSAKOのSさんのナラ材を使った最初のスタジオのキッチン「その日まで

・鎌倉でチーズの専門店を開いているKさんの素朴で美しいチェリーと天然石の二漕シンクのあるセパレートキッチン「Hutte

・自家製天然酵母で作るパンにインド料理のスパイスを取り入れた独特のパンを作る作家のうさぎパンさんのスタジオとなっているキッチン「biscotti

・リラックスしてお料理を作ることの楽しさを教えてくださるとても温かな&MANDOのMさんのナラ節アリ材とコーリアンの四角いキッチン「カジュアル

・デンマーク創業の家具メーカーの日本支社長さんを務めるオーナーさんの魅力的な素材と色使いが独特のコーリアンとクルミのキッチン「豊かな色

ひとつひとつ見返してみると、その人となりがよく分かる形です。
このNさんの机もそういう思いで生まれました。

タモとシナで作った漫画家さんの机

特長的な傾斜台。ここはしっかり作りたかったので、タモの無垢材を使いました。またなるべく動きが出ないように柾目使いにしています。三角形の部分と奥の四角い部分とで分割されているのですが、四角い部分は傾斜台をずらすと使える小さな物入になっているのです。


タモとシナで作った漫画家さんの机

一番手前の側板に長押のような板がついています。というか今でいう長押です。何を引っ掛けるのかというと傾斜台をよけて物を描く時に傾斜台が邪魔にならないようにここに引っかけられるようになっているのです。

ある程度の形をメールでお伺いした後に実際の作業場を見させて頂けることになったのです。
漫画を描いている工房なんてなかなか伺う機会がなかったので、興味深い思いで訪ねさせて頂きました。
工房は一軒家の二部屋を使ったコンパクトな形で、アシスタントさんが数名いらっしゃって、忙しそうに手を動かしていらっしゃる。
Nさんの作業場も自身で機能的に使えるような工夫が所狭しとされている。
鏡で細かい表情を見ながら書かないといけない時のために、小さな手鏡がデスクにアームで固定されていたり、ポーズの参考となる書籍が手元にきちんと並んでいたり。
また、使うペンの置き方も独特だったり。
そして、いろいろなものが目線にすぐ入るような位置にクリップするためのメッシュパネルが机のまわりに立っていたり。
見ているだけでおもしろい。
こういう道具や素材をきちんとしまえて使いやすいようにするほかに、現在は手書きのほかにペンタブレットを使って描くことも多いのだそうで、そのタブレットをきちんとしまっておけるスペースと、さらには大きめのトレース台も使えるように、愛用しているデスクライトをクリップできるような構造に、とNさんの細かなご要望は続くのでした。

そして、それらの要望をうまく取り入れた形で今度この机を納品する新居にうまく運び込めるように組み立て方を考えなければいけません。
いろいろなものをクリップする場所と考えているパネルが大きいので、今度の工房となる新居の2階にはおそらく階段から入れることはできないと思われます。
そうすると、箱もオンにして作っていくのではなく、板状で搬入して現地で組み上げていく形になるので、その作業が滞りなく進むような形にしないといけません。

ひと通り細かなご要望をお伺いしまして、工房に戻ってからさっそく図面を書き直します。
図面の修正で難しいのが、ミリ単位を調整する時です。
一度「この形」と決めておいた図面を作成すると、その形に合わせるためにいろいろな板の厚みや長さが決まってくるのですが、数ミリ調整するとなると、その場所を調整する以外にその場所と間接的に関わっている部分も変えないといけなくなったりして、最初からその部分だけ書き直した方が間違いづらかったりすることもあって。
そのあたりのバランスを見ながら、形を描き変えていって、さらには制作を担当するノガミ君と打ち合わせながら、この納まりを目指すにはどういう構造で作っていくかなどを相談しながら形を考えていきます。
(淋しいところですが制作から10年以上も離れてしまうと、細かい納まりは私の経験だけではなく彼らの実感のほうが組み入れるほうが良い納まりになることが多いのです。)
そうして、再び形をNさんに確認してもらって製作に取り掛かります。

今回はタモ材とシナ合板を組み合わせた形で作ります。強度が必要な部分は無垢材を使い、軽量にすべき部分は突板を使います。
また、今までメッシュパネルで対応していたクリップするスペースはシナベニヤの有孔ボードを使って、意匠と使い勝手を向上させます。この有孔ボードとタモの入り組んだ作りを工房で固めてしまうのではなく、一度仮組して現地で組み直せるようにするところがなかなか大変だったりします。
さらには、Nさんご自身でパネルの着脱がしやすい構造にしなければいけなかったり、またオリジナルの傾斜台にはペンタブレットを埋め込んだ状態で使えて、さらにはトレース台もうまく活用できるように工夫がされて、こうして無事にこの魅力的なワークスペースが完成したのです。

Nさんありがとうございました。
ここから生まれる作品楽しみにしております。

タモとシナで作った漫画家さんの机

用紙を収納する棚はこのままワゴンになっていて、ゴロゴロと引き出せます。うすい棚板は側板にスリットを入れてあって、そこで高さを変えられるようになっています。天板の奥にちょっとした段差がついている部分はデスクライトをクリップする部分です。


タモとシナで作った漫画家さんの机

タブレットを入れるスペース。なんでこのような変わったスペースの形になっているのかというと、電源ケーブルが干渉しないように、スイッチ類にアクセスしやすいようにと考えた形です。奥の穴はトレース台やその他の家電用の配線孔とペンを差しておける穴です。


タモとシナで作った漫画家さんの机

使用する予定のトレース台のサイズに合わせて作った傾斜台ですので、サイズはやはりちょうど良いです。傾斜台の手前にこぼれ止めになるような突起を設けようというお話が当初あったのですが、その出っ張りがペンタブレットを使っている時に邪魔になるから、となくしたのですが、トレース台は滑って落ちてきたりしないようでよかったです。


タモとシナで作った漫画家さんの机

タモとシナ有孔ボードの納まり。普通のI型のデスクならもう少し簡単な細工で大丈夫だったのですが、L型にすることで強度を保ちつつ現場で組みやすい形にすることが大変でした。

漫画家さんのワークデスク

費用につきましては、お問い合わせくださいませ。